韓国ではTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を星州という地域に配備する事が朴槿恵政権によって一方的に決定され、以来地元住民や平和統一運動団体などが反対運動に乗り出して政府に激しく抵抗している。いわば韓国のTHAAD配備とは日本で言うなら高江や辺野古の米軍基地建設と同じようなものと言って良い。星州の住民達はまさに「THAADはどこにもいらない」という血を吐くような訴えを続けて抵抗している。
ところがここへ来て星州ではおかしな展開になってきた。
http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002237303
星州郡守「第3の場所」要請…住民達「記者会見無効」と鬱憤(朝鮮語記事)
金恒坤郡守、国防部に公式要請…「反駁記者会見」住民達「国民の意思を集めて闘争委牽引」
2016.08.22 11:57
要約すると、THAAD配備候補地にされた星州の郡守(地方自治体長 市長や村長に該当)が郡民の意思を裏切って「THAAD反対。朝鮮半島の平和を脅かすTHAADは
どこにもいらない」から「THAADは
うちの郡にはいらない。どこかよその候補地を選んでそこへ」に変わったという事だ。
これは今日になって突然変わったのではなく、これまでにもおかしな前兆があった。8月上旬辺りから韓国政府は「第3の候補地」という発言をリークし、もう少し人が少なくて影響の小さい場所へ候補地を移す事もあり得るみたいな話をし始めた事である。これに星州のTHAAD反対闘争委員会の一部委員が同調、
21日に「第3の場所を探すよう政府に要請し、その上で闘争委は解散」という議題で会議が行われ、「国防部(政府)は公式に現在の候補地を取り下げるが、闘争委は直接第3の候補地を言及せず、国防部は正式な手続きを経て第3の候補地を発表すべし」という訳の分からない案が最終的に通ってしまった。要するにこれは「うちへの配備は絶対いや。その代わり政府が民主主義的な手続きさえ踏んでTHAADがどっかよそへ言く分には、うちは全然オッケー」というとんでもない妥協案である。住民達の圧倒的意見は「朝鮮半島の平和を脅かすTHAADは、
うちだけじゃなくどこにもいらない」であり、当然これを聞いた住民達は猛反発、この案を発表した闘争委広報団長が殴られるというハプニングまで起こった。あまりに住民達の抗議が激しかった為、結局この日の発表内容は無効として再論議するという事に落ち着く。
その翌日にこれである。当の自治体長が率先して「第3の候補地に」という裏切りの妥協案、すなわち政府の分断工作に乗っかってしまった訳で、韓国でも沖縄でも米軍基地問題などで今まで無数に見せ付けられてきた裏切り行為がまたしても繰り返された。そもそもこの闘争委の委員達というのが郡会議員や団体長という「地方ボス」で構成されていて、極めて政府に妥協的な傾向が強い。多くの一般住民達のように「THAAD絶対反対」「朝鮮半島の平和が第一」ではなく、「迷惑料の増額という条件闘争」「我が大韓民国(どころか本当は日米)の国家安保が第一」で手打ちしたいというのが本音という事である。こうした民心を省みない地方ボスの欲得と、それにつけこむ政府という構図が典型的な程に星州では現れてしまった。
上記オーマイニュースの記事にあったこの金恒坤(キム・ハンゴン 김항곤 ちなみにセヌリ党所属)という郡守の発言を一部訳して抜粋する。これらをお読みになった方は間違いなく「この郡守の言ってる事、なんかどっかで聞いた事があるような…」という感想を持たれるであろう。ちなみにこの郡守の記者会見に際して、抗議に押し寄せた住民達が郡庁の役人達や警察によってブロックされたばかりか、暴力を振るわれて排除された者も多数という事も付け加えておきたい。こういう光景もなんかどっかで見た事があるような…。
「これ以上極端に陥る、代案なき反対は事態解決の為の根本的な解決法案たりえない」
「国家安保に反する無条件的な反対は我々全員を破局へ導くだけであり、もし原案通りに推進されたら『星山炮台THAAD配置』という取り返せない傷だけを残すのみ」
「星山炮台THAAD配置決定は必ずや撤回されなければならない。代わりに第3の場所を決定してくれと韓民求国防長官に要求した」
「去る4日に大統領におかれてはTHAAD部隊移転検討をおっしゃって下さり、8月17日星州訪問時の長官におかれても直接「第3の場所」検討受け入れ意思を明らかにした」
「星山炮台ではない『第3の場所』を推進して、一日も早く荒廃した我が星州郡の郡政を原状復帰する」
この郡守の言ってる事、日本でも米軍基地や自衛隊基地の問題でこれまで嫌になるほど聞かされてきたセリフの集大成である。「代案なき反対」だの「国家安保に反する無条件的な反対」だの「このまま行ったら推進されるだけ(だからよりマシな条件で妥協しようぜ)」とかさあ…。
今回の件を見ていて感じたのだが、星州の郡守だの闘争委の委員(に就いている地方ボスども)だのの言動、高江や辺野古の件で妥協丸出しのいわゆる「沖縄の保守(屋良とか佐藤とか下地とか翁長とか)」と何もかもよく似ているが、それ以上に沖縄米軍基地引き取り派の論理とそっくりであろう。
「自分とこは嫌だからよそへ移せ。基地そのものが持つ軍事的脅威とか侵略戦争への加担とか知ったこっちゃない」
「『絶対反対』は通りゃしない。だから妥協案(本土引き取り、第3の候補地など)で手を打とう」
「国家安保ッッッッ!」
星州で今起こっている事は、このまま行けば間違いなく高江や辺野古の未来である。同時に星州住民を裏切って「第3の候補地へ」と言っている地方ボス達の姿は間違いなく日本における「引き取り運動」の姿そのものだ。
しかしながら「韓国の引き取り運動」は今やここまで自分らの「目標」に近付きつつあるのです! ツイッターで戯言を垂れ流すしか能のない日本の「本家・引き取り運動」とは比べ物にならないくらい「実行力」があるのです! 韓国のTHAADは彼らの「活躍」で、このまま行けば間違いなく「第3の候補地」へ「引き取り」される事になるのです! 移転先の住民が電磁波障害や米軍兵士の被害を受けても、それは国家安保の為には「当然の犠牲」であり、一切気にする必要はないのです! 自分らの土地でさえなければ全然オッケー!
韓基大さんをはじめとするその他有象無象の在日の引取り運動論者ども(別名:在日の暗害分子)はぜひとも韓国現地へ飛び、今回の結果(と言うにはまだ早いが)を引き出した星州の地方ボスのみなさんに師事して、そのノウハウを「引き取り運動」に活用しようではありませんか! 韓米日の国家安保の為のTHAAD配備と米軍基地本土引き取りと沖縄への自衛隊配備メガ盛り化の三点セットを「日韓連帯」で成し遂げましょう!
…冗談はともかく、血のにじむような人民大衆の抵抗と闘争を、愚かなお偉方や暗害分子達が踏みにじって私利私欲の糧にするという構図は日本と韓国という「民主主義国家」で白昼堂々現在進行形である。
PR