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ペニウェイの In This Film 翻訳連載第1回「ドラゴンボールエボリューション篇」

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時にはこんな映画があります。作品性は言わずと知れているようですが、どこかそそられる映画。見なくてもビデオだけれど、それでも見たくなる映画。いざ見てみると、私は何でこれを見たんだとウルウルしながら、それでもそそられる映画達があります。いわゆる人々の好奇心を刺激する作品達です。率直に言うならばこのような作品の99%は時間がもったいなくなる作品達でしょう。

だからといって見ずに判断する事は出来ないではありませんか? そこで私はそうした皆さんの気掛かりを解消する為に、いわゆる「怪作」として知られる作品達、その中でも入手し難い作品達を主に、この一身を捧げて「殺身成仁」の心構えで鑑賞をし終えてレビューをしようと思います。それが「怪作列伝」のモットーです。

この「怪作列伝」テーマレビューは状況によってアップデートが非常に遅くなる事もあります。国内では入手し難い伝説的な(?)作品を入手するのに掛かる時間とレビュー作成の脱稿過程が、他の作品に比べて長く掛かるからに他なりません。ですが、私が野心を燃やして準備した企画だけに、感心を持って見守っていただけるようお願いします。保障は出来ませんが、もしレビューして欲しい作品がありましたらコメントで私にお知らせ下さい。最大限レビューするよう努力してみます。ただ、猥褻さの濃い作品、過度に残忍であったり、猟奇的な映画に対する以前もしておらずこれからも絶対にしませんので御了承下さい。


ドラゴンボールエヴォリューション―ヤンキーセンスが生んだ原作破壊の結果物
怪作列伝2009年3月25日
ペニウェイ

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怪作列伝No.77

時は今から20年前の1989年12月14日木曜日。未来の韓国出版漫画市場を焼き尽くすほどの第一歩を与える一篇の漫画が「アイキュージャンプ」の付録形式で提供されました。その名は「ドラゴンボール」。何と「世界名作超大特選」というタイトルで紹介されたこの作品は、無差別に韓国上陸を企てる日本漫画界の爆撃を許した最初の作品となりました。
李賢世の「アルマゲドン」、イ・サンムの「第4地帯」、許英万の「鎚」、ペ・グムテッの「14歳ヨンシミ」など最高の人気を謳歌した漫画家達の作品が連載された「アイキュージャンプ」にこのような日本漫画が登場したのは、筆者のような青少年読者にとって相当に新鮮な衝撃でした。

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もちろん当時からして日本漫画が国内に輸入されなかった訳ではありません。「孔雀王」や「シティーハンター」のような作品達はすでに闇の世界を通じてこっそりと流通しており、また「鉄拳チンミ」のような作品達は「カンフー少年・龍少爺」などと題名を変えてソンウンという幽霊作家をでっち上げて堂々と正式出版されもしました(もちろんこのような事実を知る読者はさほど多くなかったでしょう)。
ですが、まだ日本文化に対する反感があったあの時代の韓国漫画市場で、「ドラゴンボール」に一定の地位を引き渡したというのには少なからぬ意味がありました。もちろん作品自体が優れていた事は言うまでもないでしょう。きめ細かく繊細な作画、緻密なストーリー、何よりも青少年漫画でありながら19禁コードをそっと挟み込んでギリギリの危険水域を行き来する果敢さを見せたのも、「ドラゴンボール」の人気に一役買いました。

 

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事ここにいたって闇の市場を掌握していた知られざる出版社達は、連載をかなり先行していた日本のドラゴンボール原書を人知れず取り寄せて翻訳をした後、500ウォンのポケットサイズ海賊版として先を争って量産し、正式に版権を得ていたソウル文化社の連載を一息に飛び越すという、泣くに泣けない怪現象を招きもしました。
おそらく私のような世代の読者層には事実上、この海賊版ドラゴンボールを通じてこの作品を読んだと言っても過言ではありませんし、実際私にとってもネポ(訳注 ナッパの韓国語表記)やフリード(訳注 同じくフリーザの韓国語表記)といった名前よりも、ネトゥバ(訳注 海賊版でのナッパの表記)やフリージャ(訳注 同じく海賊版でのフリーザの表記。韓国・朝鮮語では日本語の「ザ」の発音がない為)、孫悟突(訳注 海賊版で悟空の息子の名は悟飯ではなくこの名になっていた)といった名前の方にずっと親しみがあります。

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数多くの海賊版「ドラゴンボール」の一つである「ドラゴンの秘密」

「ドラゴンの秘密」「七星珠を探せ」など数々の題名で発刊された数多くの海賊版の中で、当然抜群のクオリティを誇ったのはミョンジ企画の「ドラゴンボール」ポケット版でした。特にミョンジ企画の場合は発売2週で15億ウォンの収入を上げて、この記録は今でも破られていないという話が聞こえるほどです。

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発売2週で15億の収益を記録したミョンジ企画の海賊版「ドラゴンボール」

「ドラゴンボール」輸入の副作用は、単に同作の海賊版が大量に量産されただけではなく、まだ審議もろくに終わっていないその他無数の日本漫画達が無差別に海賊版として発売され始めた事です。「北斗の拳」「らんま1/2」など、正式ライセンスなしに出刊された海賊版は日を追う毎にその数が増加し、1993年には何と300余種の日本海族版漫画が闇の世界を掌握していたのですから、その威力は想像に余りあります。
韓国漫画界の暗鬱な歴史についてはいずれ述べる機会があるでしょうからこのくらいで整理し、とにかく「ドラゴンボール」一編の輸入が及ぼした波がこれほど大きかったという事です。これから再び原点に戻って「ドラゴンボール」が韓国に上陸した1989年、パチ物根性で武装した一人の台湾映画人が一編の映画を送り出しました。その名も「新七龍珠」。はい、何と「ドラゴンボール」初の実写映画となります。

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世界最初の実写版ドラゴンボール「新七龍珠」

何やらゴムボールのようなドラゴンボールを巡る、孫悟空の冒険を描いたこの作品の完成度はあえて言うまでもありませんが、翌年に出たある作品よりはいくらか見れるという衆評がありました。では、1990年にはどんな作品が出たのか?
「ドラゴンボール」が国内に輸入されてちょうど1年後に、国内怪作映画の巨匠・王龍(ワン・リョン 日本でも一部でカルト的な人気のある実写版「北斗の拳」の監督でもある。この韓国実写版「北斗の拳」については同じく「怪作列伝」の別の回で取り上げられているので、後日翻訳したい。 訳注)監督の実写版「ドラゴンボール」がお目見えとなりました。「新七龍珠」と龍虎相打つ実写映画ではありますが、韓国が生んだ屈指の人気俳優・沈炯來(シム・ヒョンレ 韓国では屈指のコメディアンで、後に監督へ転身して2007年にヒットしながらも様々な論争の的となった「D-WARS ディー・ウォーズ」も監督した。訳注)が武天老師(韓国語版では亀仙人の正式名称は「武天導師」となっていてこの記事の韓国語原文でもそう表記されているが、ここでは日本語原書に準拠。訳注)役にキャスティングされ、内容面ではむしろ「新七龍珠」よりは原作により忠実な作品として、今日まで数多くのマニア達の愛情を一身に受けている作品でもあります。

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国内屈指の怪作、王龍監督の「ドラゴンボール」


この通り「ドラゴンボール」の実写版は2作とも惨憺たる結果物を見せてくれましたが、幸いにもこれ以上この作品を実写化しようという人はいませんでした。

しかし山河も変わるという10余年の歳月が流れた後、遠く米国の地で再び勇者が現れました。2002年。20世紀フォックス社では「ドラゴンボールZ」の映画化版権を日本側から取得する事になり、うやむやになるとばかり思われた「ドラゴンボール」映画化企画は驚いた事に順調に進行して、2004年には「ビッグ・ヒット」の脚本家であるベン・ラムジーが50万ドルで「ドラゴンボールZ」の映画化脚色を始める事になります。
2007年には「デスティネイション」で米国ホラー映画界に新しい波を巻き起こしたジェームズ・ウォン監督が、香港のチャウ・シンチー(周星馳)共にこのプロジェクトの責任者としてフォックス社と契約を結びました。題名を「ドラゴンボール」に修正したこの作品の為に、普段から「ドラゴンボール」のファンだったジェームズ・ウォンは自身が直接脚本に手を入れて書くという熱意を見せて制作を開始します。

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「ドラゴンボールエボリューション」」のジェームズ・ウォン監督

しかしながら制作過程はそれほど順調ではありませんでした。1990年代に制作された2本の実写版「ドラゴンボール」を見ただけで、この作品の制作自体を憂慮するファン達が多かった上に、何よりも公開日の延期はそれでなくても疑惑の視線で見ている世間の否定的な目をさらに焚き付ける結果になりました。当初2008年8月の予定だった公開日を2009年4月に延期すると発表した時、これは最も熾烈な夏休みシーズンを戦う自信がないという事を制作者達自らが間接的に認める有様になってしまったのです。
良からぬ噂も侮れません。その中でも代表的なのが2008年8月にFilmjunkを通じて出た噂であり、撮影に1億ドル以上の予算が投資された「ドラゴンボール」は3部作に予定されており、映画会社がこれ以上の損害を出さない為に残ったフィルム全てを廃棄するだろうという消息が伝えられたのです。この消息が伝わるや、制作会社側はAir Force Timeを通じてそのような噂を一蹴し、フォックス社上層部も撮影分を見て満足したという反論をしもしました。

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Filmjunkに載った「ドラゴンボール」廃棄関連記事


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Filmjunkの記事に反論するAir Force Timeの記事

ですが公開されたスチールは一つとして期待感はおろか、失望感だけを与えるものであり、これを意識した制作陣は挙げ句の果てに公開をわずか数ヶ月残した時期に題名を「ドラゴンボールエボリューション」へと変更するにいたるのです。原作との距離を置く事で溢れかえるファン達の怨嗟の声を少しでもなだめようというつもりだったのでしょう。
 

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こんなスチール写真が公開されて期待出来るものか…(このスチールは特殊効果処理前の姿で、実際の映画上では登場しない)


もちろん元々原作が有名なだけにこの作品を密かに期待するいくらかのファン達もおり、またそれなりに華麗なキャスティングのおかげで「エミー・ロッサムだけに期待しよう」など特定俳優の出演にのみ焦点を合わせようという動きも見えました。様々な話題となった「ドラゴンボールエボリューション」その結果はどうだったでしょう? まずはその結果物を確認しようと映画館へ行きました。次は観覧前の映画館の風景です。

 

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冗談や設定写真ではありません。本当に上映10秒前の状況です。前方に「ドラゴンボール」マニアらしき行儀の良い女性観客一人と私の貸し切り状態で見ました。ああ、涙を拭きつつ…。

ではまず、簡単なストーリーを最初に確かめてみましょう。
2000年前、地球を壊滅させたピッコロは魔封波によって封印され、彼の腹心であるキングコングもどき「大猿」が突然姿を消して以来、地球には平和が続きました。孫悟空は祖父の孫悟飯と共に暮らす18歳の少年ですが、学校ではいじめられっ子でした。チチという少女が好いてはいるものの、もじもじして言葉もろくにかけられないみじめな青春です。
ところがどうした事かピッコロが再び解き放たれ、一人の美人を部下にして世界中のドラゴンボールを集めて回ります。ピッコロとドラゴンボールの秘密を知る孫悟飯は、ある日ピッコロの襲撃を受けて息を引き取る直前に孫悟空へこの全ての事実を知らせ、悟空に武天老師を訪ねて世界を救えという荒唐無稽な遺言を遺して目を閉じました。

 

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翌日、悟空の家に不意にやって来て銃口を向けるブルマは悟空の四星球を自分の五星球と「誤解」していたとしてそのまま行こうとします(何それ…)。しかし悟空は残りのドラゴンボールを探す為に手を結ぼうと提案をし、喜んでその提案を受け入れたブルマと共に武天老師を訪ねに行く事になりました。
こうしてまた武天老師に出会い、ヤムチャに出会い、チチとまた出会い…ピッコロにも出会い…神龍にも出会い…出会い…出会い…そうして終わります。

 

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訳「これは何だ…」

「ドラゴンボールエボリューション」のストーリーは原作とは相当にずれた状態で出発します。まず内容上、元祖ピッコロと出会う前の設定であるならば、悟空の年は当然10代初中盤の子供でなければならないのに、無理に青年級のスペックを当てはめたおかげでティーンエイジャーの反抗児のような孫悟空になってしまいました。おまけに青い目をした米国人が孫悟空という名前を持つと言う事自体がすでに、概念などナメック星ともども消えうせてしまった証拠でしょう。

その上、悟空の祖父である孫悟飯もまた原作とは大きく違います。ドラゴンボールの正体や孫悟空が何者であり、大魔王とどんな関係があるかなど全ての事を知りつくしている映画とは違い、原作での孫悟飯はドラゴンボールが何かすらも知らないものとして出ていたではありませんか。
 

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訳「わー! そうだったのか…。そんな代物とは全く知らなんだ!」

それに本来、孫悟飯はピッコロではなく「孫悟空に」踏まれて死んだのではないのですか?
 

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訳「嘘じゃねえ! オラのじっちゃんはその怪物に踏み潰されて死んだんだ」

まあこの程度の原作破壊は容易いものです。妙にムフフなチチは、度を越して頑張り屋であるブルマ役のエミー・ロッサムの代わりに肉感的な魅力を誇っており、武天老師はことごとく縁起でもない言動をした挙げ句に一瞬で謹厳になったかと思えば、また軽挙妄動するという深刻なほどに情緒不安定な姿を見せます。問題はこの役を他でもないチョウ・ユンファ(周潤發)がやったという事ではありませんか?
 

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悲しきチョウ・ユンファ(上)…。なにゆえに武天老師として出演したのか。屈辱的ではあるものの、むしろ沈炯來(下)の方が原作とのシンクロ率は高かったのではないか。
 


さらに映画へ現実性を付与しようとの意図なのか、非人間キャラは全て外されました。これは原作において必ず必要だったコンビネーションを台無しにする結果を招いた上に、例えば次のような副作用を生みました。

1 プーアルとヤムチャ
プーアルはおらずヤムチャだけが登場し、ヤムチャの存在自体が非常に無意味だという点。序盤ではギャグキャラクターかと思いましたがそうでもなく、突然ブルマと恋人モードに急変するアストラル的荒唐無稽さ…(godの朴俊炯(パッ・ジュンヒョン)…守ってあげられなくてごめん。それでも英語のセリフは自然ぽい)。

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プーアルとヤムチャは切っても切れない関係という事(右のスチールは王龍監督の「ドラゴンボール」)


2 ピラフ一党
ピラフと狼(?)の部下はおらず女だけが残った上に、一体この女の正体は何で(名前は「マイ」というが映画上では一度も言及されず)、なぜピッコロの子分として情熱と誠意を捧げるのか全く分からないという点。セリフはいくつかの日本語…。

 

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訳注:ピラフと狼部下を指して「出演機会なし」と書かれている。


それ以外にも原作破壊の設定はさらにあります。映画中盤を見ると、チチに姿を変えたマイの攻撃を受けてグダグダになり、死ぬ直前の悟空に武天老師が何と「エネルギー波(かめはめ波の事。原文記事ではエネルギー波と表記していた。訳注)」使って生き返らせます。何だって? はい、もう一度申し上げます。死ぬ直前の悟空に武天老師が「エネルギー波(かめはめ波)」を使って生き返らせます。いや、いつからかめはめ波が攻撃の技でなく、人を助ける応急処置術になったのですか? ひえ~。
 

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訳「ちょっとだけ待ってろ。スチームパック(ネットゲームのスタークラフトに登場する回復薬)…じゃない、エネルギー波を一発入れてやるから!」


また原作では純真無垢この上なかった悟空が、祖父に女を誘う方法を教えてくれというだけでは飽き足らず、かめはめ波修行中に失敗続きだった悟空に対してチチが五歩離れた場所に立ち、かめはめ波でロウソク一つ消す度に一歩近付いてあげると言うと、何とロウソク3本を一発で打ち消す怪力を発揮するという、色魔の根性を見せ付けてくれました。ハア…。
 

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一貫性無き設定の乱用も問題です。何の意味もない天下一武道会を真似たり、制作費節減の為にたった一度だけお粗末にお目見えするホイポイカプセル、おまけに「ディー・ウォーズ」の半分にも及ばない神龍(シェンロン)の登場シーンはどれも無駄な場面ばかりです。悟空の武器である如意棒は映画ではずっとただの棒でしかないし…。
いや、実際に原作をそのままなぞるのが必ずしも良いという訳ではないでしょう。考えてみれば王龍監督の「ドラゴンボール」はどれだけ原作に忠実だった事か。ある程度の脚色は必要であり、時には果敢な脚色を通じて完成度を高める方法がはるかに良いのですが、「ドラゴンボールエボリューション」の場合は本当にどっちつかずな「原作破壊+ヤンキーセンス」という最悪の調合を見せてしまいました。

 

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ネイバー映画観客評点4.01!!


一つ感じたのは映画のランニングタイムがあまりにも短いという事で(もちろんこれすら見ながらに暇を持て余しておかしくなりそうな方もいらっしゃるでしょうが)、おそらく撮影しておきながら完成度に支障を来たしそうな場面達を根こそぎ削除したのではないかと思われます。実際に編集も非常にでこぼこで、一編の映画として見るには説明不足な場面があまりにも多く、進行も急激に行われます。当初どうしてピッコロが魔封波から解き放たれたのかも知らされないばかりか、ブルマはどうしてチチを知っていたのかなどなど、基礎的な説明が全て省略されていました。おそらくこれは、後にディレクターズカット版DVDが出る確率もあるのではないかと見ています。
おそらく「ドラゴンボールエボリューション」を1グラムでも期待していたファン達は、映画を見た後でこのような気分になるのではありませんか?

 

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「魔、貫、光、殺」「砲!」
そう、映画を貫光してしまいたいぜ!


言いたい事は多いのですが、あまり詳しく暴露すると好奇心でこの作品に接する方達の迷惑になるのではないかと思われますので、やめておこうと思います。最後に「ドラゴンボールエボリューション」が私を本当に恐ろしくさせたのは…エンディングクレジットが終わった後に出てくるクッキー画面を御覧になれば分かるでしょう。

 

何と! 続編をおおっぴらに暗示しているとは!
 

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「知らん…何だ、それは…恐ろしい…」


P.S:もしやと思って確かめてみると、怪作Vシネマ専門会社アサイラム(The asylum)はこの機会を逃さずに、また一本のパクリ映画を送り出しました。その名は「ドラゴンクエスト」。おまけに主演は何とその昔に「V ビジター」で爬虫類型人間掃討にこの上なく大きな公言をしたマーク・シンガーです。ハア…。ややこしい。

 




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本レビューは2009年3月25日にDaumのブログニュース人気エッセイ及びメイン記事に選ばれました…が、これは喜ぶべき事なのでしょうか?
(訳 ZED)


韓国語原文記事はこちら
http://pennyway.net/1068


ようやく「怪作列伝」を御紹介する事が出来ました。韓国語の読める方はやはり原文記事でも御覧になっていただきたいと思います。ただ、この記事を書かれたペニウェイ氏は今時の韓国ネットユーザーらしく、文中で流行りの韓国語ネットスラングなどを随所に使用しており、プレシアンの報道記事を訳した時と違って結構戸惑わされました。そうしたスラングの類は直訳しようがないので、筆者の訳文では日本語で分かり易い同義の言葉に置き換えている事を御了承下さい。
ペニウェイ氏の文章の面白さを伝える事が出来れば訳者としては幸いです。
久しぶりにエンターテイメントの記事を書けた気がします。本当は政治や社会の問題なんて扱いたくないのですが、世の中にはあまりにもひどい連中が多過ぎるのでどうしても書かざるを得ない時があります。本当に民族差別や戦争を扇動する連中は糞ッ垂れと思います。その手の連中がこの世から消えてくれれば、社会はもっと楽しくなるのですが。筆者もエンターテイメント関連の活動に集中出来ます。

次回は来年の1月上旬頃にお届けする予定です。



 

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ペニウェイのIn This Film 翻訳連載開始します

筆者が最近注目している韓国の映画評論サイトがあります。「ペニウェイのIn This Film」というのがそれですが、そこのレビュー記事が大変面白い。
 

一つの映画評論として大変優れているので、ぜひ韓国語の読めない方にも読んで欲しいと思い、このサイトの名物コーナーである「怪作列伝」「続編列伝」「古典列伝」の中からいくつかを選んで翻訳連載を開始する事にしました。
日本で、特にインターネット上で韓国のエンターテイメント作品を論じる場合、どうしても嫌韓という民族差別的偏見が先立って作品を公正に見ようとしない論が多くあります。特に昔の韓国映画・アニメに日本の剽窃が多かった事を槍玉に上げて、そうしたひどい差別的言辞を繰り返す者が後を絶ちません。しかし韓国の映画やアニメにそうした作品が多かったのにはもちろんそれだけの歴史的・社会的理由があり、そうした事情を踏まえねば語る事は出来ないのです。
例えば昔の韓国アニメに日本アニメのパクリが多かったのは、日本のアニメ会社が韓国のアニメ会社に多くの下請け作業を発注していた事が最大の原因であり、日本の作品を実際に手掛けた韓国側アニメーターがそうした作品を真似たりして自作品に利用する事は当然過ぎる展開でした。手塚治虫だって当初はディズニーに憧れて、ディズニー作品の模倣をずいぶんしていたのとあまり事情は変わりません。そして日本側もそうした業務上の理由から韓国側を不必要に刺激したくなかった為に、よほどの場合でない限りそうしたパクリを訴える事はまずありませんでした。韓国のアニメに日本アニメの剽窃が多かったのは事実ですが、当時の日本アニメ業界は韓国はじめとする海外への下請けがなければ成り立たない状況であったのも厳然たる事実だったのです。一昔前の日本のオタクの世界ではそうした韓国や台湾などのパクリ物を笑って楽しむ度量があったものですが、いつしかそうした大らかな風潮が薄れてしまい、笑ってすませる事例を強引に民族差別の理由付けにする例が増えてしまいました。
また、かつての韓国は長きに渡る軍事独裁体制下で言論・表現の自由が厳しく制限されており、とりわけ映画産業に対する検閲は凄まじいものがありました。韓国が厳しい反共国家として、現在の北朝鮮やミャンマーにも劣らぬ言論・思想統制を敷いていたのはそんなに大昔の話ではありません。まさか韓国が建国当初から自由と民主主義に満ち溢れた国だったなんて思っちゃいないでしょうね? 今の若い人はそう思ってそうで恐いんですが…。半ば国策プロパガンダ産業としての枷をはめられた韓国映画人が厳しい国家検閲はもちろん、技術や資金の不足という困難の中でいかに作品作りに打ち込み、また抵抗していったかを見ずに韓国の映画とその歴史を語る事は出来ません。韓国にも日本アカデミー大賞のような国内映画賞があるのですが、そこでは1986年まで「反共映画大賞」というのが存在していたのです。昔の韓国の小学校における「道徳」の授業の中身は「反共教育」が大部分でしたし、子供向けロボットアニメの中には敵が北朝鮮や共産主義者という反共アニメも多く制作・放送されました。さらにそうした韓国の子供向け反共アニメには、日本のアニメ制作者が何人か招かれて制作協力したという歴史もあります。こうした韓国反共アニメへの制作協力は、下請け発注の話と並ぶ日本アニメ界の黒歴史と言っても良いでしょう。韓国アニメ界の黒歴史はすなわち日本アニメ界の黒歴史とも表裏一体なのです。
 
嫌韓的な偏見から脱して韓国のエンターテイメントを見る一助として、この翻訳連載を開始したいと思います。黒歴史や怪作レビューだけでなく、正当な映画評論としても優れており、日本人とは違った視点からの切り口や、知られざる情報にも目を見開かされる事でしょう。
例えば「猿の惑星 Planet of the Apes」は韓国でも当時一代ムーブメントを引き起こした映画ですが、韓国ではこれに原題ともストーリーとも大きくかけ離れたとんでもない訳題が付けられていた事など、このサイトで初めて知りました。「猿の惑星 Planet of the Apes」という題名をそのまま直訳しても韓国では全く通じないでしょう。なぜならこの映画の韓国版題名は…。
 
連載のペースは遅いですが、気長にお楽しみいただければ幸いです。第1弾は日本の一大人気漫画を、ハリウッドが一大怪作映画にしてしまった「怪作列伝 第77回 ドラゴンボールエヴォリューション篇」から始めましょう。来週中頃に掲載の予定です。御期待下さい!
 

「延坪島紛争」で読んでおくべき韓国の報道その5

少し時間が過ぎてしまいましたが、引き続き韓国の見るべき報道記事を翻訳してお届けします。
今回の記事は「延坪島紛争」の直前に訪朝してウラン濃縮施設を視察したアメリカの専門家達の意見です。今回のプレシアンの記事では、スタンフォード大学のロバート・カーリン客員研究員とジョン・ルイス教授がワシントンポストに22日に寄稿したコラムがどのようなものかを述べていました。いずれも対話すべしという事と、北朝鮮を主権国家として認める事を米当局に促しています。実際に北朝鮮の核施設を目の当たりにした専門家達が朝米対話を訴えている事を日本のマスコミはどこも伝えません。それどころか彼らにインタビューしたニュース番組などでは、彼らがいかに「北朝鮮の脅威」述べているかのように仕立て上げている始末(あのインタビュー映像はかなり編集されているはず)。実際に彼らが何をアメリカ政府当局に訴えたか、その事実を知っていただきたく思います。
何せ日本には石丸次郎のような確信犯のペテン師はもちろん、事実を調べもせずに妄想に基いてものをしゃべる「超左翼」とかいう訳の分からない変な異常者もいるので、そうした嘘やデマに引っ掛からないよう気を付けるべきでしょう。
 
韓国語原文記事はこちら
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=40101123213400&section=05


「戦略的忍耐の破綻、米国は対朝政策を再考せよ」
 
訪朝した米専門家達、WPコラム通じて「北朝鮮の存在を認定してしてこそ」
 
先日9~13日、ジークフリート・ヘーカー博士と共に訪朝して北朝鮮の超現代式ウラン濃縮施設を確認して戻って来た、米スタンフォード大学のロバート・カーリン客員研究員とジョン・ルイス教授が「戦略的忍耐」に代表される米国の既存対朝政策を再検討せよと促した。
 
彼らは22日(現地時間)「ワシントンポスト」に寄稿したコラム「米国の対朝政策を再考せよ」で今まで米国は「戦略的忍耐」という名目の下で時間が北朝鮮核問題を解決してくれるのを待っていたが、その間に北朝鮮の核能力はむしろ向上しており、北朝鮮崩壊のような事態は起こらなかったとして、これからは北朝鮮の実体を認めて真面目な協商に出なければならないと指摘した。
 
 
【私が直接行って見ると…】
 
カーリン研究員とルイス教授は「時間と環境が北朝鮮を圧迫すれば、北朝鮮は自ら非核化するだろうというのが米国の希望であり、待っている間に北朝鮮は自分達独自の計画を実行した」とし「約2週間前に4日間訪朝している間、我々は北朝鮮が25~30メガワット級の軽水炉建設を始めたのを見た」と言う。
 
また「さらに重要なのは遠心分離機によるウラン濃縮施設」であったと強調し「この施設は2000個以上の遠心分離機を備えた良く出来た施設のように見えた」と伝えた。
 
彼らは「北朝鮮関係者は仔細な言及は避けたものの、遠心分離機がP1モデル(旧式パキスタンモデル)ではないと言った」とし「彼らはこの施設が最近完工し、今は作動中だと言ったが、我々のいる位置からは確認出来なかった」と言う。
 
北朝鮮関係者達は訪朝者達に施設の意味を「現在建設中の軽水炉発電所で核燃料として使う低濃縮ウランを生産する場所」と説明したとし「外国から軽水炉発電所を導入しようという努力に失敗した為、自ら建てる以外になかったと彼らは強調した」と伝えた。
 
 
【制裁を強化せよと? 馬鹿な事を!】
 
彼らは「北朝鮮のウラン濃縮プログラムは『協商は無駄で、国際的な制裁を広げる事でのみ成果を上げられる』という批判を呼び起こしたが、まさにそのような主張(制裁を強化せよと言う主張)達が米国をこのようなジレンマに追い込んだ」と指摘する。
 
二人は「米国の対朝政策と北朝鮮の核プログラムのどちらを非難の対象にすべきかという論争は重要ではない」と主張し「今すぐ我々に必要なのは、これまでの16年間に北朝鮮との接触を全体的に振り返って事実を分析し、可能な政策対案に対する正直な評価を下すという事」と強調した。
 
彼らは「問題は北朝鮮の核プログラムは時間が経つにつれて段々解き難い問題になるという事」として、問題の速やかな解決を促す。「戦略的忍耐」など現在の米国の対朝政策は、北朝鮮を圧迫して自ら非核化させようという動きを引き出すものだが「だが懐疑論的な視点からは、こうした制裁では北朝鮮を圧迫しようという中国の意志がなければならないと警告する」という事だ。彼らは「中国は北朝鮮を圧迫する代わりにこの数年間北朝鮮との関係を強化しており、最近の朝中関係はいつの時代よりも良好となった」という点を指摘した。
 
二人は特に「我々は何が米国と同盟国達の安保にとって最善であるかについて集中せねばならない。米国は韓国と日本の後を追わねばならないというのは良い方法ではない」として、米国が韓国など同盟国達に引っ張られるのではなく、独自的な対朝政策を取るよう注文した。「強力な同盟国ならば平壤に対する米国の創造的な接近を排除してはならず、むしろこれを支援せねばならない」というのだ。
 
 
【北朝鮮の存在をありのままに認定する事が重要だ】
 
結局重要な事は「北朝鮮が変化するのか、崩壊するのかに対する果てしない政策論争の最中においても、北朝鮮はソ連崩壊後20年もの間生き延びた」という点だと指摘した彼らは「北朝鮮という国はこれからも引き続き維持されるものと見る」と見越す。
 
彼らは「不幸にも、北朝鮮が世界に対して孤立するよりも、米国人達はそれ以上に北朝鮮に対して孤立した」として、米国の対朝政策変化を促した。また「北朝鮮に対する現実的な接近は、北朝鮮の体制や政策に対する道徳的判断や我々の価値や目標に基く何かを(北朝鮮に)強要する事を必要としない」とし「米国の政策決定者達は原点に戻る必要がある」と言う。
 
戻るべき「原点」は「とても簡単だ」と彼らは言い「北朝鮮が自身の利害関係を持った主権国家として存在するという事を、ありのままに認める事」をその支点として提示した。
(訳 ZED) 

 

「延坪島紛争」で読んでおくべき韓国の報道その4

(前回の続き)

プ:2002年に北朝鮮のUEP関連情報を公開したのは、米国ネオコン達が南北関係及び朝日関係の進展を防ぐ為の動きだったという事か?
 
林:そういう面がある。以後米国内でも北朝鮮のウラン濃縮に関する情報の正確性と関連して論議が多かったと記憶する。例えば2007年にも米国「ニューヨークタイムス」にこの論議を扱った記事が出た。
 
プ:盧武鉉政権の時には北朝鮮のUEPと関連した疑惑が提起された事はないのか?
 
林:そのような事はなかったと認識している。なぜならその時の問題はプルトニウムであったからだ。2005年の9.19宣言で合意したものや北朝鮮が核実験をしたのは全てプルトニウムと関係した事だ。もちろん六ヶ国協議を始める時にはUEPにかこつけて始まったが、論議過程ではプルトニウム関連の話だけが出て、ウランプログラムを論じるのは伏せられた。
 
当時北朝鮮のUEP関連情報の信頼度が高くないという証言も出た。「中間程度」の正確さの情報では信頼度が下方修正されねばならないという事だ。ジョセフ・テトラーニ前米国六ヶ国協議大使がそう言った事がある。
 
また、オバマ政権になってヒラリー・クリントン国務長官も2009年2月に韓中日3カ国歴訪当時に日本・東京で記者会見し、北朝鮮UEP情報に対して「疑問を持っており、これについて米情報機構内でも論争が多い」と言った。また、クリントン長官はブッシュ政権が対朝政策をうまくやれず(北朝鮮核開発という)にこの事態を招いたという要旨の発言もしている。
 
「太陽政策の為だと? そんなの話にならない。ははは…」
 
プ:北朝鮮UEPも延坪島事件も、全ての事は太陽政策の結果という主張もある。
 
林:そんなの話にならない(虚脱したような笑い)。全ての過ちを太陽政策に押し付けて、自分達の過ちは考えないとはお話にならないお話だ。3年という長い時間に、今の政権は何をしたのか。なぜ良くない事は全て過去のせいにするのか。
 
プ:一方では太陽政策も失敗したという声もある。北朝鮮が絶えず挑発をしており、韓国の安保体制は脆弱になったという事だ。現政府式の強攻策でもなく、太陽政策でもない何か新しいものが必要という主張もあるが。
 
林:良い意見ではあるが、ならば実際に一度編み出してみろと言いたい(笑)。太陽政策をしなかった為にむしろこのような事態が起こったのではないか。太陽政策を通じて和解協力を追及したかつての10年間には、挑発がどれだけ減少した事か。
 
もちろん金大中政権当時の2002年には衝突(西海交戦)があった。一度に突然なくなるはずもない。だが緊張が緩和されて信頼も少しずつ育てていく事で、このような現象が実際に進行した。政府だけの努力のみではいけないが、市民参加の空間を広く設けて接触と交流が活性化するような過程を通じて、双方の国民達の間に意識変化が起こったおかげでこれが可能となったのだ。特に北朝鮮国民達の(南に対する意識は)とてつもなく変わった。
 
ドイツの統一過程を見れば、西ドイツが東ドイツに20~30年間に多くの支援をした。和解を通じた変化とも言え、接触を通じた変化とも言えるこうした政策を通じて、支援し、交流し、民族共同体意識を作った。「確かに今は分かれているが一つの民族という事を忘れずに生きよう」として東西ドイツ国民間の統合意識作ろうとしたし、こうして東ドイツの人々の人心を得た。これが統一の基盤になる事だろう。我々もそうせねばならないのではないか。
 
プ:ならば李明博政府が「非核開放3000」など、以前の政府の政策をひっくり返して強硬な態度を見せた為にこうした一連の事態が起こったと見るべきか。
 
林:そうだ。圧迫と制裁を通じては北朝鮮核問題を解決する事は出来ない。ブッシュ前政権が、世界唯一の超大国という米国の屈強な力を持って8年間北朝鮮を屈服させようと努力したが、成功せずにむしろ逆効果ばかり招いた。むしろ「ブッシュの核爆弾」という言葉の通りブッシュ前大統領の強攻策が北朝鮮をして核兵器を作らせたのだ。その前にクリントン元大統領の時は北朝鮮の核活動凍結と、米国が北朝鮮に安保上の驚異を加えずに、朝米関係を正常化して平和体制を樹立する措置を取り交わす政策を繰り広げた。
 
電力生産の為に核開発をしたという北朝鮮の主張に対しても「ならば(核開発を中止する事で招かれる)電力損失を補償する為に経済エネルギー支援をしよう」とやり取りするやり方で接近した。
 
すると北朝鮮は実際に建てていた200MW原子炉と50MW原子炉を閉鎖するなど8年間核活動を中断した。こうしてやり取りする、包容する、手法で接近せねばならない。「悪の枢軸だ、除かねばならない」として圧迫と制裁を繰り広げる政策を用いれば、北朝鮮は反発してさらに多くの核兵器を作り出す。
 
すなわち最近まで(の歴史を見ると)北朝鮮の核に対する2種類の接近方法があったが、両者は良い比較対象だ。圧迫と制裁よりも、包容と協商がより効果的だということだ。
 
「10.4宣言だけでも履行されていれば延坪島事件はなかった」
 
プ:今回ヘーカー博士と共に訪朝した米スタンフォード大学のロバート・カーリン研究員とジョン・ルイス教授らが米国政府に対して「創造的接近」を注文した。米国が韓国の対北強行策を追従するのではなく、米国自ら事態解決の為に独自的接近を試みよという注文だった。すぐには難しくとも平和体制に進む為の努力を始めねばならないという主張も多い。文ジョンイン延世大学教授は、今日の朝のMBCラジオ「孫ソッキの視線集中」で南北間秘密接触でもしなければならないと言った。だがもし北が第3次核実験やその他の挑発を強行すれば、事態が収拾出来なくなるのではないかと心配だ。
 
林:(韓国政府は)危機管理をしっかりやらねばならず、いつかは局面を転換せねばならない。出発点は南北対話だ。対話をしながら転換していくしかない。南北首脳会談をして「トップダウン方式」(top-down 上から下に向かって問題を解決していく方式)で解決しようという声もあるが、今の状況でそれが出来るか。もちろん出来れば良いが、相当な過程を経てこそ可能だと思う。今の不信と憤怒の状態では難しい。南北対話をして危機管理を互いに良くやっていきながら、緊張を解かねばならないと思う。韓国政府に意思さえあれば出来るのに、問題はそのような意思があるかだ。
 
最も重要な問題は朝鮮半島の平和を実現する為に努力せねばならないという事だ。その1段階目は緊張と衝突の西海を平和の海にする事だ。これが第一歩だが、北方限界線(NLL)の為にいつも問題が起こる。
 
だがNLL解決方法も(2007年南北首脳会談の結果物である)10.4宣言を通じて合意した。「西海平和協力特別地帯」を設置するという構想は、線の概念を面の概念に変える事にしたものだ。地上にも休戦「ライン」だけがあるのではなく、幅4キロの非武装地帯(DMZ)があるように、海にも相当な部分でこのように作り上げるのだ。この水域に軍艦は入れず、平和的漁業作業を保障しながら、漁業指導船だけが入れるようにするといったやり方がその内容だ。
 
こうすればNLL問題を解決出来る。これよりもさらに良い合意もあり得る。過去の政府で研究して用意しようとしたものだ。正直私は2007年首脳会談でこの問題が合意されようとは予想もしなかった。だが10.4宣言を通じて偉大な合意を見たのだ。今の政府が(その成果を)受けて具体的に実践すれば良いのに、していない。すでにこの海で何度目かの衝突が起こったか、何十人が死んだのか分からない。盧武鉉政権の時には西海上の南北軍艦艇の間でも通信を維持した。その期間には一件の事故もなく一人も死ななかったのに、わずか3年にもならぬ間にテチョン海戦、天安艦事件、延坪島事件が次々に起こった。人がどれだけたくさん死んだ事か。
 
プ:10.4宣言で合意した「西海平和協力特別地帯」構想が実現していれば今度の事態も起こらなかったというのか?
 
林:もちろんだ。(その構想は)数十年間南北が知恵を集めた出発点だ。もう出発を始めて停戦体制を平和体制に変えるべく進まねばならない。関連当事国の中にも米国、中国が先頭に立つはずがないのだから、南北が先頭に立って率いていかねばならない。以前の政権の時にはそのような努力が多かったのに、今の政府は関心すらない。だからといって代わりにしてくれる人間もいない。多く努力してもすぐには成功し難いのに、それすらしていないではないか。早くせねばならない。
 
プ:協商の意思があるならNLLから解くのが糸口にし易いと考えるのか。
 
林:そうだ。線の概念では難しいので、面の概念で行こうというのは奇抜なアイデアだ。緊張を緩和しながら危機管理を良くやり、南北関係改善を図らねばならない。今最も急がれるのは西海を平和の海にする為の協商をする事だ。その一方で六ヶ国協議を通じて、米国と北朝鮮の敵対関係を解消し、非核化を実現するという過程も同時に実現せねばならない。
 
「重要なのは米国の役割…MB(李明博の韓国での略称 訳注)が乗り出さねばならないが、期待しにくい」
 
プ:ヘーカー博士も訪朝報告書を通じて協商以外に問題解決の方法はないと主張した。だが、北が南の無辜の民間人に向かって無差別砲撃を加えた延坪島事件が発生し、協商の雰囲気は事実上流れてしまったかのようだ。今の雰囲気では南であれ米国であれ、どうやって北と対話をしようとするだろう。青瓦台は今「拡戦自制」という当初大統領の指示を否定してまでも国内対北強硬派の顔色ばかりうかがっているようだ。南の民心も北に対する敵対感に傾いている。冷静さを取り戻そうという人達は協商以外に方法はないと言うが大部分は憤怒に満ちており、一部では北朝鮮を武力で懲らしめろとまで主張している。このような状況で果たして何が出来るだろうか。
 
林:難しい問題だ。事の多くがねじれているが、北の核問題との関連ではヘーカー博士など専門家達が提示する方案が正しいと思う。対話と協商を通じて問題を解決すべきであり、北朝鮮の不安意識を取り除いて安定を図りながら、関係改善を通じて接近せねばならない。朝鮮半島平和体制を作りながら核問題を解決しなければならないという事だ。これは新しい主張でもなく、9.19共同宣言ですでに出ている事だ。この為には米国と北朝鮮の役割が重要だ。
 
中国も同じ考えだ。中国は昨年7月に対北政策基調を定めたように思えるが、(その内容は)朝鮮半島非核化原則を固守するという事と、北朝鮮核問題は朝米敵対関係の産物である為に米国が主導的に解決すべきという事などだ。中国は米国を助けてこの問題を解決する為に努力するという程度の立場だ。また中国は北朝鮮との伝統的な関係をこれからもさらに強化して発展させる事が彼らの国益と安保にも助けになると見ているのも同じ脈絡によるものだ。
 
したがってオバマ政権が決断を下すべきであり、米国が朝鮮半島問題解決にもっと主導的な役割をせねばならない。非核化のみならず、平和体制を築く時にも米国の役割が重要だ。
 
プ:しかし米国の歩みは中国とは大きく違うようだ。中国は南北双方に対して冷静さと節制を要求したが、米国は今回の韓米連合訓練に航空母艦ジョージ・ワシントン号を送るという挙に出た。一方ではこれと関連して憂慮を提起もした。米国側では「中国が北朝鮮を自制させなかったのだから責任を取れ」という態度のようだが、英国日刊紙「インディペンデンス」では「オバマの決定が朝鮮半島危機をさらに悪化させている」というコラムが載りもした。実際に米国の歩みを見れば、韓国の強硬対応に便乗して域内で軍事的影響力を強めようとしているのではないかという考えも浮かぶ。オバマ政権になってから朝米関係を独自に変えようとするよりは、李明博大統領の対北政策を追認して付いて来ているのではないかと思う。
 
林:全く同感だ。その点は私も非常に心配している。
 
プ:そうした面でオバマ政権が対北政策を変えなければ、韓国政府だけでも変えねばならないが、可能性はあるだろうか?
 
林:期待するのは難しい。李明博政府が今からでも局面転換をすれば良いが、現在ではそのような気配が見えない。心配である。
 
ブッシュ前大統領も北朝鮮の核実験以後である2007年に態度が180度変わって「勇断」を下したことがある。ブッシュ前大統領は「北朝鮮とは対話しない。悪の行動には補償はあり得ない」といつも言っていたが(2007年には)朝米間直接対話を始めて、北朝鮮があれほど望んでいたテロ支援国解除措置もしてやった。それは実に勇断であった。2008年には北朝鮮を敵性国交易法適用対象からも解除した。
 
そのような措置をしながら北朝鮮各施設不能可などの進展を見たではないか。ヘーカー博士の報告書を見るとこの不能可措置、すなわちプルトニウム生産中断措置は今も維持されていると出ている。もちろん前に生産された核物質は保有しているが。このような方式で接近すべきで、今の方式では困難ではないかと思う。オバマ大統領も当選する前の選挙過程では(金正日委員長との首脳会談を推進するなど)包容政策を強調したのに、今は態度が大きく変わった。
 
 
延坪島事件、解決法は何か
 
プ:天安艦事件以降にも政府は北朝鮮を孤立させようとして強硬な姿勢を見せてきた。だが6月地方選挙を通じてこの流れが形成されるのを国民の力で霧散させたが、今度のような場合は明白に大韓民国領土と民間人に向かって大砲を打って高貴な人名を犠牲にした。すぐに事態悪化を防いだり葛藤を和らげられる契機がないというのが気掛かりだ。
 
林:そのような契機が用意されなければならないが、時間がもう少し必要だ。契機があれば国民達の考えはまた変わりうる。「敵対関係を維持すればこのような事態がまた起こるのだ、またこのような事が起こって良いのか」という考えをするようになるだろうし、「その為に政府が少し前進せよ。このままでどうやって暮らしていくのか。政府が対話して敵対関係を和らげよ」という意見が出るだろう。
 
もちろんすぐには期待出来ない。今回北朝鮮が大韓民国領土に砲撃をしたのはあり得ない事であり、許せない事だ。それは当然の事だ。私も今回の事態は正直予想出来なかった。北朝鮮がそのような意図でやったにせよ、誤りだ。だからといって我が政府が屈服するはずもなく、むしろ国民達から敵愾心と憤怒ばかりを沸き上がらせた。
 
プ:当初青瓦台では拡戦を自制せよという指示があったという話が出た。今は否定しているが、事実ならこれは正確な判断ではないか。
 
林:当然だ。どの大統領であれそのように指示するのが正しい。他にどのような方法があるだろう。憂慮されるのは今回の事態によって我が対北政策を振り返らねばならないのに、むしろ今まで良くやってきたかのように判断しているようだ。南北共に「見せしめにしてやる」という方向に出るのではないかというのが心配だ。
 
プ:前長官として、現在の統一部が赤十字会談無期限延期、人道的支援中断などの措置を取っている事に対して忠告するとしたら?
 
林:現政府としてはそうする以外にないだろう。助言する事もない。根本的問題は統一に対する基本哲学なのに、これが直されない限りどうしようもない。
 
プ:北朝鮮で挑発水位をさらに高めてくる可能性もあるのか。
 
林:そうだ。さらに上げてくるだろう。我が国民達が心配しているが、北朝鮮の第3次核実験は間違いなくあると見ている。時がいつかは分からないが、やる事はやるだろう。やる以外にない。北朝鮮が開発しようという核兵器がまだ完成していない為だ。パキスタンとインドの場合は7~8回の核実験の果てに核兵器開発に成功した。まだ北朝鮮は完璧に核開発をしたのではない。1.2次核実験は成功したとは言い難いのが西側専門家の判断である。まだ核兵器はもちろん、核爆弾の段階にも達していない。
 
だが失敗は成功の母である。また、失敗しても実験過程を通じて多くの事を学ぶ為に、引き続き実験をするのだ。そこでヘーカー博士のような人は、北朝鮮の2度の核実験は確かに失敗したが、成功に至る飛び石だという点では成功と見れるという評価を下しもした。もし北朝鮮が優れた技術を持っていて、3~4回の核実験で核兵器開発に成功するかどうかは分かりようもないが、インドとパキスタンの場合を見ても2度の核実験だけでは駄目だった。そこで北朝鮮は核兵器開発が完成するまで引き続き核実験を試みるだろう。
 
プ:驚くべき事だ。非常に気掛かりである。かつて2回の核実験だけでも韓国をはじめとする西側は大きな衝撃を受けたのに。
 
林:あまり驚くべき事ではないが、いずれにせよ我々の立場としては北朝鮮が核実験をしなくなるよう早く措置を講じねばならない。核兵器開発の段階は普通5段階に分けられる。1段階目は核物質を生産する為の施設を作る事であり、2段階目はその施設を通じて核物質を生産する事だ。使用済み核燃料棒からプルトニウムを再処理するのが1.2段階目に該当する。3段階目はこの核物質を使って爆弾を作る事であり、4段階目は核爆弾を小型化・軽量化してミサイルに搭載する事だ。この時にようやく核爆弾は兵器としての機能を持つようになる。核爆弾をミサイルに搭載してこそ敵に打撃を与えられるからだ。3段階目で核爆弾(nuclear bomb)となり、4段階目でやっと敵に対して使用出来る核兵器(nuclear weapon)となる。この核兵器をいくつも作って実戦配置するのが最後の5段階目だ。
 
こうして見ると、クリントン元大統領は北朝鮮核開発を1段階目で防いで留まらせた。ブッシュ前大統領は3段階目まで進ませた。北朝鮮が4段階目へと入る前に防がねばならない。北朝鮮の立場としては核兵器は作る以外にない。後で廃棄するにしても、交渉力を強化するという意味があるからだ。
 
プ:一方で北朝鮮を理解しよう、包容して対話しようと言うが、今回の延坪島砲撃でこうした対北対話意志が消えてしまわないか心配されるようだ。
 
林:それでもまた良くなるのが過去の歴史だ。時間がどれだけ掛かるかは分からない。指導者がどんな政策意志を持ってこの問題に対するかが要である。
 
私は南北関係の将来に対してこれまで悲観はしてこなかったが、今回の事態に接してもう楽観してばかりはいられない状況という感じがした。段々事態が悪化している。それでも転換の機会は来ると思うし、また作らねばならない。失望してはならない。国民達が正しく理解して考えを共有するという事が重要だ。「プレシアン」読者の皆さんにもこの点をしっかりとお願いしたい。
 
(訳 ZED)
韓国語原文記事はこちら。
 
林東源氏インタビューはこれにて終了です。
テレビを見ていると先日訪朝したヘーカー(ヘッカー)博士にインタビューしていたものの、北朝鮮の核開発が大昔から進められたもので、その脅威ばかりを扇動するような内容になってました。当ブログの翻訳記事を御覧になればお分かりの通り、ヘーカー博士はこの施設が2009年4月(つまり韓国の李明博政権になって南北対立が深まってから)以降に建てられたと報告書に書いていたのですがね…。相当に意図的な編集が施されたニュース映像としか思えませんでした。さらに重要なのはヘーカー博士らがこの報告書で、オバマ政権に北朝鮮と対話すべしと進言している事です。「戦略的忍耐」という名の無為無策では駄目だという事ですが、こうした報告書の重要なポイントがやはり日本では全くと言って良いほど報道されていません。日本人の多くは「北朝鮮(に限らずアジア諸国の多く)には報道の自由がない」などと言って馬鹿にしますが、「報道の自由」があるくせに情報操作としか思えないひどい記事を垂れ流すのはいいんですか? 特にアジアプレスの言う「アジア諸国には報道の自由がない」という言い草が、いかにエラソーな上から目線であるかが分かるというものではありませんか。
 

「延坪島紛争」で読んでおくべき韓国の報道その3

前回に引き続き林東源インタビューの翻訳です。これを読めば日本で報道されている朝米間の核問題が、いかに嘘だらけかがよく分かるでしょう。別名「石丸次郎が教えない朝米間の歴史」(笑)。
原文URLはこちら
(訳 ZED)


「米国が教えてくれたと? 証拠もなかった」
 
プ:発表文を見ると北朝鮮のウラン濃縮プログラムは1997年から米国マスコミに報道され、ジェームス・ケリー米国務省次官補が2002年訪韓時に関連情報を教えてくれたとされているが、それは確かなものではなかったとされている。
 
林:事実、その当時には南北関係が活気に溢れていて2002年8月30日には小泉純一郎日本首相も朝日首脳会談の為に9月17日に平壌を訪問すると言う計画まで発表された。しかしその直前に米国務省内対朝強硬派であるジョン・ボルトン国際安保担当次官が韓国を訪問した場で、国防部長官らに「北朝鮮が1997年から推進してきた高濃縮ウラン(HEU)生産計画が憂慮すべき水準に達した」とし「これは北朝鮮との関係改善において障害要因になりうる」と言った。
 
これは小泉総理の訪朝日程が知らされてから、それを阻止する目的があったものと思われる。その頃韓国政府が南北鉄道を連結する為に、非武装地帯の地雷を撤去しようとした時も(ボルトン次官らは)否定的な態度を見せた。
 
当時、我が政府は米国側のそのような態度に対してまともではないと考えた。両国の情報機関同士でまずは協調し、我が情報機関が(米国側から得た情報を)我が政府に報告するのがまともな情報共有の過程なのに、政治家であるボルトン次官がソウルに来て韓国国防部長官と外交通商部次官補に言うのは少し異例だ。おまけに訪韓目的は「講演」だったのだ。
 
北朝鮮のHEU生産疑惑は1997年「ワシントンタイムス」が二日間一面でトップ記事にするなど大々的に報道する事で全世界に知られ、その時から韓米双方の情報機関がたゆまず追跡してきた。両国情報機関は定期的に情報交流及び評価会議をするなど協力を強化してきた。2002年6月頃までは進展した情報を確保出来なかったというのが、6月当時韓米情報機関同士の会議内容だ。
 
しかしボルトン次官がおかしな発言をするので我が情報機関が確認してみると、情報機関の間ではそのような情報交流はないという事だ。米国側から情報を公式に通報してもくれなかったのだ。
 
同年10月3~5日に予定された訪朝を前にして、ケリー次官補がソウルに入った。ブッシュ大統領が金大中大統領に電話して「大胆な接近」をしに特使を送るとしたので「これでようやく朝米間の緊張関係を解消する為に特使を送るのだな」と思った。
 
事実その前までは韓国政府が、北朝鮮と対話して協商せよと言っても駄目だと言うのがブッシュ行政府の立場であり、それに北朝鮮は「悪の枢軸」であって先制的軍事攻撃で除かねばならない政権だというのが「ブッシュドクトリン」の立場ではなかったか。ボルトン次官は「イラクの次には北朝鮮だ」とまで言った。そこで我が政府はケリー次官補の訪朝を(朝米関係改善の為の融和的ジェスチャーと見て)内心歓迎した。
 
ところが実際にケリー次官補と会ってみると、そのようなものでは全くなかった。「北朝鮮がウラン濃縮プログラム(UEP)を推進しているという事を米国は知っており、これを廃棄せねば対話はない」と通報しに行くのだという。
 
そこで「もし北朝鮮がUEPを推進するというのが事実ならば、なぜ情報機関同士の情報交換がないのか、韓国政府に正式に情報を提供せねばならないのではないか」と聞くと、結局ケリー特使の訪朝以後である10月7日に米中央情報局(CIA)チームがソウルに来て我が政府当局者にブリーフィングをした。
 
その最初のブリーフィングを私も一緒に聞いた。(林前長官は当時、青瓦台統一外交安保特別補佐役として在任中だった)ブリーフィングの内容は「北朝鮮が地下にHEU生産施設を建設している最中であり、遠心分離機も充分に確保している」というものだった。またCIAは北朝鮮が2005年からは1年に核爆弾を2個ずつ作れる高濃縮ウラン(HEU)を生産するだろうとの情報判断を伝えて来た。
 
そこで「これは並みの深刻さではないが、証拠はあるのか」と聞くと、確証はないという。それで「私は国家情報院院長までやった人間だが、不確実な諜報水準のものを政治的に解析して情報と言えるのか、参考にはするがこのような水準の情報を根拠に対北政策を変える事は出来ない」と釘を刺した。
 
米国が提起した不確実な諜報である「金倉里(クムチャンリ)地下核施設疑惑」の為に1998年にも戦争が起こる所だった。それは当時からわずか4年前の事だ。米国で食料60万トンを北朝鮮に提供してやり、その代価として現場へ行って調査してみると、違うという事が判明したのだ。このような失敗を繰り返してはならず、朝米間緊張関係は望ましくないとい思った。もちろん北朝鮮の核開発を認める事は出来ない。だが確証のある情報を持って対処せねばならないではないか。今から緊密に情報協力を維持して、確証をまずは確保した後で対策を論議するのが正しいと思う。
 
当時このような私の考えを米国側に伝えた。しかしどうして、米国が私の言う事を聞くものか(笑)。そのまま米国ネオコン達が最初に計画した通りに引っ張られて米国の対朝政策は定められた。
 
当時我が政府が心配したのは朝米間の「ジュネーブ合意」が決裂する事だった。ジュネーブ合意の骨子は、北朝鮮がプルトニウム生産活動などを中断する代わりに韓米などの西側が軽水炉を建設してやるというものだが、もしこの合意が決裂したら北朝鮮は(1994年以後)8年間中断していたプルトニウム核活動を再開するものと見られた。当時の状況からプルトニウムプログラム再開にはさほど長い時間は掛からないであろう反面、UEPはまだ疑惑提起水準であった為に時間が多く掛かるだろうと見られた。
 
そこで急がれるのは北朝鮮のプルトニウムプログラムを防ぐ事だという判断の下、ジュネーブ合意に致命的な影響を与える事を憂慮して慎重に対応しようとしたのに、米国は軽水炉提供プログラムを中止して重油供給も中断するなど「暴走」した。結局2003年1月に北朝鮮は核拡散禁止条約(NPT)脱退宣言をして核開発を再開し、2006年10月に第1次核実験をしたではないか。そこで米国では北朝鮮の核爆弾を「ブッシュの核爆弾」とも呼ぶ。ブッシュ行政府の無策な対朝強攻策が北朝鮮の核開発を助けてやったという意味だ。
この項続く)

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