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質の高い食品メーカーが時流に流されると失望させられる

岐阜県加茂郡にある白扇酒造という日本酒の蔵元は大変質の高くて美味しい日本酒を醸造するメーカーです。筆者もここのお酒を愛飲していますが、その筋(美食の世界)的には日本酒よりも味醂の方が有名な蔵元ではないでしょうか。大手のような速醸法でない、ちゃんとしたもち米と米焼酎を使って時間を掛けた味醂を作るメーカーは今や日本全国でも2桁ないと言われてますが、白扇酒造はその数少ない1社です。そうした本物の味醂を作る蔵元は極めて少なく、さらにこのように仕込んだ味醂を3年寝かせるメーカーはさらに少ない。それほどの事をやっている、日本でも屈指の良質な食品メーカーに他なりません。良い食品をつくる会に加盟している食品メーカーでもあります。
が、それだけにおかしなコラボレーション企画をやるのはあまり感心しません。最近こんな事をやっているようで。
 
TVアニメ「戦国BASARA弐」とのコラボレーション日本酒
 
まあ要するに「戦国BASARA弐」のキャラクター商品としての酒を売り始めたという訳ですが、これは純粋に「お酒」として見た場合どうなのでしょうか。まず値段が高い。一般的にこのクラスの日本酒は720m(4合)で1200円から1400円くらいが相場で、実際に同社の他の純米吟醸酒でもそのくらいの値段です。なのにこの「花美蔵 明智光秀」は2100円で、これよりもランクの高い同社の純米大吟醸酒が4合2625円とか2520円ですからそれに近い値段設定な訳ですから、いかにこのコラボ商品が高すぎるかお分かりでしょう。
じゃあその差額は何なのかと言うと、当然「戦国BASARA弐」の版権使用料でしょう。酒本体の品質や味とは何の関係もないコストで高くなった酒をわざわざ飲む気にはなれません。少なくとも筆者のような人間にとっては飽くまでも白扇酒造の酒に金を払うのであって、「戦国BASARA弐」のキャラクター代に金を払ってる訳じゃないのですから。とは言え、ならばこのコラボ商品を買わなければ良いだけの話で、そうした酒は好きな人だけが買えば良いという話にもなるでしょう。そういう人が好きで購入するのを否定はしませんし、実際に筆者はこれを買うくらいなら、500円から600円余計に出して純米大吟醸酒の方を買います(あるいは同じ値段の純米酒1升瓶の方を)。
ただ、それでも白扇酒造のような優れた蔵元がこのように安易なキャラクター商品を出す事にはどうしても納得しかねます。そういう事は基本的に質と関係のない粗悪な食品メーカーのやる事でしょう。なぜ地元に近い戦国武将だからといってそんな事をしなければならないのか。食品の味や品質と関係のないコストで値段が上がるのでは本末転倒であり、「良い食品」を作る者としての理念にも反するでしょう。このコラボレーション日本酒は最も白扇酒造らしからぬ商品と言えます。
好きな蔵元なのであえて苦言を呈しますが、まあ一時の気の迷いというか、短期の単発企画で終わる事を願いますよ。質で売ってるメーカーは飽くまでそれを貫き、安易な流行物や版権キャラクターといった時流に流されないで欲しいものです。
 
 
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