浅井基文氏が先日の都議選について語っていました。
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2017/923.html
問われているのは私たちの政治意識
2017.7.03.
都議選の結果(自民党惨敗)は一服の清涼剤ではありました。しかし、私は小池都知事率いる「都民ファーストの会」及びその系列(公明党を含む)の「大勝」には正直苦々しい思いです。かつての総選挙での民主党勝利と同じく、しょせんは「コップの中の嵐」にすぎないからです。安倍・自民党のおごり・腐敗が都民のうんざり感を引き起こして「お灸を据える」行動に駆り立てたとしても、国民(都民)の政治意識そのものが変革した上での「政治の地殻変動」というわけではないのです。
これはその通りだと思います。しょせん都民ファーストなど自民と何も変わらない集団であり、今回の選挙における都民ファーストの勝利も「コップの中の嵐」すなわち自民内部の内ゲバに過ぎない訳ですから。豊洲問題だって結局は移転が決まった訳ですし。まさに現実は「白竜(漫画ゴラク)」より奇なり。小池知事にしてみれば自民時代からの最大の政敵である「都議会のドン」を見事に追い落とせたのですから、これ以上の「大戦果」はないでしょう。かつての民主党勝利とも重なる部分が山ほどあります。
が、浅井氏の記事はその後が良くない。こんな事を書いているのを見て筆者はずっこけちゃいましたよ。
お隣の韓国では文在寅政権が登場した。朴槿恵大統領を罷免に追い込んだ「ろうそく革命」に結集し、文在寅を大統領に押し上げる原動力となった韓国国民の政治意識は高い評価に値する。韓国国民と日本国民を隔てるもっとも根本的な違いは、デモクラシーを真にデモクラシーたらしめる「主権者としての政治意識」の有無だ。
…もう何をか言わんやで、だから何でそこで韓国の「キャンドル革命」と文在寅政権を比較対象に持って来る訳ですか? もう何度も書いて来た事ですが、韓国で起こった「キャンドル革命」にせよ文政権にせよ、これらこそまさに日本で言えば2009年の民主党政権や今回の都民ファーストの都議選勝利に相当する「コップの中の嵐」現象そのものです。文在寅が訪米してトランプと何を話し合ったかはすでに既報の通りでしょう。朝鮮共和国に対するさらなる圧迫政策を、それも韓米日3国で推し進める事を確認しただけです。THAADの配備は既成事実化されましたし、その一方で当選前に公約してた「全教組を再び合法労組に戻す」というのは依然として実行されていません。文在寅が大統領になって脱原発だの聞こえのいいセリフを連発してますが、それらのうち国会の批准だとか新しい法の制定などで裏打ちされたものは何もないんですから。文在寅はTHAADや日韓慰安婦合意などについては事ある毎に「民主主義的な手続きが必要だ」「国会での批准がなければならない」と言うくせに、全教祖や非正規職労働者の問題や脱原発の問題についてはそういう事を一切言わないんです。こうした切実な社会問題を本当に解決する気があるのか、単なる人気取りリップサービスの域を出ないのではないのかという疑いが晴れません。小泉純一郎だって首相になったばかりの時はハンセン病裁判の控訴を取り下げたし、小池百合子も当初は豊洲移転問題にメスを入れる振りをした訳です。いずれも人気取りの為に! 就任間もない文在寅が聞こえのいい言葉を乱発するのもこれらと同じではないのか。人気取りポピュリズム手法の達人という点で、文在寅・小池百合子・小泉純一郎・橋下徹の4者は本当にそっくりだと思います。
こういう人間を大統領に当選させちゃった訳ですから、生憎と「韓国国民の政治意識」とやらは都民ファーストを大勝させた東京都の有権者とそんなに違いありません。文在寅政権誕生というのは、本当に日本で言えば小泉政権や民主党政権、あるいは「小池百合子&都民ファースト現象」と同じような現象であり、「国民(都民)の政治意識そのものが変革した上での「政治の地殻変動」というわけでは」全くないんです。「キャンドル革命」とよく言われますが、あれは本来「革命」とは到底言えません。韓国の民衆抗争というのはどんなに大勢の人間が集まって政権に打撃を与えても所詮烏合の衆なので、結局しょうもない保守野党(民主党)政治家やそれの腰巾着であるインチキ学者に政治の主導権を与える結果しか生めなかった。これは4.19からこのかた、ずっとそうでした。そして2017年のキャンドルデモというのは参加人数はおそらく史上最多でしたが、遺憾な事にその意義や民衆の意識水準という点では韓国の歴代民衆抗争の中では最低のものだったと思います。4.19、6月抗争、釜馬抗争、光州抗争…これらと比べても本当に2017年キャンドルデモは低質な運動であったでしょう。言わば「史上最多の烏合の衆」です。もちろん日本も他人の事言えないけどね。特に3.11以降。
浅井氏(に限らず日本の多くの知識人が依然としてそうですが)に申しあげたいのですが「韓国では昔から独裁政権に抗った民主化闘争の歴史があり、そのせいで日本よりも民衆の政治意識が高い」という「逆の偏見」はもう捨てるべきです。現実に起こっているのは「韓国も日本も市民社会が恐ろしく俗物化し、一緒に仲良く反動化の地獄を直進行中」という事に過ぎないのですから。「韓国の民衆はこんなにがんばっているのに」論法は韓国が軍事独裁だった1980年代までならともかく、今となっては有害無益の極みです。
実は
韓国でも2010年代初頭(のみならず今でも現在進行中)に「日本の民衆はこんなにがんばっているのに」論法というのが流行りました。これは要するに3.11後に日本で反原発運動が盛り上がった、日本は世界の脱原発をリードしてるんだ、だから韓国でも…という論法で、これが向こうの市民運動の世界やハンギョレなどの進歩派メディアで大いにもてはやされた訳です。でもその間日本で実際に起こっていた事は何だったでしょうか? 反原発デモに日の丸や右翼を引き込むという「反原連現象」でした。これに既存の運動体(原子力資料情報室やたんぽぽ舎など)までもが迎合して、日本の反原発運動がどれだけ腐敗堕落したか計り知れません。挙げ句が都知事選における細川&小泉応援団です。その間に原発はどんどん再稼動していきました。こんなものに憧れてお手本にしようとした韓国の民衆運動も悪影響を受けて駄目になり、中身のないキャンドルデモによって文在寅政権のような超親米・超ポピュリズム政権を生み出してしまったのは、当然の帰結であったかもしれません。
日本側
「韓国の民衆は政治意識高い。民衆が決起した「キャンドル革命」で文在寅政権を誕生させた。韓国の民衆はこんなにがんばっている」
韓国側
「日本の民衆は政治意識高い。民衆が決起した「官邸前行動」や国会前の安保法反対デモが政権を追い詰めている。日本の民衆はこんなにがんばっている」
でも日韓双方で現実に起こっているのは市民社会のどうしようもないほどの堕落であり、ポピュリズム政権・都政の誕生や戦争法・共謀罪の成立(韓国側にはとっくの昔から国家保安法という弾圧法が存続中であり、文政権でもこれを撤廃する見込みは全くない)、原発再稼動、韓米日同盟のさらなる強化、反基地運動に対する凄まじいまでの弾圧といった事でしかない訳です。それともう一つ、倭王・明仁を「安倍を牽制して下さる平和の神」として崇拝するのも
日本と
韓国双方の主流マスコミと市民社会で同時に大流行中ではありませんか!
現実を全く無視して、日韓双方で互いの市民社会を「がんばっている」と褒め合う気持ち悪い行為はいい加減やめるべきです。
「日本も韓国も政権だけでなく市民社会までもが駄目になり、似たような恐るべき現象が同時進行している。仏作って魂入れずなのは、日本の民主主義も韓国の民主主義も違わない」
という前提から出発しなければなりません。
日本の民主主義が「仏作って魂入れず」な実例としては、明仁の神格化や日の丸を振りながらの「安倍辞めろ」コールを見れば一目瞭然でしょう。
韓国の民主主義が「仏作って魂入れず」な実例としては、遺憾な事にTHAADの反対運動の一部にも見る事が出来ます。
運動家の中には「サード問題は危機にしてチャンスだ。これをカードに中国やアメリカや北に対して有利に交渉しろ」という無茶な「国益論」を展開したり、「国民が文在寅大統領のバックになろう」という根本的に物事を取り違えた話をしている者がいて、それがマスコミに出たりしているのですから。危機は危機でしかないというのに。文在寅政権はもの凄い親米政権で、訪米前からすでにTHAAD配備を既成事実化しているのですよ? それを「国民がバックになってやるから、アメリカにはっきりものを言え」とか、どこまでものを知らないお人よしなのか! 文在寅もまた自分達民衆を代弁してくれる大統領などでは全くないという事に気づいてない点が愚かしい。文在寅を「国民の大統領」と言うのは壮大な勘違いであり、日本人が小池百合子&都民ファーストに熱狂したり「俺達の麻生(山田太郎でも可)」とか言ってはしゃぐのと全く同じ倒錯現象でしかありません。上記のおかしな一部THAAD反対派の言動、日本の運動圏でも(特に3.11後)よく見かける光景ではありませんか。
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