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【翻訳記事】韓国で現在進行中の重大な言論弾圧事件:ハンギョレに対する1億ウォンSLAPP訴訟:訳者解説

前回記事の訳者解説】

お読みになった通りである。
ほんの数日前に韓国ではまさに言論の自由を脅かすとんでもない事件が発生していた。与党セヌリ党の代表である金武星が、自身の父親の親日行為を書いたハンギョレに対して1億ウォンという巨額の民事訴訟を仕掛けてきたのだ。

一応日本の読者の為に、金武星という政治家の来歴について改めて簡単に述べておきたい。金武星の父親は日帝植民地時代の実業家で金龍周と言い、日帝の御用商人みたいな事をやって財を成した人間だった。金龍周は若い頃には民族主義的な傾向もあったらしい(だからといって独立運動までやったりそれを支援したという資料はない。飽くまで民族主義的「だったらしい」というレベル)が、1930年代以降は露骨な親日行跡しか見当たらない。今回の記事にあるように地元の有力者として「朝鮮の若者は天皇陛下の為に聖戦へ出征せよ!」みたいな扇動を熱心にやっていた訳である。誰がどう見ても明白な親日反民族行為者としか言いようがない。そして南朝鮮の親日派の例に漏れず8.15解放後も金龍周は何のお咎めもなく巨財を抱えたまま生き延び、1960年台には国会議員にもなっている。それの息子・金武星はこうした親父の財産ばかりか政治的基盤まで受け継いだ典型的な世襲政治家で、朴槿恵と並んで「韓国では今でも親日派の後裔達が既得権をつかんでいる」という事実を証明する生きたサンプルと言えるだろう。これまで韓国は日本に比べると世襲議員は少なかった(飽くまで比較的ね)が、こうした金武星や朴槿恵のような世襲政治家の例はセヌリ党・民主党問わず選挙の度に着実に増加しており、年々日本とそっくりな状況になっている。

日本ではこうした与野党問わぬ世襲政治家どもが靖国神社に参拝して愛国心を説き、挙げ句には「北朝鮮は権力を世襲している独裁国家。北朝鮮人権法で圧力を掛けろ!」と騒ぎ立てる。
韓国でははこうした与野党問わぬ世襲政治家どもが朴正熙の墓に参拝して愛国心を説き、挙げ句には「北は権力を世襲している独裁国家。北韓人権法で圧力を掛けろ!」と騒ぎ立てる。

結論:日韓仲良くしすぎだぜ!

それはともかく、今ではとても信じられない話だが、この金武星は政界に入って間もない頃(1985年)は金泳三の秘書みたいな事をして活動していた。金泳三も金大中と並んで民主化運動の巨頭とされていた時代の話である。それが今ではどうか? 歴史教科書国定化の強行、労働法改悪強行、さらに先日光化門で行われた民衆総決起デモ、例の警官隊が凄まじい暴力を振るって弾圧したこの平和的デモに対して金武星は「あのデモはイスラム国と同じテロだ」という妄言まで吐いて自分らの凶暴な弾圧行為を正当化し続けている。当初は民族主義者だった(らしい)が後に熱心な親日行為を働くようになった親父と同じで、息子の方も当初は民主化勢力に一応加担していた(らしい)が後に典型的な朴正熙型極右反動政治家になったという事だ。
金武星とはこういう政治家だという事を念頭に置いた上で前回の翻訳記事と今回の訳者解説をお読みいただきたい。なお、金武星の履歴(日本版および韓国版ウィキペディアなど)を見てみると「民族問題研究所創立理事」という一文があるが、ここにある「民族問題研究所」というのは「親日人名事典」の刊行で馴染みのある「民族問題研究所」とは同名の別団体なので注意されたい。

本論に話を戻すと、今回の件はまさに権力者による口封じの嫌がらせ訴訟、俗に言う「SLAPP訴訟」の典型例であろう。「韓国の言論の自由」がどうのこうの言うならば、直近の例としてはまず真っ先にこれを取り上げねばなるまい。しかしながらどうした事か、筆者が調べた範囲では今回の件は日本で全く報じられておらず、言及している者もいない。何よりもハンギョレ日本版が記事を翻訳掲載していない(2015.12.02現在)のだ! こんなに重大な記事を訳さないという、またしてもハンギョレ日本版の一番悪い部分が露呈した訳でもあるのだが、故に筆者がやらざるを得なくなった次第である。

筆者はこれまでハンギョレ新聞という報道機関を何度も批判してきた。ハンギョレというと「軍事独裁政権時代に弾圧された韓国の反権力ジャーナリスト達が結集して作った、韓国を代表する革新系新聞」というイメージが根強くあり、今でもここは「6月抗争の精神」に則って素晴らしい報道をしているかのような「美しい誤解 by 伊勢崎賢治」をしている者が内外に多くいる。だがそんなのは遠い昔話に過ぎず、現在のハンギョレの実態は創刊時の精神からは遠くかけ離れた堕落の極みだ。その間にハンギョレはずいぶんと右傾化し、信じられないほど酷い論調に加えて、金さえ積まれればどんな酷い広告でも平気で載せる総会屋体質を持つに至った。ハンギョレのそうした点を批判してきた筆者でさえ、今回の訴訟は重大で深刻な問題を持っており、決して看過出来ないと考える。

韓国で時の与党代表が一新聞社に対して巨額の損害賠償請求訴訟を起こして恫喝してきた。今回の件は日本で言うならば、かつて安倍晋三が従軍慰安婦報道でNHKを恫喝したのと全く同質な言論弾圧行為である。金武星は与党セヌリ党代表すなわち日本の自民党で言えば総裁であり、韓国では大統領に次ぐ実力者と言って良い。そんな権力者が自分の父親の親日前歴という公然たる事実が嘘だといって因縁をつけているのだ。

安倍晋三(&故・中川昭一)
「従軍慰安婦などというありもしなかった事を放送しやがってぇぇぇぇッ! 番組内容改編して謝罪せえやぁぁぁぁぁッ!」
金武星
「わしの親父の親日行為などというありもしなかった事を書きやがってぇぇぇぇッ! 1億ウォン出して謝罪せえやぁぁぁぁぁッ!」

結論:日韓仲良くしすぎだぜ!

…冗談はともかく、権力者による「言論の自由を弾圧」というなら、これは近年でも上位に数えられる酷い典型例であるのは誰が見ても明らかだろう。そう、日本の愚かな知識人達が抗議声明を出した朴裕河の起訴とは全く違って! 大江健三郎や村山富一らが

「権力が特定の歴史観をもとに学問や言論の自由を封圧する挙に出た」
「何を事実として認定し、いかに歴史を解釈するかは学問の自由の問題。言論には言論で対抗すべき」
「韓国の健全な世論が動き出すこと」を期待し、「民主主義の常識と良識に恥じない裁判所の判断」を求める。

と言うならば、まずはハンギョレに巨額のSLAPP訴訟を仕掛けた金武星に対してこそ抗議声明を出さねばならない。朴裕河を訴えたのは「従軍慰安婦」被害者、すなわち何の力もなく、解放後も何の補償もなく苦痛を受けて来た老人達だ。このような弱者が、大学教授で日本の名だたる有名知識人からはモテモテ(笑)で本が売れて話題の「人気作家」という「みなし公人・みなし権力者」に侮辱の限りを尽くされて、やむを得ず訴えたというのが朴裕河に対する訴訟ではないか。これのどこらへんが「公権力による言論弾圧」なのか。本当の「言論弾圧」は同じ韓国ですぐ近くに、同じく日帝時代に起因するテーマで発生しているではないか。朴裕河自身も著書で言っていたはずである。「従軍慰安婦問題は日本軍よりも、朝鮮人業者や娘を売った親や村長(要するに「親日派」)達の方が悪い」みたいな事を。金武星の父・金龍周は植民地朝鮮の大実業家にして道会議員まで務め、(朴裕河が言う所の)朝鮮人業者などとは比較にならぬほど親日派としても大物だ。連中(朴裕河並びにその支持勢力)の論理で考えても、金武星とその父親の親日問題を糺す事の方が歴史問題的にもはるかに重要ではないか。

ここで一つ、極めて朴裕河流に則った「理論展開」を以下にしてみたい。

1)権力が特定の歴史観をもとに学問や言論の自由を封圧する挙に出るのは大変問題だ。
2)韓国与党代表という高位にある金武星という権力者がまさにそれをやっている。
3)従軍慰安婦問題は日本軍よりも、朝鮮人業者や娘を売った親や村長(要するに「親日派」)達の方が悪い。by 朴裕河
4)金武星の親父は「朝鮮人業者」などよりも親日派としてはるかに大物であり、当然責任も重い。
5)従軍慰安婦問題が「親日派」のせいだというなら、当然より大物をこそ追求すべきではないのか?
6)「朝鮮人業者」などという小物しか追及しない朴裕河ごときよりも、堂々たる親日巨頭・金龍周の事を追求する方が「韓国の学問・言論の自由」にとっても、「従軍慰安婦問題」の「解決と和解」にも有益である。
7)結論:朴裕河が起訴されたなどという、ちっぽけな事なんかどうでもいい。あんな奴ほったらかしときなさい。ハンギョレを訴えた金武星に対して抗議声明出すのが優先だ!

我らが親愛なる友人にして従軍慰安婦問題の「論議に深みを与えた」朴裕河教授自身の流儀に従って理論展開すれば、彼女が起訴された件なんかどうでもいいという事になるのです! 大江健三郎や若宮啓文(笑)をはじめとする「日本を代表する良心的知識人軍団」は今すぐ彼女を擁護する声明を即座かつ永久に撤回し、ハンギョレを擁護する声明を出さなければならないのです! それがすなわち「慰安婦の方々の哀(かな)しみの深さと複雑さ」を「韓国民のみならず日本の読者にも伝」えた、21世紀韓国が生んだ偉大なる伝道師・朴裕河教授自身の御心にも適う行為なのです! 何と素晴らしき朴裕河教授の自己犠牲精神ではありませんか!

…冗談はともかく、朴裕河が自著でさんざんやってる得意技、すなわち「特殊な事例を過大に取り上げて、それがあたかも普遍的な事例であったかのように言う」「事実関係に対する極度に恣意的な解釈」「論理的な飛躍」「論理のすり替え・ねじ曲げ」といった強引な「朴裕河流」に従って解釈すれば、こういう結論しか導けない。「朴裕河がどうなろうが知ったこっちゃねえ。どーでもいい。あんな女の擁護声明なんか出さずに、ほったからかしときなさい!」と。

冗談抜きで真面目に考えても、「権力による言論の自由の弾圧」という観点からすれば、ハンギョレが訴えられた事の方が真に驚異的で不当な提訴である。
大江健三郎は今回の朴裕河擁護で、これまで彼が積み上げてきたものが全て一気に崩壊(実際にはそれ以前から相当部分崩れていたが)したと言っても過言ではない。だが、名誉挽回にまだ何とか間に合うかもしれない。朴裕河擁護の声明から抜けるなり撤回し、今韓国で進行している本当の言論弾圧にこそ抗議する事だ。わずかな残滓でしかなくとも、己の名誉を回復したければそれしかない。その日を全く期待せずに待っている。

一方で今回の記事を翻訳しなかったハンギョレ日本版は一体何を考えているのか? 今回の記事が出た日、ハンギョレ韓国本家ではこの記事を当然デカデカとトップに載せた。本家が直面したこれほど大きな言論弾圧訴訟トップ記事を日本語版が完全に無視して載せないとか、本当にあり得ない話だろう。自社の記事を特落ちとか、ジャーナリズムとしてそれ以前の問題ではないか。筆者がハンギョレ本社の社長だったら、日本語版を統括してる日本特派員と日本語版スタッフを全員クビに、良くて厳重戒告だろう。こんだけあり得ないヘマをやっているのだから。
しかしながら、別の見方も出来る。つまり日本語版スタッフ衆にとってこの記事はよほど都合が悪かったのではないか、と。今回の件が知られれば、当然朴裕河の在宅起訴とそれに対する日本側知識人の抗議声明と比較されるのは避けられない。そうなれば朴裕河に大義がない事は誰の目にも明らかになるし、当然そんなロクでもない声明を出しながら本当に抗議すべき対象に抗議せず勝手な「和解」の為の歴史認識を振りかざす日本側知識人達の愚劣さも露になってしまうだろう。それに配慮したのではないか、という事だ。もちろんこれは筆者の推測に過ぎない。だがあり得る話だと思う。それはハンギョレ日本版が今後「ある記事」を訳すかどうかではっきりするだろう。その「ある記事」とは、韓国側の朴裕河擁護声明だ。日本の知識人達の声明が出てから、韓国でもそれに同調した声明を後日出すという話がこの間ちらほらと韓国の新聞で散見された。その韓国側声明がハンギョレに載った際、同日本版がそれを訳して掲載するかどうかに掛かっている。もしハンギョレ日本版が韓国側の朴裕河擁護声明を掲載したなら、筆者の仮説はほぼ当たりだろう。そしてその可能性は非常に高いと考える。大江健三郎の場合とは違い、その日を大いに期待して待っている。

【追記】
…と、ここまで書いたら、案の定ハンギョレ日本版に朴裕河の起訴に反対する韓国知識人の声明(朴裕河擁護派)を取り上げた記事が載った。

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/22674.html
『帝国の慰安婦』著者の起訴に韓国知識人が反対声明
登録 : 2015.12.03 00:58 修正 : 2015.12.03 07:19   

この朴裕河擁護声明に名を連ねた連中は本当にどーしょーもない奴らばっかりで、特にチャン・ジョンイル(蔣正一)という小説家は「帝国の慰安婦」が出た直後から朴裕河の擁護記事をあちこちで垂れ流し、とりわけハンギョレはそれをずいぶんデカイ扱いで掲載してたほどだ。延世大学教授のキム・チョル(金哲)も同様である。この両人はもはやほとんど朴裕河を神と崇める狂信者と言っても過言ではない言動を、これまでずっと繰り返してきた。そういう韓国のどーしょーもない進歩派くずれのクズ知識人どもの集大成が、同じく日本のどーしょーもないクズ知識人と「国際連帯」するという訳だ。
結論:日韓仲良くしすぎだぜ!

こういう知識人ぶった連中が「慰安婦」被害者達をセカンドレイプするような真似を、国境を越えて大々的に行っている。本当に終わっているとしか言いようがない。このハンギョレ記事には「帝国の慰安婦」に批判的な立場からの別の声明についても触れられているが、こちらの賛同者は約70人程度。対して朴裕河擁護派は190人と3倍近い。一応は「慰安婦」被害者の立場に立った声明がやっと出て来たのはいくらか救いだが、それでも韓国知識人の世界はやはり暗澹たるものがある。ハンギョレの記事ではその性格が異なる二つの声明を「起訴に反対」として一緒くたに扱っており、これまた酷いものではあるが。

余談だが、上記ハンギョレ日本版の翻訳記事は韓国語原文記事リンクのアドレスまで間違えていた(12月3日11時現在)。正しいアドレスは以下である。いくら何でも仕事が杜撰に過ぎるのではないか。

http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/720101.html?_fr=mt2
“박유하 책 문제 많지만, 기소는 사상·학문 자유 옥죈다”
등록 :2015-12-02 19:43수정 :2015-12-02 21:56

一応ハンギョレには鄭栄桓氏のインタビューも載っているので、そちらをこそ読んでいただきたいと思う。

http://japan.hani.co.kr/arti/international/22669.html
[インタビュー]『帝国の慰安婦』著者を告訴したのはハルモニたち、弾圧ではない
登録 : 2015.12.02 23:46 修正 : 2015.12.03 07:17   

http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/720103.html
“할머니들이 고소한 것… 탄압으로 보는 것은 적당치 않아”
등록 :2015-12-02 19:47수정 :2015-12-02 21:55

それと本人による補足。
http://kscykscy.exblog.jp/25144573/
朴裕河氏の在宅起訴問題について――『ハンギョレ』インタビューの補足

鄭栄桓氏のインタビューは良い。だがハンギョレはこれで「両論併記したからオッケー」などとは考えない事だ。これまで蔣正一はじめとする朴裕河擁護派(信者)の記事をさんざん載せてきた罪はどうなるのか。それに対して猛省すべきだろう。さもなければ金武星を批判する資格を失うだけだ。ハンギョレはこの際、金武星の鼻持ちならない提訴と「慰安婦」被害者達の血を吐くような訴えのどちらが本当の言論弾圧なのか、言論機関として旗幟鮮明にしなければならない。Show the Flag!
その日を、これまた大江健三郎の猛省と同じで全く期待せずに待っている。
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