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南北朝鮮の近現代史について参考になる記事を その1

言うまでもなく、19世紀末から今に至る朝鮮半島の歴史はまさに激動の時代であった。日本による侵略と植民地化、8.15解放と南北分断、朝鮮戦争、冷戦時代の激しい対立、21世紀に入って束の間の南北協力時代、その後南が李明博・朴槿恵政権になって再び激しい対立時代へと逆戻りという、朝鮮半島5000年の歴史の中でもこのわずか約1世紀のように激しい動乱の時代はなかっただろう。朝鮮半島の歴史上、間違いなく最大の激動期である(現在進行形)この経過は、朝鮮人・韓国人であれば必ず知っておかねばならない基本事項である。
これらを知る為に役立つ記事と著作を今後数回に分けていくつか紹介・推薦しておきたい。いずれも朝鮮語の記事・本なので心得がないと正確に読めないという問題はあるが、それでも読める人ならば読んでおいて絶対に損はないと思う。

一つはプレシアンで現在連載中の「徐仲錫(ソ・ジュンソッ 서중석)の現代史の話」だ。8.15解放から現在に至るまでの歴史をインタビュー形式で述べたもので、こちらは主に南の歴史を扱っている。南北分断に始まった解放後、南朝鮮における親日派の跋扈、朝鮮戦争前後の虐殺事件、李承晩の独裁、4.19革命、張勉政権、5.16クーデター、第3共和国(朴正熙政権)、日韓協定、維新政権と経済開発…などなど、韓国の解放後史とその内実がいかなるものであったのかを俯瞰出来る優れた内容だと思う。「帝国の慰安婦」のようなクソ煩わしい偽書を粉砕する為の知識としても、この連載記事で述べられている日韓協定の話は素人にも分かり易い。

http://www.pressian.com/news/article.html?no=124485
서중석의 현대사 이야기<91> 경제 개발, 열일곱 번째 마당
徐仲錫の現代史の話【91】経済開発、シーン17
(現時点での最新第91回。ここに過去記事へのリンクあり)

この連載記事に書かれている事、例えば朴正熙とその軍事独裁政権に関する事実は、かつて民主化闘争や80年代までに日本で総連の在日朝鮮人運動に身を投じた者であれば既知の事柄も多いであろう。もちろんその後の研究で明るみになった新しい事実もある。だが、当時の朴正熙独裁政権がいかに酷く恐ろしいものであったかを改めて今の我々に教えてくれる貴重な話だ。在日の中にも朴正熙を「韓国を強国にした男」などといって持ち上げようとする詐欺師のような輩がいるし、韓国本国では極右勢力による朴正熙の神格化運動が行われ、その娘が大統領になってその動きはますます加速化している。そうした誤った風潮に抵抗して正していく為にも朴正熙という人物の人となり、その不当・不法な権力奪取の経緯、独裁権力維持の為に行われた暴力的弾圧、虚構に満ちた「経済開発成功神話」の実態は徹底して学んでおかねばならない。
また、この連載記事は心ある日本人やアメリカ人にも可能な限り読まれるべき内容だと筆者は思う。植民地時代から解放後の分断体制に至るまで、日本とアメリカが何をしてきたのかもこの連載記事で知る事が出来るからだ。日本が植民地統治時代に手先として育てて利用した親日派が、解放後も南朝鮮ではアメリカの庇護によって生き残った。天皇をはじめとする日本のA級戦犯が何人かを除いて、アメリカに買い取られるような形で助命・釈放されたのと同じである。そうした親日派の中には日本軍の中国侵略戦争で三光作戦に関わった極悪分子も少なくなく、それらが李承晩政権下で行われた4.3事件などの虐殺行為に加担したという恐るべき事実には言葉を失う。解放後間もなく南朝鮮で行われた民間人虐殺事件の多くは確かに日本軍の残虐行為に酷似した凄惨なものが多く、親日派は「殺しつくし、焼きつくし、奪いつくす」という虐殺の手口まで日本から学んで解放後の自国で「応用」したのである。解放後の虐殺事件の種まで撒いたという、日本の植民地統治の罪深さがよく分かるエピソードではないか。当然日韓協定以降の「日韓癒着」の実態も赤裸々にこの記事では語られる。
アメリカもまた李承晩や朴正熙のような独裁者を(時には対立する事はあったものの、全体として)庇護して利用してきた。反共の防波堤というアメリカの国益に適いさえすれば、例え朴正熙のように旧日帝の皇国臣民気風に色濃く染まった問題児であろうともさして問題ではなかったのである。加えて5.16クーデターを前後した時期のアメリカは、当時の張勉政権を「民主政権」「反共」という理念面では支持していたものの、ひ弱そうに見えるこの政権をどことなく頼りないとみなしていたフシがあった。5.16クーデターという民主政治破壊行為が起こっても、これをアメリカが積極的に牽制しようとしなかったのには、こうした背景も作用したと言える。アメリカは強権的な朴正熙の方をより「頼もしくて信頼出来そう」とみなした訳だ。「民主主義」を表看板に掲げながら、実際には自国権益に適いさえすれば支持するという、ダブルスタンダード(二重基準)の権化たるアメリカの本質は今も昔も変わらない。
被害者たる朝鮮人・韓国人が、また加害者たる日本人・アメリカ人のいずれもが自分達の歴史を正しく知る上で、この「徐仲錫の現代史の話」は優れた歴史記事であると思う(まだ完結してないが)。ぜひ通して御覧いただきたい。


これまでプレシアンというメディアを厳しく批判してきた筆者が、その連載記事を推薦する事を意外に思われる方がいるかもしれない。確かにプレシアンやハンギョレをはじめとする韓国進歩派メディアの、とりわけ2012年(総選挙とその後の統合進歩党バッシングに始まる「従北狩り」旋風や、海外ではシリア内戦やリビア侵略などのNATOによる侵略戦争が露骨化した年)以降の堕落振りは酷いものがある。が、これらの誌面から読める記事が全くなくなった訳ではなく、まともだった頃の名残と言うか良い意味での「残滓」はまだいくらか残っているのだ。そうした数少ない良質な記事や連載までも全否定する必要はなく、それらはそれらで積極的に読み、学べば良い。今回の記事の徐仲錫氏も筆者とは歴史観を異にする部分はいくつかあり、民主化運動出身と言えども韓国という反共主義・国家主義の国で生きてきた影響、つまり結局は「南の知識人」ゆえの限界と思う部分も結構ある。それでも韓国の解放後史として読むに足る内容であり、韓国と日本の歴史修正主義に対抗する為の知識を得る足がかりとしては十分だ。徐仲錫氏も事実に立脚して語る事に努めており、歴史学者としては誠実な人物であろう。
日本の赤旗や東京新聞や沖縄の新聞にも問題は非常に多いが、それでも優れた記事やレポートは存在するし、そこから原発問題や辺野古反基地闘争などの貴重な情報を多くの者が得て活動している。その上で韓国や日本の進歩言論の許し難い点や批判すべき点は別個に批判すれば良い。当たり前と言えば当たり前の話なのだが、この事は敢えて強調しておく。そうした常識すらわきまえないばかりか、当該記事をちゃんと読みもせず(か、あるいは読んでもその内容を理解出来ず)に「プレシアンは燃やしてやりたい!」と逆ギレヒステリーを起こす、理性も知性も持ち合わせない輩がたまにいるからだ。

数少ない優れた(それも親日派の悪行や、李承晩が無辜の民衆を「アカ」呼ばわりして虐殺した史実、朴正熙独裁などの歴史を鋭く暴いている)記事にまで罵声を浴びせるなど、それでは何にもならない(どころか明らかに有害無益)ではないか。こうした人間がいかに一見まともそうな事を言い、反原連や旧しばき隊といった現在の日本で最悪の社会運動詐欺集団やそれを追従する在日の不良分子と喧嘩した所で何の打撃も与えはしないし、むしろ敵に付け入る隙を与えて有害ですらある。そうした人間は吠えるだけで、その口には牙がないからだ。

牙のない犬に吠えられて恐がる者がいるだろうか?
いない!

吠えるからにはその口には鋭い牙がなくてはならない。それが在日同胞の人権や生活に関わる事であればなおさらである。その牙こそ、やるべき事とそうでない事を分別して自重と安静を知る理性であり、歴史や学問といった知識から謙虚に学んで積み上げる知性というものだ。それを絶対に忘れてはならない。もちろん上記の者が言葉や話の通じない「手遅れ」だというならどうしようもないが…。

今のプレシアンは確かに全体的に酷い傾向のメディアである。だが過去の優れた記事は今でも読むことが出来るし、良かった頃の「残滓」が今も完全になくなった訳ではない。そうした「残滓」は遠慮なく吸収すれば良いまでの事。韓国でも日本でも進歩言論の「旨み」は「本体」にあらず、「残りカス」にあり!

片やハンギョレにもそうした良質な「残りカス」はまだ残っていた。南の解放後史を述べた今回の記事に対して、こちらは北の解放後史をある側面から追跡する。それについては次回改めて御紹介しよう…。

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駐韓米大使襲撃事件について――なぜこの容疑者は犯行におよばざるを得なかったのか?

すでに報道されて御存知の方も多かろうが、駐韓米大使のマーク・リッパート(Mark Lippert)が刃物で切り付けられる事件が発生した。容疑者のキム・ギジョン(김기종)という人物は平和統一運動や独島守護運動をしてきた市民運動団体代表である。
この事件についてすでにネット上のコメントや感想など見ていると「右にも左にも狂った奴はいる」「いかなる理由があろうともテロは正当化出来ない」「(リッパートが韓国文化好きな「親韓派」である事から)狙う相手を間違えたな」などといった批難調のものが多い。だが、この事件はそのように簡単に容疑者を狂人扱いしたり、単純にテロ行為自体の否定だけで終わる問題なのか? 今の韓米日関係という国際環境の中で、被害者のマーク・リッパートという人物がいかなる性質の駐韓米大使なのか、加害者であるキム・ギジョンという人物がいかなる性質の人物かを検証し、なぜ今回のような事件に至ったのかを深く考える必要がある。

まず、リッパート大使という人物については「知日派」であると同時に大変な「親韓派」であるともされている。例えば息子のミドルネームに韓国風の名を付け、あまり上手ではないが朝鮮語が少し出来るのでそれによるインタビューをブログに公開し、尊敬する人物は朝鮮王朝の世宗大王、焼肉やピビムパブ・キムチなども好物だという。

http://news.donga.com/3/02/20150305/69956127/1
「42歳最年少」駐韓米大使マーク・リッパートとは何者か(韓国語記事)

これだけ聞くと、「なぜこんなに韓国の文化を愛好する「知韓派」の大使を襲ったのか。平和統一運動家がそんな事するとか、この容疑者はおかしいんじゃないのか」と思えるかもしれない。では「息子に韓国風のミドルネームを付け、世宗大王を尊敬し、韓国料理が好物」な我らがリッパート大使の外交官としての仕事や政治的方向性はどうだったのだろう。以下にそれらを列挙するので、詳しくは元のリンク先記事も併せて御覧いただきたい。

http://japan.hani.co.kr/arti/international/17617.html
マーク・リッパート駐韓米国大使指名者「北制裁・孤立化持続

駐韓米大使指名者‘対北朝鮮観’強硬

 マーク・リッパート(写真)駐韓米国大使指名者が17日、北朝鮮の核問題と関連して北朝鮮政権に対する孤立化と制裁を持続して、米国および同盟国のミサイル防御(MD)を拡充しなければならないと明らかにした。

 リッパート指名者はこの日、米上院外交委員会承認聴聞会に出席した席で‘北朝鮮リスクにどのように対処するか’という質問にこのように答えた。 これはリッパート指名者が非常に強硬な対北朝鮮観を持っていてミサイル防御(MD)の拡充と関連しても韓国に対する圧迫を強化するだろうことを示している。

 彼は北核脅威に対する三つの対応基調を提示した。 彼は「第一に、北朝鮮と北朝鮮政権を孤立させるための国際的コンセンサスを作ること」とし「最も良い例が人権問題で彼らを孤立させること」と話した。 彼はまた「多者的・独自制裁と圧迫を持続して、軍事訓練も継続し、米国が北朝鮮の行動に注目しているという強力な信号を送らなければならない」と話した。 彼は「最後に、強力な国防と抑止が必要だ」として「ミサイル防御を強化するためにアラスカの迎撃ミサイル数を増やす一方、日本に2基目のTP2レーダーを設置し、弾道ミサイル巡洋艦2隻を2017年までに配置し、グアムに高々度ミサイル防御体系(THAAD)を移動し北朝鮮の威嚇より一歩先んじなければならない」と話した。

http://www.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_437.html
<韓・米・日(軍事)三角同盟>の設計者が、駐韓米国大使となった
-オバマが、マーク・リッパートを駐韓米国大使に指名した理由-
チョン・ウンシク 平和ネットワーク代表(「チョン・ウンシク」ではなく正しくは「チョン・ウッシク又はウッシッ 정욱식 鄭旭湜」である:引用者注)

リッパートは、オバマ行政府が強力に推進している韓米日・三角同盟の設計者の中の一人だ。今年、満41歳であるリッパートは、米上院軍事委員会専門委員とポラク・オバマ大統領が上院議員が在職時期、外交補佐官を経て、オバマ行政府出帆以後には、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)秘書室長、国防部・東アジア太平洋担当次官補、チャック・ヘイグル国防長官秘書室長を務めた人物だ。この様な履歴からも知る事が出来るように、彼はオバマ行政府の核心的な‘軍事戦略通’、として通っている。

リッパートは、4月中旬、ワシントンで開かれた《韓・米・日三者安保討議(DTT)》の米国側首席代表を担当した。次官補級会議であるこの会議の、米国側首席代表は、国防部・東アジア太平洋担当次官補がずっと担当した。ところでリッパートは、国防長官秘書室長の資格で、この会議を直接取りまとめた。そうしては、「この会議が、極めて生産的で実質的だった」と自己評価しながら、韓米日軍事協力を強化すると言う意思を強力に表明している。

この会議(4月中旬の上記DTT)の首席代表を務めたマーク・リッパートは、4月30日、或る討論会でこの様に語った。“3国は、今年始め、韓・日関係の緊張にも拘らず、高位級会談と首脳会談を開催した事を土台に、協力関係をさらに強化して行かなければならない。(5月30~6月1日シンガポールで開かれた)シャングリラ対話を契機に、3国の国防長官が再び一緒に集まり、協力関係を正常化しなければならない。”

マーク・リッパートは、また、“米国国防部は、安倍晋三総理の安保政策に大変満足している”とし、“(安倍が)もう少し、しなければならない事があるとすれば、韓・米・日3者協力を強化する事”だと強調した。それとともに、“DTT(3者国防討議)のような3者協力を、強化する事が出来る事をするのを願う”と言った。

この様な内容を総合してみる時、マーク・リッパート・駐韓米国大使内定者の核心任務は、韓?米―日三角同盟の構築にあると言う事が出来る。

北韓との実質的な対話と協議は忌避しながら、“北韓の脅威”を根拠に、韓・米・日三角同盟強化を推進すると言うオバマの立場が、マーク・リッパート駐韓米国大使内定者を通して重ねて確認されるようで、まことに憂慮し、苦々しいかぎりだ。


http://toyokeizai.net/articles/-/37149?page=2
日韓関係改善に向けて米国が強力な布陣 駐韓米大使に大統領側近のリッパート氏を指名

しかし、それは誤解だ。リッパート氏は大統領と個人的な関係が深く、国家安全保障会議(NSC)や国防総省の内情に精通している。今後の東アジアをめぐる米国の外交政策に影響力を与える存在であり続ける人物だ。

在外米大使が政府の外交政策に影響力を行使するのは異例だが、リッパート氏にはその異例な役割が期待されている。オバマ大統領は韓国の朴槿恵大統領と良好な関係にある。彼の親友を駐韓米大使に任命することによって両首脳関係をさらに強化し、同時に日本に対しては、慰安婦問題などの解決に努力するよう圧力をかけるシグナルにもなる。(ここでアメリカの言う「慰安婦問題などの解決」とは「韓日は適当に手打ちして、歴史問題よりも安保協力を優先させろ」の意:引用者注)

米政府はこれまで日韓関係の緊張に神経をとがらせてきた。その緊張は北東アジア地域の安全保障に有害であり、北朝鮮に対抗するための米日韓3カ国の協力関係を損なうからだ。いずれにしろ、リッパート氏が北朝鮮問題への対応や日韓関係改善に向けたキーパーソンになることは間違いない。


私マーク・リッパートは韓国大好きです! 息子の名前にも韓国風のミドルネームを付けました! 韓国語も勉強してちょっとは話せるようになりました! 世宗大王を尊敬しています! 韓国料理も大好きです! でも北朝鮮は制裁と孤立化によって滅ぼさねばなりません! 韓米日仲良くしようぜ! 韓米日足並みそろえて、人権問題で北朝鮮を圧迫しようぜ! 韓米日軍事同盟で北朝鮮に人道的軍事介入しようぜ!

…何というか、絵に描いたような対朝強硬派・韓米日軍事同盟論者そのもの。日本にもこういう奴いっぱいいるよね。韓流ドラマ・K-POP大好きです! でも反日韓国大嫌い! 「在日特権」撤廃! などという「政芸分離」韓流ミーハーは在特会の会員の中にすらいるし、それに対抗している(実態は八百長プロレスまがい)らしいしばき隊・反原連系集団については言うまでもない。この駐韓大使もおんなじという事だ。この男は確かに個人的に韓国文化を愛好しているのかもしれないが、その朝鮮半島で分断体制や米軍の蛮行によって苦しむ民衆の姿なぞアウトオブ眼中、植民地総督気取りの鼻持ちならない存在でしかない。

では一方の加害者側である容疑者のキム・ギジョン氏とはいかなる人物であったのか? 「我々の広場 우리 마당」という平和統一運動や独島守護運動をやってきた団体の代表であり、進歩的民族主義傾向の活動家であった。事件を受けて韓国のマスコミにはキム氏に対する来歴などが大量に報じられているが、その大半は「奇行が多い変人」呼ばわりするものが非常に多い。だがこの人を単なる「狂人」扱いする事は許されないだろう。同情すべき点が非常に多いからだ。1988年にキム・ギジョン氏の「我々の広場」事務所が4人の暴漢に襲撃され、そこにいた女性一人はレイプまでされた。当時野党だった金大中の平和民主党はこの事件を情報機関による政治テロだと暴露した事があるが、今でも真相は明らかになっていない。そればかりか、この事件は盧武鉉政権の「真実と和解の為の過去事整理委員会」ですら取り上げてもらえず、キム・ギジョン氏はこれに抗議して2007年に大統領官邸前で焼身自殺(未遂)までしている。軍事政権の頃に、弁護士だった盧武鉉はキム・ギジョン氏の集会に呼ばれて法律の講演をした事もある関係だったのに、だ。氏が奇行の多い人間であったとしても、こうした苦衷をなめ続けた結果であったとしたらそれは同情されるべきではないか。氏の主張も、現在行われている韓米軍時訓練の反対や日本軍拡化批判、韓国の戦時作戦権返還、独島が韓国領であるなどそれ自体は全て正論であり、主張の正しさ自体は耳を傾けるに値する。
こうした人物を「狂人」「テロリスト」と切り捨て、ゴリゴリのタカ派にして韓米日軍事同盟論者であるリッパートを「焼肉好きの親韓派」だからともてはやす姿。これは歴史を何も知らない馬鹿な韓国のミーハーな若者が「日韓仲良くしようぜ」の桜井信栄をもてはやす姿に何とそっくりなのかと思う。実際にリッパートはその手の頭の足りない韓国の若者には大変人気があったようで、まさにこの男は「アメリカの桜井信栄」であった。いや、リッパートという男は桜井ごときよりはるかに上手だ。切れ者外交官として30代40代で高位職に出世し、オバマの信任も特別に厚いこの男は、「韓米日仲良く軍事同盟で北朝鮮滅ぼそうぜ」という恐ろしい本性を持ちながら、「息子に韓国風のミドルネームを付け、世宗大王を尊敬し、韓国料理が大好きでーす。まだ下手だけど、韓国語のインタビュー記事を自分のブログで公開してまーす! 二人目の子供も韓国で生めたらいいなー」といういかにもソフトな語り口で韓国の頭の足りないいわゆる「B層」をオルグして取り込む。目的のためにはそんな芸当をも平然と駆使する手段の選ばなさに恐ろしさがある。すでにリッパートは病院での治療後に自身のツイッターで健在ぶりを告知し、「韓米同盟の進展の為に最も早い期日内に戻ってくるだろう。一緒に行きましょう!(같이 갑시다)」などとほざいている。この「韓米同盟の進展、一緒に行きましょう」というのは、植民地時代に嫌になるほど聞かされたスローガンと同じだ。すなわち日本帝国主義が植民地朝鮮に押し付けた「内鮮一体」である! 
駐韓米国大使マーク・リッパート曰く
「韓米日仲良く軍事同盟で北朝鮮滅ぼそうぜッッッッ! 米韓一体ッッッッ!」

早速韓国ではリッパートの「親韓」ぶりにイカれたその手の馬鹿どもがキム・ギジョン氏の事を「こんなに韓国を愛して下さったリッパート大使閣下様を襲うなんて! 国益を損ねた!」とばかりにバッシングし始めている。韓国という国の国民達は自国民や同胞が悲惨な境遇に陥ったりテロに遭っても無関心なくせに、アメリカ大使や日本人が被害に遭うと激怒するらしい。これを我々は古くからこう言い表してきたではないか。「奴隷根性 노예근성 どれいこんじょう servile spirit」と。
韓国のマスコミでは今後、朝中東のような保守マスコミはもちろん、ハンギョレやプレシアンのような進歩派マスコミまで一体となって、キム・ギジョン氏を「狂人」「頭のおかしな民族主義者」「国益を損ねた」の大合唱でバッシングし、反面リッパート大使を「テロに屈しない勇敢な英雄にして、北から韓国を守ってくれる韓米同盟の騎手」呼ばわりする報道を垂れ流すだろう。いや、もう始まっている。リッパートがゴリゴリの韓米日軍事同盟論者のタカ派であり、南北関係悪化で戦争の危機を高めてアメリカの国益を追求する危険人物だという本性を完全に黙殺・封印して…。

キム・ギジョン氏の行動、韓米合同軍事演習に反対する立場の者としてリッパート大使という最も強硬な韓米日軍事同盟論者を狙ったのは、標的として全く間違っていない。我々が知っておかなければならないのは、リッパートという駐韓大使の恐ろしい本性と、それを「息子に韓国風のミドルネームを付け、世宗大王を尊敬し、韓国料理が大好きでーす。まだ下手だけど、韓国語のインタビュー記事を自分のブログで公開してまーす! 二人目の子供も韓国で生めたらいいなー」といういかにも親しみやすそうな擬態で欺く役者ぶり、それにあっさり騙される多くの韓国人の愚劣さである。その事は何度警告しても足りないであろう。

いかなる理由があろうともテロは許されないだって? あんなに韓国に理解のある大使を攻撃して国益を損ねただって? 暴力に屈するなだって? 
そのような事を言う者は一生奴隷で生きるしかない。このような愚劣な言い草こそ安重根や尹奉吉をはじめとする独立運動・武装闘争を否定するものであり、世界中で無数に起こってきた反帝国主義・植民地解放運動を否定するものだ。今の世の中で「テロは許されない」などとしたり顔で言う者が激増した理由を知っているか? それは明治以降の日本国家が近代天皇制を維持してきた手段とおんなじだ。暴力! これにつきる。天皇と天皇制に文句を言う者は問答無用の暴力的弾圧に晒される。アメリカの「対テロ戦争」に異を唱える者も同じ事。「アメリカの軍事力」という世界最強の暴力によって叩き潰されてきた。しかしながらこれは、日本国家が天皇制維持の為に振るう暴力など比較にならぬほど強大な暴力だ。イラクでもリビアでもそうした存在は国家丸ごとアメリカの暴力で現実に滅ぼされ、そうでない国々もそれに平伏する中で一般の人々も染まっていったに過ぎない。軽々しく「テロは許されない。暴力に屈するな」と言う者ほど、実はアメリカの桁違いな「対テロ戦争」の暴力的示威に屈しているのである。

文益煥牧師の悲劇とは

文益煥(ムン・イックァン 문익환 1918-1994)牧師。言うまでもなく韓国の平和統一運動と民主化運動の代父的存在である。この人は若い頃は結構反共主義の強い人だったのだが、朝鮮戦争中に米軍の通訳をしながら目撃した南北軍人のアメリカ人に対する態度(停戦交渉の場で北の将校が米軍将校に対して堂々とした態度だったのに比べて、南の将校はどいつもこいつも米軍人の前では奴隷のように卑屈だった)や、その後の朴正熙独裁体制下の体験などを経て、そうした考えが変わっていったという。右翼反共主義だった牧師がそのように変わった訳で、人間が悪い方向から良い方向へ変わるという極めて稀有な例としても文益煥牧師は特筆すべき存在であった。国家保安法を制定した議員の孫にして、保守的なキリスト教の家に生まれながら、後に朝鮮民主主義人民共和国への旅行を通じて分断体制の問題や民族精神に目覚めた「在米同胞おばさん」シン・ウンミ氏とも通低する所があろう。
最近の悲惨過ぎる南の社会情勢や、吸収統一論に染まりつつある統一運動の腐敗堕落した惨状を見ていると、どうしても文益煥牧師とその時代を思い出さざるを得ないのだが、同時に文益煥牧師にまつわる「最大の悲劇」も連想してしまう。文益煥牧師「最大の悲劇」とは何か? それは後継者に恵まれなかった事だ。文益煥牧師の「血のつながらない子」である弟子も、「血のつながった子」である実子もロクな奴らがいない。師父があれだけ立派だったのに後裔達がどいつもこいつも目を覆いたくなるほど駄目というのは、悲劇を通り越して喜劇であろう。それだけ「文益煥の後裔」達はロクなもんじゃない。

それについて外せないのは何と言っても河泰慶(ハ・テギョン 하태경)であろう。こいつについては今まで何度か批判した事があるので御存知の方もいようが、元は師匠である文益煥牧師のマネージャーみたいな事をして食わせてもらっていた学生運動家だった。それが師匠の死後に転向してニューライトになり、文牧師の生前の行状についてある事ない事さんざん言いふらして、まさに師の顔に泥を塗るような真似ばかりしている。もちろん河泰慶は師父がやっていた平和統一運動を裏切り、今では北朝鮮政権打倒運動をやっているのは有名な話だろう。河泰慶の運動は土井香苗が仕切っているヒューマンライツウォッチ(HRW)日本支部から支援を受けており、まさに「日韓仲良く北朝鮮に軍事介入しようぜ」を地で行くものだ。かつて文益煥の弟子が、今では最も汚い韓国的反共軍事独裁勢力と日本鬼的軍国主義者のイヌに成り下がったという訳だ。他にもこの男のロクでもない行状をあげつらうとキリがない。独島問題を国際司法裁判所に付せ(つまり独島が歴史的にも完全に朝鮮・韓国領だと思ってないからこういう事を言う)だの、済州島4.3事件被害者遺族への支援を減らせ・打ち切れだの、挙げ句にはシン・ウンミ氏を襲った爆弾テロ犯高校生に「よくやった!」と激励の手紙(一応「暴力は駄目だよ」的な免責事項だけは付け加えたらしいが)まで送った。この男ほど韓国の極右・保守派の鬼畜外道ぶりを一身に寄せ集めて体現した奴はいない。こういう外道をセヌリ党はわざわざ拾い上げて比例名簿の上位にし、国会議員にしてやった訳である。セヌリ党、こいつらは一体どこの自民党かと言いたくなる話ではないか。韓国セヌリと日本自民はまさに兄弟(もちろん日本自民党が兄である!)そのものであり、「日韓対立」なるものも全くの幻想に過ぎないものだという事がよく分かるだろう。
あの文益煥牧師の元弟子がこれかよ! 若い頃は師父のお情けで食わせてもらってたくせに、何て恩知らず&恥知らずな!
河泰慶という男を見ていると、そういう嘆きと怒りを禁じ得ない。

では、文益煥牧師の実子はどうだったのか? 存命している文益煥牧師の実子達の中で最も著名なのは文盛瑾(ムン・ソングン 문성근)という人物で、この人は若い頃から父の社会運動を手伝ってきた事で知られている。文益煥牧師が国家保安法違反容疑で何度も逮捕されて裁判を受ける際、写真撮影も録音も出来なかった法廷を傍聴し、そのやり取りを正確に記憶して書き起こして世間に知らせた逸話が有名だ。また文盛瑾の本業は俳優であり、数多くの映画や舞台・テレビドラマに出ている。もちろん様々な進歩的社会運動にも参加しており、2001年に死んだ舞台演出家である兄の文昊根(ムン・ホグン 문호근)と並んで「行動する良心的演劇人」として知られてきた。
文盛瑾という人物はこれだけ聞いているとなかなか立派な人物であり、河泰慶ごときとは違って親父の遺志をそれなりにしっかり受け継いだ後継者のように思えるだろう。確かに河泰慶よりマシに見える。が、しかし…。

ここで文盛瑾という人物について、非常にがっかりする残念な事実を述べておかねばならない。例の「日本憲法9条にノーベル平和賞を」運動だ。文盛瑾はこれに積極的に賛同して推薦しているのである。文盛瑾当人のツイッターを参照。

http://www.nobelpeace9.kr/wp-content/uploads/2015/02/actormoon_tweet.png

 
「日本平和憲法9条、ノーベル平和賞推薦声明」
極右安倍総理は集団的自衛権を確保して再武装の為に改憲を試みています。平和憲法にノーベル賞が授与されたらこれを防ぐ事が出来ます。

もう何をかいわんやでしょ、これ。こんなアホみたいな運動に積極協力とか、この人どこまで馬鹿なんだという話だろう。オバマがノーベル平和賞受賞して核放棄したのか? むしろもっと積極的にイラクやリビアで戦争したし、臨界前核実験までやった。それなのに、アメリカよりももっと低劣で軍事的野欲だけは人一倍強烈な日本という国が、ノーベル平和賞受賞して戦争も軍備も放棄すると思うのか? むしろそれを口実に逆用して、もっと積極的に軍拡化に乗り出すわ! 「我々は憲法9条の精神にのっとり、平和の為に自衛隊を海外派兵するのです」と。アメリカやNATOが「これは人道的な軍事介入だ」「独裁者フセインやカダフィからその国の国民を解放する為に戦争するのだ」という理屈と全く同じである。日本憲法9条にノーベル平和賞をやるなどというのは、日本の軍拡化を防ぐどころか、それをむしろ強力に側面支援する結果にしかならないだろう。それを日帝の被害国である韓国の、それも民主勢力だの市民社会だのが積極的に推進とか、これほどの倒錯はない。文盛瑾や「韓国社会元老」どもは、こんな誰でも分かるような理屈すら分からない(のではなく、知っていて日韓軍事協力の為に加担している確信犯も何人かいるだろうが)のだ。
文盛瑾って人、記憶力いいけど馬鹿だよな。

そもそも「日本の平和憲法は東アジアと韓半島の平和の支え」という思考が根本的に間違っているというか狂っているだろう。まるで「日本のおかげで自分達は平和に暮らせました」と言わんばかりの卑屈な精神、自主性というものが欠片もないこの奴隷根性、南朝鮮はまだ日本の植民地なのか? 「恐れ多くも日本様が平和憲法を維持あそばされたおかげで韓半島が平和だった」というなら、当然逆に「韓半島」の平和を脅かしてきた存在もいたという事だろう。連中が言外に言いたげな「韓半島の平和を脅かしてきた存在」が何なのか、賢明な読者に説明する必要はないだろう。大韓民国という国は同胞よりも植民地宗主国の方が大好きという事だ。
そもそも日本という国が戦後も一貫して憲法を骨抜きにし、再軍備の道を歩んできた事は歴然とした事実であり、かつての韓国民主化運動はそれに激しく抵抗してきた。「軍国主義日本を糾弾する。中曽根は即刻帰れ!」という中曽根訪韓反対スローガン、まだナンボかまともだった頃の金芝河の詩「どうってこたあねえよ 朝鮮野郎の血を吸って咲く菊の花よ 朝鮮からかっぱらった鉄で作った日本刀(刀剣乱舞?)よ」などが象徴的だ。「日本は戦後、平和主義の下で経済発展を成し遂げた神話」の嘘やカラクリを最もよく知っていたはずだった。「朝鮮特需」なしに経済復興などあり得なかった日本は、要するに敗戦後も朝鮮半島民衆の血をすすって太ったのである。「日本は東アジアと「韓半島」を平和にしてくれた」どころか、戦後も一貫してアジアの平和を脅かす脅威でしかなかった。韓国はその舎弟みたいなもんであり、両者の上にアメリカが盟主的存在として君臨してきた構図は今でも変わっていない。韓国民主化運動の重要な理念の一つとは、そうした解放後の復活しつつある日帝とそれに追従する自国政権への抵抗だったはずだ。それをきれいさっぱり忘れ去って「平和憲法にノーベル賞が授与されたらこれ(安倍の改憲)を防ぐ事が出来ます」などというのは、日米とくっついてきた韓国という国の悪事(国内の独裁政治や人権抑圧、ベトナム戦争参戦、PKO派兵やNATOとの軍事提携など)から目を背け、独立運動や民主化運動で犠牲になってきた人々を冒涜する行為でもある。

戦後も一貫して憲法を踏みにじった再軍備にひた走り、「朝鮮特需」「ベトナム特需」「石油確保の為のイラク派兵 by石破」といった他国の戦乱に便乗して経済的利益を得てきたくせに、「平和主義の下で経済発展を成し遂げた」と主張する日本。

解放後は人権と民主主義を踏みにじって独裁政治にひた走り、1987年の民主化宣言後も反共ファシズム体制を根本的に改める事もないまま、「ベトナム特需」「アフガニスタン駐留米軍警備の為の民間軍事会社派遣」「米軍の為にイラク派兵」「北に対抗する軍事訓練として便利なPKO派兵(韓国の国防関係者は自国のPKO活動について堂々とこう言っている!)」といった他国の戦乱に便乗して経済的・軍事的利益を得てきたくせに、「民主主義を勝ち取って経済的発展を成し遂げた」と称する韓国。

「平和国家日本」「民主主義国家韓国」という二つの神話はいずれ劣らぬ中身のないまやかしであり、それらが結び付いた最も醜悪な運動が日韓双方の「日本憲法9条にノーベル平和賞運動」だ。

日本(プラス韓米)の軍拡化に利する行為でしかないこんな運動に賛同する文盛瑾という男、死んだ先親(ソンチン 선친 朝鮮語で亡父の意)に顔向け出来るのか。日帝時代に文益煥牧師が日本軍に徴兵されそうになった時何と言ったか。「日本の為に死ぬ事は出来ない」そこで徴兵から逃れる為に満州へ行った。それなのにその倅ときたら、「日本の為に生きて協力する」最悪の愚行でしかない「現代版親日行為」を働いている。

 
父・文益煥牧師の「私は日本の為に死ぬ事は出来ない」というエピソードをテレビで披瀝する文盛瑾。こいつ、どのツラ下げてそんなセリフを…

文益煥牧師の「血のつながらない子」も「血のつながる子」もいずれも師父の精神をまともに受け継がず、片や日本を代表する反北朝鮮運動総元締めのイヌになり、片や日本の軍拡化を正当化するような運動を積極的に推進している。「日本の為に死ぬ事は出来ない」と言って日本軍の徴兵を拒否して逃亡したおやっさんとは全く逆に、その弟子も実子も日本が大好きで仕方がないようだ。オヤジさんと違って、こいつらは「(憎き北朝鮮を「征伐」してくれる、あるいは韓国の平和を守って下さってる)日本の為に死んでも惜しくない」と思ってんじゃね?
悲しい話だが文益煥牧師とその子供達のエピソードは、まさに今の韓国社会の惨状と、それを正すどころか迎合すらしている平和統一運動や民衆運動の無残な現状を象徴するものなのであろう。

韓国の「民主主義」とやらが名実共に消滅する日

韓国で統合進歩党の政党解散審判が12月19日に下される事になった。予想よりもはるかに早い宣告になったが、これはそれだけ解散命令が下される可能性が高い、すなわちヤバイ状況という事を意味していると思う。今回の審判は「政党活動の自由」を根本的に揺るがしかねないものであり、まともに審理しようと思ったら少なくとも数年はかかって然るべき性質のものだからだ。日本でも裁判官がロクに審議も公判もせず数日で「本件を棄却する」で終わらせる酷い裁判(特に権力や大資本を訴える裁判に多い)がたくさんあるが、統合進歩党の解散審判もそれに非常に近い。この審判で提出された資料はとてつもない量(約167000頁)なのだが、憲法裁判官達がそれにちゃんと目を通したかどうかも疑わしく、問答無用の解散命令を下す腹づもりではないのか。
韓国法務部がこの政党解散審判を請求したのは2013年11月5日であり、その時多くの法曹人はこの審判が長引くだろうと予想し、朴槿恵政権の任期中には終わらないのではないかという予想もあったほどだ。だが、それは政権がある程度まともだったり常識的な場合の話であって、今の朴槿恵政権にそんな常識的な展開を期待する方が間違っていたのだろう。親父の維新独裁時代とほとんど変わらない。
憲法裁判官は全部で9人おり、そのうち6人賛成すれば解散決定となる。この9人のうち与党や大統領に指名された者が実に5人、つまりこれらは解散賛成票を投じる事が100%確実な連中であり、残り4人(野党や与野合意、最高裁判長からの指名者)から1人でも解散賛成すればおしまいだ。そしてそうなる可能性が極めて高い。

仮に統合進歩党に解散命令が下った場合はどうなるのか。まず、命令が下されたその時から解散命令の効力が発生する。その瞬間に進歩党という政党は即座に「違憲政党」として消滅する事になるのだ。そして党の財産は全て国庫に没収、今後同じ名称の党を作る事が出来ないのはもちろん、類似した党を作る事も出来ない。つまり党の綱領や政策そのものが違憲となる訳だ。これは実に重大な意味を持っている。統合進歩党は国家保安法撤廃と駐韓米軍撤退を綱領に掲げている党であり、それらも全て「違憲」という事になるのだから。今後韓国で国家保安法と駐韓米軍に反対する事自体が「憲法違反」という、恐ろしくも実に馬鹿げた事態になるのである。大韓民国という国の国家体制が根本的に転換するか憲法が改正されない限りは、それがずっとだ。これがどれだけとんでもない事か、韓国でも日本でも気付いてない連中があまりに多い。
とりわけ「韓国と日本はアジアでただ二つの人権・民主主義先進国」とばかりにキモ過ぎる自画自賛をしてた変態的ナルシー集団「日韓知識人共同声明」の連中は今回の件をどう思っているのか。そもそも「知識人共同声明」系の連中は今回の件でほとんど何もしてないではないか。もちろんこの声明署名者の中には朝中東の保守三大紙はもちろん、2012年以降統合進歩党に対する「従北狩りキャンペーン」に狂奔したハンギョレ・京郷新聞・オーマイニュース・プレシアン(いわゆる「ハン京オプ」)といった進歩四大紙の代表者達も雁首を揃えていたのだから、進歩党の解散に本気で反対するはずもない。今日の事態に反対しなかったどころか、むしろ煽り立ててきた日韓のナルシー知識人達の罪は重いだろう。

一方でかつて進歩党から出て行った連中の集まりである正義党が何やら怪しげな動きを見せているが、この正義党というのは前にもちょっと書いたように日本で言えば「転び社会党」そのものと言って良い集団で、進歩政党どころか実際には左翼崩れの政治的ゴロツキ集団でしかない連中だ。ここの連中はかつて2012年の選挙では統合進歩党の比例で当選した議員が大半だったが、党の主導権を握れなかった為に「党内予備選挙が不正だった。執行部は従北だ」と言いがかりを付けて騒ぎを起こした(予備選挙の不正疑惑もでっち上げであり、むしろ騒ぎを起こした正義党系や柳時敏の旧参与党系の連中こそ不正をしていた事が後の調査で判明している。しかしながらハンギョレはじめとする韓国の大手進歩派メディアはこの事を完全に黙殺して今でも「統合進歩党執行部は党内予備選で不正をした」と書き続けている。ハンギョレやプレシアンは歴史修正主義どころか現在修正主義であろう)。これが今回の政党解散審判と李石基議員事件の発端となった「2012年統合進歩党事態」であり、それを韓国のマスコミは右の朝鮮日報から左のハンギョレまで魔女狩りのごとく「統合進歩党は有害な政党だ。従北だ」と連日社会的集団リンチし続けて今に至っている。
今の正義党の連中は、進歩党を脱党した後も議員職を維持する為(比例当選の議員が自分から離党する場合は議員辞職しなければならない)に、自分で自分を除名する「セルフ除名」(党によって除名された場合は議員職が維持される為、こういう形式を執った)という限りなく違法としか思えない詐欺的手口に訴えた。これだけでこの連中がインチキなのは明白だろう。この「セルフ除名」は今でも裁判が続いており、正義党側が負けたら該当議員達は辞職しなければならない。逆に統合進歩党が解散となればその必要もなくなるので、正義党にしてみれば統合進歩党が潰れてくれた方が都合が良いのである。正義党というのがいかに信用ならない政治ゴロ集団かが良く分かるだろう。それを抜きにしても、正義党は次の選挙では自力で当選者を出せず壊滅するのが確実な「泥舟」そのものであり、これに乗っかるのは何重にも間違っている。正義党のゴロツキどもがどうなろうと知った事ではないが、この連中が私利私欲の為に起こした騒動によって韓国の進歩政党が完全消滅する危機を作った罪は本当に万死に値する。

もちろん明日の解散が宣告されなければ良いが、そうでない可能性の方がはるかに高い。統合進歩党が解散させられる事になった場合、12月19日は大韓民国という国のほとんど形骸化した民主主義や政治的自由すら再び完全抹殺された日として記録される事になるだろう。時の大統領・朴槿恵、与党・セヌリ党、憲法裁判所の裁判官、事の発端を起こした正義党や柳時敏ら、そして従北キャンペーンに狂奔した保守・進歩を問わぬ報道機関達もまた全員その共犯者として歴史に記しておかねばならない。それほど民主化後の韓国にとって重大な事件になるという事だ。

最初からある程度分かりきった事

11月18日の国連総会第3委員会での「北朝鮮人権決議案」が採択された事で、朝鮮民主主義人民共和国は強く反発している。この反発は当然の事だが、この間の経過からいくつかの事を読み取る事が出来るだろう。

2013年3月、国連人権理事会から権限を委任された北朝鮮人権委員会(COI)が脱北者300人や専門家から聞き取り調査。
2014年2月、ジュネーブでその結果を報告。
同年3月、結果報告書の勧告内容を国連関連機構達が実行出来るよう権限を付与する北朝鮮人権決議案が通過。

このCOIの報告書と決議案では、朝鮮当局が「反人道犯罪」(crimes against humanity)を行い、これに国連総会はCOI報告書を安全保障理事会に提出して反人道犯罪行為責任者達を国際司法制度機構(international criminal justice mechanism)に提訴する事を勧告していた。つまり余計な論争を回避する為に「国際司法裁判所」(ICC)という露骨な書き方はとりあえず避けるある程度の「配慮」をしていた。
ところが国連総会に提出する草案ではこれがはっきりと「国際司法裁判所」になっていた。これを変えさせたのがEUと日本だったのである。その事はデイリーNKの韓国語版で鬼の首を取ったように誇らしげに書かれていた。

http://www.dailynk.com/korean/read.php?cataId=nk01200&num=104975
COI活動、北朝鮮人権運動の新しい地平を開く(韓国語記事)

つまり「金正恩を「人道に反する罪」で国際司法裁判所に送ったろか、コラ!」という恫喝外交を裏で糸引いてたのは他ならぬ日本だったという事だ。一般的に今回の件は「これで南北の対立がますます激化する」と言われ、それは確かにそうなのだが、それを傍から煽り立てた日本の罪がはるかに重い。火事の建物に油を撒くような真似をしているのだから。南北関係の改善や平和統一を目指す者達も今回日本がやった事を肝に銘じておく必要があるだろう。日本という国は植民地支配の清算を無視し続けてきたばかりか、今も南北の対立を積極的に煽り立てている、どれだけ汚い国なのかという事を。

また、この事はもちろん日本が朝鮮との関係改善など全く望んでいない事、さらには安倍政権が拉致問題の解決とやらも内心ではすでに見切りを付けている事も意味していると思う。この間の日朝交渉を考えれば、日本が国連の人権決議案についてある程度手心を加える事もあり得たのに、それが全くなかった。総連本部の建物も結局そのまま落札会社へ所有権が移ったし、朝鮮の外交官にビザを発給しないなどの露骨な行為に出てもいる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141121-00000012-jij-int
北朝鮮外交官にビザ発給せず=日本人遺骨めぐるシンポ中止
時事通信 11月21日(金)2時32分配信

 日本の民間団体主催のシンポジウムに参加するため、今月下旬に来日する予定だった北朝鮮外交官らにビザが発給されない見通しとなったことが20日、分かった。関係者が明らかにした。これを受け、主催団体は急きょシンポジウムの中止を決定し、北朝鮮側にも通知した。
 シンポジウムは終戦前後に現在の北朝鮮地域で亡くなった日本人の遺骨収集や遺族の墓参を支援する「朝鮮北部地域に残された日本人遺骨の収容と墓参を求める遺族の連絡会(北遺族連絡会)」が主催。27~30日の日程で東京、京都、福岡で遺骨問題などを話し合う予定だった。
 北遺族連絡会側は、北朝鮮から日朝協議にも参加する外務省当局者や遺骨調査に取り組む研究者ら計3人を招請し、日本政府にビザ発給を申請。認められれば、日朝合意を受け日本政府が7月に人的往来規制など独自制裁を一部解除して以降、北朝鮮当局者の初の来日となる見通しだった。
 ビザが発給されない理由については明らかになっていない。10月に開かれた日朝協議で拉致問題で具体的な成果が得られなかったことに拉致被害者家族会などから批判が集まる中、日本政府が拉致以外の問題に焦点が当たることを警戒したとの指摘も出ている。 

おいおい、人的往来の制裁は解除したんじゃなかったのかよ? それなのに入国拒否? 結局日本という国にとって国際的な約束なぞ関係ないって事か。恐らく本音を言えば、一か八か新しい拉致被害者の情報が出て来るかもしれない事に賭けて交渉を再開したが、やっぱ無理そうな事が分かったんでこういう行為に走ったという事だろう。まあ、仮に新しい情報が出て来たとしても日本は朝鮮と関係改善したり、ましてや国交正常化や経済協力(補償・賠償にあらず!)の金を出すつもりなど最初から全くなかっただろうが…。朝鮮を最大の「仮想敵国」として、日本軍拡化の口実に最大限利用する事しか頭にない。そんな事は最初からある程度分かりきった話だ。

以下にまとめる。

・11月18日の国連総会第3委員会での「北朝鮮人権決議案」で、「責任者(もちろん最高指導者である金正恩を暗に指している)を国際司法裁判所に送る」と変えさせた犯人はEUと日本である。日本はこういう形で南北朝鮮の対立を今も積極的に煽り立てている。

・日本は対朝鮮の人的往来制裁を解除したにも関わらず、明確な理由もなしに朝鮮外交官の入国を依然として拒否し続けている。明らかに日本は国際的な約束を勝手に破っている。

・この間の日朝交渉でも懸案になった総連本部建物について、日本側はあっさり落札会社のマルナカに所有権を移転させた。もちろん日本当局が対朝交渉を考えてその気になればこんな事はいくらでも先延ばしさせられるばかりか、色々と理由を付けてマルナカを落札辞退させる事だって出来る。前の落札者だった僧侶やモンゴルの会社に対してやったように。国際的な約束すら平気で破る国(笑)にとって自国の商取引制度に「超法規的」な圧力掛けるなど屁みたいなもんだろう。でもそうしなかった。

・国連人権決議や総連本部建物など、日本の「対北朝鮮カード」はこうしたエース級のものがいくつもあった。しかしそれを切る事はなかった。つまり日朝交渉をある程度進めた時点で、拉致被害者の新しい情報が出る見込みがゼロである事に日本側は気付き、内心では早々に打ち切りを決意したのではないか。安倍当人だってもはや横田めぐみが生きているとは思ってもいないだろう。だから国連外交でも総連本部問題でも手心を加えなかったし、外交官の入国を拒否して事実上制裁解除前に戻るような事をした。後は交渉の打ち切りと制裁再発動をいつ公式に宣言するかという時期だけの問題(おそらく今回の国連決議に反発して朝鮮側が核実験やロケット実験などの行動に出るのを待っている)。日本は「北朝鮮は日本人を拉致して不誠実な姿勢に終始」という相変わらずのアジアプレス的な憎悪扇動政策をこれからも半永久的に続けていくつもり。

・日本側は日本人配偶者や残留日本人などの去就には全く興味がなく、朝鮮側がそれらについてどれだけ詳細な情報を調べて提供しても、それに日本側が見返りを与える事は一切ない。

・日本は朝鮮民主主義人民共和国という国を「いずれソ連や東欧共産主義諸国のように崩壊してなくなる国(もし自壊しなければ、日本自ら裏で手を回してでも崩壊させる)。遅かれ早かれなくなる国相手に修交したり大金をやってどうする」と思っているという事。この認識が根本的に変わらない限り関係改善は極めて困難。


さらに言えば、南の朴槿恵の対北認識もまた全く同じで「北はなくなるべき国。そんな相手と関係改善してどうする。バンバン圧力掛けて吸収統一あるのみ」という事は今まで何度か指摘してきた通り。韓国では今回の国連決議の評価について保守派と進歩派で温度差はあるものの、基本的に「北は人権侵害国家」「北の核なんか恐れるな」と右も左もなく恫喝の大合唱をしているのは恐るべき光景である。

保守派の中央日報社説(要約)
「北の核なんか恐れずに、北朝鮮人権法制定を急げ。国連(実際には日本とEUだが)が国際司法裁判所に送れと言っている時に我々が手をこまねいている必要はない」

進歩派の京郷新聞社説(要約)
「北が核実験をちらつかせるのは愚かな事だ。北に対する批判は誰の陰謀でもない(実際には限りなく日本とEUの謀略に近いのだが)。北は自分の立場を自ら振り返れ」

今回の決議、特に朝鮮側が特に阻止しようとした問題部分である国際司法裁判所うんぬんというのが日本の差し金だったという事、つまり韓国は日本の策に掛かって北との対決に踊らされているという事を全く無視している。皮肉にもその事を偉そうに吹聴していたのが、中央日報以上に右よりの対北強硬派なデイリーNKだったというのは何という皮肉か。
もはやすでに南には真の「平和統一勢力」なるものは絶滅したのだと思う。日本の真の「護憲派」と同じで。金大中と盧武鉉の太陽政策も究極的な目的地というか本音は「北の武装解除」によるドイツ式吸収統一だったと、今では考えざるを得ない。吸収統一に反対する勢力も南北関係改善という途中まではそれと同乗出来たが、いずれは別れる時が来るものだろう。だが現実にはその時を待たずに南の統一運動は吸収統一論に収斂されてしまった。

朴槿恵は本気で統合進歩党を潰すつもりマンマンであるし、その為に裁判所へあらゆる圧力を掛けるだろう。そして韓国の裁判所にも政権与党の顔色ばかりうかがう出世主義の「ヒラメ裁判官」が日本に負けないくらい山ほどいる。個人的な見立てでは、統合進歩党に違憲判決・解散命令が下る確率は99.99%と思う。そしてこれを与党だけでなく、民主党や正義党といった他の野党まで諸手を挙げて大歓迎するのも分かりきった展開だ。日本で自民党の亜流政党ばかりが議席の大半を占めているように、韓国もそれに限りなく近くなる。北に対して融和的であったり、国家保安法撤廃を主張する政党はほぼ消滅させられるのではないか。これが朴槿恵政権の残り3年任期の間ずっと続く事になる。ではポスト朴槿恵で状況が変わるのだろうか? これも絶望的だと筆者は考える。今韓国で有力な次期大統領候補と言われているのがセヌリ党代表の金武星と国連事務総長の潘基文ではないか。どちらが大統領になっても南北関係改善などあり得ない顔ぶれである。現状このまま進めば、少なくとも次の次の総選挙&大統領選挙である2022年まで南北関係は改善される望みがないであろう。その間にどれだけの悲劇が繰り返されるか知れたものではない。南の人間達は、「北の人権問題」を突付けば突付くほど軍事的緊張が高まって傷付き、自分ら「南の人権」も改善されずに苦しくなる一方だという事に、このままでは一生気付かないのではないか。

「このままではまた朝鮮半島は冷戦時代に戻る」という声も一部聞かれるが、そうではない。新しい段階の冷戦なんて、朝鮮半島ではもうとっくに始まってる。新しい段階の体制競争、新しい段階の冷戦、すでにそうなっており、平和ボケである南の人間達が気付いてないだけだ。
体制競争に勝ったつもりでいる奴らってえのは甘い。とろけそうなほどに甘い。
「いつ朝鮮半島で冷戦がまた始まりますか」
「もう始まっておる」

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