「海保」職員とはどんな人たちなのか。海上保安官の活動ぶりを描いた人気漫画「海猿」の原案・取材を手掛けた漫画原作者の小森陽一さん(43)は、ビデオ映像流出事件について、「やむにやまれず出した、と思いたい」と語る。
小森さんは10年以上前から取材し、約200人の海上保安官に会って話を聞いた。初めての取材時には「海上保安官は『黙して語らず』です」と言われ、まともに話が聞けるまで半年かかったという。職員に対する一般的な印象は「口べたな人が多いが、一言で言うと正義の味方」。打ち解ければ、一緒にいて気持ちが良く、底抜けに笑う人ばかりだったという。
一方で、「迷えない人たち」とも評する。救難、警備の現場は一瞬の迷いが命取りにつながるからだ。即断即決が必要な仕事と感じたという。
生活に身近な警察官や消防士と違い、仕事の内容は一般の人たちに知られることは少ない。海猿などの作品を発表した際は、海上保安官の家族から「仕事の内容が分かった」と感謝の言葉が寄せられたという。
今回「流出した」と告白したのは現役の海上保安官。「保安官の誇りもあれば、苦悩もあったのでは。動機は『政府に抗議したい』でも『国民が見るべき』でもなく、『見てもらえれば、逮捕が妥当な事案と分かってもらえる』という単純なところにあるのでは」と推測する。そのうえで「流出の是非は分からないが、それに至った経緯を考えるべきだ。危険と隣り合わせの最前線が迷わなくていいような指針を、政府には示してほしい」と語った。
出版社とのいざこざなどを表沙汰にして何かと話題の漫画家・佐藤秀峰(もう1つの代表作として「ブラックジャックによろしく」が有名ですが、この作品は本職の医療関係者からはデタラメだと酷評されている事を忘れてはならないでしょう)が作画を担当した海上保安庁の漫画「海猿」ですが、同作のパートナーである原案担当者のインタビューが上記です。
今回の釣魚島(尖閣)での中国漁船拿捕映像流出の件で同作の原案者にも当然のように御意見拝聴となった訳です。まあ、海保のプロパガンダ漫画で脚光を浴びてしまったような人間ですから、海保に批判的な事を言うはずもありません。映像流出についても上記の通りえらく同情的です。実際に「海猿」がヒットしたおかげで小森&佐藤の作者コンビだけでなく海保自体もまたずいぶんと脚光を浴びてしまった訳で、漫画やドラマ・映画のヒット後には海保への入庁希望者が増えたとも言われました。同じような仕事をしていても、「無用の軍隊」こと海上自衛隊とはえらい違いではありませんか。現実に海保と海自は、それこそ旧日本軍の海軍と陸軍ほどにも仲が悪いと言われているのは有名でしょう。海保は創設時に旧内務省系の人脈が抜擢され、海自は公職追放が解かれた後の旧海軍関係者が抜擢されて動かされました。海保は主に民間船舶、海自は軍船と担当が分けられており、典型的な日本的縦割り行政による役所間のいがみ合いがここでも見れる訳です。
が、海上保安庁という組織はそもそも果たしてそれだけで済ませて良い組織なのでしょうか? 小森の言うように「正義の味方」なのでしょうか? 日本の軍拡化・再軍備に反対し、かつてのアジア侵略を反省・補償してアジア諸国との真剣な友好関係を築いていきたいと願う者にとっては特にそうでしょう。
自衛隊の前身である警察予備隊が朝鮮戦争に参戦して戦死者まで出したのと同様に、海保も朝鮮戦争では掃海部隊を出して死者を出しています。本来なら軍隊の仕事である領海警備をやっている事からも分かる通り、海保もまた「事実上の軍隊」である事では自衛隊と変わりありません。消防隊と違って、ただの救助組織などでは断じてないからこそ問題であり、ヤバイのです。さらに沖縄辺野古の米軍基地建設反対運動を鎮圧する為に、海保が反対運動側のボートやダイバーにひどい暴力を振るい、あわや死人が出る寸前までいった事は1度や2度ではありません。沖縄米軍基地反対集会へ行けばこの手の実話はいくらでも聞く事が出来ます。そりゃ、こんな「殺人行為」をやっていれば「仕事の内容は一般の人たちに知られ」たくないでしょうよ。
敗戦後の日本再軍備と朝鮮半島への再侵略のごとき朝鮮戦争への参戦、平和運動への暴力的弾圧行為など、海上保安庁という組織が行ってきた極めて危険で好戦的な行為は数知れません。これらはまさに「軍隊」だからこそやれる野蛮な行為でもあるでしょう。
日本政府は何かと言うと「北朝鮮の不審船」を問題にしますが、海保や海自や日本の漁船は北朝鮮の領海を侵犯したり密漁に入った事がないとでもいうのでしょうか。こうした日本側の船だって向こう側からすれば「不審船」そのものです。常識的に考えて、北朝鮮が「不審船」を送り込んでスパイしているというなら、対する日本側の海保や海自の船も北朝鮮の領海に忍び込んで同じような事をしていて当然でしょう。海保はそんなに無謬でクリーンな組織なのですか。かつて朝鮮戦争にまで参戦した組織がそんなはずはないでしょう。
そんな危険な組織を美化する漫画が売れてしまうのは誠に恐ろしい事だと思います。医療現場からすればデタラメだらけのハッタリ漫画で売れたインチキ漫画家・佐藤秀峰と、頭の足りない体育会系職員が愛国者きどりでやった映像流出のスタンドプレイを「やむにやまれず出した、と思いたい」などと言っている原案者・小森陽一は最低のコンビでしょう。
はっきり言って今回の映像流出は別に勇気ある行動でもなければ、国民に本当に知らせねばならないほどのレベルではありません。日本側が中国側の漁船を拿捕したという事自体は秘密でも何でもない、満天下に知られた出来事だったのですから。ウィキリークスではイラクやアフガニスタンにおける米軍の知られざる戦争犯罪が暴かれ続けていますが、海保の映像流出などウィキリークスのような真に勇気ある告発行動とは比較になりません。問題がチャチ過ぎて。
最後に、かつて特高警察を擁した旧内務省人脈の海上保安庁、アジアを侵略した旧大日本帝国軍の流れを汲む自衛隊、いずれもアジアの民衆の側からすればかつて自分達を侵略・弾圧した勢力の末裔であり、全く相容れぬ存在であるという事だけは強調しておきます。
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