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文益煥牧師の悲劇とは

文益煥(ムン・イックァン 문익환 1918-1994)牧師。言うまでもなく韓国の平和統一運動と民主化運動の代父的存在である。この人は若い頃は結構反共主義の強い人だったのだが、朝鮮戦争中に米軍の通訳をしながら目撃した南北軍人のアメリカ人に対する態度(停戦交渉の場で北の将校が米軍将校に対して堂々とした態度だったのに比べて、南の将校はどいつもこいつも米軍人の前では奴隷のように卑屈だった)や、その後の朴正熙独裁体制下の体験などを経て、そうした考えが変わっていったという。右翼反共主義だった牧師がそのように変わった訳で、人間が悪い方向から良い方向へ変わるという極めて稀有な例としても文益煥牧師は特筆すべき存在であった。国家保安法を制定した議員の孫にして、保守的なキリスト教の家に生まれながら、後に朝鮮民主主義人民共和国への旅行を通じて分断体制の問題や民族精神に目覚めた「在米同胞おばさん」シン・ウンミ氏とも通低する所があろう。
最近の悲惨過ぎる南の社会情勢や、吸収統一論に染まりつつある統一運動の腐敗堕落した惨状を見ていると、どうしても文益煥牧師とその時代を思い出さざるを得ないのだが、同時に文益煥牧師にまつわる「最大の悲劇」も連想してしまう。文益煥牧師「最大の悲劇」とは何か? それは後継者に恵まれなかった事だ。文益煥牧師の「血のつながらない子」である弟子も、「血のつながった子」である実子もロクな奴らがいない。師父があれだけ立派だったのに後裔達がどいつもこいつも目を覆いたくなるほど駄目というのは、悲劇を通り越して喜劇であろう。それだけ「文益煥の後裔」達はロクなもんじゃない。

それについて外せないのは何と言っても河泰慶(ハ・テギョン 하태경)であろう。こいつについては今まで何度か批判した事があるので御存知の方もいようが、元は師匠である文益煥牧師のマネージャーみたいな事をして食わせてもらっていた学生運動家だった。それが師匠の死後に転向してニューライトになり、文牧師の生前の行状についてある事ない事さんざん言いふらして、まさに師の顔に泥を塗るような真似ばかりしている。もちろん河泰慶は師父がやっていた平和統一運動を裏切り、今では北朝鮮政権打倒運動をやっているのは有名な話だろう。河泰慶の運動は土井香苗が仕切っているヒューマンライツウォッチ(HRW)日本支部から支援を受けており、まさに「日韓仲良く北朝鮮に軍事介入しようぜ」を地で行くものだ。かつて文益煥の弟子が、今では最も汚い韓国的反共軍事独裁勢力と日本鬼的軍国主義者のイヌに成り下がったという訳だ。他にもこの男のロクでもない行状をあげつらうとキリがない。独島問題を国際司法裁判所に付せ(つまり独島が歴史的にも完全に朝鮮・韓国領だと思ってないからこういう事を言う)だの、済州島4.3事件被害者遺族への支援を減らせ・打ち切れだの、挙げ句にはシン・ウンミ氏を襲った爆弾テロ犯高校生に「よくやった!」と激励の手紙(一応「暴力は駄目だよ」的な免責事項だけは付け加えたらしいが)まで送った。この男ほど韓国の極右・保守派の鬼畜外道ぶりを一身に寄せ集めて体現した奴はいない。こういう外道をセヌリ党はわざわざ拾い上げて比例名簿の上位にし、国会議員にしてやった訳である。セヌリ党、こいつらは一体どこの自民党かと言いたくなる話ではないか。韓国セヌリと日本自民はまさに兄弟(もちろん日本自民党が兄である!)そのものであり、「日韓対立」なるものも全くの幻想に過ぎないものだという事がよく分かるだろう。
あの文益煥牧師の元弟子がこれかよ! 若い頃は師父のお情けで食わせてもらってたくせに、何て恩知らず&恥知らずな!
河泰慶という男を見ていると、そういう嘆きと怒りを禁じ得ない。

では、文益煥牧師の実子はどうだったのか? 存命している文益煥牧師の実子達の中で最も著名なのは文盛瑾(ムン・ソングン 문성근)という人物で、この人は若い頃から父の社会運動を手伝ってきた事で知られている。文益煥牧師が国家保安法違反容疑で何度も逮捕されて裁判を受ける際、写真撮影も録音も出来なかった法廷を傍聴し、そのやり取りを正確に記憶して書き起こして世間に知らせた逸話が有名だ。また文盛瑾の本業は俳優であり、数多くの映画や舞台・テレビドラマに出ている。もちろん様々な進歩的社会運動にも参加しており、2001年に死んだ舞台演出家である兄の文昊根(ムン・ホグン 문호근)と並んで「行動する良心的演劇人」として知られてきた。
文盛瑾という人物はこれだけ聞いているとなかなか立派な人物であり、河泰慶ごときとは違って親父の遺志をそれなりにしっかり受け継いだ後継者のように思えるだろう。確かに河泰慶よりマシに見える。が、しかし…。

ここで文盛瑾という人物について、非常にがっかりする残念な事実を述べておかねばならない。例の「日本憲法9条にノーベル平和賞を」運動だ。文盛瑾はこれに積極的に賛同して推薦しているのである。文盛瑾当人のツイッターを参照。

http://www.nobelpeace9.kr/wp-content/uploads/2015/02/actormoon_tweet.png

 
「日本平和憲法9条、ノーベル平和賞推薦声明」
極右安倍総理は集団的自衛権を確保して再武装の為に改憲を試みています。平和憲法にノーベル賞が授与されたらこれを防ぐ事が出来ます。

もう何をかいわんやでしょ、これ。こんなアホみたいな運動に積極協力とか、この人どこまで馬鹿なんだという話だろう。オバマがノーベル平和賞受賞して核放棄したのか? むしろもっと積極的にイラクやリビアで戦争したし、臨界前核実験までやった。それなのに、アメリカよりももっと低劣で軍事的野欲だけは人一倍強烈な日本という国が、ノーベル平和賞受賞して戦争も軍備も放棄すると思うのか? むしろそれを口実に逆用して、もっと積極的に軍拡化に乗り出すわ! 「我々は憲法9条の精神にのっとり、平和の為に自衛隊を海外派兵するのです」と。アメリカやNATOが「これは人道的な軍事介入だ」「独裁者フセインやカダフィからその国の国民を解放する為に戦争するのだ」という理屈と全く同じである。日本憲法9条にノーベル平和賞をやるなどというのは、日本の軍拡化を防ぐどころか、それをむしろ強力に側面支援する結果にしかならないだろう。それを日帝の被害国である韓国の、それも民主勢力だの市民社会だのが積極的に推進とか、これほどの倒錯はない。文盛瑾や「韓国社会元老」どもは、こんな誰でも分かるような理屈すら分からない(のではなく、知っていて日韓軍事協力の為に加担している確信犯も何人かいるだろうが)のだ。
文盛瑾って人、記憶力いいけど馬鹿だよな。

そもそも「日本の平和憲法は東アジアと韓半島の平和の支え」という思考が根本的に間違っているというか狂っているだろう。まるで「日本のおかげで自分達は平和に暮らせました」と言わんばかりの卑屈な精神、自主性というものが欠片もないこの奴隷根性、南朝鮮はまだ日本の植民地なのか? 「恐れ多くも日本様が平和憲法を維持あそばされたおかげで韓半島が平和だった」というなら、当然逆に「韓半島」の平和を脅かしてきた存在もいたという事だろう。連中が言外に言いたげな「韓半島の平和を脅かしてきた存在」が何なのか、賢明な読者に説明する必要はないだろう。大韓民国という国は同胞よりも植民地宗主国の方が大好きという事だ。
そもそも日本という国が戦後も一貫して憲法を骨抜きにし、再軍備の道を歩んできた事は歴然とした事実であり、かつての韓国民主化運動はそれに激しく抵抗してきた。「軍国主義日本を糾弾する。中曽根は即刻帰れ!」という中曽根訪韓反対スローガン、まだナンボかまともだった頃の金芝河の詩「どうってこたあねえよ 朝鮮野郎の血を吸って咲く菊の花よ 朝鮮からかっぱらった鉄で作った日本刀(刀剣乱舞?)よ」などが象徴的だ。「日本は戦後、平和主義の下で経済発展を成し遂げた神話」の嘘やカラクリを最もよく知っていたはずだった。「朝鮮特需」なしに経済復興などあり得なかった日本は、要するに敗戦後も朝鮮半島民衆の血をすすって太ったのである。「日本は東アジアと「韓半島」を平和にしてくれた」どころか、戦後も一貫してアジアの平和を脅かす脅威でしかなかった。韓国はその舎弟みたいなもんであり、両者の上にアメリカが盟主的存在として君臨してきた構図は今でも変わっていない。韓国民主化運動の重要な理念の一つとは、そうした解放後の復活しつつある日帝とそれに追従する自国政権への抵抗だったはずだ。それをきれいさっぱり忘れ去って「平和憲法にノーベル賞が授与されたらこれ(安倍の改憲)を防ぐ事が出来ます」などというのは、日米とくっついてきた韓国という国の悪事(国内の独裁政治や人権抑圧、ベトナム戦争参戦、PKO派兵やNATOとの軍事提携など)から目を背け、独立運動や民主化運動で犠牲になってきた人々を冒涜する行為でもある。

戦後も一貫して憲法を踏みにじった再軍備にひた走り、「朝鮮特需」「ベトナム特需」「石油確保の為のイラク派兵 by石破」といった他国の戦乱に便乗して経済的利益を得てきたくせに、「平和主義の下で経済発展を成し遂げた」と主張する日本。

解放後は人権と民主主義を踏みにじって独裁政治にひた走り、1987年の民主化宣言後も反共ファシズム体制を根本的に改める事もないまま、「ベトナム特需」「アフガニスタン駐留米軍警備の為の民間軍事会社派遣」「米軍の為にイラク派兵」「北に対抗する軍事訓練として便利なPKO派兵(韓国の国防関係者は自国のPKO活動について堂々とこう言っている!)」といった他国の戦乱に便乗して経済的・軍事的利益を得てきたくせに、「民主主義を勝ち取って経済的発展を成し遂げた」と称する韓国。

「平和国家日本」「民主主義国家韓国」という二つの神話はいずれ劣らぬ中身のないまやかしであり、それらが結び付いた最も醜悪な運動が日韓双方の「日本憲法9条にノーベル平和賞運動」だ。

日本(プラス韓米)の軍拡化に利する行為でしかないこんな運動に賛同する文盛瑾という男、死んだ先親(ソンチン 선친 朝鮮語で亡父の意)に顔向け出来るのか。日帝時代に文益煥牧師が日本軍に徴兵されそうになった時何と言ったか。「日本の為に死ぬ事は出来ない」そこで徴兵から逃れる為に満州へ行った。それなのにその倅ときたら、「日本の為に生きて協力する」最悪の愚行でしかない「現代版親日行為」を働いている。

 
父・文益煥牧師の「私は日本の為に死ぬ事は出来ない」というエピソードをテレビで披瀝する文盛瑾。こいつ、どのツラ下げてそんなセリフを…

文益煥牧師の「血のつながらない子」も「血のつながる子」もいずれも師父の精神をまともに受け継がず、片や日本を代表する反北朝鮮運動総元締めのイヌになり、片や日本の軍拡化を正当化するような運動を積極的に推進している。「日本の為に死ぬ事は出来ない」と言って日本軍の徴兵を拒否して逃亡したおやっさんとは全く逆に、その弟子も実子も日本が大好きで仕方がないようだ。オヤジさんと違って、こいつらは「(憎き北朝鮮を「征伐」してくれる、あるいは韓国の平和を守って下さってる)日本の為に死んでも惜しくない」と思ってんじゃね?
悲しい話だが文益煥牧師とその子供達のエピソードは、まさに今の韓国社会の惨状と、それを正すどころか迎合すらしている平和統一運動や民衆運動の無残な現状を象徴するものなのであろう。

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