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経営統合に成功する方がおかしいキリンとサントリー

この話が出た瞬間からおよそ似つかわしくないカップリング(笑)だと思いましたが案の定破談になりました。ボーイズラブ同人誌の世界でもカップリングの攻受が逆になるだけでファンや同人サークルの間でつかみ合いの喧嘩になるのですから、いわんや企業間の経営統合ともなればなおさらです。
三菱系の株式公開企業でアサヒにトップを奪われるまでは「ビール業界のガリバー」と呼ばれた事もあるキリンに対して、創業家が今でもオーナーとして支配している非上場企業のサントリーが統合するという時点でそりゃ無茶ってもんでしょう。相反する資本形態の一方でこの両者は変な部分で似た所があり、かつて酒屋の業界ではキッコーマン・キリン・寿屋(サントリーの旧名)の「3K」が醤油・ビール・ウイスキーの3分野を圧倒的なシェアで支配する暴君企業と揶揄されてきたように、どちらも自分が頂点と言わんばかりのお山の大将だった点では実にそっくりです。「資本形態は正反対。でも鼻っ柱の高さは瓜二つ」という両社をくっつけるなど下手な化学合成物質の製造より困難である事は言うまでもありません。
今回の統合破談ではサントリー創業家の持ち株比率が新会社の3分の1を超える(経営方針を引っくり返せる比率)かどうかが最大の焦点となったようですが、これは企業オーナーにとってはまさに生命線であり、サントリー創業・オーナー家の鳥井・佐治家にとっては絶対にゆずれない一線です。
かつて牛次郎という漫画原作者がいました。今は引退して静岡県にお寺を開いてお坊さんになっちゃいましたが、氏の代表作としては少年チャンピオンに連載された「プラレス3四郎」や、料理漫画の傑作として後に大きな影響を与えた「包丁人味平」、パチンコ漫画の「釘誌サブやん」などが有名所でしょう。しかしながら氏の作品論を語る上で最も注目すべき真髄とは経済・企業物漫画であり、それらは城山三郎や高杉良らの経済小説にも決して見劣りするものではありません。中でも白眉というべき「鯨魂~金権怪物・銭貫一二三伝」(劇画・川本コオ)という代表作では主人公の風俗産業王である銭貫一二三(ぜにつら・ひふみ)が「良い企業の条件」とは何か?という事について部下に次のように言う場面があります。
「トップが私物化できる会社ですよ」
そして銭貫は続いてこうも言います。
「だから株式は絶対公開しちゃだめなんだから」
まさに銭貫一二三の理念とはサントリー初代・鳥井信治郎以降連綿と受け継がれてきた鳥井・佐治家(佐治というのは信治郎の次男で2代目社長である敬三が親戚の佐治家に養子に行った為。当初後継者と目された信治郎の長男・吉太郎は33歳で夭逝)の理念そのものであり、その為にサントリーは石油の出光興産や薬の大塚製薬などと並んで上場しない日本の大企業の一つと称されてきた訳です。それが「近年のグローバリズムの中で生き残るにはM&Aで大規模化」という安易なお決まりのパターンを選んだ訳ですが、それとオーナー家の企業私物化を両立させるにはやはり多少無理があり、ある程度妥協せざるを得ないでしょう。それが嫌なら経営統合など最初から考えない事です。
筆者は「本業」のゲーム業界で嫌になるほど見てきましたが、「グローバリズムの中で生き残るにはM&Aで大規模化」というのはもう沢山だと思います。規模を追い求めればそうなるのでしょうが、それ以外に本当に活路はないのか? 個々の企業が長年培ってきたノウハウなどがそれのおかげで全て画一化されてつまらない商品があふれたり、その企業の比較的良心的だった部分が失われるのはもう勘弁してほしい所です。
酒の世界ではニッカがアサヒビールの傘下ですが、同社は創業者とその子息2代(竹鶴政孝・威親子。政孝は寿屋時代のサントリーで日本初のウイスキー製造を始めた技師でもありました。後に酒造理念の違いから鳥井信治郎の下を離れます)が健在であった頃はアサヒ傘下でも創業期の理念を保って良いウイスキーを作っていましたけれど、竹鶴威氏が亡くなってから同社は完全にアサヒグループの一洋酒製造部門としてしか機能していません。水割りウイスキーなど創業者竹鶴政孝が最も嫌ったウイスキーの飲み方であり、氏が生きていたらそんな物を絶対に製品化などしなかったでしょう。
ゲーム業界のタイトーはスクウェア・エニックス(スクエニ)に買収されましたが、そのおかげでタイトー製品の版権管理が急激に厳しく(旧タイトーは比較的おおらかだったが、スクエニは旧エニックスの影響で厳しい)なり、ワンフェスのような同人イベントでタイトーゲーム関連の一日版権が認められなくなるなどの弊害もあるのは典型でしょう。
ニッカやタイトーの例を見ても分かる通り、下手な規模だけを追い求めるM&Aは消費者にも多大な損害をもたらすという視点をこれからは考慮すべきです。その会社が合併・統合して消費者にどんなメリットがあるのか? 業界内のシェアがこれでどれだけ大きくなったなどという話はもう沢山です。
もっともサントリーは昔から添加物だらけの酒で有名であり、質は大した事がない(最近の一部商品には違うものもあるようですが)のでキリンと統合した所で我々としては大して困りませんが。有名な青いバラ(笑 どう見ても紫にしか見えない)を作る為に遺伝子組み換え技術を安易に使うなど食品に関する安全性の思想がゼロなので、そういう点では同じく大手のキリンとはお似合いの「カップリング」と言えなくもありませんね。

キリンとの交渉、決裂の理由は統合比率=佐治サントリー社長

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