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夏休みの日本映画「プロパガンダ競作」不毛の極致

鄭玹汀氏のフェイスブックの記事を見ていて気になる指摘があった。夏休み公開の劇場アニメ「君の名は。」についてである。筆者はこのアニメを見ていないのだが、宮崎駿の「風立ちぬ」の時と同じでどうにもこのアニメに対してある種の違和感というか胡散臭さが感じられて仕方なかった。直感的に嫌な予感がしたというパターンだが、その矢先に鄭玹汀氏がこういう指摘をしてくれた訳である。(強調部分は引用者による)


https://www.facebook.com/photo.php?fbid=671663116324376&set=a.101540370003323.2759.100004420802283&type=3
鄭玹汀
9月16日 2:10 ·

映画「君の名は」を観て

劇場用アニメーション「君の名は」が、若い世代の観客を中心に大ヒットしている。娘と一緒に観にいった。

飛騨の山奥にある糸守町の宮水神社の巫女を務める宮水三葉(女子高生)と東京の四ツ谷に暮らす男子高校生の立花瀧の魂が偶然入れ替わる話だ。
 最近これほど神道色の強い映画を観たことがなかったので驚いた。
「神道的」世界観こそが「日本」の独特な世界観を醸し出しており、また日本人の精神的支柱であると同時に死生観の土台でもあると、この映画は物語っている。

本作は残念ながら、ストーリー性が弱く中途半端なファンタジーだと思った。それに登場人物の個性もあまり感じられない。そもそも女主人公は巫女服で舞いを踊り、口噛み酒という儀式をする巫女だから。

なんと「神酒の力」で、死ぬ前の世界にタイムスリップもできるようになる。神酒の力はすごい!そのうえ「結び=ムスヒ(産霊)」という神道の用語もしょっちゅう出てくる。

 リアルすぎる風景描写とどこか懐かしさを感じさせる映像にはただただ圧倒されたけれども、「日本=神道の世界」として描かれた作品を観ながら、危惧の念を抱かざるをえなかった。



まあ、そういう事でござんしょう。筆者は見てないから分からないのだが、これはかなり重要かつ鋭い指摘なのではなかろうか。鄭氏以外でこのアニメと神道系オカルトの関連性・親和性を指摘してるのを見た事がない。SEALDsとの件でもそうだったが、鄭玹汀氏の鋭さは常々大したものと思う。「君の名は。」とは神道系オカルト(少なくともその要素を非常に多く含んだ)アニメであった! そりゃ今の日本、すなわち「安倍晋三が高支持率で長期政権を続け、『軍神』のセガレに過ぎない明仁テンノーヘーカがなんと『平和の神』として歴史上かつてない程に崇め奉られ、靖国神社が戦後かつてない程までに大繁盛し、戦争法や日米新ガイドラインなど軍拡化が戦後かつてない程急ピッチで進んでいる日本」でこのアニメがヒットしない訳がねえわなあ! それとこのアニメを宣伝したり取り上げているマスコミの記事などで、この作品と神道の関係がほとんど述べられないというのも非常に気掛かりだ。もちろんそれはマーケティング的に意図したものであろうが…。
神道というのは昔だけでなく、今の日本の国家体制にとっても実に重宝するアイテムという事であろう。日本鬼的軍国主義者にとって、神道は三日(政治)利用したらやめられない。
さらに付け加えるなら、このアニメはいわゆる「巫女萌え」のオタク層にも好評だったんじゃなかろうか。日本のアニメやゲーム関係のオタク層というのは、コミケの惨状や艦これ・刀剣乱舞の大流行を見ても分かるように救いようがないほど右傾化・臣民化している世界なので、そういう点でも「君の名は。」は「外す要素のない」映画であったと言える。もちろんこの映画がこれだけヒットしたのはオタク層ウケだけが原因ではない。一般人にもウケた、つまり日本全体がこういう作品をありがたがる風潮であるという事だろう。客が何望んでるか、制作側は十分知り尽くした上でってこった! 

で、このアニメの監督インタビューも見たのだが、ここでも興味深い事が書かれている。


http://diamond.jp/articles/-/102665?page=4
三葉がお米をかんで自身の唾液とまぜて、升に入れて自然発酵させる「口噛み酒」はその一つ(監督の好みやフェチの意:引用者注)です。他にも、例えば、瀧が年上の女性である奥寺先輩と一緒に三葉を探しに行くところですね。これらは、単に私の好みなわけですよ(笑)。

 ただ、無造作にやると不快なものになりかねない。瀧は、三葉という別の女の子のことを見ているのに、なぜか奥寺先輩という他の女性が付いてくる。下手をすると無神経な展開になりかねませんので、そう思わせないための「回路」をきちんと作る。その点、脚本会議で「これは無神経ですよ」とか「気持ち悪いです」とかダイレクトに伝えてもらったことで、だいぶ助かりましたね。


え、筆者は見た事ないから分からないのだが、新海誠の作った他のアニメというか本来の作風ってそんなに気持ち悪いのばっかりなの(笑)? それを制作会議で「毒抜き」したおかげで今作はウケる作品になったと読めるのだが…。それでも「口噛み酒」とか、「結び=ムスヒ(産霊)」とか、「お神酒の力でタイムスリップ」とか、「神道的世界観が日本人の精神的支柱にして死生観」とか聞いただけで十分キモ過ぎるのだが、その辺は制作会議で「無神経」「キモい」とか問題にならなかったのか。いや、これらは筆者のような者にはキモく感じられても、今の一般日本人大衆にはむしろ喜んで受け入れられるものと判断されたのであろう。それは確かにある意味間違っちゃあいない訳だが…。プラス、監督である新海の「フェチ趣味」にも合致するものであったと。ああ、やっぱ2016年の日本に何とふさわしいアニメであった事か! 

で、今年の夏休み映画でこれと興行収入トップを争ったライバルが「シン・ゴジラ」であったというオチが付く。筆者は見てないから分からないのだが、「シン・ゴジラ」もアニメっぽい作りの特撮(何より監督が…)自衛隊プロパガンダ映画であるという。実際に安倍が大喜びしてたし。日本の2016年夏休み映画というのは、オカルト神道と自衛隊という二つのプロパガンダ作品が激突して競い合うように多額の興行収入を上げた。これはすなわち次の一言できれいに結論付けられるのである。

「不毛の極致」


さらに「君の名は。」というアニメは我々にもう一つの教訓を与えてくれる。新海カントク特有の超キモいフェチ趣味を「毒抜き」してくれた東宝のスタッフ陣がある意味極めて優秀なプロデューサーにしてチェック屋集団だった事は、この映画の大ヒットで証明された。ただの神道オカルトアニメをここまで大ヒットした「国民的アニメ」に仕立て上げてしまったのだから。ところがこれと同じような主張していた首相時代の森喜朗はどうであったか? 

日本は神道を中心とする神の国(要旨) by 新海誠
日本は天皇を中心とする神の国 by 森喜朗

両者はほとんど違いのない事を言っているのに、片方は空前の大ヒット興行成績を上げ、片方はバッシングされて後に首相の座を追われる一因となった。これはひとえに取り巻きスタッフの差であったと言える。もし首相時代の森に「君の名は。」のプロデューサーかそれと同等のブレーンがいて「毒抜き作業(笑)」さえうまくやってくれていれば、バッシングされるどころかむしろ支持率を倍増させる事だって不可能ではなかったであろう。新海も森も「人間としての程度」においてはほとんど差がない存在に過ぎない。だが両者の明暗を分けたのは「毒抜きの上手なブレーン」の存在であった! それは今をときめくオリンピック組織委員長としての森喜朗にも同じ事が言えるであろう。どんなにロクでもない所業をするトップがいても、それを上手に転禍以福させられる優秀なスタッフの存在、これこそが「君の名は。」という神道オカルトアニメが我々に与えてくれる教訓…。 
と言いたいところだが、この理屈だと「優秀なスタッフ」さえいればトップはいらないって話になるよね。そう、あのアニメが真に我々に与えてくれる教訓とは「別に新海や森みたいなトップなんかいらなくね?」という話なのである!
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