ちょっと話が逸れるが、前回の続きではなくやや別の話を。
統合進歩党の解散命令が憲法裁判所から下されてからというもの、韓国では俗に「進歩派知識人」と言われている連中がこの件について多くのコメントや談話を発表した。それらの主旨はどれも判で押したと言うか金太郎飴というか、ほとんど同じようなもので、そのコメントの中に必ず現れる世にも不思議な免責事項!
「私は統合進歩党の政策や綱領を支持しないが、強制解散には反対だ」
「進歩党の解散は国民や有権者の判断に任せるべきだ」
筆者はこの間韓国のメディアをずっとウォッチングしてきたのだが、今回の件でコメントや談話を発表した韓国の左派・進歩派の知識人・言論人・野党などで、上記のような事を言わなかった奴はまずいないと言って良いだろう。この手の連中は自分が何か気の利いた事を言ったつもりなのだろうか? それとも自分が朴槿恵はじめとする韓国反共極右勢力に対して勇敢に抵抗したつもりでいるのだろうか?
「私は統合進歩党の政策や綱領を支持しないが…」だって? これを聞いた右翼は嘲笑って次のように言うだろう。
「だったら黙ってろよ。自分が支持してもいない政党がどうなろうと、おまえに何の関係がある?」
「進歩党の解散は国民や有権者の判断に任せるべきだ」だって? これを聞いた右翼は嘲笑って次のように言うだろう。
「だったら黙ってろよ。どっちにせよおまえも「進歩党が解散に値する集団」だと思ってるからそう言うんだろ? そうでなかったら憲法裁判所だろうが国民の判断だろうが、どっちが解散の決定下そうが同じだろ。憲法裁判所は、主権者である「国民」が判断を下す手間をわざわざ省いてやっただけなのに、何の文句があんだ?」
韓国の左派・進歩派知識人どものこうした言い草など、右の立場からすれば本当にお笑い種で、上記のように嘲笑われておしまいでしかない。当然朴槿恵政権を撃つような鋭さなど欠片もありはしない。こうした言い草というのは要するに、「自分らは統合進歩党のような『従北』じゃない。あんな連中と一緒にすんな。国家保安法撤廃や駐韓米軍撤収などと夢みたいな事ばかり言ってる『極左過激派集団』など消えてくれてせいせいしてる」という本音の表出なのである。だがそれをストレートに言ったらセヌリ党やそこらの極右団体と違わなくなってしまうので「自分らは飽くまでも『民主派』のような顔をし続けたいから、解散反対のポーズだけはしておかないと」という事で「解散反対・国民の判断で」という言い訳と言うか「免責事項」を臆面もなく付け加えるのだ。卑劣と臆病の極みとしか言いようがない。憲法裁判所の解散命令が不当で民主主義を破壊するものだと本心から思っているのなら、「統合進歩党の政策や綱領を支持しない」などと余計な事を言わず、単に「解散命令反対」「憲法裁判所糾弾」とだけ言えば済む話ではないか。
こうした卑劣極まりない言辞を弄した韓国進歩派知識人・言論人・政党の発言をいくつか以下に翻訳抜粋して列挙する。こういう連中を見ていると、最近の日本の左派・リベラル言論とどんだけ体質的にそっくりなのかが痛感させられよう。「憲法9条にノーベル賞運動韓国委員会」と併せて、こうした「韓国の民主派・進歩派」と言われて来た連中がいかに堕落した存在である事か! 日本の「戦後の9条と平和国家」がまともに実践されてこなかった美辞麗句に過ぎなかったように、こうした連中が担ってきた「韓国民主主義1987年体制」もまた壮大な虚構に過ぎなかったのである。いずれも両国の民衆を欺き、歪んだ「平和国家」「民主主義国家」というナルシズムで酔わせる道具でしかなかったのではないか。
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/670422.html?_fr=mr1
[金東椿コラム]それでも進歩政党は必要だ
聖公会大学教授・金東椿曰く
「制度圏に入って来た統合進歩党指導部の路線と形態に大きく失望した。
だが私は今度の憲法裁判所の決定は、重武装した大王蛙が死につつある在来種蛙を相手に井戸の中で戦争を繰り広げたものと見る。統合進歩党の時計が5.60年代で止まっているなら、今回の憲法裁判所の時計はヨーロッパの19世紀、我が国では朝鮮時代で止まっている。」
金東椿本当に終わってんな…。以前はもっとまともな学者だと思ってたんだが。頭の中身が大昔で止まってんのはあんたの方じゃねえのか。
http://www.pressian.com/news/article.html?no=122597
緑の党「統合進歩党解散に沈黙する野党、公安政局を傍観?」
「民主主義後退させた憲法裁判所決定、市民達が声を上げてくれ」訴える
韓国緑の党曰く
「私は統合進歩党の綱領と政策を支持しません。おそらく多くの国民達も統合進歩党を支持しない事でしょう。ですが、考えが違うという理由で政党を強制解散させる、こんな国では真正な自由を享受して暮らす事は出来ません。市民の方々が声を上げてくれる事を節に訴えます」
「政党に間違いがあったなら、これを審判する唯一の主体は有権者・国民です。今日憲法裁判所は、国民が憲法を守れと委任した権力をデタラメに濫用して民主主義を後退させました。憲法裁判所が下した決定は非常に無理で政治的な決定でした。このような決定を傍観した場合、これからどんな事が起こるか心配です。公安政局がまた復活しないという保障はありません。」
緑の党共同代表・河昇秀弁護士曰く
「私は統合進歩党を支持しない。緑の党には緑の党の綱領と政策がある」
「小さな院外政党だが、緑の党は本日の誤った決定に対して絶えず問題提起して、民主主義が後退しないようにする。市民達におかれても、他人事だからと傍観せずに関心を持ってくれ」
はい、緑の党です。韓国と言えども、しょせん「戦争賛成左翼」の緑の党は緑の党という事か。統合進歩党の政策を支持しないとか言うけど、進歩党だって緑の党と同じく原発廃止や自然保護を政策に掲げてたはずなんだけどね。韓国緑の党には、日本の都知事選で細川・小泉組を支持したという「前科」もあったよねえ。
将来北へ「人道的介入」する事になったら、韓国緑の党は誰よりも真っ先にそれにバンザイします! ドイツ緑の党がユーゴ空爆やリビア侵略に賛成したように! その為にも邪魔な「従北」の統合進歩党が消えてくれてせいせいしたぜ!
ちなみにこの記事では新政治民主連合(旧民主党)も緑の党と同じで「解散は国民の判断に任せるべき」と言っていると伝えている。新民主連合の代表的な議員達はみんなそう。
http://m.zum.com/news/home/18488318
新政治民主連合非常対策委員長・文喜相曰く
「統合進歩党の綱領には反対だが、政党解散は先進民主主義国家で前例がない」
http://economy.hankooki.com/lpage/politics/201412/e2014121915113396380.htm
新政治民主連合議員・安哲秀曰く
「憲法裁判所の決定を尊重する」
「統合進歩党の活動に同意しないとしても、政党解散決定という重大事案は憲法裁判所でなく、国民と有権者が審判すべき役割と思う」
http://cdy21.tistory.com/1890
新政治民主連合常任顧問・鄭東泳曰く
「統合進歩党が解散されるかもしれないと思うが、しかしそれは憲法裁判所の決定ではなく、選挙を通じた国民の集合的意思によって選択されたり判断される問題だ。統合進歩党解散に反対する」
http://poweroftruth.net/column/mainView.php?kcat=&table=impeter&uid=706
憲法裁判所「統合進歩党解散審判」なぜ急いだのか?
韓国の著名政治ブロガー「アイアムピーター I am Peter」曰く
「アイアムピーターは統合進歩党を支持したり、彼らの主張に賛成はしません。しかし憲政史上初めて提起された政党解散申請決定があまりに早いという点で、不正判決あるいは権力の侍女として性急に幕を引こうという点で憲法裁判所の有様に批判的です。」
「アイアムピーターは、統合進歩党の解体と今後は1992年の民衆党のように政治有権者の論理によって決定されねばならないと思う。」
このアイアムピーターというのは向こうではかなり有名な政治ブロガーとして通っている所なのだが、例によって「進歩党を支持しないけど、憲法裁判所のやり方には反対」という典型的な免責事項論理。しかも進歩党の解散は「有権者の論理」で決めろとまでいう。ようするにアイアムピーターとやら(緑の党や民主党もそうだが)は、最初から統合進歩党が解散してしかるべきと考えている訳だ。そもそも統合進歩党がどうして解散しなければならないのかという根源的な話なのに。そんな問題や理由はどこにもない。従って憲法裁判所にも有権者にも今同党を解散させる必要性など全くないのだ。それなのに「有権者の論理」云々というのは、「民主的な手続きなら解散もオッケー」という事で、最初から進歩党は目障りで嫌いだからいなくなって欲しいというだけの話だろう。
http://www.etoday.co.kr/news/section/newsview.php?idxno=1043142
盧武鉉時代に政策室長や副総理などの要職を歴任した国民大学教授・金秉準曰く
「統合進歩党を支持しない。古い理念にとらわれているのも嫌だし、扇動的で暴力的なのも嫌だ一部指導者達の言葉遊びや「イルクン」だなんだという北朝鮮式表現はなおそうだ。理解出来ず、理解したくもない」
「だがこれを解散させる問題においては考えが違う。誰もが言う事だが、民主社会において政党の命は基本的に有権者の手に任せねばならない。少数意見を出した金二洙裁判官(9人の憲法裁判官で唯一反対した人:訳注)の言葉のように、憲法裁判を含む他の手段は「最終的で補充的な手段」に過ぎない」
はい、盧武鉉時代に副総理までやった学者もこんなもんですよ。本当に「誰もが言う事」しか言ってない。要するに北はもちろん「従北」も嫌いだっていうだけの話をもったい付けて言ってるだけ。進歩党の事を「古い理念」とか言って馬鹿にしてるけど、おまえこそただの古臭い反共主義じゃねえか。李承晩や朴正熙時代と何が違うんだ? レベル低すぎ。もっと「民主的」な手段で統合進歩党に引導渡せりゃ文句はなかった、ってだけの主張でしょ。ちなみに意外と日本では知られていない話だが、盧武鉉は大統領時代に国会で民主労働党(統合進歩党の前身)にものすごく辛く当たった。それこそハンナラ党以上ではないかというほどに。その政権の副総理だった人間の言う事であれば、ある意味「納得」ではあるが…。
韓国のいわゆる進歩派の大半はこのように「統合進歩党を支持しないけど、憲法裁判所の決定には一応反対」という、事実上の「進歩党みたいな従北集団が潰されてラッキー」という表明を一様に表明している。プレシアンなんか凄いよ。「統合進歩党みたいな従北集団が解散したおかげで、韓国進歩派は新しいスタートが切れる」とばかりに、今回の解散命令を肯定してるとしか思えない凄まじい記事をデカデカと載せてたくらいだから。この記事を読んだ時、筆者は次のような事を確信しました。
「韓国民主主義」完全終了! 大韓民国完全終了!
と。矛盾するような単語だが「反共左翼」というのは日本だけでなく韓国にもたくさんいる。韓国の「反共反北進歩」についてはまた後日、項を改めて論じたい。
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