小泉が「原発ゼロ」などとなぜ急にあんな事を言い出したのか。その理由について、飽くまでも筆者の個人的な推測なのだが述べてみたい。
もちろん倅の進次郎の後押しの為に人気取りするという目的もあるだろうが、本筋はずばり小泉自身のノーベル賞狙いなのではなかろうか。要するにゴアやオバマに続いて3匹目のドジョウを狙っている、という事だと思う。ゴアは大統領選でブッシュに敗れてから政界引退し、その後は「不都合な真実」でノーベル賞を獲った。オバマも「核なき世界」とかいう実態と180度かけ離れた口先三寸だけでノーベル賞を獲った。
原子力産業の代理人だったゴアの語る「地球温暖化論」がどれだけ科学的に怪しい話だったか!
オバマのアメリカは依然として「核による支配」で第3世界の平和を脅かし、さらに昨年末には北朝鮮よりも先に臨界前核実験まで実施したではないか!
ゴアもオバマも言ってる事とやってる事があれだけ違っててノーベル賞をもらえるのだから俺だって…。と小泉が考えても不思議ではあるまい。今後の行動次第だが、十分に受賞はあり得る事だろう。福島原発事故という人類史上最悪の原発事故を起こした日本という国だからこそ、そこで元首相が「原発ゼロ」を時の首相にまで訴えるという行為がノーベル賞獲得にどれだけ大きなポイントとなる事か! それを人気取りと大衆迎合だけは天下一の小泉純一郎が気付かぬ訳がない。小泉の賞獲りはひょっとしたら村上春樹や黄晢暎よりは有望なのではなかろうか。
今後の小泉の歩みに注目していればその辺りははっきりする。デモ現場に度々出て来たり、脱原発に関する本(小泉版「不都合な真実」ってところか)なんかを出したりし始めたら、これはもう間違いないだろう。小泉が出てくればそれだけでデモの参加者は激増するだろうから、運動側も諸手を挙げて歓迎するはずだ。反原連やたんぽぽ舎なんかは特に。そうして「運動を盛んにさせた」という既成事実も作れば、小泉にとってさらに賞獲りの大きな点数稼ぎになる。仮に実現したら、佐藤栄作がノーベル賞を取った時と同じかそれ以上に反吐の出るような光景になるだろうが。
仮に小泉が「脱原発運動への貢献」でノーベル賞を獲れたとしても、そんなものに関係なく日本はますます原発の再稼動と増設・輸出に邁進する事に変わりはない。オバマがノーベル賞を獲ってもアメリカは全く核放棄しなかったように。後に残るのは、避難も許されずに福島原発の放射能でガンや白血病で殺される人々が死屍累々。まさに一将功なりて万骨枯るの典型例となるだろう。
日本の反核反原発運動の長い歴史は、3.11以後急速に腐敗・堕落・右傾化した挙げ句に、最後はそれでもわずかに残った「遺産」すら小泉の手柄の為に差し出して崩壊する。というのが最もあり得る、そして最も無残な結末なのではあるまいか。
鎌田慧や天木直人はじめとして小泉が脱原発の有望な味方になってくれると思って誉めそやしている愚劣極まりない連中は、そうした事の露払い役をしているのだという事も付け加えておく。原発に反対してるくせに怪しげな小泉の「原発ゼロ」を礼賛している者というのは、まさに「肉屋を支持する豚」そのものなのだ。
佐賀ではこういう事が起こっているらしい。
http://www.saga-s.co.jp/news/saga.0.2557628.article.html
脱原発へ国境越え連携 日韓市民団体が交流
脱原発を目指す韓国の市民団体メンバー11人が30日、東松浦郡玄海町を訪れ、玄海原発の再稼働に反対する県内の市民団体などと交流した。両国の代表が現状を報告し、アジアで脱原発を進める連携の強化を確認した。
交流会には約30人が出席し、韓国の原発立地4地区から現状を説明した。ウルジン原発の立地地区から訪れたチャン・シウォンさん(43)は福島第1原発事故が起きたにもかかわらず、さらに原発を増設する韓国政府の姿勢を批判。「世界中の原発立地地区の住民が動かないと原発は止められない」と訴えた。
玄海原発から4キロ圏内に住む玄海町の農業青木一さん(75)は「原発は人類を豊かにしてきたが、今回の事故で破滅につながることも分かった。今は原発廃止を願う気持ちでいっぱい」と話した。
交流会は、国境を越えて脱原発を進めようと県内の市民団体が主催した。一行は5日まで日本に滞在し、伊方原発(愛媛県)や広島などを訪れる予定。
これに参加した韓日双方の団体がどういう所かはくわしく分からない。ただ、地元という事からして、おそらく日本側は玄海原発の差し止め訴訟などをやっているグループ達ではなかろうか。
日本と韓国の反原発運動の連帯というのは本来ならば望ましい事だ。しかしながら前にもちょっと述べた事があるが、現状では韓日双方の運動に色々な問題があり過ぎて困難であり、むしろ悪い結果しかもたらさないであろう。
まず日本側に関して言うと、3.11以降の日本の脱原発運動は完全に腐敗堕落しきってしまい、全く頼りにならないどころか原発の延命を手助けしかねないほどだ。右翼や日の丸を容認し、被爆の回避や被災者の避難を黙殺し、原発を減らしたりなくす事よりも自分とこのデモ参加人数を増やす事しか頭にない反原連やたんぽぽ舎、原発再稼動を容認する原子力資料情報室など、有名どころは誰も彼も総崩れ状態でロクな事をしていない。
同人誌業界で言えばコミケ壁際的存在であるこうした「脱原発業界大手サークル(笑)」と違い、上記記事にあるグループ達というのはおそらく地元で地道にまともな活動をしているいわば「弱小サークル」であろう(だと思う。たぶん)。佐賀のグループ自身がいかにローカルで地道な活動してきた人達であっても、日本では「大手」の及ぼす悪影響があまりに甚大過ぎる。日本の脱原発運動は今や完全に偏狭なナショナリズム運動そのものと化している、という現実を率直に韓国側へ伝えられるかどうかが鍵だろう。反原連やたんぽぽ舎・原子力資料情報室のように悪質な確信犯とは違う真面目な運動体であっても、こうした事実をありのままに韓国へ伝えられる者は日本にはいないのではないか。個々の人やグループがいかに良心的であっても、大局的な情勢がそれらをチャラにして余りあるほど悪過ぎるという事だ。
一方で韓国の脱原発運動も内情はお寒い。今の韓国反原発運動の基本的な路線というのは「脱原発してる外国を見習え」なのだ。つまりドイツがそうだし、隣の日本でも福島の事故以来脱原発の機運が高まってる、だから韓国も…という言い方なのである。「脱原発 日本」を朝鮮語で検索すれば一発で分かるが、環境保護運動や進歩派の媒体などは3.11以降2年以上もずっとこうした事ばかり言い続けているのだ。日本で民主党野田政権から自民党安倍政権まで一貫して原発の再稼動や輸出に躍起になってきた事や、選挙で原発推進政党ばかり圧勝している事実などまるでなかったかのように。「3.11以後も日本やドイツはじめとする先進国は、むしろ原発比率を高めようとしている」という正しい現実を、東亜日報などの右派・保守派媒体の方がかえってちゃんと報道しているくらいなのだから。いわば韓国の環境運動や進歩派は「日本やドイツは脱原発に向かっている」という超美化された全くの幻想を根拠に運動をしている訳で、これは極めて危険であろう。ハンギョレはじめとする進歩派メディアは小泉純一郎の「原発ゼロ提案」を予想通り大きく取り上げていた。唯一の例外は聖公会大学の権赫泰教授ぐらいか。京都大学新聞が行なった権教授のインタビューにもあったが、
「隣りでは日本がなくしている、なくしつつあると(笑)。実際はそうじゃなくて、そういう情報が欲しいわけ。だから、韓国の反原発運動やっている連中は、日本で起こっている情報を、僕に言わせればすごくウソついている。」
「それが気に入らなくて、「違うよ」というのを書いているのだけど、そうすると「あなたは原発賛成なんですか」ということになっちゃうわけ。そういう意味じゃないのに」
という指摘は全く正しい。
権教授のインタビューは必見なので、一読をお勧めしたい。以下リンク先の前後編参照。
http://www.kyoto-up.org/archives/1779
http://www.kyoto-up.org/archives/1811
要するに韓国も日本も、どちらの脱原発運動も大いに問題があり過ぎ、現時点で両者の連帯とやらはマイナスの結果しか生まないのではないかと思う。日本の運動はとうに原発の延命に加担する「国粋主義御用運動」へと変質しており、韓国ではそれについて「脱原発の機運が盛り上がってる」と嘘ついて運動に利用する。これが本格的に結び付いた時ほど恐いものはない。
韓国でも日本でも反原発運動にとって今大事なのは、国際連帯という美名の下に「海外進出」する事ではなく、自国の運動方針と国内の問題を徹底的に正す事ではないか。そちらが最優先だ。
どんな環境運動でもそれが本物かどうかを簡単に見定める物差しというものがある。その一つが「シンクグローバリー、アクトローカリー」すなわち「地球的視点で考え、地域で活動する」という事だ。今の韓日脱原発運動が果たしてこの物差しに合致していると言えるだろうか?
1)安倍晋三や菅義偉でも引退したら「脱原発」を言うだろう
小泉純一郎が脱原発を公然と表明した事が、ある種の人々の間で好意的に受け止められているようだ。要するに小泉までもが脱原発を明言してくれた、これは運動に大きな力になるぞ、という「期待感」なのだろう。典型例が世田谷区長の保坂展人だ。
https://twitter.com/hosakanobuto/status/385187600618627072
保坂展人@hosakanobuto
小泉純一郎元首相が「原発ゼロ」を各地の講演で主張。「これまで推進一辺倒だった彼にその資格はない」「またパフォーマンスを応援するのか」という類の声に驚く。私は、3・11以後の日本が脱原発を選択するという結果をつくることを最優先する。
2013年10月1日 - 16:40
まさに小泉の「原発ゼロ」発言は脱原発にとって100万の味方に等しい、というのが保坂らの認識なのだろう。つまりそれに疑いや異を唱える「影響力のないザコども」のような人間などは運動から切り捨てるという、排除の論理そのものだ。小泉のような「人気者」ばかりをもてはやす、今の脱原発運動の現状を良く表わす典型例と言えるだろう。
だが、小泉の「原発ゼロ」はそんなに素晴らしいものなのか? 脱原発運動にプラスになるものなのか?
政治家というのは身も蓋もない言い方をすれば「人気商売」の側面が強い(もちろん社民党の保坂と言えども例外ではない)。ましてや小泉純一郎ともなれば、大衆迎合・人気取りのセンスに関してのみ言えば他者の追随を許さない大天才と言って良いだろう。そして今の原発に対する世論はどうなのか? 大飯原発再稼動の時の世論調査では反対が58%という結果があったが、これは今も大きく変わってはおらず、これをそのまま今の原発反対率とみなしても差し支えないだろう。つまり「原発反対」は今の日本において世論調査の上ではとうに「多数派」だという事だ。だから「バスに乗り遅れたくない者」であれば、本音を隠して機会主義的にいくらでも「脱原発」を唱える。統一戦線義勇軍のような「右翼の脱原発」は典型的な例であるし、ましてや議員引退した小泉のように「フリー」な立場であれば人気取りの為に躊躇はしない。安倍晋三や菅義偉のように現政権で原発推進に邁進している者であっても、議員を引退すれば個人的人気取りと自己正当化の為にやはり「脱原発」を平然と口にするだろう。かつて盗聴法や国旗国家法や周辺事態法などの悪法をさんざん成立させた野中広務が、引退後にどれだけキレイ言ばかり並べ立てているかは良い前例ではないか。
問題はこの手の連中が現役の首相や大臣だった時に何をやったかなのだ。小泉は「原発ゼロ」などと平然と言うが、自身が首相時代に原発を推進した事に対して反省や謝罪の弁は一言もない。自分の私財を全て福島の被災者の為に投げ出すくらいの事をしたらまだある程度本気なのだと見る事も出来るが、そんな事は全くしていないだろう? こんなものを信用する方が馬鹿げている。
小泉の「原発ゼロ」宣言とやらを受け入れても、原発を本当に廃絶するのに何の足しにもならないどころか、悪影響しか及ぼさない。「影響力のある人気者(と思われている)」小泉一人が入る事で、その他もっと多くの「影響力のない」人々が反原発運動から排除される。
日本で原発に反対する世論の方が高くなったのは、言うまでもなく福島原発事故の結果だ。それ以前は反対・賛成以前に、ほとんどの日本人が原発について興味などなかったのだから。原発問題が社会的に大きな話題にならなかった時代、あるいは仮に原発推進世論の方が高い社会状況で、果たして小泉純一郎や統一戦線義勇軍が原発に反対したと思う?
これは近頃の「反レイシズム運動」にも同じ事が言える。在特会が醜悪かつ派手に騒いで社会的に嫌悪された。正確な統計はないが、今はたぶん在特会を嫌う世論の方が高いだろう。「脱原発」と同じで、世論的には「反在特会」の方が優勢なのだ。だから「バスに乗り遅れたくない機会主義者」ほど人気取りの為だけに「反レイシズム運動」とやらに殺到する。
在特会にまださほど世間の視線が集まっておらず社会的話題にならなかった頃に、野間易通だの木野トシキだのどこのヤクザとも知れぬ「男組」だのが、「反レイシズム運動」とやらをやったと思う?
この手の連中のツイッターなど見ていると在特会と全く同じ差別発言を繰り返しており、両者に違いなどほとんどない。違いがあるとしたら社会的な多数派世論を見抜いて人気取りするのがうまいか下手かというだけだ。
脱原発の世論が過半数超えようが原発再稼動は止められなかったし、原発推進政党ばかりが選挙で勝った。在特会を嫌悪する風潮が高まっても日本の民族差別政策は何一つ変わらなかったし、差別推進・過去の戦争犯罪や植民地支配を正当化する政党ばかりが選挙で勝った。小泉や野間のような人間が英雄のように祭り上げられる国の脱原発や反レイシズムなどその程度のまがい物だという事だ。それを礼賛する保坂展人も同様。真に日本から原発や差別をなくそうと思ったら、今のこうした有害無益な運動や集団がとりあえず滅んでくれた方が望ましいだろう。
2)山本夜羽音という漫画家について
脱原発運動界隈で統一戦線義勇軍の参加を礼賛・擁護している山本夜羽音(やまもと・よはね)という漫画家がいる。左翼崩れのエロ漫画家で、表現規制反対運動などにもしばしば参加していたと思う。それが今は「本業」のはずの漫画業よりも脱原発関係の市民運動界隈で鼻息が荒い。それも統一戦線義勇軍の脱原発運動参加を後押しして「右も左もない脱原発運動」の旗振り役をしながらフィクサー気取りで、それに反対する者を「ヘサヨ」呼ばわりして攻撃・排除しながら偉そうにしている。恐らく山本は「右に理解のある自分こそ度量のある真正左派」とでも思っているのだろう。要するに、統一戦線義勇軍という暴力派をケツモチにして「運動圏」で大きな顔をしているだけだ。所詮は虎の威を借りる狐に過ぎず、こうしたヤクザっぽい暴力集団を利用したつもりで有頂天になっている者は、最終的に必ずしっぺ返しを食うものと相場が決まっている。最終的には稲川会によって食い物にされた東京佐川急便元社長・渡辺広康のように。渡辺も稲川会と組んで一時期は政財界のフィクサー気取りだったが、そうした稲川会への「借り」のせいで後にさんざん金を搾り取られて骨の髄までしゃぶられた。山本のフィクサーぶりなど渡辺とは比較にならないちっぽけなレベルだが、やってる事は本質的に同じであり、この元左翼の漫画家も堕落した挙げ句にやがてそうした末路をたどるのは必定だろう。
それはそうと、山本夜羽音のような者がこうした運動圏、つまり「政治」にやたら首を突っ込みたがるのは本人の左翼志向・政治好きに加えて、「本業」のはずの漫画が不振であるからだ。この男は長い事コミケにも出てキャリアだけはそれなりに長いが、漫画家としては全くうだつが上がらない。それもそのはずで絵が古臭く、全然進歩がないのだから。今時あんな森山塔の劣化コピーみたいな絵柄のエロ漫画読んで喜ぶ奴いるの? 80年代ならともかく。本業が駄目だから政治に行くという、要するにやしきたかじんの左バージョンという事だ。もっともそれでも大して売れてないのだから、山本はそうした面でもたかじんにすら及んでいない訳だが…。
山本が礼賛する統一戦線義勇軍の針谷大輔は朝鮮人に対する差別用語を平気で言いまくり、従軍慰安婦や南京大虐殺の存在すら否定している。そんな者とベタベタどころか「ケツモチ」になってもらっている人間が、「関東大震災の朝鮮人・中国人虐殺を忘れないプラカード」だと? これは一体何の悪い冗談なのか。山本のような人間にそのような事を口にする資格などない。それ以前に右翼をケツモチの用心棒代わりにしてる左翼って何?
山本夜羽音という男は本来ならすっぱりと左翼をやめて右翼になるべき人間だった。統一戦線義勇軍とくっついてるぐらいなのだから、それこそいっそ小林よしのりのように一番右の皇国史観まで行ってしまった方が整合性がある。だがそれでもまだ左翼に未練が少しはあるのか完全な転向が出来ず、「右も左もない脱原発」などというハンパな事しか出来ないのだろう。統一戦線義勇軍のような暴力派の名を出していきがるのもそうした小心さの表れではないか。「俺の後ろには何某組がついてるんだぞ」と強がるチンピラのように。そういえば小林よしのりも昔はよく「自分は一水会の鈴木邦男と仲が良いんだ」という事を窮地に立たされる度に言ってたよなあ…。
今のように「右も左もない」運動が公認される世の中というのは、山本のような転向する事すら出来ないハンパ者の左翼崩れにとっては比較的住み易い情勢なのかもしれないが。
山本は元より漫画家としては3流以下なのだから、それで売ろうと思ったらやはり右に行ったり権力の広報マンになるしかない訳である。だが「左」への未練を完全に断ち切れないハンパ者の為にそうした事も出来ず、未練がましく「運動圏」に留まって右翼団体の威を借りて偉そうにするのが関の山だった。結局山本夜羽音という男は、小林よしのりはおろかさかもと未明にすらなれなかった「脱落者」なのである。全てがハンパ過ぎたのだ。
山本がこの先、今よりも売れる、出世する可能性はあるだろうか?
ある! 繰り返すがやはりきっちり転向を遂げられるかどうかがポイントで、今からでも遅くはあるまい。やっぱ中途半端に左ぶるのは良くないよ。切磋琢磨すれば小林よしのりややしきたかじんには及ばずとも「さかもと未明クローン」ぐらいの水準にはまだ何とかなれるかもしれない。それでも今の山本の立場よりは大出世さ!
そんな山本の為に、筆者が良いサンプルを教えてあげよう。日本文芸社から出てる別冊漫画ゴラク(笑)なんてどうだ? 今やすっかり「日本一の右翼漫画雑誌」の地位を確立させた同誌は、これから「鬼畜系右翼絵解き芸人」を目指す若者のこの上ないお手本になる事だろう! 山本よ、平松先生(笑)の漫画でもしっかりコンビニで立ち読みして、一層漫画家としての研鑽に励むが良い! それでこそ統一戦線義勇軍と組む甲斐があるってもんだ!
韓国には国史編纂委員会という政府機関がある。これは教育部(日本の文科省に相当)に所属する機関だが、そこの委員長(任期3年)は省庁の事務次官と同格とされているので、これが韓国でどれだけ重要な委員会とみなされているかが伺えるだろう。韓国では歴史教科書の検定もここがやるのだから。で、ここの委員長は大統領が任命する…と言った時点で多分読者の9割くらいは、今回の話のオチが読めたものと思う。朴槿恵大統領の指名した新しい国史編纂委員会委員長は柳永益(유영익 ユ・ヨンイッ)という人物であった…。
朴槿恵が起用したという事実だけでこの柳永益という男がどんな学者かほぼ説明不要と思われるが、一応念の為に簡単に説明しておく。
柳永益は現在韓東大学の教授であり、専門は歴史学。そのスタンスは当人の発言を見れば容易に分かるだろう。以下に柳教授の実にありがたい歴史学語録を適当に要約して列挙する。
「李承晩は有能な独立運動家にして大韓民国の設計者兼外交家。その業績は少なくとも功7:罪3」
「李承晩は李朝の太宗王、秦始皇帝、モーゼと並ぶ偉人」
「韓国は日本のおかげで民衆革命を経ずに民主共和制政府を樹立出来るようになった」
「日帝植民地統治は解放後韓国の経済発展に相当重要な影響を及ぼした」
「日帝の土地調査事業のおかげで我が国の近代的な土地制度が確立した」
「日帝のおかげで韓国の女性の社会的地位は向上した」
「従軍慰安婦は強制動員ではなく、自発的な海外就業のようなもの」
「最近の韓国中学校の歴史教科書はスターリン、金日成、朴憲永の共有する歴史観に立脚して書かれている」
日帝の植民地支配を正当化する典型的な「植民地近代化論」という奴だ。もちろん朴裕河の言う「日韓和解」とやらもこれの亜流というか同類そのものである。
また柳永益の所属する「韓国現代史学会」という所は「左派または親北性向に歪曲された現代史研究を正し、青少年に正しい知識を伝達する」という趣旨で創立され、活動しているそうな。つい先日ここは韓国史教科書を出して検定に通ったものの、内容があまりに親日・独裁政権美化に偏って大きな反発を受けた上に、ウィキペディアからネタをパクって来た疑惑まで提議されて大問題になっている。挙げ句には執筆者6人のうち3人が自分らを著者の中から外してくれと希望するなど執筆陣の間で内ゲバが起こり、どこぞの国の歴史教科書制作団体みたいな様相を呈し始めた。
他にもこの団体とその関係者は「全教組(韓国の教職員組合。最近朴槿恵政権によって「不法労組」よばわりされて弾圧の矢面に晒されている)によって歪曲された歴史教育に憤慨しており、教師達を再教育する資料を作らねばならない」「今は左派陣営が言論・芸術・出版・学界・芸能界の6-7割を占拠している」「既存の歴史教科書は自虐史観に染まっている」などといった発言を繰り返している。知らない人は驚くかもしれないが、韓国のこうしたニューライト系歴史学者達は冗談でなく本当に「自虐史観克服」とか日常的に言っているのだ。
これまたどこぞの国の歴史教科書制作団体でもおなじみの光景なので、日本にいる我々は非常に嫌なデジャビュを感じてしまう。この手の連中はどこの国でも全く同じ事をしでかす。
早い話、今回の韓国の人事を日本に例えると、安倍首相直々の指名で藤岡信勝や八木秀次が文部科学省の副大臣だか政務官に抜擢されるようなものだ。八木も安倍の引き立てで教育再生会議とか教育再生機構などの要職にしてもらってるが、これらは飽くまで財団法人や私的諮問機関であり、さすがに次官級の地位それも教科書検定権限のあるポストではない。でも朴槿恵は本当にそれをやっちゃった訳で、しかもそれが通ってしまうのが韓国のセヌリ党保守政権なのだ。藤岡や八木らはこのニュースを聞いて、まず間違いなく次のように思っている事だろう。
「なんだよぉ。『韓国版俺達』は次官級の高位職、それも教科書検定権限が実際にある地位に就いてるじゃねえかよぉ。安倍総理よぉ、俺らにももっといいポストくれよぉ」
右傾化という観点で言えば、もはや韓国政府は日本政府のはるか先を行っているかもしれない。さすが朴槿恵。俺達に出来ない事を平然とやってのける。でもそんな所にシビれないし、憧れない。でもシビれて憧れちゃうボケた奴が同胞の中にもいるんだよね…。困ったもんだ。
安倍晋三は日帝植民地支配の犯罪を否定し、朴槿恵も植民地支配の歴史を美化してやっている。日本政府も韓国政府も「仲良くお互いの歴史的立場を尊重」して、こうした歴史歪曲と植民地支配の正当化・美化作業を「共同」で行なっているのである。見事なチームワーク!
先日の「東京大行進」にせよ、訳の分からん「のりこえねっと」とかいう「立憲主義的護憲運動」の商売替えバージョン(「のりこえ」と「立憲」ってメンバーほとんどダブってない?)といい、日本側の「反レイシズム運動」とやらが在特会だけをわざとらしく攻撃するだけでそうした醜悪な現実から目を背けさせる事が出来るのだから簡単だ。ついでに韓国側からの歴史清算を求める「反日運動」もまとめて「バカみたいな人(by 辛淑玉)」として切り捨てられるのだから、まさに一石二鳥、雉も卵も食べたという話である。辛淑玉の言う「バカみたいな人」とやらが過激な「反日運動」を指しているのは明白であろう。この手の「反レイシズム運動」が日韓両政府の「歴史歪曲・忘却共犯同盟関係」の補完勢力である事を我々は強く認識しておかねばならない。
「韓国のバカみたいな人-日本のバカみたいな人が絡み合って両国関係を難しくしている」のではない。現実には日韓の「真のバカみたいな人」達が両国の(犯罪的)友好関係の絆をより強く頑丈なものにしている最中なのである。両国関係はちっとも難しくなどなく、むしろ日を追う毎に簡単明瞭な癒着・共犯関係が強まっているのだ。もちろんその「真のバカみたいな人」の中には安倍晋三や朴槿恵・柳永益らに加えて、辛淑玉や佐高信・鈴木邦男ら「のりこえねっと」の面々も含まれている事は言うまでもない。
2012年に連載されてオーマイニュース史上最高の閲覧回数を記録した人気記事「在米同胞おばさん北朝鮮へ行く 재미동포 아줌마 북한에 가다」の続編記事が連載開始したのでお知らせしたいと思います。タイトルは「在米同胞おばさん、また北朝鮮へ行く 재미동포 아줌마 또 북한에 가다」。
http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0001908485&PAGE_CD=N0001&CMPT_CD=M0019
「平壌へ行く」と言ったら、北朝鮮の女性が私の手をむんずと…
「在米同胞おばさん、また北朝鮮へ行く1 養女・養甥と会いに平壌へ行く道」(韓国語記事)
著者のシン・ウンミ氏と夫のチョン・テイル氏夫婦は今年になって再び朝鮮民主主義人民共和国へ旅行に行きました。前回から1年が過ぎて、果たして向こうの状況はどうなっているのか。他のニュースで日本にも一部断片的に伝わってはいますが、先代の金正日政権末期から今の金正恩時代にかけての朝鮮社会の変化は著しく、1年過ぎただけで激変しているようです。仮に5年・10年前に脱北した人間が戻ったら間違いなく浦島太郎状態でしょう。どこぞの「脱北操り人形アイドル」の言ってる事なんか古過ぎて、朝鮮の現状を考えるのには全く参考になりません。あんなのに協力したり褒めたりしてるのはよほど悪質な奴か馬鹿です。
それはともかく、朝鮮の現状を知る上でも重要なレポートであり、朝鮮語の読める方はぜひ読んでいただければと思います。出来れば日本語でお読みいただきたいと思うのですが、筆者も今はあまり時間がないので訳す暇が…。
何度も指摘してきましたが、近頃のオーマイニュースは記事毎の落差が激しく、こういう良い記事もある反面で統合進歩党への弾圧を煽るような記事も載ってたりして、会社としてのスタンスのブレが激しすぎるでしょう。もうちょっと何とかならないのかと思いますが…。
まだ御覧になってない方の為に以前の連載記事「在米同胞おばさん北朝鮮へ行く 재미 동포 아주마 북한에 간다」の記事一覧アドレスも載せておきます。併せてお読みいただければ、より面白く読めるでしょう。
http://www.ohmynews.com/NWS_Web/Issue/series_pg.aspx?srscd=0000011008
在米同胞おばさん、北朝鮮へ行く 記事一覧(韓国語記事)
それと、閉鎖された旧ブログで書いた関連記事も以下に再掲しておきますので御参考までに。
【その1】
オーマイニュースで連載していた北朝鮮旅行記を推薦
日本で全く話題にならず知られてもいないのは仕方がない事なのだが、韓国のインターネット新聞オーマイニュースで約3ヶ月に亘って連載された北朝鮮旅行記が向こうでは結構人気を集めて話題になっている。この記事の題名は「在米同胞おばさん、北朝鮮へ行く」と言い、著者は米カリフォルニア在住で音大の声楽教授を務めた事もあるシン・ウンミ氏。2011年に訪朝した旅行体験をまとめたものだ。以下にリンク先を記す。
http://www.ohmynews.com/NWS_Web/Issue/series_pg.aspx?srscd=0000011008
在米同胞おばさん、北朝鮮へ行く 記事一覧(韓国語記事)
最近のオーマイニュースでは記事閲覧数でダントツトップだったという人気連載で、著者は実家の用事でちょうど今韓国に来ている最中だが、様々なメディアからの取材や講演に引っ張りだこという。オーマイニュースの著者連載終了記念インタビュー記事もある。
http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0001792979&PAGE_CD=ET000&BLCK_NO=1&CMPT_CD=T0000
「好奇心で発った北朝鮮旅行、人生を変えました」
インタビュー1 「在米同胞おばさん、北朝鮮へ行く」連載を終えたシン・ウンミ氏夫婦
韓国語記事なので素で読める方は限定されるが、それでも朝鮮語の分かる方にはぜひ読んで欲しいと思う。大体の内容だけなら一応機械翻訳でも分からない事はない(ただし固有名詞や方言などが全滅するので、その点は注意)ので、一読の価値はある。本来なら筆者が翻訳記事にして載せたい所だが、最近忙しくてそこまで手が回らないのがもどかしい。
これは日本で蔓延している北朝鮮への悪意や軍事的脅威を煽るだけの「アジアプレス的アジビラ」とは全く違う、かなり客観的な現地レポートとして高い評価が与えられるだろう。単なる観光ルートだけでなく、現地住民の貧しい姿なども著者は心を痛めつつ客観的に記していた。一方で中国やロシアとの「北方開放」によって少しずつだが経済発展や開発が進む有様も見所であり、近年の北朝鮮関連記事としては最も面白く有益なものと思う。金正日政権末期から今に至る北朝鮮社会の激変は著しい。その一端をぜひこの記事で知っていただきたいと思う。
また、この連載記事を書いた著者の暖かい視線もまた読む側の心を打つ。朝鮮人・韓国人であれば、古臭い言葉かもしれないが著者の「民族愛」というものを行間から容易く読み取れるであろう。
韓国では11月に書籍化が決定しており、筆者も楽しみにしている。刊行されれば日本でも高麗書林で容易に入手出来るだろう。実際、この本は韓国以上に日本人にこそ読まれるべき本だと思う。果たしてこの本を出そうという出版社は現れるだろうか。もちろん出版社ならどこでも良いという訳ではないが。
最近ひどい記事が載る事も多いオーマイニュースだが、その中では良好なヒット記事だったと思う。韓国の進歩派メディアは初心忘れるべからず、こうした良質な記事を乗せる事に気を使い、右傾化の過ちを悟って、あるべき報道スタンスに立ち戻る事が重要だという事もこの記事は思い知らせてくれる。
【その2】
オーマイニュースの北朝鮮旅行記の書籍化情報
前に紹介したオーマイニュースの人気連載「在米同胞おばさん北朝鮮へ行く」の書籍化が詳しく決まりました。
「在米同胞おばさん北朝鮮へ行く」
シン・ウンミ 著
四葉のクローバー社 刊
2012年11月22日発行予定
15300ウォン
こちらは韓国の本屋・教保文庫の初回特典付き予約ページ
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水道橋の高麗書林に問い合わせた所、日本への取り寄せの場合税込で2856円、発送の場合は別途送料420円、12月中旬入荷予定との事です。御興味のある方はぜひ御予約を。
(高麗書林の注文頁はこちらを参照)
以前述べたように、近年における北朝鮮現地レポートとの中では出色の出来と言うべき傑作記事であり、直近の北朝鮮情勢を知る上でも貴重な資料と言えます。著者のシン・ウンミ氏は自ら告白していたように元々韓国で徹底した反共教育を受けて育った世代という事もあって、今回の旅行に行くまでは保守的な反共主義者でした。4年前のアメリカ大統領選挙では対朝強硬派であるマケインに投票したほどです。しかし、その頑迷な反共主義者が実際に北朝鮮へ行ってありのままの姿を見て考えを改め、民族的自覚を持つようになった経緯は何を物語っているでしょうか。
とりわけ在日朝鮮人の立場から思うのは、近年の在日社会では日本社会やある種の日本人の俗情へ露骨に迎合して自身の栄達をだけ図ろうとする著名人があまりに多いという事です。「竹島密約の知恵に学べ」とかいう「21世紀版・内鮮一体」としか思えない戯言を述べた姜誠(岩波書店の「世界」2012年11月号参照)や、「自分はいかに北朝鮮に抵抗し、そのおかげで出入禁止を食らったか」という事を勲章のようにひけらかして日本の左派右派問わぬ反北朝鮮勢力・民族差別主義勢力へゴマをすって取り入ろうと死に物狂いな梁英姫(「ディア・ピョンヤン」の監督で、今やほとんど日本の反北朝鮮勢力・好戦勢力のアイドル(ずいぶんトウが立ったアイドルだが)と化している。姜誠と梁英姫については後日改めて徹底的に批判したい)などは最近でも特に露骨な事例でしょう。さらに最近の姜尚中の言説にいたってはもはやカルト宗教家の領域に入っちゃってますよ。「悩む力」とか、マルクスが言う所の「現実社会の苦痛を忘れさせる麻薬(宗教はアヘンである)」としての宗教悪用そのものです。おまえは五木寛之(大河の一滴)か! こうした日本社会の俗情に迎合的な在日達(ネオ親日派とも言う)に最も共通しているのは、連中は誰も彼も口を揃えて「民族と国境を越える」「ナショナリズムの克服」というスローガンを語る事でしょう。このような言い草は、日本人に同化して日帝の侵略被害者という自身の存在意義を真っ向から否定するものでしかありません。
日本にいる朝鮮人・韓国人では本国の統一を否定し、民族とその和解を否定し、自己の存在意義をも否定して日本人への同化の道を好んで歩もうとしている例が目立ち始める一方、アメリカの朝鮮人・韓国人には逆に反共主義と民族対立・分断主義から一転して、民族主義・民族愛に目覚める例が目立ち始めているという現象をいかに見るべきなのか? 事実、最近の在米韓人社会では本書著者に限らず、北朝鮮へ頻繁に往来して文化・学術などの交流へ積極的に乗り出す事例が急増しており、これからの南北平和や統一運動には在米韓国人社会の寄与がますます大きくなっていくでしょう。
実際には「民族と国境を越える」と言ってグローバルぶった顔をしているある種の在日達こそ、変化の最中にある北朝鮮にすら目を向けるどころか、差別主義的な日本人に対して「自分はこんなに北朝鮮と敵対している立場なんです。だから仲間にして」と媚び、日本に引きこもっているではありませんか。こいつらのどこらへんが「民族と国境を越え」ているのか! むしろ民族主義に開眼した在米の方が立派に国境を越えて大活躍しているのが現実でしょう。
日本の場合、北朝鮮への各種制裁で出入国はおろか、物の持ち出しや持ち込みすらまともに出来ない政治的環境も大きいですが、だったらなおさら在日は民族性を失わずに堅持してがんばらねばなりません。姜誠や梁英姫のようなネオ親日派達が跋扈する状況こそ憂うべきであり、これらを撃つべきなのです。民族を捨てたり「越える」のではなく、それを守る事にしか在日の未来はありません。
在米同胞の、それも反共主義に染まっていた一介のおばさんが北朝鮮を訪問し、現地の楽しい観光地を回って楽しみながらも、同時に現地の困難な状況や苦しみを実際に見て民族と統一に目覚めた姿が読者の胸を打ちます。これは本国はもちろん在日にとっても必読の書ですが、加えて日本人にも絶対に読まれるべき内容であるという事は改めて強調せねばなりません。はっきり言って今の日本における対朝鮮認識というのは、「北には角を生やした鬼が住んでいる」と真面目に学校で教えていた80年代以前の韓国よりもひどいと思います。そうした認識を改めさせる意味でもどうにかしてお読みいただきたいのですが、翻訳…。
御参考までに、以下に本書の出版社書評を訳して掲載します。
出版社書評
この世で唯一韓国人だけが行けない国、北朝鮮
在米同胞おばさんは北朝鮮へ行く事にした
―我々と同じ平凡なおばさんの心を動かした我々のもう片方の国のお話
この世で唯一韓国人だけが行けない国がある。まさに北朝鮮が。顔の作りも、肌の色も、言語も同じだが韓国国籍の人だけには許されない地だ。それでも外国国籍を持った同胞には観光が許されるというから、幸いだからと胸をなでおろすには悲しすぎる現実である。当たり前のように1年で数10種の旅行記と旅行案内書が出版される今日だが、数多くの旅行記の中で北朝鮮旅行記はない。ニュースと新聞政治面を除けばあふれる情報の中でいざ我々のもう片側の国、北朝鮮に対して、その中で我が同胞達がどのように暮らしているかを知る事は出来ない。
「在米同胞おばさん北朝鮮へ行く」は在米同胞おばさんが書いた旅行記だ。北朝鮮はもちろん北朝鮮に暮らす人々にも全く関心のなかった著者が北朝鮮の人々に心を開くようになり、彼らの悲しみを共に分かち合えるようになる過程が込められている。民族や統一の問題は他国の話とばかりに聞き飛ばしていた著者が初めてもう片側の国の悲しみに涙を流し、失郷民の事由に胸を痛め、貧しい同胞を思って眠れなくなった話であり、ただ我々と同じ平凡なおばさんの心を動かした我々のもう片方の国の話、同胞達の話だ。
私の生涯でもっとも悲しくも美しき旅行
貧しくも美しき人々の暮らしている場所
―「彼らは我々とどれだけ違うか」と出発したが、「これほど同じとは」という事だけを確認して帰って来た旅行
「在米同胞おばさん北朝鮮へ行く」は2011年10月、2012年4月と5月の全3回にかけて北朝鮮全域を旅行して、その話を整理して本にまとめたものだ。だが当初は本の出版は念頭になかった。本はおろか、著者にとって北朝鮮旅行は気乗りのしない旅行だった。最初は夫が行こうと言うのでさしたる考えもなしに旅行を準備して、後には「一体北の人々は我々とどれだけ違うか」一度確認でもしてみようという気持ちで旅行カバンを荷造りした。だがいざ北朝鮮の地に到着して確めたのは「どうして我々とこれほどまでに同じなのか」だった。勤務中に、付き合っている彼氏の電話ににっこりと顔に笑いを浮かべる実の娘のようなガイドの姿は、異質と言うよりも韓国にいる自分の従姉妹、姪の姿そのままであった。遺跡の地では同じ歴史を持った同じ同胞である事を再び確認出来たし、どこへ行っても同じ同胞だと笑ってくれて声を掛けてくれる人々は確かに情け深い我が父、我が母の姿であった。このように著者は北朝鮮旅行を通じて「どれだけ違うか」ならぬ「これほどまでに同じか」だけを確認する事が出来た。そうした最中に分断された祖国の現実が目に入り、分かれて他国の人達よりも遠ざかった民族の悲劇を初めて気付く事になる。そしてその間祖国に、同胞に無関心であった自らを反省する事になった。
この本はこのように、著者が北朝鮮旅行を通じて悟った、かつては何の考えもなかった自分について自ら告白して反省したい気持ちから始まった。自身が目撃した北朝鮮のありのままの姿を見せたい気持ちで旅をし、見て感じた所を率直に日記を書くがごとく文章に整理し、写真を選んでインターネット新聞に連載し始めたものである。
南と北の幼い子供達が育って
銃口を向け合う悲劇がこれからはもう終わる事を願って…
―「この旅行記を読んで一人でも民族と統一に関心を持ってくれる事を願います」
「在米同胞おばさん、北朝鮮へ行く」という題名でインターネット新聞オーマイニュースに30回に亘って連載されたこの文章は、毎回ほぼ数10万回の閲覧数を記録するほど人気が高かった。他の連載記事に比べても段違いに差が出るほどだ。これだけではない。著者へ個人的にメッセージやメールを送った数も閲覧数に比例して多かったという。その中には非難をする文もあったが、大部分は著者の文に感動し、共に悲しむ文章達であった。失郷民や離散家族の方々の哀切な事情も多かった。分断の悲劇をそのまま背負って暮らす方々が今でも多い。著者が本を出版する事に決めたのは、この方々の事情と激励が大きな役割を果たした。
本を出版しながら著者に願いがあるとするなら、自身の北朝鮮旅行記を読んで一人でも民族と統一に関心を持ってくれればという事である。そして南と北の幼い子供達が育って、これ以上は銃口を向け合う悲劇が終わって欲しいという事だ。この本がその一歩に、南と北が疎通出来る初の契機になってくれるだろう。
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