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「日本の歴史家を支持する声明」は訳が問題なのではない

「日本の歴史家を支持する声明」について本格的な分析と批判を始める前に、前提として一つ明確にしておきたい点がある。それは一部で言われている、この声明の英語原文と日本語版の訳による違いが問題ではないという事だ。
例えば東洋経済の福田恵介が、この声明を報じた聯合ニュースの記事を「都合のよい論調で、しかも原文の意味を歪曲して伝えている」「日本たたき」「(声明の中に)「むごい野蛮行為」「いけにえ」といった言葉はない」として、声明の日本語訳に関わったという浅野豊美の証言も引きつつ批難した。すると、声明の署名者の一人である小山エミがそれに対して「聯合ニュースの記事の内容は、日本語版を確認する限り、フィナンシャル・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルと大差ない内容だ。世界中のメディアが声明を誤解しているのでなければ、福田氏の解釈がおかしい」としてそれに反論する。詳しいその内容は以下のようなものだ。

http://synodos.jp/international/13990/2
福田氏は聯合ニュースによる捏造の一例として、同紙が声明を引用して「大勢の女性たちが自らの意志に反してとらえられ、むごい野蛮行為のいけにえにされた」と書いている部分について、原文には「大勢の女性が自己の意思に反して拘束され、恐ろしい暴力にさらされた」とは書かれているが、「どこにも『むごい野蛮行為』『いけにえ』といった言葉はない」と指摘している。

たしかに声明の日本語版ではそのように訳されているが、英語版では「large numbers of women were held against their will and subjected to horrific brutality」だ。どちらの訳も間違いではないが、「brutality」という言葉はただの「暴力」より残虐性の強い言葉だ。聯合ニュースの記事が一度韓国語を経由して日本語に翻訳されているのだとすると、この程度の違いはまったく不思議ではないと思うのだが、それを「ネジ曲げ」「改ざん」とまで呼ぶ福田氏の判断には疑問を感じる。

福田氏はさらに、聯合ニュースが声明の呼びかけ人の一人でコネティカット大学の歴史学者であるアレクシス・ダデン氏のコメントを掲載したことに対して、早稲田大学の浅野豊美氏に「ダデン教授は署名者の一人であるが、内容を主導してはいない」「このようなコメントは今回の声明に盛られた研究者の総意とはまったく違う」とまで言わせているが、声明の呼びかけ人がジョージタウン大学のジョーダン・サンド氏とダデン氏の二人であることは公開されている。

この引用が正確だったとしての話だが、他の数名の人とともに翻訳を手伝ったという浅野氏こそ、共同署名者の一人ですらないのに、このようにして呼びかけ人を公然と中傷するのはどういうことだろうか。


つまり声明の訳文を福田が曲解し、(署名者ですらない)浅野(ごとき)が勝手な事を言っていると、小山は批難している。これ以降、ネット上の色々な反応を見てみると「(日本の声明は)日本の権力者の機嫌を損ねないよう、配慮と遠慮を重ねて遠回しに書いた」などという意見が多く見られるようになった事から、「この声明は安倍に対する良心的なアメリカ学者衆からの突き上げだったんだが、翻訳の食い違いで騒ぎになってるんだな」というのが大方の見方になっているのではないか。つまり「訳」の問題であると。

しかしながらそうではない。こういった「訳」の食い違いうんぬんというのは、この声明の本質的な問題点から完全に外れた議論である。むしろ日本語と英語原文の訳のニュアンスという枝葉末節に気を取られ、この声明自体の本質から目を逸らされる事は大変危険である。
まず考えていただきたいのは、今回の「声明解釈論争(?)」当事者である福田恵介・浅野豊美・小山エミの3者の相違点と一致点が何かという事だ。まず3者いずれも声明が「韓国の言うような『安倍批判』なのか」「訳語が捻じ曲げられたり改竄されているのではないか」「アレクシス・ダデンの談話が総意と言えるのかどうか」といった点で激しく意見の違いを見せている。ところが、この声明自体への賛否という点では3者いずれも肯定的で賛成しているのだ。(以下引用文の強調部分は引用者による)

福田の場合、先の東洋経済の記事で

東アジアの歴史を考えるうえで、混乱をまねている問題を取り上げ、当事者・当事国が冷静な姿勢で、互いに敬意を払いながら誠実に話し合っているという事実にも触れ、「過去の過ちについて可能な限り全体的で、でき得る限り偏見なき清算を、この時代の成果として共に残そうではないか」と結んでいるなど、非常に傾聴すべき点が多い声明だ。

と言っており、肯定的スタンスでとらえている事が分かる。その「非常に傾聴すべき点が多い声明」の精神を聯合ニュース(実際には聯合ニュースの記事は福田の言うような内容ではない。どちらかと言うとハンギョレ朝鮮日報の社説の方が福田の指摘に近い事を言っている)のような韓国側が踏みにじっているのが許せない、というのが福田のスタンスという事だ。


浅野はと言うと

「この声明は、英文も日本文もともに正文であり、署名したすべての研究者に回付され検討されたもの。東アジアの歴史について、さまざまな多様性を許容しながら真摯に研究していこうという呼びかけであり、米国人研究者の常識に絞って作成された」(上記福田の記事中より)

https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=877223855669357&id=100001452518600&hc_location=ufi
入江昭先生、ボーゲル先生、ダワー先生、ゴードン先生、グラック先生はじめ、アメリカを主な拠点とする日本研究の先生が、日本の歴史研究者と日本国民一般、そして安倍首相に向けて、慰安婦問題での前向きな対応をもとめる公開書簡を発出された。安倍首相が言った、「人権という普遍的価値、人間の安全保障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性」を、歴史的な日本人自身の体験に則して、いかに実現できるかが、夏までに問われている。新たな防衛協力・安全保障枠組みに先だって、こうした歴史に根ざした問題を避けずに、むしろ、先駆けて積極的に解決にむけて努力して欲しいと願わずにはいられない。(アレックシスダデン先生の名前もあるけれど、呼びかけのスタイル・スタンスは大きく違う)
(引用者注:このフェイスブックのコメントは現在閲覧出来なくなっており、筆者がコピーした文面である)

https://twitter.com/ToyomiAsano/status/595840954776604672
浅野豊美 ‏@ToyomiAsano
新たな防衛協力・安全保障枠組みに先だって、こうした歴史に根ざした問題を避けずに、むしろ、先駆けて積極的に解決にむけて努力して欲しいと願わずにはいられない。
23:42 - 2015年5月5日

https://twitter.com/ToyomiAsano/status/596193616151879680
解釈論争にはまってしまってはいけない  子供を両側から引っ張って殺してしまってはいけない。アメリカの先生方が生んでくださったせっかくの総意という宝物を日韓で協力してどのように生かすか、それが問われている。協力の契機にして欲しいという点は日本側にも重くのしかかっていると思う。
23:03 - 2015年5月6日


このように一応日本語訳にも関わった「当事者」の一人として、当然の事ながら積極的にこの声明に賛辞を送っている。

最後に小山は言うまでもなく声明の署名者の一人であり、これに反対であるはずがない。それどころか、

http://synodos.jp/international/13990
わたし自身も署名したが、あとになってリストを見ると、わたしなんかが入って本当にすみません、と謝りたくなる気分だ。権威主義的だと言われるかも知れないが、これだけ有名人が揃うと壮観。

と、自己顕示欲丸出しの超ミーハーぶりである(こうした大物学者の権威にすがっている点は福田や浅野も似たようなものだが)。

こんだけ大物学者達に支持されてるからこの声明は正しいんだッッッッ! 

こんな言い草、以前どっかで見た事がないだろうか。従軍慰安婦被害者を侮辱しまくって商売しては日韓「和解」をうそぶく韓国の鬼畜学者が、「日本を代表する良心的知識人」に支持されているから正しいんだという例のアレ…。

いずれにせよ、互いに批難の応酬をしているように見える福田&浅野組vs小山の3者が、いずれもこの声明そのものの賛否については完全に一致して支持という点が最も重要であり、この声明の持つ意味を正確に理解する鍵なのだ。加えて、言い争いしながらも声明そのものに対してはどちらも熱心な賛同者である浅野豊美と小山エミ。この両者のうち、「仮にこの声明を支持するという立場から見て、いずれが筋の通ったまたは声明の意味を正しく理解した支持者なのか」という差異点に気づく事だ。
声明に対する筆者の本格的な分析と批判は次回からスタートしたいが、この二つの点は読者への前口上代わりのヒントとして提示しておきたい。この「浅野と小山の一致点と相違点」さえ理解出来れば、「日本の歴史家を支持する声明」そのものの本質も自ずとつかめてくる。勘の良い方であれば、これだけでもう分かった方もおられる事だろう…。

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