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従軍慰安婦被害者を踏み台にして実現したオバマの広島訪問

http://www.ytn.co.kr/_ln/0104_201605121943543406
「米オバマ広島行き、韓日慰安婦合意でより容易くなった」(朝鮮語記事)
オバマ広島行き、韓日慰安婦合意でより容易くなった
日本全体が被害国であるかのように言うのは偏った意見
・日本が戦犯国という事は変らないが、核の残忍さを観察する時代が来た

[YTNラジオ「崔英日のニュース 正面勝負」]
■放送:FM 94.5(18:10~20:00)
■放送日:2016年5月12日(木曜日)
■対談:保坂祐二 世宗大学教授


このインタビューで保坂の言っている事はかなり支離滅裂で意味不明な部分も多いのだが、一つだけ見逃せない重要な部分がある。なので、そこを翻訳して以下に抜粋しておきたい。


◇崔英日:そうですか。教授が今指摘された話を聞いてみると、2010年からこつこつと準備してきた、こういう考えがします。今少し言及してくれましたが、韓国と日本が昨年12月に日本軍慰安婦問題に合意した為にオバマ大統領の今回の広島行き決定がよりやり易くなった、こんな分析も明らかに影響があったと見られますか?

◆保坂祐二:はい、それで米国内にオバマが広島へ行くのを反対する意見の中で、韓国と中国が「むしろ日本という戦犯国家が被害国に変身するのではないか?」とたくさん批判するだろう、だから少し慎重に考えねばならないという意見が大変多かったといいます。ですが韓日合意がまとまった為にもう少し容易くなったと言えるようです。


保坂の言い分によれば「2015日韓慰安婦合意」のおかげで、今回のオバマ広島訪問がやり易くなったという事になる。それは間違いあるまい。早く言えば日本の法的責任を免罪して従軍慰安婦被害者を踏みにじったあの談合のおかげで、だ。あたかも「核なき世界」の第一歩だの歴史的機会だのといった美辞麗句に包装された今回のセレモニーが、本当はどれだけ汚いものであるかがよく分かるであろう。「慰安婦合意」は元より「韓日は歴史問題よりも安保協力を優先させろ」というアメリカの圧力によって行われたものであり、これによって日帝植民地被害者という目障りな「歴史のトゲ」を取り除いた。そのおかげで「韓米日軍事同盟体制」というバリバリの軍事体制とその醜悪な本質をごまかすセレモニーとしてオバマの広島訪問のセットを何の遠慮もなくやれるようになったという事である。
「核なき世界」ならぬ「慰安婦合意なきオバマ広島訪問」がそう簡単に実現出来たであろうか。この事は十分に考える必要がある。
ホームレスを公園から力ずくで追い出すという酷い人権侵害をしておきながら、それをごまかす為に「同性パートナーシップ条例」をわざとらしく制定した地方自治体が日本にはあったが、それをさらに凶悪・邪悪・極悪にしたものが此度のオバマ広島訪問だ。

オバマの広島訪問は被爆者だけではなく、従軍慰安婦被害者をも踏みにじって食い物にした国際的詐欺・セカンドレイプであるという事。真の核廃絶とは何の関係もない、それどころか韓米日軍事同盟体制という危険極まりない戦争体制の幕開け宣言であるという事を改めて強調しておきたい。
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日本的被爆者之臣民根性

任期がもういくらも残ってないオバマが、サミットのついでに広島を訪問する事が決まったようだ。これに対する日本側や被爆者達の反応を見ていると「そんなの喜んでんじゃねえよ」としか言いようがない。
まず今回の件でわきまえておかねばならないのは、第1次オバマ政権の時にも広島訪問の話があり、それに日本外務省がどのように対応したかという事実だ。これについてはウィキリークスが2009年9月3日付外交電文で暴露した事がある。当時外務次官だった藪中三十二は当時駐日大使のジョン・ルースに対してこう言った。

「第二次大戦中に原爆を投下した事に対して謝罪するべくオバマ大統領が広島を訪問するだろうという日本国民の期待を、両国政府は沈静化せねばなりません。それは元から可能な事ではないという風にです」

日本の方からアメリカに対して「原爆投下を謝罪しないでくれ」と哀願していたのである。今回の訪問でアメリカ側は被爆者達に謝罪も賠償もしない事がすでに明言されているが、それは2009年(ちなみに日本は当時民主党が選挙で勝って政権交代を決めた直後)の「藪中・ルース会合」から決まっていた路線だったという事だ。オバマが広島を訪問して謝罪でもしようものなら、アメリカが日本に提供している「核の傘体制」にヒビが入りかねない。それを最も恐れての事であろう。そのような心配が全く無用である事は、その後のオバマの言行(臨界前核実験やりまくり)を見ればすぐに判明するのだが、日本外務省としてはもしオバマの「核なき世界」がある程度本気だったらどうしようという不安が相当大きかったという事だ。

当時の「藪中・ルース会合」によって、オバマ広島訪問が実現した場合に日米安保体制を棄損しないような枠組みがすでにある程度形作られていた、というのが重大なポイントだ。すなわちアメリカが日本に提供している核の傘は微動もしないようにと。
今回の広島訪問は2015年に安倍が米議会で演説した事に対する答礼の意味が強い。あの演説は日本のアジア侵略を正当化しながら、アメリカに対してだけは卑屈に太平洋戦争を謝罪するという、まさに日米新ガイドライン体制そのものを象徴する邪悪極まりないものだったが、その返礼が「謝罪も反省も核廃絶もない広島訪問」だという事だ。

「原爆投下を謝罪しないでくれ」という日本側の要望に基づく日米の密約めいた談合があり、
アメリカには卑屈に謝罪してアジアには絶対謝罪しないどころか侵略を正当化する安倍の米議会演説があり、
日本は謝罪も賠償もせずに「今後この問題は一切持ち出すな」と不可逆的な「最終解決」を韓国に押し付ける「2015日韓慰安婦和解」があり、
その積み重ねの果てに今「謝罪も反省も核廃絶もないオバマ広島訪問」が行われる。

これらは全て一直線につながった出来事だ。こんなものを歓迎出来る神経が理解出来ない。

今回の訪問によって任期終盤のオバマは「核なき世界実現に努力した」というポーズだけはそれらしく出来るし、安倍の支持率も間違いなく上がる。得をするのは日米政権と首脳だけで、被爆者達は何一つ得るものがないという馬鹿馬鹿しい結果に終わるだろう。
広島の声など見ていると、日本の被爆者というのはここまで臣民化していたのかと驚くしかない。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20160511-00000020-nnn-soci
 オバマ大統領訪問決定 広島からは歓迎の声

日本テレビ系(NNN) 5月11日(水)10時35分配信
 アメリカ・オバマ大統領の訪問決定を受けて、広島からは歓迎の声が届いている。

 広島県被団協・坪井直理事長「よくぞ、ありがとうございました。と同時に、これから一緒に頑張りましょうと。これを契機にして、一歩でも二歩でも世界が明るくなるように」

 湯崎英彦広島県知事核なき平和な世界の実現に向けて取り組む決意を新たにしてほしい」

 広島市の松井市長は「核兵器廃絶に向けた国際的な動きを前進させる歴史的な出発点になることを期待する」とコメントを発表している。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160511-00000514-san-pol
オバマ氏広島訪問 菅官房長官歴史的な機会
産経新聞 5月11日(水)10時39分配信

 菅義偉官房長官は11日午前の記者会見で、オバマ米大統領が広島訪問を決めたことについて「核兵器のない世界を目指す国際的機運を盛り上げる上で極めて重要な歴史的機会になる」と述べた。


http://jp.sputniknews.com/japan/20160511/2119982.html
広島の被爆者はオバマさんの口から謝罪を待ってはいない
© AFP 2016/ Raymond Roig
2016年05月11日 22:05

広島県被団協の箕牧智之(みまき・としゆき)事務局長は、1945年の原爆投下による広島の被爆者らは米大統領の広島視察時に大統領の口から米国民を代表する謝罪を聞こうとは思っていないと語った。

ホワイトハウスは10日火曜、オバマ大統領は5月27日にG7サミットに参加するため日本を訪問した際、安倍首相とともに広島を訪問すると発表。

オバマ氏は米空軍が1945年8月に原爆を落とした都市を訪問する最初の現役大統領となる。

箕牧さんは「私たち被爆者たちにとって夢のようです。原爆資料館を訪れて原爆被害や核兵器の恐ろしさを感じてほしいです。謝罪をするとか慰霊碑の前で頭を下げるとかということはおいておいて拍手で迎えて拍手で送りたい。訪問をきっかけに核兵器廃絶がさらに前進することを願います」と訪問が決まった喜びを語っている。

原爆投下時、わずか3歳だった箕牧さんは、被爆者全員の悲願である核兵器の完全廃絶を人生の一番の目標とされている。


我々はこれらと似た光景を以前にも見た事がある。倭王・明仁夫婦が水俣を訪問した時と何てそっくりなのかと思う。日本の被爆者や反核運動というのは今や「総石牟礼道子金子兜太化(おかきの播磨屋でも可)」したかのようだ。「チッソを許す」の大惨事がまた再び…。

反面、我々はこれらと似て非なる光景も以前に見た事がある。韓国で朴槿恵が全泰壱の銅像や財団を訪問しようとした時と何て対照的なのかと思う。
2012年大統領選挙戦の最中、朴槿恵は「国民大統合」という中身カラッポのどーしよーもないスローガンを掲げ、事もあろうに全泰壱財団やその銅像を訪問しようというとんでもないパフォーマンスを挙行しようとした。今のオバマ(と安倍)がやろうとしている事と全く同じである。それに対して全泰壱の遺族(もピンキリで、中には一部ロクデナシもいるが)は「誠意が感じられない」として財団訪問を拒否し、銅像への献花も労働者達の体を張った抵抗で阻止された。当然の話だろう。今の韓国の進歩派や民主勢力も酷い堕落ぶりだが、それでも朴槿恵と全泰壱の「朴裕河的和解(別名・強姦に強い弁護士 笑)」を阻止した事は賞賛されて良い。

誠意も本気も全く感じられないオバマの広島訪問をなぜ歓迎出来るのか? 反核の視点から考えるなら、オバマの広島訪問など反対・拒否するのが当然であろう。いまのような情勢下であのようなパフォーマンスを許したら、むしろ日米という二大戦争狂国をますます増長させて、アメリカの「核の支配」を助長させるだけだ。

日帝資本主義と水俣病患者の「朴裕河的和解」
日帝と韓国極右政権による従軍慰安婦問題の「朴裕河的和解」

このような事をこれ以上許してはならない。石牟礼道子と(それにオルグされたと思しき一部の)水俣病患者達は天皇制に丸め込まれものの、従軍慰安婦被害者達は今でも「和解」を拒否して抵抗し続けている。全泰壱の衣鉢を継ぐ者達も朴槿恵との「和解」を断固拒否した。日本の被爆者や反核運動や広島の人々はどうするのか?

アメリカ帝国主義(&日帝)と広島の「朴裕河的和解」

を容認するのだろうか。繰り返すが、「原爆投下を謝罪しないでくれ」というのは日本側が強く望んでアメリカに哀願したのである。にも関わらず現実には

「天皇陛下お助け下さい」(by 石牟礼&播磨屋)
「オバマ大統領閣下お助け下さい」(by 広島県被団協&広島県知事)

という臣民への道まっしぐら状態では何も期待は出来ないだろうが。


それと最後にこの一言も追加しておきたい。今回のオバマ広島訪問が何か素晴らしい結果を生み出すかのような幻想を振りまいているハンギョレ日本特派員の吉倫亨(キル・ユンヒョン)はとっととくたばれ! と。馬鹿丸出しの社説をこれ見よがしに載せているハンギョレも一刻も早く廃刊した方が良い。「重要なのは被害者日本人と区別される「加害者日本」の責任を明確に問うことだ」だって? 「加害者日本」を免罪するのが今回のオバマ広島訪問の大きな目的の一つではないか! それに何かを期待する事自体がすでに大きな過ちという事に気付いていない。朝鮮人被爆者の事を想うなら、オバマ広島訪問に対してとるべき態度は一つ。反対・拒否する事だ!
少なくとも吉倫亨とハンギョレに「全泰壱精神」のカケラもない事だけは誰の目にも明らかである。

朝鮮労働党第7次党大会について~本筋から外れたちょっと気になるトピック

36年ぶりに開かれた朝鮮労働党の党大会が先日閉会した。金正恩が執権して何年も経つのだから、新リーダーとしてなるべく早くに党大会はやらねばならない状況にあったのは当然であろう。朝日新聞やアジアプレス(笑)などの日本マスコミは相も変わらず「党大会やっても北朝鮮は何も変わらない」と馬鹿の一つ覚えしか言わなかったのも予想通りではあった。「何も変わらない」のはアジアプレスら日本の報道機関の方だ。石丸次郎のように「北朝鮮報道の第一人者」を自称(詐称)しながら肝心の党大会そのものについてまともな分析記事一つ書けず、ツイッター上で「向こうの人間と電話して聞いたらみんな『党大会なんか俺らとは関係ない』と言っていた」みたいな、何の中身もない戯言を愚痴ってるだけでメシが食える者どもは実にお気楽なものである。仮にも「専門家」を名乗りたければもう少し真面目に仕事しろ!

簡単に言うと今回の党大会は経済発展により重きを置いた布陣を敷いたと言えるが、参考になる記事などは今後おいおい紹介していきたいと思う。が、今回は政治的なそれとは全く違う側面でちょっと気になる部分があったので述べておきたい。

新しい党中央委員会のメンバーを見てみると、党中央委員会政治局候補委員の中に「ノ・グァンチョル 노광철」という人物が新たに選出されていた。この人は人民武力部第一副部長(国防次官)の軍人で、今回新たに世代交代組として入って来た一人と言われる。が、筆者がこの人物について気になったのは、その名前であった。「ノ・グァンチョル 노광철」? 朝鮮人に「ノ 노」という姓があったのか、と。こう言っても朝鮮人・韓国人以外には中々理解されないかもしれないが、一般的に韓国や日本で知られている「ノ 노」という姓氏はどれも本来は「ロ 로」と発音・表記されるべきものだからだ。有名な所では元大統領である「ノ・テウ 盧泰愚」や「ノ・ムヒョン 盧武鉉」があろう。朝鮮語ではRやNの発音が語頭に来た場合は子音が抜け落ちたり変化するという、いわゆる「頭音法則」という現象があり、フランス語で歳月と共に発音しにくいHの音がなくなったのと似ている。ただしフランスでは発音はしなくなっても表記上はHを残して本来の発音が何であったかを伝えるのを固守しているのに対し、韓国では表記上もRやNに該当する子音(ㄹㄴ)を省いたり変えてしまっているので、同音異義語が無闇に増えて非常にケジメのない正書法になってしまったと言えよう。反面、朝鮮共和国では表記・発音共に古来からのRやNに該当する子音をちゃんと残している(実際にしゃべる際は訛る事も多いが、表記上はちゃんと古来の発音を固守している)。例えば朝鮮共和国の内閣副総理で今回新しく党中央委員会政治局委員に入った盧斗哲は「ロ・ドゥチョル 로두철」であり、その姓を「ノ 노」とは(少なくとも北では)書かない。

南の国勢調査などのデータを見ると、朝鮮民族の姓で本来は「ロ 로」だが南の正書法では「ノ 노」に変化するものとしては「盧」「魯」「路」の三つがある。この内「盧」は比較的よく見かけるが、「魯」「路」は少ない。実際に筆者が見た事のある南や在日の同胞で「ロ 로」「ノ 노」という姓を名乗る者はみんなこれら三つのうちどれかだった。また、元から「ノ 노」と発音する漢字の姓というのはその手のデータにはなく、筆者もこれまで実際に見た事がない。なので「ロ 로」ならざる元から「ノ 노」という姓氏は、少なくとも朝鮮民族には存在しないものとばかり思っていたのだ。
ところがここに来て「ロ 로」ではなく、元より「ノ 노」という姓の人物が登場したのである。これは朝鮮民族の姓氏研究において、実は文化人類学的に大きな発見なのではあるまいか。気になって筆者は朝鮮労働党の公式発表文などで「ノ・グァンチョル 노광철」という人名を調べてみた所、この人の名前の漢字表記は「努光鉄」である事が分かった。努力の「努」氏である。努という字は朝鮮語で元より「ノ 노」と読むが、朝鮮人・韓国人でこんな姓氏は初めて見た。少なくとも南や在日社会では一度も見た事がない。もちろん単純な誤字という可能性も否定は出来ない(可能性は低いが)。しかしそうでなければ、この何気ない発音の姓が実は大変貴重な発見という事になろう。


↑新しい朝鮮労働党中央委員会政治局の常務委員・委員・候補委員メンバー(労働新聞公式サイトより)。最下段右から二人目が努光鉄(ノ・グァンチョル 노광철)。クリックで拡大。

朝鮮民族の姓氏についてはこれまで旧王朝時代から研究や調査が行われて来た。例えば朝鮮王朝実録に収録されている「世宗実録地理志」(1454年 端宗2年)が朝鮮民族の姓氏研究では最も基本的な古い資料とされている。その後の代表的な例としては植民地時代の1930年に調査があり、解放後の南北分断体制では南で1960年以降国勢調査で実施され始めた。南での調査ではおおむね258-272種類の姓氏がある(後年になって数が増えたのは外国人の帰化姓が増えた為)事が判明しており、現在日本でも入手や閲覧の可能な朝鮮の姓氏に関する書籍類はこうした調査を元にしたものである。ただしこれらは飽くまで韓国すなわち南での調査結果に基づいたデータであり、どこまで行っても朝鮮半島の半分の地域を調べたに過ぎないという限界がつきまとう。朝鮮共和国すなわち北ではこうした姓氏に関する統計が公表されてこなかったからだ。北側でこうした調査が行われなかった訳ではなく、戸籍調査からのそうした統計は当然行われていたはずだが、そうしたデータは朝鮮共和国の政治体制上では国家機密にならざるを得ないので公開されてこなかったのであろう。したがって南には現存せずに途絶えた姓氏や、北の特定地域や集落に限定的な珍しい姓氏を受け継いでいる人々が今でも北にはいるのではないか、という事が研究者の間ではずっと言われてきた訳で、図らずも今回の朝鮮労働党第7次党大会はそれを証明する事になったのではないだろうか。「ノ・グァンチョル 노광철 努光鉄」という聞き覚えのない、それこそ「世宗実録地理志」にすら載っていなかった「努氏」を名乗る人物が朝鮮労働党の高官として現れた事で。

もちろんこの件についてはもっと深い調査研究が必要である。この「努氏」を初めて名乗った人物は誰なのかという先祖の来歴や、朝鮮人の姓氏につきものである「本貫(宗族)」は何なのか、族譜(家系図)は現存するのか、(可能性は低いが)実は最近改姓して新しく創始した姓なのかといった詳細な事由を解き明かすのは今後の課題であろう。

今回の朝鮮労働党大会に何も目新しい点はなかっただって? とんでもない! そんな事を言ってる者は今の朝鮮民主主義人民共和国という国家についても、朝鮮民族の文化や歴史についても何も分かってはいないのだ。政治についても文化についても何一つ!

今回の党大会は朝鮮民族の姓氏にまつわる歴史・文化研究という側面からも非常に興味深い事例が、断片的ながらも発見出来たと言えるだろう。もちろんこれはそういう珍しい姓の人物が高官になったという偶然の産物であり、意図したものではないだろうが、歴史・文化研究としては大変意義があったと評価出来る。この記事を書いている時点で、筆者の見た範囲では南のその手(姓氏や族譜)の研究者でこの新しい労働党中央委員会候補委員の「努光鉄」という人物の姓氏に言及しているのを見た事がないが、これはどうした事かと思う。こうした文化・歴史研究にこそ南北の協力が必要ではないか!

韓国の総選挙について

■セヌリ党と朴槿恵政権
言うまでもなく反北・親日の極右与党と政権。南北関係を李明博前政権からさらに悪化させ、開城工業団地の全面中断、北朝鮮人権法やテロ防止法の成立、史上最大規模の韓米軍事訓練と、戦争の危機を高めるだけ高めている。反面日本に対しては放射能汚染の危険が高い日本の食品や産業廃棄物(屑鉄や廃タイヤなど)をバンバン輸入推進して「食べて応援」「産業廃棄物を買って応援」まっしぐら。挙げ句が2015年末の日韓慰安婦合意…。こいつらどんだけ日本大好きなのか! 今の韓国は「アメリカの51番目の州」どころか、そのまた下である「日本の48番目の県」にしかなってないだろう。
韓国の総選挙(日本の「韓国県」県議会選挙?)でセヌリは負けた負けたと言われるがそれでも122議席も(韓国国会総議席数300)あり、おまけに朴槿恵(日本の「韓国県」知事?)の機嫌を損ねて選挙前に離党した無所属当選組(日本の郵政選挙の時の自民離脱組みたいなもん)を即復党させる事も決まったので、こいつらが依然として第1党を維持する事は変わらない。

■共に民主党
現在ここの臨時代表を務める金鍾仁は選挙少し前の今年2月に軍の視察に行き「いつか北が壊滅して統一」と発言して朝鮮民主主義人民共和国を挑発した。その前にも「国民生活に努力しなければ北は瓦解する」という発言をしている。非正規職だらけで世界一の自殺率に何の歯止めも果たせてない南の第一野党代表が、よくもここまでエラソーな事が言えるものだ。まさにおまえが言うなの極みだろう。おまけに金鍾仁は自分とこの議員達のフィリバスターを中止させてまで北朝鮮人権法やテロ防止法を採決させた。
加えて「帝国の慰安婦」の朴裕河が「スターダム」にのし上がる最大のきっかけは、盧武鉉政権が2006年に「和解のために」を文化観光部優秀図書に選定してやった事だという事を忘れてはいけない。前にも述べたが朴裕河は2012年の大統領選挙で文在寅を支持してもいる。反北・親日という点で共に民主党はセヌリとほとんど差異がない。これが「議会第1党(程なく2党になるが)」なのだという。
共に民主党は勝った勝ったと浮かれているが、金鍾仁と文在寅がいなければ実際にはもっと議席増えてたんじゃね? というのは公然の秘…。この二人は日本の民主党(民進党)で言えば前原とか長島とか松原とか、そういう「ポジション」だと言えば日本の人達には分かり易いだろうか。

■国民の党(安哲秀派)
ここの共同代表である安哲秀は2012年大統領選で6.15共同宣言の破棄など、朴槿恵よりも強硬な主張をした事がある。北が大嫌いな守旧反共主義者という点では朴槿恵・金鍾仁・文在寅らと全く違いはない。おまけに2015慰安婦合意を「問題はあるが評価」としている点も以前述べた。「第3党」がこれな訳だから、今後仮に国民の党が勢力をさらに伸ばしたり安哲秀が大統領になったとしても、南北関係の改善や慰安婦合意の破棄などは一切期待出来ない事だけは明らかである。元から安哲秀は「自分とこは民主より右」というふれこみで売り出してる訳だから。


こうした政党達が圧倒的なシェアで国会をジャックしたのが先の第20代韓国総選挙であった。上記三つの政党いずれも親米・親日・反共・反北・反労働者である事に変わりなく(日本のマスコミではよく民主党など野党を「北に親和的」と報じる事があるが、全くの間違い。そうした間違った知識を伝播させて商売してる元凶の一人が辺真一だろう)、これで韓国の政治や社会が何か変わるという事は、残念ながら期待薄であろう。共に民主党はフィリバスターを断念した時「議席が足りないから防げなかった」云々という言い訳をしていたが、じゃあセヌリが大幅に議席減らした今ならテロ防止法廃止法案を提出して当然破棄ですよね? でなきゃ詐欺だよ。まあ、無理だね。

結論:此度の韓国総選挙、韓国民衆の生活とは一切何の関係もなく、南北関係の改善や、ますます凶暴の度合いを増す日米の専横への歯止めにも全くならない、歴史の退歩だけをさらけ出した茶番劇である。セヌリが議席を減らして与野逆転した事だけに浮かれると大変な目に遭うだろう。朴槿恵という取るに足らない独裁者個人がレームダックしておしまい状態だからといって、何かが好転する訳ではない。今の韓国の状況は、日本で言うと1993年の細川連立政権成立時や2009年の民主党政権成立時に極めて似ている。当選した議員の面々を見ていると、南北関係や慰安婦問題に関して言えばむしろ選挙前よりも悪くなるんじゃないかという危惧が非常に大きい選挙結果だったと筆者は考える。

テロ防止法を破棄出来るの?
労働法改悪を阻止出来るの?
北朝鮮人権法を破棄出来るの?
南北関係改善や開城工団再開出来るの?
日本の放射能まみれな食品や産廃を輸入ストップ出来るの?
今の韓国は「遺伝子組み換え作物の壮大な人体実験場」と言われてるけど、それらを規制出来るの?
今の韓国で最大の環境破壊と言われている4大河川工事による水質汚染、原因であるダムをぶっ壊せるのか?
慰安婦合意を覆せるの?
済州島の海軍基地建設をストップ出来るの?
横暴を極める駐韓米軍をどうするの?
原発をいつまで動かし続ける訳?

これらが何一つ今回の選挙で争点にならなかったという事を思い出す必要がある。
何より油断ならないのは、少数与党になったセヌリは今や手負いの野獣という事だ。離党組の復党などまだ可愛いもので、今後は野党への弾圧を強めてくるだろう。選挙が終わって早速検察による選挙違反の摘発が始まっているらしいが、特に野党当選者への捜査だけが特別に厳しくなりそうな気配だ。特に今回の選挙では旧統合進歩党出身の無所属労働者候補が蔚山市で2人当選して、今回の選挙では数少ない朗報だったが、早速検察が選挙法違反容疑でその候補へのガサ入れに入った。これは明らかに嫌がらせ公安捜査と思われる。こういう事をこれから山ほどやってくるだろう。朴槿恵とセヌリ党は選挙に負けて縮み上がるどころか、ますます凶暴の度を増す可能性が高いという事は忠告しておきたい。



最後に別の話題ですが、転送歓迎なので宣伝をしておきます。ギリギリで恐縮ですが、お時間のある方はぜひ御来場を。

【出版記念セミナー】 鄭栄桓著『忘却のための「和解」 ――『帝国の慰安婦』と日本の責任』世織書房

 2014年から2015年、日韓を駆け抜けた『帝国の慰安婦』事態とは何か?
 この問いに正面から挑んだ著作・鄭栄桓『忘却のための「和解」『帝国の慰安婦』と日本の責任』(世織書房、2016年)が、この度世織書房より出版されました。在日朝鮮人史研究者の鄭氏は、『帝国の慰安婦』の問題点とその背景を検証し、日本軍「慰安婦」制度についての日本軍の責任の矮小化、被害者たちの「声」の恣意的な利用、日本の「戦後補償」への誤った根拠に基づく高い評価などの致命的な問題があるにもかかわらず、なぜ『帝国の慰安婦』はこれほどまでに絶賛されたのかについて考察し、日本の言論界の知的頽落について警鐘を鳴らしています。
 今回、同書の出版を記念して、著者とともに『帝国の慰安婦』事態の歴史的・思想的背景を探り、日本軍「慰安婦」問題の真の解決とは何かを考えるセミナーを開催いたします。評者には、日本の歴史修正主義言説への批判的検討を続けてきた能川元一さん、近代日本の公娼制の研究者であり、近年は日本人「慰安婦」についての先駆的な研究を発表されている小野沢あかねさん、朝鮮近代社会史研究の立場から植民地支配責任の問題について積極的に発言している板垣竜太さんをお招きしました。
 『帝国の慰安婦』のみならず、広く日本の歴史修正主義や戦争責任・植民地支配責任の問題を考える有益な議論が展開されるものと思われます。ぜひご参加ください

●登壇者:鄭栄桓、能川元一、小野沢あかね、板垣竜太

日 時:2016年4月17日(日)13:30開場~、14:00開始~
場 所:立教大学池袋キャンパス(東京都豊島区池袋)   タッカーホール講堂8号館
8201教室
資料代:1000円(一般)、700円(学生・非正規)
主催者:忘却のための「和解」書評会実行委員会
連絡先:mail:sd132005@g.hit-u.ac.jp

世織書房のページ
http://bit.ly/1SHNzDA

著者;鄭 栄桓 明治学院大学准教授 歴史学、朝鮮近現代史、在日朝鮮人史
一橋大学社会学研究科博士課程修了(社会学博士、2010年3月)。青山学院大学非常勤講師、立命館大学コリア研究センター専任研究員を経て現職。著書に『朝鮮独立への隘路 在日朝鮮人の解放五年史』(法政大学出版局、2013年)、共訳書に金東椿『朝鮮戦争の社会史 避難・占領・虐殺』 (平凡社、2008年)など。

●書評者

*能川元一:大学非常勤講師(哲学)
<主要研究業績> 共著『憎悪の広告―右派オピニオン誌「愛国」「嫌中・嫌韓」 の系譜』合同出版、2015年、「千田夏光『従軍慰安婦』は『帝国の慰安婦』においてどのように援用されたか」、『季刊 戦争責任研究』 第85号(2015年冬季号)「右派のイデオロギーにおけるネット右翼の位置づけ-道徳概念システム論による分析の試み」、『レイシズ ムと外国人嫌悪』(駒井洋監修・ 小林真生編著、明石書店、 2013年)所収など

*小野沢あかね:立教大学文学部教授 日本近現代史
<主要研究業績> 『近代日本社会と公娼制度―民衆史と国際関係史の視点から
―』 吉川弘文館、2010年。共編著「戦争と女性への暴力」リサーチ・アク ションセンター編『「慰安婦」 バッシングを越えて―「河野談 話」と日本の責任―』大月書店、 2013年。第5回女性学研究国際奨励賞受賞(2000年)第6回女性史学賞受賞 (女性史学賞選考委員会)(2012年)

*板垣竜太:同志社大学社会学部教授 朝鮮近現代社会史文化人類学
<主要研究業績> 『朝鮮近代の歴史民族誌』 (明石書店)、共著『東アジアの記憶の場』(河出書房新社)『日韓新たな始まりのための20章』(岩波書店)、 『Q&A朝鮮人「慰安婦」と植民地支配責任: あなたの疑問に答えます (FFJブックレット)

●関連記事
・日朝国交「正常化」と植民地支配責任 : 【宣伝】『忘却のための「和解」 『帝国の慰安婦』と日本の責任』(世織書房、2016年)
http://kscykscy.exblog.jp/25512248/
・『朝鮮新報』:【講演】「『帝国の慰安婦』事態と日本の知識人」/鄭栄桓
http://chosonsinbo.com/jp/2016/03/03suk-3/
・『ハンギョレ』:日本のリベラル陣営でも「帝国の慰安婦」めぐり激論
http://japan.hani.co.kr/arti/international/23733.html
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【怪作列伝 괴작렬전】太陽の末裔 태양의 후예 韓国軍 彼の地にて、斯く戦えり

■禍々しい未来予想図 in 20xx年

20xx年、日本ではあるNHKテレビドラマが空前の大ヒットを記録していた。その題名は「日いづる国の末裔」(原作:百田尚樹)といい、地球のどこかにある架空の紛争国「ウルク」に海外派兵中の自衛隊を舞台としたメロドラマである。ただしこの架空国家「ウルク」は当初「中央アジア」という設定だったのが、物語の途中で急に「バルカン半島」になったり背景の建物にロシア文字の看板が登場するなどいまいち国籍不明で、自らこの番組のゼネラルプロデューサーまで兼業するほど気合の入った籾井勝人NHK会長が後にインタビューに答えて曰く「あれはイラクがモデルですッッッッ!」と公式に発表する事で何とか設定が落ち着くというドタバタ劇も見られた。イラクか…。

それはともかく、このドラマの男性主人公はその海外派兵舞台に所属する自衛隊の大尉で、当代きっての若きイケメン俳優が演じていた。一方の女性主人公は紛争地に派遣された医療ボランティアチーム長の医師で、演じるのもこれまた当代きっての若い美人女優だ。この両人のロマンスを軸に物語は展開されるのだが、この男性主人公を奪い合う美人のライバルヒロインが何人も登場しモテモテという、まさに「大尉 島耕作」とも言うべき日本では王道の展開ぶりがここでも再現される。この王道展開がこのドラマを大ヒットに導いた特に大きな要因の一つと言って良いだろう。

それはともかく、この「日いづる国の末裔」というドラマは以下の企画意図に基づいて制作されたという。

あらゆる夢は金に通じ、幸福は成功順などと言われる。
ジャングルのごとき現実で生き残る為に人間としての美徳と価値などは容易く無視してすごす。

弱者の死は隠蔽され、強者の独り占めは合理化され、
卑怯に妥協した者の出世は知恵があると賞賛され、
義に基づいて抵抗した者の没落は無謀と卑下される、
貪欲が善という言葉に今や誰も恥ずかしがらないこの世に、英雄が必要だ。

真の英雄が必要だ。
金の価値を大事にしようとも、金の奴隷になる事を拒否し、
力の権威を誉れ高く守ろうとも、不当な力には決して屈服せず、
成功に向かって全力を尽くそうとも、成功の座にはより大きな責任の重さがつきまとう事を常に心に刻み、
他者の楽しみに大きく笑ってやれて、小さな痛みも共に泣いて抱きしめてやれる。
幼稚園の時すでに学んで知っているが、だんだん忘れて過ごした我々の心の中の真の英雄に出会いたい。


そして「日いづる国の末裔」というこのドラマの題名についても百田尚樹は以下のように語った。
「太陽が他者に光をもたらすように、主人公達が犠牲精神を発揮して周りの人達に温かみを与えるという意味を込めた」


こうした企画意図を大きく反映し、このドラマの自衛隊並びにその隊員である主人公の活躍ぶりは凄まじい。何しろ「日本の国益よりも派兵先の一般人の命が大事」などと言って、命令違反をも厭わないのだから! 例えばファンの間で語り継がれるこのドラマの名シーンの一つに以下のようなのがある。

…ある日ウルク現地で大地震が発生し、日本企業の事務所が入っているビルはもちろん周りの建物も多くが倒壊して多くの人が生き埋めになった。主人公の大尉は瓦礫をどかしてビルの生き埋めになった地元民の作業員を助けようとするものの、そこへ強欲な日本企業の地元支社長がやってきて、そんなのよりうちの事務所から掘り出せと叱責する。
「一体あの書類が何かわかってこうしてるのか? あの書類が何かといえば、平和再建事業に対するウルク政府との密約合意書ですよ。私の給料はこの国でもらってるが、日本国籍を持つ国民としてこれは全て愛国心からやるべき事でしょう。カラオケに行ったら最初の曲は君が代で始める人でこそ私が…もう察しがついたでしょう? これは国家的次元の問題なのだから、自衛隊員とは何なんだ? 国家的任務を優先する、それが自衛隊員じゃないか? 今この状況で作業員の一人や二人が死のうと問題ではないんだ」
復興事業に関する密約書類があって、それは日本の国家的利益がかかってる。おまえも自衛隊にして日本国民なら地元民なんかほっといてそっちを優先しろというのだ。それに対して主人公はこう返す。
「国家…国家が何だ…国民の安全と命を最優先にするのが国家だ。それがどういう事かと言うと、おまえのような奴でも危険に陥ったらあらゆる手段と方法を選ばずに動員してでも救い出すのが国家だ。自衛隊員である俺に国民の命よりも優先しろと国家が与えた任務はないんだから。本当にそれほど書類救助が急だというなら、行って直接掘れ」
このように、この自衛隊大尉である主人公は「日本の国益」よりも「地元民の命」の方が大事だと言ってのけるのである…

いよッ、カッコいいぞ自衛隊! さすが21世紀の皇軍! 兵隊さんよありがとう! 
このドラマは一事が万事この調子で、このように人命尊重第一主義でヒューマニズムにあふれた自衛隊(!)が紛争地や被災地の「真の英雄」として虫唾が走るほど、それこそ9999%くらいに超絶美化されたこのドラマが、21世紀の極右国家日本で流行らない方がおかしいだろう。昭和初期の某ラジオドラマじゃないが、この番組が放送される時間になると表の人通りが減るという現象も頻繁に見られた。「日いづる国の末裔」のヒットによってますます籾井と百田はふんぞり返って天狗になり、自分で自分の鼻の長さと重さを支えきれないとまで揶揄されるにいたった。
だが籾井と百田以上にこのドラマに相好を崩した人間がいる。他ならぬ内閣総理大臣・安倍晋三だ。安倍も「日いづる国の末裔」が大の「スペオキ」(「スペシャルお気に入り」の略)で、どんなに忙しくても政務の間を縫ってこのドラマを昭恵夫人と一緒にリアルタイムで視聴したという。安倍総理は共同通信とのインタビューでも「日いづる国の末裔」を以下のように大絶賛した。
「我が国の文化を世界に知らせるだけでなく、日本に対する関心を呼び起こさせて海外観光客誘致にも寄与しました。若者達に愛国心を高揚させて国家観を確立させるのにも教育的な効果があります」

かくしてこの自衛隊美化度9999%ドラマの放映後、世論調査では自衛隊に対する好感度がうなぎ登りに急上昇する。今や自衛隊に対する日本国民の支持率は90%を超え、20xx年度日経の就職人気企業ランキングで自衛隊がぶっちぎりの一位にランクインするという前代未聞の事態を目撃する事になった。「自衛隊が無用の軍隊? あんたいつの話をしてるんだね?」
そしてついに「みんなで世界一の平和主義者であらせられる天皇陛下を自衛隊の最高統帥権者に推戴する国会議員の会」が超党派(もちろん共産党と社民党の議員も余さず参加している!)で発足、その結果国会では「自衛隊を内閣から分離し、天皇直属とする」いう「新・改正自衛隊法 in 20xx年」が一人の棄権も退場もない完全なる満場一致(もちろん共産党と社民党も諸手を挙げて大賛成である!)で衆議院を通過、参議院でも何の問題もなく通過する事が確実視されている。この法案では自衛隊の最高幹部である統合幕僚長や陸上幕僚長が任官にあたって天皇から直接認証される「認証官」へと格上げされる事も新たに定められており、防衛官僚達の長年の悲願が実現するのも時間の問題だろう。これも全て「日いづる国の末裔」のおかげなのです! ありがたやありがたや…。
一つの映画やドラマが世の中を変える事がある。「日いづる国の末裔」はまさにそれを体現した実例となり、日本という国家をも丸々変えた。これなしに「自衛隊が就職人気ナンバー1な日本」「天皇が自衛隊を統帥する日本」が実現する事はなかっただろう。こうしたコンテンツの強さをまざまざと我々に見せ付けてくれた。

「日いづる国の末裔」の人気は日本だけに留まらない。海外へのコンテンツ輸出が決まる前から中国や韓国その他アジア圏の「日本文化オタク」達はネットを通じてこのドラマの情報を入手し、実際に視聴した。それがじわりじわりと広がって大変な前評判となり、正式放送が始まる前からすでにブームが始まっているというありさまである。まずは中国での有料配信が決まり、次いでベトナムやタイ・フィリピンなどでも放送が決まった。が、しかし韓国では…? 
韓国でもこのドラマの輸出が話し合われ、契約がほぼ8割方決まった頃、日本側担当者の一人に良くも悪くもローカライズに詳しい人間がいて、ふと重大なある問題に気付いた。「さすがにこれを韓国に輸出したらヤバイんじゃね?」目先の欲にとらわれて何も考えずにこれを韓国に輸出したらかえってまずいトラブルを誘発し、むしろ大損害を蒙る事になりかねない。この事に気付いた日本側担当者、輸出を断る為に交渉の場で急遽次のような口実をでっち上げて韓国側に言い出した。
「このドラマは複数の制作会社が関わり、権利関係が複雑に絡み合っている。このライセンス問題を解決するのが困難と判明した為、申し訳ないがこの話はなかった事にしていただきたい」

かくして日本、いやアジア空前の大ヒットドラマ「日いづる国の末裔」は他のアジア諸国にはほとんど正式輸出放送されたにも関わらず、なぜか韓国だけそれが行われず現在に至っているのである…。


■韓国を日本に、日本を韓国に置き換えてみれば

…そういう罪深い物語だが、もちろんこれはフィクションである。ただし全くの100%創作という訳でもない。種明かしをすると、今韓国で大ヒットしている某テレビドラマとそれが向こうで巻き起こしている社会現象などをそっくり日本に置き換えて(所々を多少誇張したり別のネタも色々チャンポンして)書いてみたのが上記の物語なのである。その問題の韓国ドラマはKBS(要するに韓国のNHKね)で制作放映された「태양의 후예」といい、現時点では日本未公開だが聯合ニュースの記事や韓流ミーハーどもの間ではすでに「太陽の末裔」という独自訳題で通っており、ハンギョレ日本版の記事では直訳で「太陽の後えい」とされていた。ここでは便宜上、有名な前者の訳題を採用する。
 


태양의 후예 太陽の末裔

韓国軍 彼の地にて、斯く戦えり
美形出演者達によって9999%超絶美化された韓国国粋主義と後発帝国主義的野欲の発現

出演:宋仲基、宋慧教、晋久、金智媛、姜信一他
演出:李応福、白尚勲
脚本:金銀淑、金元碩
放送局:KBS 2TV
放送期間:2016年2月24日-2016年4月14日









で、この「太陽の末裔」というドラマがどういう内容かというと、一言で言って「軍隊メロドラマ」だ。「ウルク」という中央アジア(だが当初はバルカン半島の国と説明されたり、劇中にロシア文字の看板が出て来たり無茶苦茶だった。こうして設定が二転三転した挙げ句、最終的には制作者公式設定として「イラクをモデルにした架空の国」という事に固まったらしい。い、意味が分からない…)の架空国家に派兵された韓国軍の中で、若い男性兵士と女性医師の関係を軸に展開される戦場恋愛ドラマという筋立てである。民間人(ただし米軍に雇用された通訳)の死者まで出した韓国のイラク派兵や、韓国が日本と非常に仲睦まじく世界中の紛争地帯へPKO派兵をしまくって、南スーダンでは日本軍から韓国軍への弾薬供給まで行われた現実を考えるとまるでシャレになってないドラマなのだが、これが韓国で大変な人気なのだという。韓国どころか中国でも配信されて大人気、ベトナムやタイでも近々放送を控えているというのだから凄まじい。しかしながら案の定ベトナムのさるジャーナリストが反発してフェイスブックに書いた記事が大きな話題になりもした。「海外派兵された韓国軍」を超美化して描いた韓流ドラマをベトナムに輸出して放送する? 頭おかしいの? 旧日本軍や自衛隊を美化したドラマやアニメを韓国で放送するのと何が違うのかという話なのだ。
それに加えて特筆すべきは、何と言っても朴槿恵がこのドラマをえらく気に入っていて激賛しているという点であろう! 大韓民国第18代大統領(ただし不正選挙で当選)朴槿恵曰く

http://biz.heraldcorp.com/view.php?ud=20160321001022
朴大統領、ドラマ「太陽の末裔」絶賛(原文は朝鮮語)

我が国の文化を世界に知らせるだけでなく、韓国に対する関心を呼び起こさせて海外観光客誘致にも寄与した。
「太陽の末裔」が若者達の愛国心を鼓舞させ、国家観を確立させるのにも教育的な効果がある。


…何かこの人恐ろしい事言ってる! 大統領のこの発言聞いただけで筆者はドン引きなのだが、普通そう思わないか? 例えば安倍晋三が「永遠の0」とか「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」とか艦これとか刀剣乱舞を評して同じ事言ったら? そういう話なのだ。と言うか、それが白昼堂々まかり通るのが今の韓国という国である。タカ派ぶりや軍拡化への野欲といった方面で言えば、韓国は日本にも決して負けてはいない。

そして実にぶっ飛んでいるのがこのドラマの「企画意図」であろう。この「太陽の末裔」の公式サイトにはこう書かれている。

http://www.kbs.co.kr/drama/sun/about/program/index.html
太陽の末裔 企画意図(原文は朝鮮語)

あらゆる夢は金に通じ、幸福は成功順などと言われる。
ジャングルのごとき現実で生き残る為に人間としての美徳と価値などは容易く無視してすごす。

弱者の死は隠蔽され、強者の独り占めは合理化され、
卑怯に妥協した者の出世は知恵があると賞賛され、
義に基づいて抵抗した者の没落は無謀と卑下される、
貪欲が善という言葉に今や誰も恥ずかしがらないこの世に、英雄が必要だ。

真の英雄が必要だ。
金の価値を大事にしようとも、金の奴隷になる事を拒否し、
力の権威を誉れ高く守ろうとも、不当な力には決して屈服せず、
成功に向かって全力を尽くそうとも、成功の座にはより大きな責任の重さがつきまとう事を常に心に刻み、
他者の楽しみに大きく笑ってやれて、小さな痛みも共に泣いて抱きしめてやれる。
幼稚園の時すでに学んで知っているが、だんだん忘れて過ごした我々の心の中の真の英雄に出会いたい。


また、気になる「태양의 후예 太陽の末裔」という題名の由来についても、この番組の演出担当プロデューサーである李応福が以下のように述べている。

http://www.iybrb.com/news_vew.aspx?id=45194
「太陽の末裔」の監督、新華社通信インタビュー 宋仲基キャスティング後日談(原文は朝鮮語)

「太陽が他者に光をもたらすように、主人公達が犠牲精神を発揮して周りの人達に温かみを与えるという意味を込めた」


ここまで戦争や自国軍隊の海外派兵を美化出来る神経こそ凄まじい。まさに9999%美化ッッッッ!

じゃあ何でこんなドラマが韓国や中国などで流行っているのか? さらには本来あってはならない事だが、何でベトナムでも放送前からやたらと人気を集めているのか?
色々な論評を読んで分かるのは、まず第1に宋仲基(송중기 ソン・ジュンギ)や宋慧教(송혜교 ソン・ヘギョ)・金智媛(김지원 キム・ジウォン)といった男女問わぬキレイ所の出演者がある。国を問わず、いわゆる「無概念ミーハー層」にウケている最大の理由は言うまでもなくこれであろう。
第2の理由は、それら美形出演者達の演じ描く軍隊の姿がこれまた超絶美化されている点にあるのではないか。こちらは主に韓国国内の一般視聴者層ならびに朴槿恵やタイのプラユット・チャンオチャ総理といった各国のお偉方の間で人気を博した理由と見られる。つまり軍隊があまりにスマートかつ「正義の集団」のごとく描かれている為、それによって例えば韓国で兵役に行った事のあるマッチョ男性などが郷愁に浸るという話が実に多かった。「若い頃の軍隊生活を思い出した」と。その手の男権主義者というか男根主義者というかその手の男どもが、己の外見とは似ても似つかぬ「太陽の末裔」のイケメン主人公・宋仲基と軍隊時代の自分を重ね合わせて精神的自慰行為にふけっているという訳だ! いい歳ぶっこいたオヤジがこのドラマを見ながら「ああ、宋仲基ってカッコいい。軍隊時代の僕にそっくり」と! ああ、気持ちが悪い! 個人的意見を言わせてもらうなら、この手の男性視聴者達は宋仲基などよりも、むしろ漫画原作者の小池一夫に(メンタリティが)そっくりだと思います。いや、宋仲基に似てると言えなくもないか(理由は後述)。
朴槿恵やチャンオチャといった各国のお偉方が「太陽の末裔」を自身のスペオキと言ってはばからない理由もこれに似た所があろう。「軍隊の美化」これに尽きる。例えばこのドラマの第7話にこんなシーンがある。

…ある日ウルク現地で大地震が発生し、韓国企業のやってる発電所事務所の入っているビルはもちろん周りの建物も多くが倒壊して多くの人が生き埋めになった。主人公の大尉は瓦礫をどかしてビルの生き埋めになった地元民の作業員を助けようとするものの、そこへ強欲な発電所の所長がやってきて、そんなのよりうちの事務所から掘り出せと叱責する。
「一体あの書類が何かわかってこうしてるのか? あの書類が何かといえば、平和再建事業に対するウルク政府との密約合意書ですよ。私の給料はこの国でもらってるが、大韓民国国籍を持つ国民としてこれは全て愛国心からやるべき事でしょう。カラオケに行ったら最初の曲は愛国歌で始める人でこそ私が…もう察しがついたでしょう? これは国家的次元の問題なのだから、軍人とは何なんだ? 国家的任務を優先する、それが軍人じゃないか? 今この状況で作業員の一人や二人が死のうと問題ではないんだ」
復興事業に関する密約書類があって、それは韓国の国家的利益がかかってる。おまえも韓国軍にして韓国国民なら地元民なんかほっといてそっちを優先しろというのだ。それに対して宋仲基演じる主人公はこう返す。
「国家…国家が何だ…国民の安全と命を最優先にするのが国家だ。それがどういう事かと言うと、おまえのような奴でも危険に陥ったらあらゆる手段と方法を選ばずに動員してでも救い出すのが国家だ。軍人である俺に国民の命よりも優先しろと国家が与えた任務はないんだから。本当にそれほど書類救助が急だというなら、行って直接掘れ」
このように、この韓国軍大尉である主人公は「韓国の国益」よりも「地元民の命」の方が大事だと言ってのけるのである…

いよッ、カッコいいぞ韓国軍! さすが日本の皇軍と親日派を母体に作られた軍隊だけの事はある! 兵隊さんよありがとう! 

…冗談はともかく、このドラマで描かれている韓国軍の姿は現実のそれとは全く違う。美化も美化、9999%、一体どこの平行世界の韓国軍なんだと言いたくなるほどだ。韓国軍というのはそもそも旧日本軍出身の親日派軍人(それも満州や中国で特に残虐な行為を率先してやった最悪質分子で、これらを自らの「スペオキ」として育て上げて悪用し尽したのが日本軍上層部という事でもある!)が中心となって作られたものであり、当然組織の体質も旧日本軍のそれを濃厚に受け継いでいる。つまり上官や先輩兵が何の理由もなく下の者をビンタするリンチ社会「天皇の軍隊」そのものだ。日本の自衛隊や「海猿」で今でもそうした残酷で陰湿なリンチやいじめが横行しているように、韓国軍でも全く同じ状況が今でも続いている。そうしたリンチ被害に遭った兵士が自殺したり、いじめた相手を逆に射殺して銃乱射事件が起こったりするのもしょっちゅうだ。兵器納入に関する汚職も日常茶飯事で、軍の高官が賄賂を取ったり軍需産業に天下りした奴が莫大な横領やキックバックを懐に入れるのが当たり前というのも日本の自衛隊とあまりに似過ぎている。もちろん都知事選の使途不明金問題で今をときめく某元航空自衛隊幕僚長みたいな奴は、韓国軍でも珍しくない。
それをああまで美化してのけたのだから、朴槿恵が喜ばない訳がない。昔、日本軍が中国を侵略して重慶爆撃だの南京大虐殺だのやりまくってたまさにその時、日本では「日本の兵隊さんは圧制に苦しんでいる中国人を助けている。行く先々で地元の子供達からもこんなに慕われているのです」みたいな児童洗脳用の絵本や教材が大量に流布していたのと全く同じである。日帝の領袖達もそうした日本軍美化作品を見て相好を崩しまくっていたではないか。

http://d.hatena.ne.jp/tadanorih/20130828/1377622188
お子様向け日本軍大活躍「過激描写」画像




↑ 戦前の日本(1939年)で発行された「日帝版:太陽の末裔(笑)」。この手の軍国主義・侵略主義美化エンターテイメントについて言えば韓国よりも日本の方がはるかに早かったとも言える。「貴様らのいる場所はすでに、我々(日帝)が77年前に通過した場所だッッッッ!」

「太陽の末裔」の名場面とされる先述のシーン、上記日帝の児童洗脳絵本と何が違うというのか。もし実際に海外派兵先の韓国軍が同じような状況に出会ったら、間違いなく現地人ごときの救助よりも「国益」のかかった機密書類の掘り出しを最優先させる事だけは100%間違いない。絵本では現地の子供達に慕われているとされているが、実際の日本軍は女子供関係なく大量虐殺して回っていたのと同じである。PKOにせよ米軍の有志連合にせよ、その手の海外派兵部隊などというのは占領側の身勝手な欲得(国益)の為にやって来ているだけであって、占領地の住民など虫ケラ以下の存在でしかない。小泉時代のイラク派兵は「石油確保の為」とはっきり国会で答弁されていたし、韓国国防部の関係者は「我が国のPKO派兵は対北軍事訓練として大変役立っている」「PKO部隊の駐留費はどうせ国連から出るんだから、もっとバンバン派兵して国連から金をむしり取れ」という事を臆面もなく堂々と公言している。これがPKOなどで紛争地へ軍隊を派兵している国々の実態であり、本音だ。伊勢崎賢治ら「自衛隊を活かして新9条制定派」の狙ってる事もまさにこれだろう。「現地住民の生命を第一に考える海外派兵部隊」などという「太陽の末裔」や日帝の洗脳絵本ほど実態とかけ離れた大いなる幻想はない。

さらに言及しておかねばならないのは、じゃあ朴槿恵はじめとする韓国のエスタブリッシュメント層のみなさんは何で自分ちの子弟達を兵役に出さないんですか、という事なのだ。知っての通り韓国は今でも徴兵制を敷いているのだが、兵役に行く人間に裕福な家の子弟はほとんどいない。財閥のオーナーや有力政治家の子弟というのはやれ病気だの怪我だのを口実に手を回して兵役逃れをするからだ。金や力のある家はそういう事が簡単に出来る。逆に言えば、金持ちでも何でもない一般人は泣く泣く軍隊に行かざるを得ないという事だ。兵役に行くという事がどれだけ人生の貴重な若い時間の浪費であり、危険(厳しい訓練や事故や軍事境界線への配置で死んだ人間は数え切れない)な事か、また韓国軍がどれだけ酷い腐った組織かという事を、韓国人であれば金持ち貧乏人問わず知らない者などいやしない。だから上流階級の者は誰一人自分の子供を軍隊に送ったりしないのだ。「太陽の末裔」で愛国心を鼓舞させて国家観を確立だって? だったら朴槿恵はセヌリ党の議員や財閥オーナー家の子供を一人残らず全員強制的に軍隊へ送ってそれを実践してみろ、さもなければ徴兵制そのものをなくせという話なのだ。兵役に行かなくて済んだ上流階級の家の子弟の事を韓国では俗に「신의 아들 神の息子」と言うが、文字通り兵役忌避が簡単に出来る家とそうでない家では天国と地獄ほどの格差がある。そうした地獄大韓民国の現実を隠蔽して騙すのにどれほど「太陽の末裔」は大きな貢献を果たした事か!
実際に「太陽の末裔」がヒットした事で、韓国では軍に対する好感度が急上昇している。さすがに就職人気ナンバー1などという事はないが、それでも前例のない異例な光景だという。アメリカでも日本でも貧乏人ほど軍隊へ行かざるを得ない、いわゆる「経済的徴兵制」という状況が年々強くなっている。同時に日米は自国の経済的権益(地下資源確保や自国企業の海外進出)の為に軍隊を送り込む常習犯であり、韓国も大分前から経済界の要望でそうした海外派兵をもっと出来るようにしろという圧力があった。韓国のPKO増大や「吸収統一して北の資源と土地をぶん取れ」というのはそうした流れにある。「太陽の末裔」はまさにそうした韓国的国粋主義と2周3周遅れの後発帝国主義的野欲の視点から、タイムリーこの上なく成功したプロパガンダ娯楽作品という事だ。
これも言っておかなければならないが、「太陽の末裔」主演俳優である宋仲基という若きイケメン役者、軍隊大好きのとんでもないタカ派だよ。韓国陸軍は宋仲基を積極的に宣伝広報に起用しているばかりか、当人自身も率先して韓国陸軍の広報誌に登場したり原稿を寄せたりしている事はもっと多くの人に知られても良いだろう。宋仲基は軍隊時代にDMZに配置された事があり、そこの警備に就ける者は韓国国民の1%にしかならない、自分はそれを誇りに思うみたいな話を平気で言いまくってるのだから…。

ちなみに2012年の小泉訪朝と拉致フィーバー以降、国籍を朝鮮籍から韓国籍に変える在日が相次いだが、朴槿恵政権の韓国は在外同胞をも徴兵出来るように(1994年以降に生まれた韓国籍在外同胞は、韓国での在留期間が一定超えると兵役義務が生じる)兵役法を改悪した。もちろん近年になって朝鮮籍から韓国籍に変えた者達の多くというのは、北の評判が悪くなった為に一時の世間体に惑わされて国籍を変更した訳だが、皮肉にもそれと引き換えに自分の子供達が軍隊に取られる危険に直面したという訳だ。何も考えずに自分の子供や孫を南へホイホイ旅行させたりしていたら、ある日突然空港で身柄を拘束されて、旧日本軍並みの世界最悪な軍隊に放り込まれる事になりかねないという事を多くの韓国籍同胞はもう少し真剣に考えた方がいい。そして、今や多くの者が「独裁体制だ」と言っては偏見としか言いようのない誹謗中傷をしている朝鮮民主主義人民共和国が在外同胞を無理矢理軍隊に取ろうとした事があったのか、という事も。


■「太陽の末裔」が残したもの

最後にこの「太陽の末裔」というドラマは実に悪い前例を作ったという事も指摘しておきたい。つまり韓流ドラマの手法による戦争礼賛・軍隊賛美プロパガンダがこれほどまでに強烈で「有効」であるという事を証明してしまったという事だ。もちろんこうした戦争宣伝エンターテイメントというのは戦前日本の絵本はもちろんだが、アメリカではハリウッドがもっと前から露骨かつ大々的にやって来た。「太陽の末裔」もそうした流れの一つに位置付けられるものの、その「手法」が日本やアメリカと違っている所に注目すべき点がある。アメリカであればハリウッド映画、日本であれば艦これやガルパンやゲートのようなオタク向けゲームかアニメ(笑)というそれぞれの国の好みに合った手法で軍隊や戦争のプロパガンダが行われてきた。それに対して韓国は? 「太陽の末裔」はこれ以上ないほどの典型的な「韓流ドラマ」の作りなのだ。日米とはまた違った作劇手法による有効な戦争プロパガンダ手法を開拓してしまったという点で、非常に特筆すべき存在であると言えよう。
例えばタイのチャンオチャ総理は3月17日にバンコクで行われた公式行事の場で

http://www.nocutnews.co.kr/news/4568513
「『太陽の末裔』を見ると、愛国心と犠牲、命令に対する服従、そして責任感ある市民にならねばならないという内容が溶け込んでいる」
「みんなこのドラマを見よ。誰であれこのようなドラマを制作して政府官吏達を喜ばせれば、財政的支援を惜しまない」

と発言して視聴を自ら積極的に督励したばかりか、同じようなのを作れとまで言っている。チャンオチャ総理とは何者か。現在のタイは2014年に軍事クーデターが起こって軍事政権下にあり、チャンオチャはその軍事政権のトップである。言うなれば「タイの朴正煕(全斗煥でも可)」か。軍人の口からこのようなセリフが出る事ほど不気味で不快な事はない。外国のドラマとはいえ、軍隊美化物語としての「有効性」をタイ軍事政権のトップ自ら認めて「国民はこれを見ろ、これをお手本にしろ、同じのパクって作れや」と督励しているのである。
中国でもこのドラマがヒットしたというのは極めて不気味である。中国がこのドラマを検閲で通したのはやはりタイと同じで、軍隊や愛国心のプロパガンダとしての効用が絶大だという事を見抜いたからだろう。最近、習近平政権以降の中国にはどうにも覇権主義的な臭いが漂う。朝鮮共和国の核問題などでも「中国が東アジアの安定を統制する」という発言がやたらと出て来るのは感心しない。
この両国について今後考えられるのは、遠からず自国版「太陽の末裔」を制作する可能性が高いという事だ。このドラマの使える要素を大いに学んだドラマなり映画なりの宣伝扇動エンターテイメントを制作してくるだろう。全くもっていい迷惑としか言いようがない。

ベトナムのジャーナリストがこのドラマの放映に強く反発した事こそ正論である。だがこの事は、大量の美形出演者とおためごかしのエセヒューマニズムで包装された韓流軍隊・愛国心プロパガンダに惑わされたり感化されてしまった者がベトナムにおいても多数いる(それもかつて自国の侵略に加担し、それを反省・謝罪するどころか今でも「いい事をしてやった」と開き直っている旧敵国の!)という悲しい現実を表していよう。韓国や中国で隠れて艦これや刀剣乱舞に熱中している層がかなりの数に登るように、だ。これらには全く言葉をなくす。これほどまでに、「一見魅力的に見えるエンターテイメント」という糖衣で包まれた邪悪なプロパガンダほど恐ろしいものはない。

日本? 少なくとも現時点筆者の見て回った範囲では、日本の政治家がこのドラマを絶賛したという話は聞かない(公式放送前という事もあるが)。実際に「太陽の末裔」はどちらかと言うと安倍晋三よりもカミさんの昭恵の方が喜んで見そうな気がする。中国やタイなどでのフィーバーと違い、日本では「太陽の末裔」は韓流ミーハー層に限定した人気で終わるのではないかと筆者は思う。日本にはすでに「永遠の0」がある! 「ガールズ&パンツァー」がある! 「風立ちぬ」がある! 「艦隊これくしょん」がある! 「刀剣乱舞(大東亜共栄圏ッッッッ!)」がある! 「ゲート 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり」があるではないか! はっきり言って「太陽の末裔」がやってる事は、今の日本では自衛隊の広報アニメである「ゲート」が十分に務め上げており、そこに入り込む余地はないだろう。

「太陽の末裔」だと? 貴様らのいる場所はすでに、我々(日帝)が77年前に通過した場所だッッッッ!

何ともおぞましい通過地点だが。

現時点の予想として言える事はこれくらいだが、それでも実際にこのドラマがいつ日本でも放送されてそれからどんな事が起こるのか、今後とも鋭意注視してみたいと思う。

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