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【怪作列伝 괴작렬전】太陽の末裔 태양의 후예 韓国軍 彼の地にて、斯く戦えり

■禍々しい未来予想図 in 20xx年

20xx年、日本ではあるNHKテレビドラマが空前の大ヒットを記録していた。その題名は「日いづる国の末裔」(原作:百田尚樹)といい、地球のどこかにある架空の紛争国「ウルク」に海外派兵中の自衛隊を舞台としたメロドラマである。ただしこの架空国家「ウルク」は当初「中央アジア」という設定だったのが、物語の途中で急に「バルカン半島」になったり背景の建物にロシア文字の看板が登場するなどいまいち国籍不明で、自らこの番組のゼネラルプロデューサーまで兼業するほど気合の入った籾井勝人NHK会長が後にインタビューに答えて曰く「あれはイラクがモデルですッッッッ!」と公式に発表する事で何とか設定が落ち着くというドタバタ劇も見られた。イラクか…。

それはともかく、このドラマの男性主人公はその海外派兵舞台に所属する自衛隊の大尉で、当代きっての若きイケメン俳優が演じていた。一方の女性主人公は紛争地に派遣された医療ボランティアチーム長の医師で、演じるのもこれまた当代きっての若い美人女優だ。この両人のロマンスを軸に物語は展開されるのだが、この男性主人公を奪い合う美人のライバルヒロインが何人も登場しモテモテという、まさに「大尉 島耕作」とも言うべき日本では王道の展開ぶりがここでも再現される。この王道展開がこのドラマを大ヒットに導いた特に大きな要因の一つと言って良いだろう。

それはともかく、この「日いづる国の末裔」というドラマは以下の企画意図に基づいて制作されたという。

あらゆる夢は金に通じ、幸福は成功順などと言われる。
ジャングルのごとき現実で生き残る為に人間としての美徳と価値などは容易く無視してすごす。

弱者の死は隠蔽され、強者の独り占めは合理化され、
卑怯に妥協した者の出世は知恵があると賞賛され、
義に基づいて抵抗した者の没落は無謀と卑下される、
貪欲が善という言葉に今や誰も恥ずかしがらないこの世に、英雄が必要だ。

真の英雄が必要だ。
金の価値を大事にしようとも、金の奴隷になる事を拒否し、
力の権威を誉れ高く守ろうとも、不当な力には決して屈服せず、
成功に向かって全力を尽くそうとも、成功の座にはより大きな責任の重さがつきまとう事を常に心に刻み、
他者の楽しみに大きく笑ってやれて、小さな痛みも共に泣いて抱きしめてやれる。
幼稚園の時すでに学んで知っているが、だんだん忘れて過ごした我々の心の中の真の英雄に出会いたい。


そして「日いづる国の末裔」というこのドラマの題名についても百田尚樹は以下のように語った。
「太陽が他者に光をもたらすように、主人公達が犠牲精神を発揮して周りの人達に温かみを与えるという意味を込めた」


こうした企画意図を大きく反映し、このドラマの自衛隊並びにその隊員である主人公の活躍ぶりは凄まじい。何しろ「日本の国益よりも派兵先の一般人の命が大事」などと言って、命令違反をも厭わないのだから! 例えばファンの間で語り継がれるこのドラマの名シーンの一つに以下のようなのがある。

…ある日ウルク現地で大地震が発生し、日本企業の事務所が入っているビルはもちろん周りの建物も多くが倒壊して多くの人が生き埋めになった。主人公の大尉は瓦礫をどかしてビルの生き埋めになった地元民の作業員を助けようとするものの、そこへ強欲な日本企業の地元支社長がやってきて、そんなのよりうちの事務所から掘り出せと叱責する。
「一体あの書類が何かわかってこうしてるのか? あの書類が何かといえば、平和再建事業に対するウルク政府との密約合意書ですよ。私の給料はこの国でもらってるが、日本国籍を持つ国民としてこれは全て愛国心からやるべき事でしょう。カラオケに行ったら最初の曲は君が代で始める人でこそ私が…もう察しがついたでしょう? これは国家的次元の問題なのだから、自衛隊員とは何なんだ? 国家的任務を優先する、それが自衛隊員じゃないか? 今この状況で作業員の一人や二人が死のうと問題ではないんだ」
復興事業に関する密約書類があって、それは日本の国家的利益がかかってる。おまえも自衛隊にして日本国民なら地元民なんかほっといてそっちを優先しろというのだ。それに対して主人公はこう返す。
「国家…国家が何だ…国民の安全と命を最優先にするのが国家だ。それがどういう事かと言うと、おまえのような奴でも危険に陥ったらあらゆる手段と方法を選ばずに動員してでも救い出すのが国家だ。自衛隊員である俺に国民の命よりも優先しろと国家が与えた任務はないんだから。本当にそれほど書類救助が急だというなら、行って直接掘れ」
このように、この自衛隊大尉である主人公は「日本の国益」よりも「地元民の命」の方が大事だと言ってのけるのである…

いよッ、カッコいいぞ自衛隊! さすが21世紀の皇軍! 兵隊さんよありがとう! 
このドラマは一事が万事この調子で、このように人命尊重第一主義でヒューマニズムにあふれた自衛隊(!)が紛争地や被災地の「真の英雄」として虫唾が走るほど、それこそ9999%くらいに超絶美化されたこのドラマが、21世紀の極右国家日本で流行らない方がおかしいだろう。昭和初期の某ラジオドラマじゃないが、この番組が放送される時間になると表の人通りが減るという現象も頻繁に見られた。「日いづる国の末裔」のヒットによってますます籾井と百田はふんぞり返って天狗になり、自分で自分の鼻の長さと重さを支えきれないとまで揶揄されるにいたった。
だが籾井と百田以上にこのドラマに相好を崩した人間がいる。他ならぬ内閣総理大臣・安倍晋三だ。安倍も「日いづる国の末裔」が大の「スペオキ」(「スペシャルお気に入り」の略)で、どんなに忙しくても政務の間を縫ってこのドラマを昭恵夫人と一緒にリアルタイムで視聴したという。安倍総理は共同通信とのインタビューでも「日いづる国の末裔」を以下のように大絶賛した。
「我が国の文化を世界に知らせるだけでなく、日本に対する関心を呼び起こさせて海外観光客誘致にも寄与しました。若者達に愛国心を高揚させて国家観を確立させるのにも教育的な効果があります」

かくしてこの自衛隊美化度9999%ドラマの放映後、世論調査では自衛隊に対する好感度がうなぎ登りに急上昇する。今や自衛隊に対する日本国民の支持率は90%を超え、20xx年度日経の就職人気企業ランキングで自衛隊がぶっちぎりの一位にランクインするという前代未聞の事態を目撃する事になった。「自衛隊が無用の軍隊? あんたいつの話をしてるんだね?」
そしてついに「みんなで世界一の平和主義者であらせられる天皇陛下を自衛隊の最高統帥権者に推戴する国会議員の会」が超党派(もちろん共産党と社民党の議員も余さず参加している!)で発足、その結果国会では「自衛隊を内閣から分離し、天皇直属とする」いう「新・改正自衛隊法 in 20xx年」が一人の棄権も退場もない完全なる満場一致(もちろん共産党と社民党も諸手を挙げて大賛成である!)で衆議院を通過、参議院でも何の問題もなく通過する事が確実視されている。この法案では自衛隊の最高幹部である統合幕僚長や陸上幕僚長が任官にあたって天皇から直接認証される「認証官」へと格上げされる事も新たに定められており、防衛官僚達の長年の悲願が実現するのも時間の問題だろう。これも全て「日いづる国の末裔」のおかげなのです! ありがたやありがたや…。
一つの映画やドラマが世の中を変える事がある。「日いづる国の末裔」はまさにそれを体現した実例となり、日本という国家をも丸々変えた。これなしに「自衛隊が就職人気ナンバー1な日本」「天皇が自衛隊を統帥する日本」が実現する事はなかっただろう。こうしたコンテンツの強さをまざまざと我々に見せ付けてくれた。

「日いづる国の末裔」の人気は日本だけに留まらない。海外へのコンテンツ輸出が決まる前から中国や韓国その他アジア圏の「日本文化オタク」達はネットを通じてこのドラマの情報を入手し、実際に視聴した。それがじわりじわりと広がって大変な前評判となり、正式放送が始まる前からすでにブームが始まっているというありさまである。まずは中国での有料配信が決まり、次いでベトナムやタイ・フィリピンなどでも放送が決まった。が、しかし韓国では…? 
韓国でもこのドラマの輸出が話し合われ、契約がほぼ8割方決まった頃、日本側担当者の一人に良くも悪くもローカライズに詳しい人間がいて、ふと重大なある問題に気付いた。「さすがにこれを韓国に輸出したらヤバイんじゃね?」目先の欲にとらわれて何も考えずにこれを韓国に輸出したらかえってまずいトラブルを誘発し、むしろ大損害を蒙る事になりかねない。この事に気付いた日本側担当者、輸出を断る為に交渉の場で急遽次のような口実をでっち上げて韓国側に言い出した。
「このドラマは複数の制作会社が関わり、権利関係が複雑に絡み合っている。このライセンス問題を解決するのが困難と判明した為、申し訳ないがこの話はなかった事にしていただきたい」

かくして日本、いやアジア空前の大ヒットドラマ「日いづる国の末裔」は他のアジア諸国にはほとんど正式輸出放送されたにも関わらず、なぜか韓国だけそれが行われず現在に至っているのである…。


■韓国を日本に、日本を韓国に置き換えてみれば

…そういう罪深い物語だが、もちろんこれはフィクションである。ただし全くの100%創作という訳でもない。種明かしをすると、今韓国で大ヒットしている某テレビドラマとそれが向こうで巻き起こしている社会現象などをそっくり日本に置き換えて(所々を多少誇張したり別のネタも色々チャンポンして)書いてみたのが上記の物語なのである。その問題の韓国ドラマはKBS(要するに韓国のNHKね)で制作放映された「태양의 후예」といい、現時点では日本未公開だが聯合ニュースの記事や韓流ミーハーどもの間ではすでに「太陽の末裔」という独自訳題で通っており、ハンギョレ日本版の記事では直訳で「太陽の後えい」とされていた。ここでは便宜上、有名な前者の訳題を採用する。
 


태양의 후예 太陽の末裔

韓国軍 彼の地にて、斯く戦えり
美形出演者達によって9999%超絶美化された韓国国粋主義と後発帝国主義的野欲の発現

出演:宋仲基、宋慧教、晋久、金智媛、姜信一他
演出:李応福、白尚勲
脚本:金銀淑、金元碩
放送局:KBS 2TV
放送期間:2016年2月24日-2016年4月14日









で、この「太陽の末裔」というドラマがどういう内容かというと、一言で言って「軍隊メロドラマ」だ。「ウルク」という中央アジア(だが当初はバルカン半島の国と説明されたり、劇中にロシア文字の看板が出て来たり無茶苦茶だった。こうして設定が二転三転した挙げ句、最終的には制作者公式設定として「イラクをモデルにした架空の国」という事に固まったらしい。い、意味が分からない…)の架空国家に派兵された韓国軍の中で、若い男性兵士と女性医師の関係を軸に展開される戦場恋愛ドラマという筋立てである。民間人(ただし米軍に雇用された通訳)の死者まで出した韓国のイラク派兵や、韓国が日本と非常に仲睦まじく世界中の紛争地帯へPKO派兵をしまくって、南スーダンでは日本軍から韓国軍への弾薬供給まで行われた現実を考えるとまるでシャレになってないドラマなのだが、これが韓国で大変な人気なのだという。韓国どころか中国でも配信されて大人気、ベトナムやタイでも近々放送を控えているというのだから凄まじい。しかしながら案の定ベトナムのさるジャーナリストが反発してフェイスブックに書いた記事が大きな話題になりもした。「海外派兵された韓国軍」を超美化して描いた韓流ドラマをベトナムに輸出して放送する? 頭おかしいの? 旧日本軍や自衛隊を美化したドラマやアニメを韓国で放送するのと何が違うのかという話なのだ。
それに加えて特筆すべきは、何と言っても朴槿恵がこのドラマをえらく気に入っていて激賛しているという点であろう! 大韓民国第18代大統領(ただし不正選挙で当選)朴槿恵曰く

http://biz.heraldcorp.com/view.php?ud=20160321001022
朴大統領、ドラマ「太陽の末裔」絶賛(原文は朝鮮語)

我が国の文化を世界に知らせるだけでなく、韓国に対する関心を呼び起こさせて海外観光客誘致にも寄与した。
「太陽の末裔」が若者達の愛国心を鼓舞させ、国家観を確立させるのにも教育的な効果がある。


…何かこの人恐ろしい事言ってる! 大統領のこの発言聞いただけで筆者はドン引きなのだが、普通そう思わないか? 例えば安倍晋三が「永遠の0」とか「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」とか艦これとか刀剣乱舞を評して同じ事言ったら? そういう話なのだ。と言うか、それが白昼堂々まかり通るのが今の韓国という国である。タカ派ぶりや軍拡化への野欲といった方面で言えば、韓国は日本にも決して負けてはいない。

そして実にぶっ飛んでいるのがこのドラマの「企画意図」であろう。この「太陽の末裔」の公式サイトにはこう書かれている。

http://www.kbs.co.kr/drama/sun/about/program/index.html
太陽の末裔 企画意図(原文は朝鮮語)

あらゆる夢は金に通じ、幸福は成功順などと言われる。
ジャングルのごとき現実で生き残る為に人間としての美徳と価値などは容易く無視してすごす。

弱者の死は隠蔽され、強者の独り占めは合理化され、
卑怯に妥協した者の出世は知恵があると賞賛され、
義に基づいて抵抗した者の没落は無謀と卑下される、
貪欲が善という言葉に今や誰も恥ずかしがらないこの世に、英雄が必要だ。

真の英雄が必要だ。
金の価値を大事にしようとも、金の奴隷になる事を拒否し、
力の権威を誉れ高く守ろうとも、不当な力には決して屈服せず、
成功に向かって全力を尽くそうとも、成功の座にはより大きな責任の重さがつきまとう事を常に心に刻み、
他者の楽しみに大きく笑ってやれて、小さな痛みも共に泣いて抱きしめてやれる。
幼稚園の時すでに学んで知っているが、だんだん忘れて過ごした我々の心の中の真の英雄に出会いたい。


また、気になる「태양의 후예 太陽の末裔」という題名の由来についても、この番組の演出担当プロデューサーである李応福が以下のように述べている。

http://www.iybrb.com/news_vew.aspx?id=45194
「太陽の末裔」の監督、新華社通信インタビュー 宋仲基キャスティング後日談(原文は朝鮮語)

「太陽が他者に光をもたらすように、主人公達が犠牲精神を発揮して周りの人達に温かみを与えるという意味を込めた」


ここまで戦争や自国軍隊の海外派兵を美化出来る神経こそ凄まじい。まさに9999%美化ッッッッ!

じゃあ何でこんなドラマが韓国や中国などで流行っているのか? さらには本来あってはならない事だが、何でベトナムでも放送前からやたらと人気を集めているのか?
色々な論評を読んで分かるのは、まず第1に宋仲基(송중기 ソン・ジュンギ)や宋慧教(송혜교 ソン・ヘギョ)・金智媛(김지원 キム・ジウォン)といった男女問わぬキレイ所の出演者がある。国を問わず、いわゆる「無概念ミーハー層」にウケている最大の理由は言うまでもなくこれであろう。
第2の理由は、それら美形出演者達の演じ描く軍隊の姿がこれまた超絶美化されている点にあるのではないか。こちらは主に韓国国内の一般視聴者層ならびに朴槿恵やタイのプラユット・チャンオチャ総理といった各国のお偉方の間で人気を博した理由と見られる。つまり軍隊があまりにスマートかつ「正義の集団」のごとく描かれている為、それによって例えば韓国で兵役に行った事のあるマッチョ男性などが郷愁に浸るという話が実に多かった。「若い頃の軍隊生活を思い出した」と。その手の男権主義者というか男根主義者というかその手の男どもが、己の外見とは似ても似つかぬ「太陽の末裔」のイケメン主人公・宋仲基と軍隊時代の自分を重ね合わせて精神的自慰行為にふけっているという訳だ! いい歳ぶっこいたオヤジがこのドラマを見ながら「ああ、宋仲基ってカッコいい。軍隊時代の僕にそっくり」と! ああ、気持ちが悪い! 個人的意見を言わせてもらうなら、この手の男性視聴者達は宋仲基などよりも、むしろ漫画原作者の小池一夫に(メンタリティが)そっくりだと思います。いや、宋仲基に似てると言えなくもないか(理由は後述)。
朴槿恵やチャンオチャといった各国のお偉方が「太陽の末裔」を自身のスペオキと言ってはばからない理由もこれに似た所があろう。「軍隊の美化」これに尽きる。例えばこのドラマの第7話にこんなシーンがある。

…ある日ウルク現地で大地震が発生し、韓国企業のやってる発電所事務所の入っているビルはもちろん周りの建物も多くが倒壊して多くの人が生き埋めになった。主人公の大尉は瓦礫をどかしてビルの生き埋めになった地元民の作業員を助けようとするものの、そこへ強欲な発電所の所長がやってきて、そんなのよりうちの事務所から掘り出せと叱責する。
「一体あの書類が何かわかってこうしてるのか? あの書類が何かといえば、平和再建事業に対するウルク政府との密約合意書ですよ。私の給料はこの国でもらってるが、大韓民国国籍を持つ国民としてこれは全て愛国心からやるべき事でしょう。カラオケに行ったら最初の曲は愛国歌で始める人でこそ私が…もう察しがついたでしょう? これは国家的次元の問題なのだから、軍人とは何なんだ? 国家的任務を優先する、それが軍人じゃないか? 今この状況で作業員の一人や二人が死のうと問題ではないんだ」
復興事業に関する密約書類があって、それは韓国の国家的利益がかかってる。おまえも韓国軍にして韓国国民なら地元民なんかほっといてそっちを優先しろというのだ。それに対して宋仲基演じる主人公はこう返す。
「国家…国家が何だ…国民の安全と命を最優先にするのが国家だ。それがどういう事かと言うと、おまえのような奴でも危険に陥ったらあらゆる手段と方法を選ばずに動員してでも救い出すのが国家だ。軍人である俺に国民の命よりも優先しろと国家が与えた任務はないんだから。本当にそれほど書類救助が急だというなら、行って直接掘れ」
このように、この韓国軍大尉である主人公は「韓国の国益」よりも「地元民の命」の方が大事だと言ってのけるのである…

いよッ、カッコいいぞ韓国軍! さすが日本の皇軍と親日派を母体に作られた軍隊だけの事はある! 兵隊さんよありがとう! 

…冗談はともかく、このドラマで描かれている韓国軍の姿は現実のそれとは全く違う。美化も美化、9999%、一体どこの平行世界の韓国軍なんだと言いたくなるほどだ。韓国軍というのはそもそも旧日本軍出身の親日派軍人(それも満州や中国で特に残虐な行為を率先してやった最悪質分子で、これらを自らの「スペオキ」として育て上げて悪用し尽したのが日本軍上層部という事でもある!)が中心となって作られたものであり、当然組織の体質も旧日本軍のそれを濃厚に受け継いでいる。つまり上官や先輩兵が何の理由もなく下の者をビンタするリンチ社会「天皇の軍隊」そのものだ。日本の自衛隊や「海猿」で今でもそうした残酷で陰湿なリンチやいじめが横行しているように、韓国軍でも全く同じ状況が今でも続いている。そうしたリンチ被害に遭った兵士が自殺したり、いじめた相手を逆に射殺して銃乱射事件が起こったりするのもしょっちゅうだ。兵器納入に関する汚職も日常茶飯事で、軍の高官が賄賂を取ったり軍需産業に天下りした奴が莫大な横領やキックバックを懐に入れるのが当たり前というのも日本の自衛隊とあまりに似過ぎている。もちろん都知事選の使途不明金問題で今をときめく某元航空自衛隊幕僚長みたいな奴は、韓国軍でも珍しくない。
それをああまで美化してのけたのだから、朴槿恵が喜ばない訳がない。昔、日本軍が中国を侵略して重慶爆撃だの南京大虐殺だのやりまくってたまさにその時、日本では「日本の兵隊さんは圧制に苦しんでいる中国人を助けている。行く先々で地元の子供達からもこんなに慕われているのです」みたいな児童洗脳用の絵本や教材が大量に流布していたのと全く同じである。日帝の領袖達もそうした日本軍美化作品を見て相好を崩しまくっていたではないか。

http://d.hatena.ne.jp/tadanorih/20130828/1377622188
お子様向け日本軍大活躍「過激描写」画像




↑ 戦前の日本(1939年)で発行された「日帝版:太陽の末裔(笑)」。この手の軍国主義・侵略主義美化エンターテイメントについて言えば韓国よりも日本の方がはるかに早かったとも言える。「貴様らのいる場所はすでに、我々(日帝)が77年前に通過した場所だッッッッ!」

「太陽の末裔」の名場面とされる先述のシーン、上記日帝の児童洗脳絵本と何が違うというのか。もし実際に海外派兵先の韓国軍が同じような状況に出会ったら、間違いなく現地人ごときの救助よりも「国益」のかかった機密書類の掘り出しを最優先させる事だけは100%間違いない。絵本では現地の子供達に慕われているとされているが、実際の日本軍は女子供関係なく大量虐殺して回っていたのと同じである。PKOにせよ米軍の有志連合にせよ、その手の海外派兵部隊などというのは占領側の身勝手な欲得(国益)の為にやって来ているだけであって、占領地の住民など虫ケラ以下の存在でしかない。小泉時代のイラク派兵は「石油確保の為」とはっきり国会で答弁されていたし、韓国国防部の関係者は「我が国のPKO派兵は対北軍事訓練として大変役立っている」「PKO部隊の駐留費はどうせ国連から出るんだから、もっとバンバン派兵して国連から金をむしり取れ」という事を臆面もなく堂々と公言している。これがPKOなどで紛争地へ軍隊を派兵している国々の実態であり、本音だ。伊勢崎賢治ら「自衛隊を活かして新9条制定派」の狙ってる事もまさにこれだろう。「現地住民の生命を第一に考える海外派兵部隊」などという「太陽の末裔」や日帝の洗脳絵本ほど実態とかけ離れた大いなる幻想はない。

さらに言及しておかねばならないのは、じゃあ朴槿恵はじめとする韓国のエスタブリッシュメント層のみなさんは何で自分ちの子弟達を兵役に出さないんですか、という事なのだ。知っての通り韓国は今でも徴兵制を敷いているのだが、兵役に行く人間に裕福な家の子弟はほとんどいない。財閥のオーナーや有力政治家の子弟というのはやれ病気だの怪我だのを口実に手を回して兵役逃れをするからだ。金や力のある家はそういう事が簡単に出来る。逆に言えば、金持ちでも何でもない一般人は泣く泣く軍隊に行かざるを得ないという事だ。兵役に行くという事がどれだけ人生の貴重な若い時間の浪費であり、危険(厳しい訓練や事故や軍事境界線への配置で死んだ人間は数え切れない)な事か、また韓国軍がどれだけ酷い腐った組織かという事を、韓国人であれば金持ち貧乏人問わず知らない者などいやしない。だから上流階級の者は誰一人自分の子供を軍隊に送ったりしないのだ。「太陽の末裔」で愛国心を鼓舞させて国家観を確立だって? だったら朴槿恵はセヌリ党の議員や財閥オーナー家の子供を一人残らず全員強制的に軍隊へ送ってそれを実践してみろ、さもなければ徴兵制そのものをなくせという話なのだ。兵役に行かなくて済んだ上流階級の家の子弟の事を韓国では俗に「신의 아들 神の息子」と言うが、文字通り兵役忌避が簡単に出来る家とそうでない家では天国と地獄ほどの格差がある。そうした地獄大韓民国の現実を隠蔽して騙すのにどれほど「太陽の末裔」は大きな貢献を果たした事か!
実際に「太陽の末裔」がヒットした事で、韓国では軍に対する好感度が急上昇している。さすがに就職人気ナンバー1などという事はないが、それでも前例のない異例な光景だという。アメリカでも日本でも貧乏人ほど軍隊へ行かざるを得ない、いわゆる「経済的徴兵制」という状況が年々強くなっている。同時に日米は自国の経済的権益(地下資源確保や自国企業の海外進出)の為に軍隊を送り込む常習犯であり、韓国も大分前から経済界の要望でそうした海外派兵をもっと出来るようにしろという圧力があった。韓国のPKO増大や「吸収統一して北の資源と土地をぶん取れ」というのはそうした流れにある。「太陽の末裔」はまさにそうした韓国的国粋主義と2周3周遅れの後発帝国主義的野欲の視点から、タイムリーこの上なく成功したプロパガンダ娯楽作品という事だ。
これも言っておかなければならないが、「太陽の末裔」主演俳優である宋仲基という若きイケメン役者、軍隊大好きのとんでもないタカ派だよ。韓国陸軍は宋仲基を積極的に宣伝広報に起用しているばかりか、当人自身も率先して韓国陸軍の広報誌に登場したり原稿を寄せたりしている事はもっと多くの人に知られても良いだろう。宋仲基は軍隊時代にDMZに配置された事があり、そこの警備に就ける者は韓国国民の1%にしかならない、自分はそれを誇りに思うみたいな話を平気で言いまくってるのだから…。

ちなみに2012年の小泉訪朝と拉致フィーバー以降、国籍を朝鮮籍から韓国籍に変える在日が相次いだが、朴槿恵政権の韓国は在外同胞をも徴兵出来るように(1994年以降に生まれた韓国籍在外同胞は、韓国での在留期間が一定超えると兵役義務が生じる)兵役法を改悪した。もちろん近年になって朝鮮籍から韓国籍に変えた者達の多くというのは、北の評判が悪くなった為に一時の世間体に惑わされて国籍を変更した訳だが、皮肉にもそれと引き換えに自分の子供達が軍隊に取られる危険に直面したという訳だ。何も考えずに自分の子供や孫を南へホイホイ旅行させたりしていたら、ある日突然空港で身柄を拘束されて、旧日本軍並みの世界最悪な軍隊に放り込まれる事になりかねないという事を多くの韓国籍同胞はもう少し真剣に考えた方がいい。そして、今や多くの者が「独裁体制だ」と言っては偏見としか言いようのない誹謗中傷をしている朝鮮民主主義人民共和国が在外同胞を無理矢理軍隊に取ろうとした事があったのか、という事も。


■「太陽の末裔」が残したもの

最後にこの「太陽の末裔」というドラマは実に悪い前例を作ったという事も指摘しておきたい。つまり韓流ドラマの手法による戦争礼賛・軍隊賛美プロパガンダがこれほどまでに強烈で「有効」であるという事を証明してしまったという事だ。もちろんこうした戦争宣伝エンターテイメントというのは戦前日本の絵本はもちろんだが、アメリカではハリウッドがもっと前から露骨かつ大々的にやって来た。「太陽の末裔」もそうした流れの一つに位置付けられるものの、その「手法」が日本やアメリカと違っている所に注目すべき点がある。アメリカであればハリウッド映画、日本であれば艦これやガルパンやゲートのようなオタク向けゲームかアニメ(笑)というそれぞれの国の好みに合った手法で軍隊や戦争のプロパガンダが行われてきた。それに対して韓国は? 「太陽の末裔」はこれ以上ないほどの典型的な「韓流ドラマ」の作りなのだ。日米とはまた違った作劇手法による有効な戦争プロパガンダ手法を開拓してしまったという点で、非常に特筆すべき存在であると言えよう。
例えばタイのチャンオチャ総理は3月17日にバンコクで行われた公式行事の場で

http://www.nocutnews.co.kr/news/4568513
「『太陽の末裔』を見ると、愛国心と犠牲、命令に対する服従、そして責任感ある市民にならねばならないという内容が溶け込んでいる」
「みんなこのドラマを見よ。誰であれこのようなドラマを制作して政府官吏達を喜ばせれば、財政的支援を惜しまない」

と発言して視聴を自ら積極的に督励したばかりか、同じようなのを作れとまで言っている。チャンオチャ総理とは何者か。現在のタイは2014年に軍事クーデターが起こって軍事政権下にあり、チャンオチャはその軍事政権のトップである。言うなれば「タイの朴正煕(全斗煥でも可)」か。軍人の口からこのようなセリフが出る事ほど不気味で不快な事はない。外国のドラマとはいえ、軍隊美化物語としての「有効性」をタイ軍事政権のトップ自ら認めて「国民はこれを見ろ、これをお手本にしろ、同じのパクって作れや」と督励しているのである。
中国でもこのドラマがヒットしたというのは極めて不気味である。中国がこのドラマを検閲で通したのはやはりタイと同じで、軍隊や愛国心のプロパガンダとしての効用が絶大だという事を見抜いたからだろう。最近、習近平政権以降の中国にはどうにも覇権主義的な臭いが漂う。朝鮮共和国の核問題などでも「中国が東アジアの安定を統制する」という発言がやたらと出て来るのは感心しない。
この両国について今後考えられるのは、遠からず自国版「太陽の末裔」を制作する可能性が高いという事だ。このドラマの使える要素を大いに学んだドラマなり映画なりの宣伝扇動エンターテイメントを制作してくるだろう。全くもっていい迷惑としか言いようがない。

ベトナムのジャーナリストがこのドラマの放映に強く反発した事こそ正論である。だがこの事は、大量の美形出演者とおためごかしのエセヒューマニズムで包装された韓流軍隊・愛国心プロパガンダに惑わされたり感化されてしまった者がベトナムにおいても多数いる(それもかつて自国の侵略に加担し、それを反省・謝罪するどころか今でも「いい事をしてやった」と開き直っている旧敵国の!)という悲しい現実を表していよう。韓国や中国で隠れて艦これや刀剣乱舞に熱中している層がかなりの数に登るように、だ。これらには全く言葉をなくす。これほどまでに、「一見魅力的に見えるエンターテイメント」という糖衣で包まれた邪悪なプロパガンダほど恐ろしいものはない。

日本? 少なくとも現時点筆者の見て回った範囲では、日本の政治家がこのドラマを絶賛したという話は聞かない(公式放送前という事もあるが)。実際に「太陽の末裔」はどちらかと言うと安倍晋三よりもカミさんの昭恵の方が喜んで見そうな気がする。中国やタイなどでのフィーバーと違い、日本では「太陽の末裔」は韓流ミーハー層に限定した人気で終わるのではないかと筆者は思う。日本にはすでに「永遠の0」がある! 「ガールズ&パンツァー」がある! 「風立ちぬ」がある! 「艦隊これくしょん」がある! 「刀剣乱舞(大東亜共栄圏ッッッッ!)」がある! 「ゲート 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり」があるではないか! はっきり言って「太陽の末裔」がやってる事は、今の日本では自衛隊の広報アニメである「ゲート」が十分に務め上げており、そこに入り込む余地はないだろう。

「太陽の末裔」だと? 貴様らのいる場所はすでに、我々(日帝)が77年前に通過した場所だッッッッ!

何ともおぞましい通過地点だが。

現時点の予想として言える事はこれくらいだが、それでも実際にこのドラマがいつ日本でも放送されてそれからどんな事が起こるのか、今後とも鋭意注視してみたいと思う。
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【怪作列伝 괴작렬전】「我是中国人李小龍」~アナグラム侍

  

 
「我是中国人李小龍」
著者 胡紹権
発行 大渡出版有限公司
2014年4-5月にかけて隔週で全4巻刊行














香港漫画というと一昔前では「パクリもん」というイメージが定番でした。日本など外国の漫画や映画などのキャラを著作権無視で勝手に使うという「剽窃作品」が当たり前のように出版され、かなり混沌な様相を呈していたものです。もっとも当時の日本の一部出版関係者の間では、人気のあるキャラクターが一つの作品に「チャンポン共演」するという、今で言う所の「クロスオーバー」状態を密かにうらやむ者も少なくなかったとか…。一方では皮肉な事に、そうした「剽窃作品」のおかげで元ネタ作品の知名度が上がり、そうした元の商品が香港でも売れるようになったという例もあります。そうした場合は元ネタ作品の権利を持つ企業も無闇に訴えたりはせず、黙認する事もありました。その最たる例がカプコンの人気格闘ゲーム「ストリートファイターⅡ」の「剽窃作品」である「街頭覇王」ではないでしょうか。当時よく「池上遼一っぽい絵のストⅡ漫画」と言われて話のネタになっていたあれです。

 
 


90年代初頭、格闘ゲーム人気草創期に忽然と香港に姿を現したこの「街頭覇王」(略称は「街覇」)は日本のゲーム雑誌「ゲーメスト」でも取り上げられた事で日本のゲームファンに広く知られる事になりました。この作品は香港で爆発的な人気を博して現地のストⅡ人気を大いに高めたばかりか、他にもいくつかアジア諸国で翻訳出版されています。筆者の知る限りではインドネシアと韓国でも出版され、特に韓国語版は部数が少なかった事もあって今では奇書中の奇書とも言うべきレアアイテムでしょう。

 
 
 
 
 
 
 
▲日本ではあまり知られていないが、「街頭覇王」にはストⅡだけでなく、餓狼伝説や龍虎の拳といったSNKのゲームキャラも多数登場していた。後の「クロスオーバー」作品を10年以上先取りする形になっていたのは何たる皮肉か。今のSNK(プレイモア)が些細な事で大掛かりな裁判を起こして、日本のパロディや創作活動そのものに打撃を与えかねない真似をしでかしているのを見ると隔世の感がある。かつての旧SNKは同人誌などのパロディにもかなり寛容だった。ちなみに「街頭覇王」作中での餓狼キャラはギースとタンフールーを除き、格下扱いであっさりやられる場面がほとんど。ギースとタンだけはかなり強い。

「街頭覇王」は初期の格闘ゲームファンに大きなインパクトを与えましたが、その具体的なストーリーは日本でほとんど知られていません。日本でも街覇の画集(カプコン許諾済み)が商業出版されて簡単なストーリー説明がそこに載りましたが、それは様々な理由で曖昧な書き方をした不正確なものでした。これは、この漫画にはストⅡ以外にも他社製ゲームや漫画のキャラが結構重要な役回りで登場する為、そうした部分を端折って説明せざるを得なかった為でしょう。筆者は先日ゲームレジェンドにて「街頭覇王」第1巻の日本語訳をようやくお披露目する事が出来ましたが、今後とも続きは出していくつもりです。続きは年末のコミケにて。
いずれにせよ、香港でこうした「剽窃作品」がまかり通っていたのは一昔前の話であり、今では格闘ゲームの漫画化作品なども正式にメーカーから許諾を取って描かれています。街覇のヒット以後はそうした正式ライセンス作品が主流になったようで、色々な意味で街覇という作品は香港漫画にとって大きな分岐点になったと言えるでしょう。もっともこれによってかつての「剽窃作品」特有のハチャメチャさが香港漫画からなくなったのは寂しくもありますが…。

今回は街覇がメインのお話ではないのでこのネタはこれぐらいにしておきますが、こうした香港での「正式にライセンスを取った漫画化作品」というのはゲームの漫画化に限った話ではなく、他にも様々なキャラクター商品で行われています。中でも香港で一つのジャンルになっているのは「ブルース・リー(李小龍)もの」でしょう。
かつて香港カンフー映画の大スターでありながら若くして亡くなったブルース・リーは、今でも伝説的なアクションスターとして多くの人々の記憶に残っています。それ故にでしょうが、香港では許諾を受けてブルース・リーを主人公にした漫画を描く事が今でも行われており、その内容はリーの伝記物からオリジナルストーリーまで様々でした。実写映画は俳優本人が死んだらもう新作は作れませんが、漫画であればこれからもいくらでも可能なので、ある意味商売としては賢いやり方かもしれません。作品発表当時に存命人物であったかどうかという点を除けば、日本でも梶原一騎がよくやってた手法です。伝記物といっても事実をありのままに描くのではなく、膨らました面白おかしい「伝説」として描くのですから。

そうした「ブルース・リーもの」の中でも最近出版されて目を引く作品がありました。それが今回取り上げる「我是中国人李小龍」という漫画です。題名を日本語にすると「我こそは中国人・李小龍なり」といった所でしょうか。
この作品の内容は、ブルース・リーが渡米して武術家及び映画俳優として名を成していく過程を描いたもので、その途中で悪の道に走ったリーの旧友との関わりと葛藤、行く手に立ちはだかる犯罪組織との対決といったフィクション要素をふんだんに盛り込んで物語は展開していきます。しかしながらそこは香港漫画。かつてのような著作権無視の「剽窃作品」ほどではなくとも、風刺と諧謔に富んだダイナミックさはより進化・深化して生き続けてきました。本作も例外ではありません。この漫画の怪作たる所以は、やはり実在人物をネタにした「そっくりさん」にあるでしょう。ここではその中から2人を取り上げてみたいと思います。ただし他にも明らかに実在の著名人モデルがいると思われるキャラが何人かいるのですが、元ネタが分からなかったのでそうしたものは残念ながら省きました。そうしたキャラの元ネタが分かる方がいましたら御教示いただけると幸いです。
まずは1巻末から登場するこの人、犯罪組織「黒手党」の北米支部長・「羅禮士(ノリス)」です。


と言うか、誰が見ても分かるようにチャック・ノリスその人です。いや、実際にノリスはリーと「ドラゴンへの道」で共演してその対決シーンは有名ですが、それって映画の中の話だよ。ノリスが犯罪組織の幹部としてリーと対決とか、もはや伝記もののエリアをはみ出してます。
だが、羅禮士(ノリス)もこの作品のそっくりさんキャラの中ではまだまだ甘い。日本の読者にとってはこれよりもっとインパクトのあるそっくりさんキャラが登場するのですから。いわばこの作品を日本で紹介するにあたって最大の「売り」とも言うべき登場人物です。そのキャラとは…犯罪組織「黒手党」の幹部にして司庫(経理係)、柔道9段の使い手である「三倍晋安」だッッッッ!

  
▲犯毒集団司庫・三倍晋安 誰だよ、おまえ? 犯罪一筋、この道しかないッッッッ!

見てお分かりの通り、某国首相の名前と容姿を容易に連想させるキャラクターで、何が三倍なのか良く分かりませんが、「消費税いつかは三倍に」という暗示なのかもしれません。多分。
何よりも強烈なのはこの某国首相似のキャラクターが犯罪組織の幹部という役回りで登場し、その人となりを極めて辛辣に表現している所でしょう。このくだり最高!
「為人表裡不一、口是心非、偏偏柔道修為極深、達到九段的教頭高手。」
筆者は中国語は専門でないので正確には訳せませんが、「その人となりは表裏があり、本音と建前が違い、事もあろうに柔道を大変深く修め、九段の達人の域に達している」といった所でしょうか。柔道の腕前はともかく、この性格描写については実に爆笑ものではないでしょうか。まるで某国首相を見ているようだ!(笑)
さらに笑えるのは以下の頁でしょう。

 
組織の首領の葉巻に火を付けながら「自分に命令を下されば、この三倍めがブルース・リーをすぐにやっつけに行きます(という意味だと思う。多分。以下本作セリフの訳はあまり正確ではないと思うので御了承下さい)」という三倍晋安。ここで三倍晋安は首領の事を「主公」と呼んでおり、これはおそらく日本語で言うと「殿」というニュアンスなのだと思います。日本人の犯罪組織幹部(くどいようですが某国首相似)が組織の首領の事を「殿」と呼んで阿附追従している…。それを見た組織の同僚幹部にしてフィリピン格闘技マノマノの達人「亜畸楽(アギラ これも多分実在のモデルがいると思うのですが、ちょっと分かりません)」は「は…主公(殿)だって? おまえ自分が黒澤明の侍とでも思ってんのか? 笑わせる。日本の侵略者の軍国主義は決して死なずか!(日本鬼的軍国主義就是不死!)」と皮肉をチクリ。それに対して三倍晋安の反応は

「三倍晋安面皮極厚、対嘲諷置若罔聞」(三倍晋安はツラの皮が分厚く、嘲笑われても聞き捨てている)

これが何のネタなのかは明白でしょう。某国首相も2013年にアメリカはハドソン研究所での講演で「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのなら、そう呼んでいただきたいッッッッ!」と「面皮極厚」にも開き直ってましたよねえ…。作者の胡紹権氏最高! これには日本の浜岡賢次もかなうまい。

で物語終盤、黒手党はめざわりなブルース・リーを倒す為にその息子を人質に取り、「返して欲しければレイクサイドヴィラまで来い」というメッセージを送って来ます。指定の場所へやって来たリーを待っていたのは犯罪組織の兵隊達。そのザコどもが蹴散らされた後に姿を現したのは組織の幹部アギラと我らが三倍晋安でした。三倍晋安は東洋刀(日本刀)を抜き、ブルース・リーはそれにヌンチャクで挑む! 

  
▲東洋刀を振りかざす柔道九段の日本人武術家・三倍晋安に、双節根で挑む李小龍

  
リーはヌンチャクで三倍晋安の刀を叩き落し、その隙に顔面を一蹴。続いてトンファーを持ったアギラがリーに襲い掛かる!

 
だが、アギラもリーの敵ではなかった。そこへ背後から奇襲を試みる三倍晋安。

 
それもあっさり返される。恐れをなした三倍晋安は「我投降、不要打…」とあっさり降参。退場シーンはずいぶんと情けなかった。

この「我是中国人李小龍」という作品において三倍晋安の出番はそれほど多い訳ではありません。が、その描写は実に「見事」の一言ではないでしょうか。毒が効いてて。三倍晋安に関する以下のような本文中のセリフや記述は日本でも拡散させて流行らせたくなるくらいです。とりわけ日本という国が今や国家まるごと「犯毒集団」と化している現実を考えると、実に味わい深い。

「為人表裡不一、口是心非」
「日本鬼的軍国主義就是不死」
「三倍晋安面皮極厚、対嘲諷置若罔聞」

時が流れ、香港漫画もかつてのような著作権無視の衝撃的な内容から、どこにもあるような版権許諾作品に移り変わって、インパクトが薄れたのは確かです。それでも香港漫画の一大特色ともいうべき切れ味の鋭い風刺と諧謔の精神は死なずに生き続けている、そんな事を本作は教えてくれているのではないでしょうか。
登場するキャラクターの人選が光る。普通絶対考えつかない。
語られるセリフと記述のセンスが光る。普通絶対考えつかない。
日本の漫画から消えて久しい、そんな気概を読み取るべきでしょう。他のアジア諸国の作品を「日本のパクリ」と称して馬鹿にする事しか知らなくなった日本人こそ、心を入れ替えて他者から学ぶ姿勢が必要だと思います。だいたい「パクリ」だ何だ言うのであれば、日本の同人誌だって同じようなもんなのですから。

注:この記事だけ読むと本作の主人公が誰なのか分からなくなりますが、これはれっきとしたブルース・リーが主人公の漫画です。「我是中国人李小龍」であって、「我是日本人三倍晋安」ではありません(笑)。

        

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