そう信じている方も多い事であろう。何しろ
文政権は「脱原発宣言」したのだから、それを真に受けて
「うれしいニュース。ああ、さすがは「キャンドル革命」が生んだ大統領だ。民主化運動と国民主権と新大統領だ」と喜んでいる善意の方が非常に多く見られる。が、しかし…。
そうした純粋な善意の方々にこういう事を言うのは大変心苦しいのだが、そのような見通しは甘い、とろけそうなくらいに甘い、サッカリンを大量にぶちこんだ高度成長期公害時代の日本の駄菓子よりも甘過ぎると申し上げておく。
文在寅ってのはあの「差別主義者にしてシリアの虐殺者トランプ」に世界で最も、それこそ犬のように忠節を尽くしてシッポ振ってる国家元首だぜ? 安倍以上にだよ? 朝鮮共和国に対しても
軍事境界線上の挑発行為をやめるつもりは全くないとして、李明博・朴槿恵と何ら変わらぬ対北敵視政策を継続している大統領だぜ? そのくせ「北は無条件で対話に出て来い」とか勝手な事を言ってるんだぜ? そんな状況で対話に応じる馬鹿がどこにいるのかという話だろう。THAADの配備も強行した。星州で反対運動をしている住民達はどうなるのか? 彼らは朴槿恵時代と全く変わらず依然として弾圧にさらされている。辺野古と全く同じように!
「文在寅政権は朴槿恵政権の継承政権である。韓国では「キャンドル革命」など何も起こっていない」
これこそが今の韓国を見る際に弁えておかねばならない大前提である。
本題に戻ると、文政権の「脱原発」など実に虚構と欺瞞に満ちた怪しげなものだ。確かに大統領は古里5・6号機建設も中断するとした。だがそれだけで今後韓国が原発を完全になくすと考えるのは早計に過ぎよう。以下のような恐ろしい話がある。
http://japanese.joins.com/article/741/231741.html?servcode=200§code=200
脱原発後押ししながら…「産業資源部長官、原発輸出に最善を約束」
2017年07月27日13時07分
朝鮮語原文記事
http://news.joins.com/article/21793113
http://news.joins.com/article/21796959#none
문 대통령 “(원전 기업의) 해외 진출 적극 지원할 것”
[중앙일보] 입력 2017.07.27 22:22 수정 2017.07.27 22:28
文大統領「(原発企業の)海外進出積極的に支援するだろう」
上記はいずれも中央日報の記事だが、結果は歴然としていよう。一応国内では「脱原発」する(らしい)が、原発輸出はこれからもバンバン行うと。これのどこらへんが「脱原発」なんだ? 国内では原発みたいなヤバいモンは一応やめる事にするが、そんな危険物をこれからは外国へ売って金儲けとか、単なる公害産業輸出や経済侵略以外の何者でもないではないか。本当に原発をやめるというなら、当然その輸出もやめねばならない。ところが文在寅政権はそうせず、原発輸出に「最善を約束」「海外進出積極的に支援」だというのだ。こんな欺瞞と偽善がどこにあるというのか。前任の朴槿恵や李明博も原発輸出に異常なほど熱心な「原発族政治家」だったが、文在寅も本質的には何も違わない。韓国では原発利権が朴槿恵&旧セヌリ党から文在寅&民主党に移っただけ、すなわち韓国で先日起こったのは「政権交代」ではなく「利権交代」に過ぎなかったのである。結果論ではあるが、キャンドルデモに参加した善意の人々はそんな下らない利権争いの片方に奉仕してやっただけだったのだ。いや、利用されたと言うべきか。そこに韓国の民衆運動が抱える泣き所がある。遺憾な事に、これは4.19の頃から変わっていない。
文在寅政権でもう一つ注目されているのが日韓慰安婦合意をどうするかという問題だが、これも原発と同じような展開が待ち構えているのではないかと筆者は考えている。そもそも日韓合意は「日韓は歴史問題を棚上げして安保協力を優先し、日韓仲良くこのアメリカ様に御奉公しろ」というアメリカ側の圧力が強く作用したのは周知の事実である。日韓合意に反対する立場からすれば敵は日本だけでなくアメリカも同様なのだ。
挺隊協が米大使館前で日韓合意に反対するデモを行っているのは、それでもまだ敵を見失っていない証左であると言えよう(もちろん後述のような危惧もあるが)。だが文在寅はどういう大統領か? すでに何度も述べてきたように「世界で最もアメリカに忠実な犬」だぜ、文在寅って。他の閣僚や要職を見ても、
朴裕河の最大の「パパ」であった特別補佐官・文正仁。
アメリカの手先になって国連で朝鮮やシリアへの圧力をかけまくった外務長官・康京和。
韓米FTA推進の急先鋒として韓国の農業破壊に率先し、農民達から怨嗟の的になっている通商交渉本部長の金鉉宗などなど。こんな大統領以下要職ども全員親米親日軍団の政権で、アメリカの意向に逆らってまで日韓合意を破棄出来ると思うだろうか。もちろん
文在寅は大統領選挙前から日韓合意の「破棄」など一切言っておらず、飽くまでも「再交渉」としか言わなかった。だがその「再交渉」の中身がどんなものになるかは知れたものではない。「国内では一応脱原発するつもりだけど、原発輸出はバンバンやる」というのと同じで、文政権の慰安婦合意再交渉がどれだけ酷いインチキなものになるか、今から不安で仕方がないのである。
韓国政府が日韓合意を全面再検討するというニュースが報じられ、それを僥倖のように思う人もいるかもしれない。だが筆者はこのニュースを見て大変な不安を感じた。前述のように親米親日軍団である文在寅政権の本性に加え、この再検討を担当するタスクフォースに参加している委員達に怪しげな人間達(特に延世大学のソン・ヨルやハンギョレ論説委員の呉泰奎など)が散見されたからである。特に現役記者がこうした政府審議会に入るのは問題ではないのか。
挺隊協も含めて今韓国で慰安婦被害者支援を行っている人々を見ていると、筆者は非常に不安になる事が一つある。それはこうした団体の寄り合い所帯である「正義記憶財団」が外交長官である康京和を過剰に高く評価して支持し、後押ししているからだ。
康京和がまだ外相に内定したばかりで国会などの審査(身体検査)を受けている段階で早くも慰安婦被害者や正義記憶財団が「康京和を支持する。彼女を絶対に長官にしろ。康長官なら必ず日韓合意を何とかしてくれる」といった事を公式に言いふらしてきたのである。だが、筆者がこれまで指摘してきたように康京和という女は極めて親米的なスタンスの外交官であり、国連でも欧米帝国主義の侵略戦争を推進する立場から「第三世界の人権問題」を悪用する例が極めて多かった。そのような人間がいかに自国とはいえ、「帝国主義侵略の被害者」である従軍慰安婦の肩を本気で持つとは考え難い。この手の欧米白人社会にかぶれたアジア人というのは、まさに名誉白人然として自国の同胞を蔑み、切り捨てるものである。康京和がナヌムの家を訪問して慰安婦被害者のハルモニ達と面会しただって? 彼女達が康を支持するのもそうした行動に起因する所が大きいと思う。だがそれだけで康京和と文在寅政権を支持するのは早過ぎる。ナヌムの家を訪問するだけなら、あの朴裕河でさえやった事があるのだから! もちろん朴裕河がナヌムの家に行ったのは「自分はおばあさん達を侮辱しているのではない」というアリバイ作りの為である。ナヌムの家に行って慰安婦被害者と面会したというだけでは、その者が本当に慰安婦問題を真面目に考えているかどうかの判定基準にはとてもならないのである。厳しい事を言うようだが。安倍だって毎年夏に沖縄の慰霊には一応行くではないか。そういう話でしかない。つまり単なる人気取りのパフォーマンスに過ぎないかもしれない行動を見て、正義記憶財団という韓国の「オール慰安婦支援者」が康京和を全面的に支持してオールインしてしまうというのは大変な悪手ではないかと、筆者はそれが不安でならないのである。
今韓国の慰安婦支援者達が陥っている状況というのは沖縄と非常に似ているのではないか。つまり
沖縄の民衆勢力や諸政党が一致して翁長雄志(元々自民党で保守派、日米安保支持)を知事に推す「オール沖縄」
韓国の正義記憶財団や当の慰安婦被害者達が一致して康京和(元々親米派で反北派、
韓米同盟絶対的支持)を外相に推す「オール慰安婦支援者」
この間の推移を見ていると、翁長雄志を推す「オール沖縄」勢力と康京和を推す「オール慰安婦支援者」勢力があまりに似た様相を示しているのが非常に恐ろしい。
辺野古の基地建設を止めるにはまず知事が埋立承認撤回をするのが第一である。同様に日韓慰安婦合意についても、それを韓国政府が破棄して10億円詰めたトランクを安倍晋三(菅義偉か岸田文雄でも可)のツラに叩きつけてやるのが第一歩であるのは明らかだ。ところが現実に起こっているのは何か。「オール沖縄」に擁立された翁長知事はいつまで経っても承認撤回をせず、「オール慰安婦支援者」に後押しされた康長官はいつまで経っても「再交渉」の一つ覚え。やる気があるのかこいつらは、という話であろう。こうした翁長の「ヘマ」や「サボタージュ」に対して「オール沖縄」が何も言えなくなって久しい。慰安婦合意に関して康京和や文在寅が今後どれだけ「ヘマ」や「サボタージュ」をしても、韓国の「オール慰安婦支援者」もまたそれに文句一つ言えなくなるのではないか。
筆者が抱いている嫌な予感は、今後数年過ぎてもこうした状況が続いて状況がますます悪化し、その時になっても今と同じセリフを筆者達が言い続ける事になるのではないかという事だ。
【禍々しい未来予想図 in 20xx年】
・
アリの一言
「翁長知事は一体いつになったら辺野古の埋立承認撤回をするのでしょうか。辺野古の工事を止める為にも今こそ承認撤回をすべき時です。「オール沖縄」勢力もその事を翁長知事にはっきりと突きつけねばなりません」
・ウン年後の筆者
「康長官と文大統領は一体いつになったら日韓慰安婦合意の破棄をするのでしょうか。慰安婦被害者の名誉回復と植民地支配清算の為には今こそ合意を破棄すべき時です。「オール慰安婦支援者」勢力もその事を康長官と文大統領にはっきりと突きつけねばなりません」
…冗談はともかく、このようにならない事を心から祈っている。
結論を申しあげたい。文在寅政権の掲げる「脱原発」は極めてインチキなものである。国内ではヤバいからやめるけど、代わりにその危険物を海外へ輸出して儲けるのは今以上にバンバン続けるとか、どんだけ酷い話なのかと思う。しかもその韓国内脱原発が完了するのは40年も後だって? アホかの一言だ。
こうした実情を知らずに「韓国の民衆革命バンザイ!」「目覚めた市民がつながりあえば、それは民主主義を守る砦となる」などという寝言を口走る「環境運動」こそもはや有害そのものであろう。
考えてみれば
「国内的には一応脱原発だけど、原発輸出は賛成」というのはハンギョレが以前から主張して来た事でもある。
そういう社説をハンギョレは実際に載せていた。福島原発事故後にも関わらず! そうしたハンギョレの主張が政策に反映され、同社幹部記者も政府審議会に取り立てられて乗勝長駆(승승장구 朝鮮語で「快進撃」「大出世」の意)する…。セヌリ党政権時には朝鮮日報・中央日報・東亜日報といった右派新聞の主張が政策に反映されては記者達も政府要職の御用に取り立てられたものだが、それと何が違うんだ? こうした現実を見てなお文在寅政権の本質が分からないのでは救いようがない。
・おまけの補論
「文在寅政権はロクな社会改革を実現出来ず、すぐにレームダックする」
筆者も当初はそう思っていたのだが、しばらく経過を眺めているうちにこれは違うかもしれないという考えの方が強くなった。文政権は高い支持率を保って意外に長期政権になるかもしれないという方に今では傾いている。
どういう事かというと、文在寅というのは予想以上のパフォーマンス政治家にしてポピュリズム政治家であるという事が分かって来たからだ。「キャンドル革命が生んだ大統領」「国民と疎通」「脱原発」「南北対話と開城工団再開」「慰安婦のおばあさん達の涙を拭いてやれる大統領」「全教祖を再び合法労組に」などいずれも嘘八百である事が判明した「不渡り手形」ばかりだが、不思議な事に文在寅の支持率は一向に下がる事はなかった。それどころか今なお80%の大台をキープし続けている。これは文在寅の見せ方のうまさにあろう。社会改革や弊害清算の旗印を掲げて、実際にそれらしき行動を少しだけ小出しにやってみせるのである。ナヌムの家に行ったり、汚染の酷い4大河川の水門をほんの一つか二つだけ開放してみせるとか、一部の非正規労働者を正規職にしろと直接指示したりといったように。それで「改革者」のイメージを作り上げて支持率を保持するのだ。でもそれだけで、根本的に身を削って旧悪を粛清する改革にまでは決して踏み込まない。こんな政治家、日本にいる我々にも嫌というほど見覚えがあろう。かつての小泉純一郎や橋下徹、今の小池百合子と何てそっくりなのかと思う。実際あの時小泉はハンセン病の裁判で控訴を取り下げて社会的喝采を浴びた。だが、他は…。文在寅はまさに「韓国の小泉純一郎」なのである。もっともこんな事を言うと逆に喜んでしまう連中も多いかもしれない。何しろ韓国の反原発運動界隈で小泉は「脱原発へ取り組む元首相」という事で英雄扱いされちゃっている訳だから(特に緑の党が酷い)。この事は韓国の市民運動自体が深刻な問題を抱えている事を示している。こうした文在寅の狡猾さ(並びに韓国市民社会の俗物化の為に)から、支持率は意外に下がらないのではないかと筆者には思えるのだ。
韓国では朴槿恵の末期に改憲の話が出た。これはもちろん朴槿恵が1期だけでなくその後も引き続き大統領でい続けたいが為にぶち上げた話だったものの、誰もが知る崔順実事件によって政権ごとその時は流れてしまう。だが韓国では改憲の話が完全に消えた訳ではない。大統領の権限や任期の変更といった改憲の話が今も燻り続けており、文在寅政権下でも遠からずその話は出て来るであろう。その時に文政権の支持率が高いままであったなら? そして大統領任期が2期以上に改憲されたら? 文在寅政権が意外な長期政権になるのではないかというのはこうした「文政権の超ポピュリズム手法による支持率維持」「改憲」が重なる可能性があるからだ。
もっとも文在寅が小泉的ポピュリズムへ過度に走るのも、当人の性格や政治的傾向以外に理由がない訳ではない。朴槿恵を失脚させた100万人キャンドルデモと弾劾、これは良い意味でも悪い意味でも韓国政治に大きな影響を残したと思う。憲法裁判所における朴槿恵の弾劾はなぜ通ったのか? これは率直に言って「支持率」に尽きよう。朴槿恵政権最晩期の支持率はかなり下がっていたが、崔順実事件が起こって100万人デモが起こるようになるとそれに歯止めがかからなくなり、地域や年齢層によってはゼロという世論調査の結果すらあった。韓国の憲法裁判所というのがいかに「憲法の精神」や「民主主義」から掛け離れた組織であるかは誰もが知る通りで、この裁判所の行動原理とはただただ時の権力への追従と機会主義だけでしかない。韓国憲法裁判所が憲法に忠実な判決を下した例なんて、筆者は今まで一度も見た事ねえよ! 日本の最高裁(最低裁?)より酷いんじゃね? かつて統合進歩党に解散命令を下した時はまさに「朴槿恵政権という強圧的権力」と「支持率一桁台の弱小政党・統合進歩党」という、韓国憲法裁の行動原理に100%一致する条件が揃っていた訳である。だがこれは後に朴槿恵にもそのまま跳ね返る事になった。権力の空白期に、ほとんど誰からも支持されていない職務停止中大統領に対して憲法裁は何の遠慮もしなかった(機会主義)という事だ。かつては高い支持率と強圧的な権力で憲法裁判所をもほしいままにしていた朴槿恵も、いざ自分の支持率が底をついた途端に当の憲法裁に引導を渡されたのは歴史の皮肉と言うべきか。このように大規模デモとそれに動かされた国会・憲法裁による弾劾が朴槿恵という一つの悪を倒したのはまあ事実であるが、同時にこれは副作用も生んだ。時の政権の命脈が支持率次第、というのが今まで以上に厳しくなったという前例を生んだのである。憲政史上初めて大統領が弾劾されて失職、それもかつては熱狂的に支持された時期もある朴槿恵がという事になって、今後大統領に対する弾劾は簡単に惹起されるようになるであろう。そしてそれが通るかどうかは、憲法・憲政とは全く関係なく、全てが支持率次第という事だ。もし朴槿恵にあの時支持率が15%以上あったら、多分憲法裁は遠慮して(機会主義)弾劾を通さなかったはずだ。民主党は今現在少数与党であり、野党達が結託すれば国会で文在寅を弾劾する事も決して不可能ではない。だが憲法裁は? 仮にそのような状態になっても、今のように文在寅が一定の高い支持率を保っている限り、憲法裁は例え天地がひっくり返ろうとも弾劾を通す事はない。それが韓国憲法裁判所の行動原理なのだから。
韓国大統領がその地位を保つ為には、何よりも己の支持率だけを第一に考えねばならない。
これはキャンドルデモと朴槿恵弾劾が生んだ大きな副作用である。韓国の民衆運動が持つ限界と歪な韓国の政治・司法システムが、韓国政治史上類例のないポピュリズム政権に帰結したといえよう。それが軍事政権以来の長期政権となる可能性を秘めてである。李明博・朴槿恵の「失われた9年」が15年以上に延長される覚悟を今からしておいた方が良い。
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