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【翻訳記事】あなたの中に文昌克はいないのか

金甲洙(キム・ガプス 김갑수)氏のフェイスブックより

あなた達の中に「文昌克」はいないのか(1)
日帝の啓蒙主義者達と今日の「擬似進歩」は同じ穴の狢

多くの人達が文昌克(ムン・チャングッ 문창극)の発言に興奮、怒りを表明している。それもそうで、文昌克は日本の植民地支配も、分断と朝鮮戦争も全て神の意思だとしたからだ。もし彼が韓国の民主化や経済発展が神の意思だと言ったなら、どのような反応を見せただろうか? おそらく何事も起こらなかっただろう。人々はただ文昌克をキリスト教信仰を持った純真な人となり程度で心に刻んだ所だ。

だが文昌克は後者のような話はしなかったし、するはずもなかった。それならばなぜ彼は「神の意思」を煽り立てたのだろうか? 端的に言って彼は我々の歴史を貶める為に神を利用して食い物にしたに過ぎない。したがって、彼は決して篤実な信仰人だとも言えないようだ。

私が見るに本当の問題は文昌克の言葉にすっかり興奮、怒りながらもなぜ彼の言葉が不当なのかを明確に論証出来ない所にあるのではないかと思う。多くの知識人達が誰も彼も簡単に「親日史観」と「植民史観」だと言う。それならばなぜ親日史観で、どうして植民史観なのかと問い返す事も出来る。これに対して「文昌克は日本帝国主義の『植民地近代化論』を信奉している為だ」と答弁する事だろう。

私が見るにはここまでだ。日本が退いてすでに70年なのに、なぜ文昌克の類の人間達が依然として勢力を持ち、どうして文昌克式の発言が忘れられては浮上するのか、深く考えてみる必要があるのではないか?

私はこの場で、文昌克を庇護するいわゆる「守旧馬鹿達」を論議しようというのではない。私は、文昌克を非難しながらも論理を備えられない知識人達と進歩主義者達を問題にしようとしている。

「おまえ達は李朝500年に無為な歳月を送った民族だ」
「李朝末期に、我が民族達の血にはただで遊んで食うのが全くそのまま身に刻まれていました」

上の二つの発言は文昌克のものだ。あなたはとりあえずここから「李朝」という用語を問題にする能力はある。だがその次の言葉について考えてみよ。我々は朝鮮500年を無為な歳月であり、朝鮮末期に我が民族は非常に怠惰であった主張に対してあなたはどのように考えてきたのか? 今までこれと等しい考えを持ってはいなかったかという事だ。もし一抹でもそうであるなら、あなたもまた植民史観に知らず知らずのうちに感染していたという嫌疑をおく必要がある。


あなた達の中に「文昌克」はいないのか(2)

「一時は独立協会、万民共同会、新民会活動などで愛国啓蒙運動の中心的役割をした事もあった彼の『転向』または『変節』の下には朝鮮が未開だという日帝の認識がそのまま下敷きになっていた…だがあの時について言えば彼はまだ積極的『親日派』ではなかった。彼が『親日派』に『転向』したのは、国が亡んだ翌年である1911年に寺内総督暗殺未遂事件を口実として日帝が朝鮮民衆運動指導者達を大挙捕まえた『105人事件』で3年の懲役暮らしをしてからだった」(ハンギョレ記事「文昌克候補が引用した尹致昊(ユン・チホ 윤치호)はどんな人?」中から)
http://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/642255.html
(ただしこの記事は日本語版では翻訳掲載されていない 訳者注)

上記は「ハンギョレ」記者の中でも比較的無難な歴史観を持っていると評価される韓承東(ハン・スンドン 한승동)記者のものだ。だが私が見るにこの文には明白な歴史認識の誤謬と限界が表れている。とりあえず韓記者は、尹致昊が最初は悪くない人間だったのに1911年以降に「転向」したという風に語っている。「転向」とは? 朝鮮知識人が親日派に堕落した事にも「転向」という言葉を使えるのか?

次に尹致昊は1911年以降に転向したのではなく、「最初から親日派だった」事を韓記者は知らないか歪曲して把握している。これは皮肉な事に、韓記者が提示しておいた尹致昊の日記にもよく表れている。

1)「朝鮮が今の野蛮的状態に留まるより、敢えて文明国の植民地になるのがましだ」(1890年5月18日尹致昊日記)

2)「もし私が好きなように自分の故国を選択出来るならば、私は日本を選択する事だろう。おお、祝福された日本よ! 東方の楽園よ!」(1893年11月1日尹致昊日記)

このように尹致昊はすでに1890年代から親日派だった。彼は独立協会幹部を務めながら開催した万民共同会でも親日派だった。彼は福沢諭吉と伊藤博文を本心から尊敬した。特に尹致昊は、ソウルを訪問してから帰る伊藤博文の為に料亭・菊翠楼で歓送会を開いてやった。伊藤はその日尹致昊からもらった贈り物に大変満足し、答礼として自身の写真を尹致昊へ与える。伊藤が尹致昊からもらった贈り物は大型の銀茶碗だったが、そこには新しく建てた独立門が浮き彫りにされていた。

実像がこうなのに、なぜ韓承東記者は尹致昊が「一時は独立協会、万民共同会、新民会活動などで愛国啓蒙運動の中心的役割」をしたと肯定的に認識したのだろうか? これは果たして韓承東記者だけの問題ではない。これは今日大多数の韓国知識人達の問題でもある。

韓国の進歩的知識人達は啓蒙運動と独立協会を肯定的に認識する誤った歴史認識を持っているが、事実これこそ日本が普及させた「最悪性植民史観」によるものだ。


あなた達の中に「文昌克」はいないのか(3)

韓国進歩知識人達はいくつかの共通点を持っている。まず彼らは一様に社会進化論を受容する。「西遊見聞」を書いた兪吉濬(ユ・ギルチュン 유길준)は、この世には未開化な国と半開化な国と開化した国があると主張し、韓国は半開化、西洋は開化した国だと断定した事がある。それによればアフリカは未開化な国である事は間違いない。

もちろん私はこのような3分法に同意しない。社会とは発展もするし、退歩する事もあるものだ。社会が無条件に発展だけするなら、歴史的には無数に確認出来る文明の滅亡史をどのように説明出来るのか。そして西洋は無条件開化したという説明も正しくない。軍事的・経済的優越が開化の全てではないからだ。

次に韓国の進歩知識人達は根拠のないエリート意識に染まっている。彼らは人民大衆の属性をよく知らない。彼らは東学抗争と義兵抗争、そして東北満州の反日武装闘争などに対してよく知らなかったりわざと無視する。そうしてみると韓国の進歩知識人達が重視するのは、いわゆる愛国啓蒙運動であるというだけだ。したがって彼らは独立協会と独立新聞が歴史的には大変肯定的な団体だったものと考える。

厳正に言って、独立協会というところは甲申政変の後を継ぐ事大親日団体だったというだけだ。まず独立協会の幹部だった人間達の面貌を確かめてみよう。独立協会は顧問に徐載弼(ソ・ジェピル 서재필)、会長に安駉壽(アン・ギョンス 안경수)、副会長に尹致昊(後に会長)、委員長に李完用(リ・ワニョン 리완용)らで出発した。

会長団の中でも李完用と尹致昊については、もうすでに語る必要がないので省略する。安駉壽は、日本で金玉均(キム・オッキュン 김옥균)が伊藤に少女・裵貞子(ペ・ジョンジャ 배정자)を上納するようにした人間だ。彼は早くも1898年、日本にけしかけられて高宗譲位の陰謀を目論みもした。

独立協会委員としては、高利貸をしながら親日団体・政友会総裁を務めた金宗漢(キム・ジョンハン 김종한)、アメリカ留学出身で総督府男爵兼中枢院参議を務めた閔商鎬(ミン・サンホ 민상호)、乙巳五賊・李根澤(リ・グンテッ 리근택)の弟にして総督府男爵である李根澔(リ・グンホ 리근호)などがいる。結局、独立協会幹部と委員の中で、生き残ったのは李商在(リ・サンジェ 리상재)と周時經(チュ・シギョン 주시경)しかいない。

1898年独立新聞の論説には「伊藤博文氏は当今世界の有名な政治家にして、また我が独立事業に大功ある人であろう。此度遊覧に来る際、政府と人民は格別に厚くもてなさん事を願う」となっている。彼らの言う独立とは大韓の自主独立ではなかった。彼らは日本の支援を受けて清国の宗主権をなくす陰謀を、独立と包装して言ったに過ぎない。そこで清国使臣を迎えた迎恩門を壊し、その場に独立門を建てたのだった。

この他にも露骨な親日論調を披瀝した独立新聞の社説は無数に多い。徐載弼が反民族的な親日・親米利権屋に過ぎない人となりであった事は、すでに知っている人はみな知っている。

それにも関わらずなぜ韓国の知識人達は近代的な愛国啓蒙運動を高く買うのだろうか? いくつかの要因を挙げられるが、その中でも核心的なのは彼らが朝鮮時代の歴史に無知な為だ。朝鮮に対する不当な歪曲・卑下こそ植民史観の核心だ。

518年間悠久に続いた世界最長寿王朝、最小限300年以上文治と治世を具現した朝鮮、東アジアの1等先進国家だった朝鮮を彼らは知らない。彼らは朝鮮易姓革命の精神と民本政治を知らず、朝鮮王朝実録と経国大典、それに大同法などを知らない。

先に確認したように、文昌克の植民史観は朝鮮に対する歪曲・卑下的認識にはじまるものだ。朝鮮を歪曲して卑下したのだから、朝鮮を取って食う勢力が免罪符を得るのであり、王政を無視するのだから西欧的近代化が無条件礼賛されるのだ。今日の進歩的知識人達の脳裏にも数多くの文昌克が巣食っている。

訳:ZED

韓国語原文記事はこちら
https://www.facebook.com/kimcapsu/posts/321080624709555
https://www.facebook.com/kimcapsu/posts/321080734709544
https://www.facebook.com/kimcapsu/posts/321080811376203

韓国の新総理候補に指名された例の文昌克について書かれた文章を今回はお届けした。前に筆者がこの「韓国のナベツネ(籾井か百田でも可)」について書いた直後、「植民地支配は神の意思」発言が発覚して大騒ぎになったのはあまりに予想通り過ぎる展開であったろう。文について日本の右翼メディア(産経など)は当然大絶賛している。が、事態が大きくなり過ぎたせいか、今日17日になって文昌克が日和った発言をブツブツつぶやき始めたのは笑わせるだろう。

http://www.newsis.com/ar_detail/view.html?ar_id=NISX20140617_0012987380&cID=10301&pID=10300
文昌克「日本は『慰安婦』強制動員謝罪せねば」(韓国語記事)
[2014-06-17 09:16:14]
文昌克国務総理候補は17日「日本の『慰安婦』強制動員は明らかに反人倫的犯罪行為だという事に気付き、必ず謝罪されなければならない」と語った。

おいおい、ずいぶん弱気じゃねえか。数日前までのでかい態度とへらず口はどうしたんだ? おまえ少し前まではこんな事を主張してたんじゃねえのか?

http://sankei.jp.msn.com/world/news/140612/kor14061216170003-n1.htm
2014.6.12 16:17
韓国「神の意思」発言の首相候補、慰安婦問題でも「謝罪を受ける必要はない

たった5日で「ギバ~~ッ! ギバ~~ッ! byマイク・クイン」(のふり)かよ。どうやら文昌克はそこまでして総理になりたいらしい。どっちにせよロクなものではないし、この男が本心から悔い改めた訳では決してないだろう。
事態と反発が大きくなり過ぎてついに文は「日本の謝罪は必要」と180度違う事を言い出した訳だが、そんな「主張の使い分け」は佐藤優や原子力資料情報室の伴英幸のような輩だって当たり前のようにしている事だ。文昌克のような権力亡者にとって、総理の座が掛かっていればその程度の二枚舌は平然と使い分けるものだろう。

それはともかく、文昌克の根底にあるものこそまさに植民史観というものである。これは文昌克一人だけの問題ではなく、今回の記事で金甲洙氏が述べている通り文を擁護する韓国の保守派はもとより、それに対立するはずの進歩派の中にも深く根を下ろしている所が問題だ。だからいつまでもこうした親日問題を解決出来ない。上記記事で引用されている韓承東という記者はあれでもハンギョレの論説委員であるし、これではやはり同紙論説委員で「日本は戦後真面目に謝罪してきた」というホラ話を必死に言いふらしてきた日本特派員の鄭南求と一緒だろう。ハンギョレの歴史認識というのはそもそもがこの程度であり、日本で言えば朝日新聞や東京新聞と同じような水準&立ち位置という事だ。筆者はこれまで何度も繰り返してきたが、ハンギョレが「韓国の代表的革新系メディア」というのはもはや過去の話に過ぎないのである。はっきり言って、今のハンギョレはすっげえ保守的です! 少なくとも創刊当初の頃からは考えられないくらい右寄りになった。ハンギョレは歴史問題だけでなく、韓国の原発輸出にも賛成しているメディアだという事を忘れてはならない。
こうした傾向はハンギョレだけの話ではなく、他の代表的進歩派メディアである京郷・オーマイニュース・プレシアン(ここは日本の小泉・細川を支持したばかりか、なんと核融合発電にも好意的論調!)らも全く同じであり、また「韓国版岩波知識人」とも言うべき白楽晴の創作と批評、いわゆる「創批文化人」にも全く共通しているだろう。白楽晴や韓勝憲・丁世鉉といった「創批文化人」達が統合進歩党への弾圧事件や、非正規職・整理解雇などの労働問題、平和統一問題などで最近信じられないくらい愚劣・醜悪・無様な反動的言説を振りまいているのも、根っこは同じであると思う。ハンギョレや「創批文化人」などの韓国進歩知識人達もまた植民地史観に毒されているという点で、文昌克と根本的な部分を同じくしている。

もちろんこうした植民地史観に毒されているという問題は在日社会にも存在しよう。朝鮮学校への無償化除外にお墨付きをわざわざ与えている民団はもちろんそうだし、最近では他にも在特会に対する「カウンター」行動に関わっている在日、早く言えばしばき隊・野間易通一派に連なる在日達にそれは顕著である。野間一派の在日の中には日の丸大好き天皇大好きと公言する輩がいるし、自分こそ日頃からイヌのような真似ばかりして悪質なレイシスト日本人に「一死御奉公」しているくせに、他の日本国籍の在日に対して「おまえ日本人だろう」という最低な罵声を浴びせる輩もいる。まさに今の在日社会にも小型文昌克がずいぶんと目立つようになってしまった。
韓国知識人達、あるいは在日の親日不良分子に見られるこうした醜態は、まさに自民族に対する歪曲と卑下、すなわち植民地史観の産物そのものである。


今回取り上げた記事の執筆者である金甲洙氏という人物は韓国の小説家・評論家だ。日本ではほとんど知られていないが、今の韓国では屈指の硬骨な文筆家で、筆者が最近注目している人物の一人である。2012年の総選挙直後に起こった統合進歩党への社会的リンチとも言うべきバッシングに対して、早くから異議を唱えてきた稀有な人物の一人だった。その他、歴史問題の見識はもちろん、今回のような韓国進歩派の抱える問題点や日本批判なども非常に鋭く、在日同胞にももっと氏の事が知られ、その記事が読まれてしかるべきだと思う。その手始めとしてとりあえず今回の記事を選んで翻訳紹介した次第である。氏のその他の記事などは以下を参照していただきたい。もちろん全て韓国語記事である点はお断りしておく。

金甲洙氏のフェイスブック(記事を読むにはフェイスブックのアカウントが必要)
https://ko-kr.facebook.com/kimcapsu

ニュースサイト「真実の道」金甲洙氏記事一覧
http://www.poweroftruth.net/column/mainList.php?kcat=2024&PHPSESSID=c88201ca31bc711e1a3d6056ac1c5316

なお注意点として、金甲洙(キム・ガプス 김갑수)という名は朝鮮・韓国人の名前としては非常にありふれた多い名であり、同姓同名の文筆家や芸能人などが何人もいるので検索などする時は気を付けていただきたい。今後とも氏の著作や記事は折を見て書評や翻訳して御紹介していきたいと思う。

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