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少なくとも安倍・日本側に「負け」はない

悪い予感しかしない、というのはまさに今回の日朝協議(ストックホルム協議)だろう。拉致被害者の再調査で「電撃的合意」を見たそうだ。個人的な予測を言わせてもらうなら、今回の協議とそれによる再調査で朝鮮側が得るものは何もないだろう。経済協力などビタ一文入らないのではないか。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140530-00000008-mai-int
<特定失踪者>「北朝鮮国内で生活」昨年、日本に伝達
毎日新聞 5月30日(金)7時15分配信
北朝鮮側が日本政府に昨年末、拉致された疑いのあるいわゆる「特定失踪者」が「北朝鮮国内で生活している」との情報を、複数のルートを通じて伝えていたことが明らかになった。複数の政府関係者が明らかにした。

 北朝鮮側は特定失踪者を帰国させることを検討しているとみられる。だが、北朝鮮側は「帰国させたところで、拉致問題に対する日本の厳しい世論は納得しないのではないか」との懸念も日本側に伝えており、日本の世論を慎重に見極める姿勢だという。

 政府は北朝鮮による再調査を通じ、特定失踪者の消息に加え、政府が認定した12人の拉致被害者の生存を確認したい考えだ。北朝鮮は「死亡8人、未入国4人」と主張している。


上記記事にもある通り、朝鮮側が恐れているのは2002年の小泉訪朝の再現である。拉致を正直に認めた結果、当初のシナリオに反して日本側の世論は猛反発して日朝関係は最悪の状態に陥り、もちろん平壌宣言の経済協力も全部パーになって今に至ったのだから。今後再調査をして仮に新しい拉致被害者の生死に関わる情報が出て来たとしよう。そうなれば、再び日本の世論を悪化させる結果になるのは目に見えている。日本政府もそうした世論を抑制させるような事は全くしないだろう。結果、またしても2002年の再現になって朝鮮側は何も得られずに終わる。日本側はそうした及び腰の朝鮮側の尻を叩く為に、今後は経済協力話や「調査結果を発表しても世論問題は大丈夫」という空手形を切る方向で説得にかかるのではないか。そうしたエサだけ見せて調査だけさせ、「特定失踪者」の帰国か少なくとも新情報だけでも得られればそれで安倍政権の「成果」になるのだから。そしてやっぱり日本の世論が猛反発してるから経済協力(と制裁解除)なんか出来ない、という「ただ食い作戦」が安倍のシナリオなのではないかと思う。再調査で新しい発見がなかったとしても、日本側はこれまで同様「北朝鮮側の不誠実な対応 by 石丸次郎」の一言でいくらでも国内世論向けの責任逃れが可能だから、結果がどう転んでも安倍がこの件で傷を受ける恐れは全くない。

再調査の結果がどうであれ、
日本側は朝鮮側に与えるものは何もなく(と言うか、最初から何もやるつもりはないだろう)、失うものもない。
朝鮮側は日本側から得るものは何もなく、失うものばかり。
という事になる。

したがって一部で言われている「今回の協議で韓米日の連携にヒビが入る」という懸念は全くの杞憂に終わるだろう。朴槿恵は沈没した旅客船と違い、大船に乗ったつもりで安心して良い(笑)。
当然、今回の件はまたしても在日朝鮮人への差別・抑圧を強める結果を招くだろう。「北朝鮮がこれまで否認していた新たな拉致被害者」「特定失踪者」が北朝鮮で生きていた(死んでいた)、という事になれば、また日本の右翼や橋下のような極右地方自治体首長が騒いで、それを口実に朝鮮学校への補助金差し止めや無償化除外、現代版皇民化教育押し付けなどの圧力・攻撃をさらに徹底して推進する方向へと走る。日本政府もそれを止めるどころか、煽り立てるような真似をするのは間違いない。これまでのように。
「あんな国に制裁解除や経済支援をするのか」という世論が沸きあがるのは目に見えているだろう。それに逆らってまで安倍が事を進めるとは思えない。それこそ磐石に見えた安倍政権の支持率を自ら粉砕する自殺行為だろう。

仮に天文学的少数の確率で日朝間の交渉が今後とも「順調」に進展したとしても、その場合は「日朝平壌宣言に則った国交正常化」が待っているのだ。南で朴正熙がやったのと同じ方式で、植民地支配責任を棚上げし、賠償や補償ではない、はした金の経済協力やら借款での手打ちという幕引きである。それはまさしく「第2の李完用 by 金鍾泌」そのものだ。
今回のストックホルム合意、どう展開してもロクな結果にならない事だけは間違いなく保証付きである。
その前に総連本部ビルの問題や制裁解除の時期などですでに朝日双方の見解に相当な食い違いが見られており

・朝鮮側発表 「特別調査委員会を作って調査を開始した時点で制裁解除。調査委員会は特別な権限を持つ」

・日本側発表 「省庁間の調整と必要な手続きを経ねばならず、朝鮮側の調査開始の動きを確認してから制裁解除がなされる。万景峰号は入港許可対象に含まれない。総連本部建物についても司法手続きが進行中なので政府は介入出来ず、合意条件に含まれない。調査委員会は全ての機関を調査出来る権限を持たねばならない

またしてもその前に空中分解する可能性も低くないが…。

金正恩はソンチン(선친 先親 朝鮮語で「亡父」の意)と同じ外交的失敗を2代に亘って繰り返すだろう。朝鮮民主主義人民共和国の対日外交の駄目っぷりは矯正しようがないのかもしれない。対日外交に限って言えば、むしろ朝鮮こそ「戦略的忍耐」をした方がまだマシなのではないか。少なくとも傷口を広げる事だけはないのだから。

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