「一〇八回ですって?」
「そうです。ちょうど一〇八回です。これがあの虎達の掟でした。七虎は人を殺す時、一刀で楽には殺さず一〇八回切り刻んでなぶり殺しにするのです」
田思思が溜め息をつく。「その一〇八刀に耐えられる人なんてほとんどいないわね」
「ほとんどどころか誰もいないでしょう。でも我らの秦歌は歯を食いしばって耐え抜いたのです。死ねなかったのでしょう。復讐をしなければならなかったのですから」
「それでも復讐をしようとしたの?」
「秦歌は体が鉄のように強靭なだけでなく、心臓も強靭でした。今回は幸運にも生きて帰れたものの、今後彼は虎という言葉を聞いただけで震え上がるだろうと誰もが思いました」
田心は一息置いて話を続ける。
「しかし翌年、彼は再び虎丘山に行って七虎に会いました。今度は四人に手傷を負わせたのです」
「彼はどうなったの?」
「今度も一〇八回斬られました。江南七虎の攻撃は以前よりもはるかに恐ろしくなっていたのです。でも彼はまたしても耐えました。後に彼を見た人によると、一〇八刀を受けて彼の身には傷のない個所が一つもなかったそうです。あまりに多くの血を流して虎丘山の岩が残らず赤く染まってしまう程でしたから」
「あの虎達はなぜ彼を殺さなかったのかしら?」
「それが彼らの掟だったからです。一〇八回斬った後は決してそれ以上斬る事はありません。さらに最初の一刀から最後まで同じ力で斬る必要があります。彼らもやはり一〇八刀を受けた人間が生き延びるなどとは考えもしなかったでしょう。ましてやその者が再び復讐すべく現れようとは全く思わなかったでしょう」
「でも秦歌は二一六回も斬られたじゃない」
「全部合わせると三二四回です」
「どうして?」
(この項続く)
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