ちなみに「進撃の巨人」は作品内容だけでなく作者の諫山創(いさやま・はじめ)自身もかなり右翼的な漫画家だという事は指摘しておかねばなりません。諫山は自身のブログでこの漫画に旧日本軍の将校である秋山好古をモデルにしたキャラを登場させて、自身も秋山の事を尊敬していると告白しています。
http://blog.livedoor.jp/isayamahazime/archives/3639547.html
秋山好古とは何者でしょうか。日露戦争で大きな手柄を立てた事で有名な軍人であり、弟の真之と共に司馬遼太郎の「坂の上の雲」の主人公としても広く知られています。しかしながら日露戦争とはどんな戦争だったのでしょうか。朝鮮と満州の支配権を巡ってロシアと大日本帝国が争った、典型的な帝国主義植民地争奪戦争に他なりません。司馬遼太郎がいかに小説でこの戦争を「日本の自衛戦争」と美化・正当化しようとも、史実とは全く異なります。その戦争の「英雄」だった秋山兄弟の本質もまた帝国主義者・植民地主義者でしかありません。そればかりか好古をはじめとする秋山兄弟が植民地朝鮮でどのような権勢を振るっていたか、どれだけの日本人が知っているでしょうか。秋山好古は1916年から17年にかけて植民地朝鮮に駐留する日帝朝鮮軍(朝鮮駐箚軍)の司令官でしたが、この軍は対ソ連防衛を担当する以上に、植民地朝鮮の独立運動を弾圧・鎮圧する事が目的だったのです。民衆蜂起や義兵闘争が起こればそれを武力鎮圧する為にすっ飛んでくる。その司令官である秋山好古はまさに植民地朝鮮の弾圧将軍だったのです。秋山好古が司令官を退任して2年後の1919年に何が起こったでしょう。3.1独立運動です。実際に3.1運動の弾圧と虐殺を行なったのは好古の次の次の司令官である宇都宮太郎(後の自民党議員である宇都宮徳馬の父。ただし徳馬は後に父とは大分違う道を歩んだが)でしたが、3.1独立運動の時期が少し早いか好古の任期が数年違っていれば、この男が朝鮮の民衆を大虐殺していたのです。3.1独立運動の弾圧と直接関係ないにしても、秋山好古が武断統治と呼ばれるとりわけ弾圧の厳しかった時代に、朝鮮の民衆に銃口を向けて威圧・抑圧していた総大将だった事は厳然たる事実なのですから。
さらにその前の1907年には、外交権を剥奪された朝鮮(大韓帝国)がその不当性を訴えるためにオランダのハーグで行われる万国平和会議に密使を送ったハーグ密使事件がありました。が、この時派遣された李儁(리준 リ・ジュン)・李相卨(리상설 リ・サンソル)・李瑋鍾(리위종 リ・ウィジョン)ら3密使の事を調べ上げて会議に参加出来ないように妨害したのが、他ならぬ秋山好古だったのです。秋山好古は一貫して朝鮮を日本の植民地にし、その独立を妨害する事に生涯を捧げた人間でした。
好古だけではありません。好古の兄である秋山正矣(あきやま・まさなり 後に岡家へ養子に行って岡正矣と改姓)は朝鮮京城電気の重役でした。つまり秋山兄弟というのは植民地朝鮮の軍事面と経済面で権勢を振るった植民地利権者一族だったのです。朝鮮半島の分捕り合いである日露戦争で手柄を立てたファミリーが、その「戦利品」である植民地朝鮮へ乗り込んでデカいツラして大きな権力を握り、独立運動を武力・謀略で弾圧する。秋山兄弟というのは日本の朝鮮侵略と植民地支配を一身に体現したような一族だった訳です。朝鮮人・韓国人であればこの秋山一族が行った事を決して忘れてはいけません。
そんな植民地主義者の軍人に
何より本当...自分ごときが、自分ごときの腕で、この方を
モデルにするのはおこがましいくて恐れ多い事なんですが
一応参考にさせていただいています....
日露戦争の逸話もすごいですが、
元帥の地位を蹴って田舎の小学校の校長を務め、
自分の作戦で失った兵士のために生涯質素に過ごしたとかの
真っ当を貫く姿勢や人柄に畏敬の念を覚えます
という最大級の賛辞を送ったのが諫山創という漫画家だという事を特に強調しておきましょう。この男と小林よしのりや細野不二彦・平松伸二らに果たしてどれほどの違いがあるのやら。諫山創は個人的には「進撃の巨人」が完結した後が色々な意味で「楽しみ」だと思っています。おそらく佐藤秀峰や青山剛昌のように、露骨に日本の国家体制や権力に迎合する作品を描くようになるのではないかと予想していますが。
とは言え、だからこそそんな右翼漫画家の作品に在特会やネット右翼が熱狂しているのではないかというプレシアン側記者の推測にはまあ一理あるでしょう(この記者が諫山創の右翼志向や秋山好古をモデルにしたキャラの事について気付いているかどうかは知りませんが)。しかしそれ以上に問題なのは、そんな右翼漫画家の作品が韓国でもヒットしてしまっているという現状です。最近の韓国の若者の歴史的無知はあまりにひどい(そうさせた韓国の教育制度や教科書に原因があるが)ものですが、「進撃の巨人」のヒットはそれを象徴する典型的現象と言えるでしょう。まさに「日韓の若者が過去の侵略戦争や植民地支配の歴史をきれいさっぱり忘れて互いの文化を楽しむ」という、安田浩一&李明博的な「日韓未来志向」が半ば現実化しつつある訳で、暗澹たる気分にしかなりません。
さて、話を主題である安田浩一のインタビュー内容に戻すと、これを最初から最後まで読み通せた方々にはとりあえず敬意を表します。よくもこんだけひど過ぎる気持ちの悪いインタビューを全部読み通せたその精神的耐久力に! いや、筆者も訳しててさすがに途中ですごく腹が立って嫌になってきましたよ。まともな人間なら今回の安田のインタビューを読んで激怒するか、極めて不愉快になるか、どっちかしかありませんから。今回のインタビューに、安田の知人の在日女性が在特会の集会を見て大変な精神的苦痛を受けて泣いたという話が出てきますが、安田の諸発言もまた在特会のそれに劣らぬ精神的苦痛を在日に与えるものでしょう。その為に肝とも言うべき重要なトンデモ発言部分を強調して、そこだけ読むように予め警告した訳です。でもその部分だけ拾い読みしてもたぶん相当な精神的苦痛を受けるでしょうが。
で、そうした安田のトンデモ発言・バカ発言の数々を読み終えた人達(筆者含む)はまず間違いなく次のように突っ込む事でしょう。
「んな訳ねーだろ!」と。
あまりにひど過ぎる発言の数々に、果たしてどこから言及して良いか分からなくなるのですが、それでもまずはこの発言から槍玉に挙げねばなりますまい。
「日本で極右を主張する政治家が勝利した事は一度もありません」
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日本で極右政治家が勝った事は一度もないだって? そんなん初めて聞いたわ! 「フリンジ FRINGE」じゃあるまいし、安田は一体どこの平行世界の話をしているんだ? 今の日本の総理は誰よ? 安倍晋三でしょ? 安倍晋三は極右政治家じゃないんだ? 今の大阪市長は誰? 橋下徹でしょ? 橋下徹は極右政治家じゃないんだ? 橋下と一緒に維新の会の共同代表やってるのは誰よ? 石原慎太郎でしょ? こいつら全員極右じゃないと? 安田浩一はこいつら全員極右ではなく、共産主義の極左だとでも言いたいのでしょうか。日本維新の会は現在衆議院では53議席の堂々たる第3党ですよ。総理も衆議院第3党の党首達もみんな極右ではないとおっしゃる!
いやあ、さすが講談社ノンフィクション賞を受賞したジャーナリストの言う事は違いますなあ。これはもう講談社どころかピューリッツア賞、いやノーベル文学賞すら与えてもいいんじゃないでしょうか。普通絶対言えません。日本で極右政治家が勝った事は一度もないなどと断言出来る、その「文学的センス」の深奥さにはまさに脱帽です! これには昭和天皇の「言葉のアヤ」発言も敵わないのではないでしょうか! 日本が世界に誇る名ジャーナリスト、安田浩一記者に何としてもノーベル文学賞を受賞させようではありませんか!
…冗談はともかく、ここまで事実として完全に間違った事が平然と言えるそのセンスには、確かにある意味で脱帽したくはなります。確かに今の日本の醜悪な現実を必死に覆い隠してごまかそうとしているジャーナリストや評論家などは掃いて捨てるほどいるものの、ここまで言い切ったのは筆者の知る限り安田浩一だけでしょう。しかもそれを韓国に対して言っている所がポイントです。同時に安田はこんな事も言っていました。
「みなさんから見て日本社会が非常に右側に傾いているように見えるかもしれませんが、極右達の主張を受け入れる環境では決してないという点を申し上げたいと思います」
お分かりでしょうか。安田は飽くまでも日本は右傾化していないと、必死になって韓国側に訴えてる訳です。言うまでもなく韓国の民衆にとって「日本の右傾化」とはかつての植民地支配と侵略戦争・帝国主義の正当化やそれらの復活と同義であり、決して受け入れられるものではありません(一部の親日派や政治的・経済的支配層除く)。そして現在の日本は誰がどう見てもそうなりつつあるのに、それを安田は「右傾化なんかしてない。極右の主張を受け入れる環境はない」として必死にごまかしに走っている。恥ならぬ嘘の上塗りを繰り返してまで「日本は悪くない」という事を韓国側に信じ込ませようとしているこの男は、一体どれだけ恥知らずで犯罪的なのでしょうか。その為ならこの男は安倍晋三の肩すら持とうとする。
「安倍首相も今は韓国や中国と良い関係を維持しようと発言しました。これもまた日本社会の雰囲気だという事です」
「私が非常に嫌っていて恐らくみなさんも好きでない(笑)安倍首相でさえ「在特会などのデモは大変遺憾だ」と答弁しない訳にはいきませんでした」
ここで本来言わなければならないのは、こうした言動が安倍の本心によるものでは全くないという事でしょう。安倍や稲田朋美といった連中がある日急に態度を変えた理由はただ一つ、アメリカの機嫌を損ねそうだという事に気付いたからに過ぎません。決して日本国内のレイシズムを反省したり反対しているからではないので韓国や中国は油断するな、と警告するのがジャーナリズムに携わる者が本来言うべき事なのです。それを「安部でさえもレイシズムに遺憾を表明して韓国・中国と良い関係を維持しようとしている「美しい国」日本」という大いなる虚像を振り撒いて、韓国や中国の民衆を惑わせようとしているだけではありませんか。
さらに安倍の態度変化や橋下を切り捨てるような言動は、言うなれば橋下だけを悪者に仕立て上げて自分を美化する姑息な手段でしかありません。今の日本ではこのように、在特会や橋下徹のような「一部の目立った過激分子」さえバッシングすればどんなにひどい右翼や差別主義者であっても自分は差別に反対している人権派か人道主義者のように装えるという、極めて醜悪なアリバイ作りというか自己正当化が流行っており、安部のそれはまさに典型例です。在特会さえスケープゴートにすれば、朝鮮学校への無償化や補助金排除などといったひどい差別政策から目を逸らさせる事が出来る。日本政府こそ在特会以上の民族差別の総元締めであるという事を、日本国内はもちろん韓国はじめとする外国にも気付かせないようにしたいのが安田浩一の狙いだという事です。
安田は「おそらくみなさんは安倍政権が右翼政権だと考える事でしょう(笑)。在特会にそのような話をすれば笑われるでしょう」と言っていますが、安田自身だって「日本で極右を主張する政治家が勝利した事は一度もありません」すなわち安倍政権が極右ではないと言っているじゃありませんか。安田も在特会も「日本は右傾化なんかしていない」と必死に嘘を言ってごまかしているという点では同じ穴のムジナでしかないのです。
こうした事実として完全に間違った事を平然と主張する安田のペテン癖は他にもまだ見つかります。例えば
「「村山談話」が何の反対もなく国会で通過する事が出来たでしょう」
なんて事まで言ってるのですから。村山談話が何の反対もなく通過しただって? そんなん初めて聞いたわ! 安田浩一という人は「平行世界」の話を創作するのが大変お好きなんですね。ジャーナリストを廃業して、SF作家に転進した方が大成するのではないかと冗談抜きで思います。
当時村山談話が出される事に対して強硬に反対した政治家なんて山ほどいますよ。まずは、今や生活の党というみじめな蟻の巣の主人にまで落ちぶれながら、なぜか狂信的な信者だけは(それもある系統の左翼業界で特に)一定数いる小沢一郎がそうでした。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20130620/1371739834
当時の内閣は村山連立(社会党)政権で、自民党は与党に属していたが、自民党内には「大東亜戦争肯定論」の立場にたつ「民族派」と日本は敗戦で生まれ変わったとする「戦後改革派(ニュー・ライト)」との対立があって意見がなかなかまとまらなかった。他方、野党の新進党(九四年一二月結党、党首海部俊樹、幹事長小沢一郎)は、侵略行為や植民地支配という言葉を認めず、「おわび」も削除せよと強硬に主張した。
また、何よりも村山談話に反対した政治家の筆頭代表として挙げるべきは他ならぬ安倍晋三でしょう。安倍は当時どのような行動をしていたのか。
http://www.wadaharuki.com/abe.html
安倍晋三氏は議員初当選の翌年、一九九四年に奥野誠亮会長の「終戦五十周年国会議員連盟」の事務局次長となった人である。右翼的な歴史観から戦後五〇年国会決議、村山談話、河野談話に反対したかぎりでは、党内の傍流にすぎなかったが、一九九七年から頭角をあらわし、小泉首相の後継者に指名されて、右翼政治家のプリンスとして、主流派にのし上がった。
http://www.shibano-jijiken.com/sekai_o_miru_sekai_no_shinbun_387.html
彼は村山談話が出た時、自民党の非主流強行派である‘戦後50周年国会議員連盟’の事務局長代理だった。この議員集団は、日本の国会が、戦後50年決議案(‘歴史を教訓として、平和のための決議を新しくする’、1995年7月、国会可決)を、採択しようとするや、これに反対する議員らが1994年12月1日結成した。
連合軍占領体制下で、“日本に対する断罪と、自虐史観を正し、公正な事実に基づいた歴史の流れを解明し、日本と日本人の名誉と自矜心(じきょうしん_誇り、自慢)を回復しなければならない。”と言うのが結成趣旨だ。この集団は、日本が引き起した侵略戦争を‘日本の自衛自存とアジアの平和’の為だったと主張し、村山談話の発表に猛烈に反対した
どこを見ても当時安倍(と他に奥野誠亮はじめとする終戦五十周年国会議員連盟所属の議員達)が村山談話に強硬に反対していたという話ばかりです。こんな安倍晋三らの反対行動が当時厳然とあったにも関わらず、講談社ノンフィクション賞を受賞した日本を代表する名ジャーナリスト・安田浩一記者によると「「村山談話」が何の反対もなく国会で通過する事が出来た」そうです! 安倍総理はその前の河野談話にも強硬に反対していたのに、安田記者のありがたいお話によれば「何の反対もな」かったそうです! 「(従軍慰安婦に対しては)21世紀以前まではそれでも日本の恥部という認識が共有されてい」たのだそうです! 安田記者によれば「日本で極右を主張する政治家が勝利した事は一度もありません」すなわち、村山談話に猛反対していた安倍総理や小沢一郎や奥野誠亮達は全然極右政治家じゃないんだそうです! その安倍総理については、在特会も安田記者と同じ見解で「右じゃない」とみなしているとの事。両者の「安倍総理は極右でも右翼でもない」という貴重な証言が、国際社会における安倍総理のイメージをどれだけ向上させてくれたか計り知れないものがあるではありませんか! 安田記者と在特会は両者共にガッチリとスクラムを組んで、日夜安倍総理と日本のイメージ向上の為の「愛国的広報活動」に勤しんでいるのです! おまえらどんだけ安倍総理が大好きなんだよと言いたくなるではありませんか!
…冗談はともかく、もうここまで来ると何が何だか引用してる方も訳分かんなくなってきます。こういう嘘や捏造を平然と言いふらす人間を世間一般には詐欺師とかペテン師と言うのですが、安田浩一はまさにどこに出しても恥ずかしくない堂々たる詐欺師です。あるいはそれでもまだ「記者」を名乗っている以上、「ブラックジャーナリスト」と言ってあげた方がまだ礼にかなっているでしょうか(笑)。
しかも今回のインタビューはプレシアンという、韓国のそれも左派・進歩派メディアで通っている媒体に載ったものでした。韓国の進歩派すなわち民主勢力(のはず)がこういうひど過ぎる歴史歪曲というか、現実を歪めたホラ話をこそ「日本の現状」として伝えたがっている(または信じたがっている)のではないかという疑念すら浮かんできます。そこに安田のようなブラックジャーナリストがつけこんで、勝手な嘘や日本正当化論を韓国に広める。こういう人達が今まで引っ張って来た「韓国の民主化」とは一体何だったのでしょうか。
実は今回のプレシアン記事には全体的な強烈度がやや落ちるので全文翻訳しなかったのですが、やはり韓国進歩派メディアの雄であるオーマイニュースも安田に別途インタビューしていました。その中には今回の「日本で極右政治家が勝った事は一度もない発言」にも引けをとらない、どうしても指摘しておきたいインパクトだけは抜群なバカ発言が一つあったので、それもついでに翻訳抜粋して御紹介しましょう。
http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0001871551
「ネット右翼の主張に政治的性向があると受け止めるのは問題があると思う。彼らは保守でもなく右翼でもない。便宜上ネット右翼と言うが、これらは真正な意味での右翼ではない。既存の日本保守勢力でさえも在特会などのネット右翼を嫌う。伝統的に日本の保守・右翼の中には「サムライは仲間の手を借りない」という美学が一つの文化として定着しているのに、在特会などのネット右翼にはこうした特長がないからだ」
講談社ノンフィクション賞を受賞した日本を代表する名ジャーナリスト・安田浩一記者曰く「日本の伝統的な右翼はサムライ」なんだそうです! これは安田に限らず日本ではよく使われる言い方ですね。言うまでもなくここでの「サムライ」という言葉は非常に肯定的な意味で使われており、安田浩一が日本の右翼を正々堂々・公明正大な存在であると描写している訳です。同時に、それに対して在特会は…という意味も込めて。
筆者は3年ほど前(だったと思う)に朝鮮学校への無償化適用を求める総連系のデモに参加した事があるのですが、その時の右翼の妨害はそれこそ半端じゃありませんでしたよ。その時のデモは日比谷公園から銀座の街を通ったのですが、公園の周囲から沿道まで黒塗りの街宣車が何十台も取り囲み、高速道路の上にまで多数の街宣車が止まっては「朝鮮人は出ていけ」とか何とか凄まじい爆音で罵声を浴びせられました。こんだけたくさんの右翼がどこから集まってきたのかというくらいの規模で、これに比べたら今在特会が新大久保でやってる事なんて可愛いもんです。先日の憲法記念日に見かけた時も同様で、職場近くの公道をこれまた大量の街宣車が走りながら爆音を鳴らし、その威圧感は在特会ごときの比じゃありません。ともあれこのように「既存の」日本の黒塗り街宣車右翼達はこれだけ衆を頼んで在日朝鮮人への民族差別や迫害、改憲の為の行動を繰り返してきました。というか、連中が「仲間の手を借りず」にこうした活動をしているのを見た事がありません。サムライうんぬんとかいうたわけた表現以前に、日本右翼が「仲間の手を借りない」という話がすでに大嘘です。連中は昔から常に大集団で在日を攻撃して来ました。
それにしても呆れるのは、安田浩一は安倍総理ばかりか右翼がどんだけ大好きなんだよという事でしょう。こんなサムライになぞらえてのおべんちゃらや明白な大嘘までついて、日本の右翼を大絶賛しているのですから。そんなに右翼が好きならさっさとジャーナリストなんかやめて、日本青年社(広域暴力団住吉会の下部組織)でも正気塾(1990年に当時長崎市長だった本島等を銃撃して殺人未遂)でも好きな団体の構成員になったら良いのです。そこには安田自身が大絶賛した「サムライ」達がわんさかいるでしょうから、さぞかし安田浩一の「男」を磨いてくれるでしょうよ! 何しろモノホンのヤクザである日本青年社も、天皇の戦争責任を追及した長崎市長を銃撃した正気塾も、安田記者の「理論」に従えばこれらはみんな在特会とは全く違う「仲間の手を借りないという美学が一つの文化として定着している立派なサムライ」なのですから! 安田記者にはぜひこれらの団体に入って、尖閣諸島への上陸や各報道機関への暴力による威嚇行為、長崎市長への銃撃テロなどを実行して欲しいものだと切に思います。あんた、サムライが大好きなんだろ? だったらそれぐらい喜んで出来るよね(笑)。
とにかく最近の在特会関係で「ブレイク(笑)」して以降の安田浩一の言動というのは真面目な話、ジャーナリズムとしての限度を超しています。記者として越えてはならない一線を越えてしまったと言って良いでしょう。一連の韓国マスコミの取材でしゃべった妄言や大嘘はもちろん、日本右翼を「サムライ」になぞらえて美化・礼賛した時点で完全にジャーナリストとして終わりました。日本青年社や正気塾に限らず、安田が「仲間の手を借りないという美学が一つの文化として定着している立派なサムライ」だとして褒め称えている日本右翼がこれまで暴力をちらつかせたり、あるいは実際に暴力行為を行って報道機関を攻撃した例は枚挙に暇がありません。そんな右翼を大絶賛した時点で、これはジャーナリストとして完全なる自殺行為なのですから。悲惨な犠牲者を出した中央公論の風流夢譚事件も、朝日新聞阪神支局襲撃事件も、全て立派な「サムライ」の手による「仲間の手を借りないという美学」の結果だとでも言うのでしょうか。繰り返しますが、安田浩一による右翼の美化・礼賛はジャーナリストとしての完全な自殺行為です。以前は単にヘボな労働問題専門の駄目記者に過ぎなかったのが、今は完全に悪質なデマゴーグに変貌したと言って良いでしょう。
安田がジャーナリストとしての魂を悪魔に売ってまでやった事とは、在特会を自分の個人的なメシの種にするのに成功した事と、その在特会だけを悪役にしてより大きな差別問題から社会的関心を逸らさせ、ひいては日本という国の姿を現実離れして美しい虚像に歪曲しただけです。在特会を攻撃するふりさえすれば誰でも「ヒーロー」になれる。凶暴なテロ集団でしかない旧来の日本右翼でも、日の丸や君が代や天皇が大好きな反原連やレイシストしばき隊でも、石丸次郎や萩原遼のような実際は単なる朝鮮ヘイトの鬼畜レイシストに過ぎない人間であっても、挙げ句は安倍晋三のような人間ですら、在特会さえスケープゴートにすれば善人ぶれる。そんな風潮を作った張本人が安田浩一でした。少なくともそうした風潮作りに大きな役割を果たした事だけは間違いありません。
まだまだ安田浩一の妄言に突っ込みたい所はたくさんある(日本では従軍慰安婦などの歴史問題を真面目に教育してきたとか、日本には韓国ほどのナショナリズムはなかった、アジアで最もナショナリズムの希薄な国は日本だったとか)のですが、いい加減きりがないので今回はこの辺にしておきたいと思います。今回翻訳した安田のインタビュー記事で強調した部分のうち、今回突っ込みきれなかったその他の部分、あるいはその他どの部分でもまた別の方が引用・参考にして、安田浩一への批判または在特会問題への研究に活用していただければと思います。早い話、安田のその他妄言類については、とりあえず他の方々にお任せという事で。
最後に結論として、安田浩一が決してふれようとしなかった事、すなわち在特会とは何なのかという本質的な話を言及しておきましょう。
在特会とは何なのか? この答ほど一見難しそうで、実はこれほど簡単なものもありません。安田浩一はこれについて今回のインタビューでも
「私の考えだと在特会運動は非常に不幸な運動です。何かを獲得する為の運動ではありません。無条件で韓国が、在日コリアンが嫌いだと話す為の運動です。誰かを幸福に出来る運動ではありません。彼ら自身も幸福になれるわけではないからです。そうした意味で非常に悲しい運動だと思います。」
「彼らの論理を借りて言うと、強者に対する抵抗運動」
「在特会は日本社会の恥部」
「在特会も愛国者というよりは、国家から愛されたいと考える者達でしょう。彼らの主張は日本に自分達を捨てないでくれという主張でもあります。」
などといったおためごかしを繰り返していますが、これらは在特会という団体がそもそも何なのかという本質的な答には全くなっていません。
在特会とは何か? これに対する最も簡潔で本質的な答とは
「日本における国家体制の補完物」
に他なりません。他の旧来右翼と有意な差は何もない訳で、誰だってすぐに分かる話です。安田はその事に気付かなかったのでしょうか? いや、この男がいかに3流記者であってもさすがに気付いているでしょう。単に都合が悪いので、本質的な答を明かしたくなかっただけだと思います。
日本という国においては明治以降の帝国主義とアジア侵略と共に、民族差別が国策として進められてきました。差別は国家的に「正しい事」、国策・国益として行われてきた。日本右翼の最大の存在意義とはそうした事を補完する事にある訳で、在特会もまたそれに極めて忠実に呼応しているに過ぎません。そういう点で在特会ほど日本右翼らしい日本右翼はいないのです。安田浩一のようにこれを「彼らは保守でもなく右翼でもない。便宜上ネット右翼と言うが、これらは真正な意味での右翼ではない」などというのはとんでもない大嘘でしかありません。日本右翼がこれまでに日本の国家体制擁護の為にやってきた民族差別や抑圧、テロ活動、過去史歪曲などを新参者の在特会もまた一生懸命にやっているではありませんか。在特会の言動や主張に目新しいものなど何もありません。どれもこれも旧来の右翼がずっと言ったりやってきた事をそのままなぞってるだけ。いや、振るう暴力の威圧感や凶暴さという点では旧来の右翼の方がはるかに危険です。長崎市長銃撃事件や朝日新聞阪神支局襲撃事件、浅沼稲次郎刺殺事件、風流夢譚事件…その他日本の旧来右翼が無数に引き起こしてきた暴力事件や言論圧殺活動に比べたら、むしろ今の在特会などまだお子様レベルでしかないでしょう。もちろん在特会が今後もっと過激な暴力事件を引き起こすように凶暴化していく可能性は十分にありますが。
警察だって在特会に対しては既存の右翼同様に目こぼしして利用すらしてきました。桜井誠だって逮捕されたけど、案の定すぐに出て来たでしょう? 桜井と在特会にとっては今回の逮捕劇など箔を付けてくれた「勲章」に過ぎず、連中が今後ますます図に乗る事は明らかです。
何よりも在特会は今や日本一の悪役(?)の役回りを引き受けて、他の右翼はもちろん安倍晋三のような極右政治家から、民族差別の総本山たる日本国家そのものを美化させるという引き立て役の大役を立派に果たしているではありませんか。これこそ「体制の補完物」冥利に尽きるというものでしょう。立派に在特会は「お国」の役に立っている訳です。そんな「体制の補完物」そのものである在特会に対して「誰かを幸福に出来る運動ではありません。彼ら自身も幸福になれるわけではないからです。そうした意味で非常に悲しい運動」などと言っても何の意味もなければ批判にもならない。
在特会とは日本の国家体制を補完する存在の一つであり、日本そのものであるという事。ゆえに在特会だけをスケープゴートにして非難し、それを以って日本国家そのものを美化したり免罪するという事は出来ないし、あり得ません。その事を決して忘れてはいけないでしょう。安田浩一のようにそれをやっている人間は全くの嘘つき・ペテン師であると同時に、その者もまた在特会はじめとする日本右翼同様な「体制の補完物」に他ならないのです。
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