・日経
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24HBZ_U5A720C1CR8000/
戦時中の中国人強制連行 三菱マテリアルが「賠償金」
8月にも和解か
2015/7/24 23:19
【北京=山田周平】三菱マテリアルが戦時中に中国人を日本に強制連行し、元労働者らが謝罪と損害賠償を求めて中国で訴訟を起こしている問題で、元労働者側の支援団体は24日、同社と8月にも和解するとの見通しを明らかにした。同社が示したとする「謝罪文」を公開し、被害者1人当たり10万元(約200万円)の賠償金支払いで基本合意したと説明している。
支援団体「中国民間対日賠償請求連合会」が同日、北京で中国メディアを対象に記者会見を開き、謝罪文を公開した。中国の通信社、中国新聞社(電子版)が伝えた。河北省と山東省で裁判を起こした原告団で構成する「日本に強制連行された中国労働者連絡会」に示した謝罪文だという。
謝罪文は日本語で、三菱マテリアルの前身の企業が「3765人の中国人労働者に劣悪な条件下で労働を強いた。722人が亡くなった。労働者と遺族に謝罪の意を表する」と表明。賠償のための基金設立や記念碑建立に同意したとしている。
同連合会の童増会長によると、三菱マテリアルは1人当たり10万元の賠償金支払いに応じる考え。両者は2014年6月に和解交渉を始め、謝罪や賠償などの条件で基本合意に達したという。
三菱マテリアル広報・IR部の話 係争中の案件につきコメントは差し控える。
・同日の三菱マテリアルのホームページ
http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/01/03/2015-0724.html
2015年7月24日
本日の一部報道について
本日一部報道機関において、当社が元中国人労働者やその遺族と和解する方針を固めたとの報道がございましたが、当社が発表したものではありません。
報道された案件について現在、さまざまな話し合いを含め検討を行っていることは事実ですが、現時点において決定した事実はございません。開示すべき事項を決定した場合には、速やかにお知らせいたします。
以 上
・ハンギョレ
http://japan.hani.co.kr/arti/international/21459.html
中国人強制労働被害者「三菱と補償合意していない」
登録 : 2015.07.26 23:34 修正 : 2015.07.27 06:49
第2次世界大戦当時の中国人強制労働被害者が25日、日本の三菱マテリアルとの謝罪と補償問題について合意してないと主張した。三菱マテリアル側も、この問題について「決定された事実はない」と否定した。三菱マテリアルとこの会社で強制労働させられた元中国人労働者たちとの間で、謝罪と補償問題は当分の間難航を続けるものと見られる。
「第2次大戦強制労働に関連する対日本賠償事件弁護士団」は24日夜に声明を出し、「私たちは、三菱側と補償と謝罪について全く合意していない」と明らかにした。共同通信は23日、「三菱マテリアルが第2次大戦中にこの会社で強制労働した中国人被害者3765人に1人当り200万円の補償金を支給して謝罪することで、中国側と合意した」と報じた。
弁護団団長を務めているカン・ジェン弁護士は25日、官営『中国の声』とのインタビューで、「三菱が支給することにしたという補償金は、犠牲に比べ少なすぎる金額であり、謝罪声明も言語遊びに過ぎない」とし「多数の強制労働被害者と遺族は合意報道を見て、非常に困惑しており、怒りを感じている。(私たちが弁護を引き受けた被害者と遺族以外の)一部の人々はいわゆる和解協議を受け入れるかもしれないが、私たちではない」と述べた。カン弁護士は第2次大戦当時、三菱マテリアル側に強制労働された37人の中国人被害者訴訟の代理人を務めている。彼は「中国の民間対日賠償連合会が24日、事前に出した三菱マテリアル側の謝罪文によると、この会社は『使用者としての責任を負う』としたが、これは雇用関係ではなく、一方は強制連行したのであり、他方は奴隷だったのだ」と述べた。
三菱マテリアル側も合意を否定した。同社は24日、自社ホームページを通じて「当社が元中国人労働者やその遺族と和解する方針を固めたとの報道があったが、当社が発表したものではない」とし、「現在、さまざまな話し合いを含め検討を行っていることは事実だが、現時点において決定した事実はない」との立場を示した。
・中央日報系のテレビ局JTBC
http://news.jtbc.joins.com/html/037/NB10977037.html
中国人被害者「三菱の謝罪は受け入れられない」反発(原文は韓国語記事)
[JTBC]入力2015.07.26 20:57
[アンカー]
最近日本の三菱マテリアルが、第2次世界大戦当時に強制徴用された中国人達に謝罪と補償をするという意思を明らかにしました。ですが、中国人被害者達が受け入れられないとして反発して出ました。
パッ・サンオッ記者です。
[記者]
中国人強制労働者達が三菱の謝罪と被害補償に対する立場を打ち出しました。
強制労働者側側弁護団は「三菱関連の報道に接して多くの労働者達が怒った」とし「和解協議を受け入れられない」と明らかにしました。
謝罪に真正さがないばかりか、補償額もあまりに少ないという事です。
三菱側が提示した補償金は一人辺り10万元、韓国の額で約1800万ウォン(約198万円)程度になります。
反面、弁護団はこの金額の3倍ほどである一人辺り30万元、約5600万ウォン(約594万円)を提示しています。
謝罪文の所々にある「言葉遊び」も反発を呼びました。
三菱の「使用者として責任を取る」という表現に対して中国被害者達は「我々は雇用関係ではなく、強制的に捕まった奴隷だった」指摘し、三菱が「賠償」の代わりに「中日友好基金」と表現した事にも不快感を露にしました。
こうした中、中国のインターネットには三菱が肝心な韓国人強制被害者に対しては謝罪しない事に対して「強盗論理」という批判が相次ぎもしました。
前回の記事を書いた直後に判明した事柄を以上列挙した。結局三菱の中国に対する「謝罪・補償」も決して本気ではなく、アメリカへの謝罪だけが日本の本心だったとみなすべきだろう。筆者が当初考えていた以上に日本の「吐剛茹柔」ぶりと加害責任の拒否はもっと酷かったという事だ。
また、三菱の中国への「謝罪」はまさに従軍慰安婦の時の「国民基金」と全く同じであり、被害者を分断する狙いが濃厚である。名前からして「中日友好基金」というのはあまりに露骨すぎるし、日経の記事で三菱側の「謝罪文」とやらを発表した「中国民間対日賠償請求連合会」という所と、ハンギョレの記事にある「第2次大戦強制労働に関連する対日本賠償事件弁護士団」という所は別系統の運動体という事なのだろう。「(私たちが弁護を引き受けた被害者と遺族以外の)一部の人々はいわゆる和解協議を受け入れるかもしれない」というのは、前者のように日本と安易な妥協に走る者が出る事を危惧している。日本のやる事は「国民基金」の頃から変わらない。今後日本で予想されるのは、「三菱は誠意を尽くしたのに、「基金」を受け入れなかった奴らが悪い」という逆ギレの論理だろう。
・過去の逆ギレの例
「従軍慰安婦問題が解決しないのは「国民基金」を受け入れない奴らが悪い。日本が右傾化したのも嫌韓が増えたのも、「国民基金」による「和解」を拒否したせいだ!」
・今後予想される逆ギレの例
「三菱の強制連行問題が解決しないのは「中日友好基金」を受け入れない奴らが悪い。日本で安保法案が通って中国との軍事的緊張が高まったり嫌中が増えたのも、「中日友好基金」による「和解」を拒否したせいだ!」
三国志など中国の古典では様々な策略が登場し「何とかの計」「何とかの策」と言われる事が多い。日本(ただし政府ではなく、飽くまで民間の団体や企業という点がポイント)が植民地支配や侵略戦争の被害者に対して形ばかりのお詫びとはした金で「和解」を迫り、彼らの中でそれに応じる者とそうでない者を分断・離間させる計略、これらは「国民基金の計」と言うべきであろう。
さらにもう一つ、こういう事も今後言われるだろうと筆者は予想している。
「沖縄の基地問題が解決しないのは「本土の基地引き取り」を認めない奴らが悪い。沖縄に基地を押し付けてきたのも辺野古の基地建設が強行されるのも沖縄差別が酷くなったのも、「本土の反戦平和運動や日本人お左翼様」が基地引き取りによる「植民地主義清算」を拒否したせいだ!」
「沖縄の米軍基地本土引取り論」というのは、明らかに「国民基金」や今回の三菱のやり口と同類だろう。それに気付かない者が多過ぎる。「在日朝鮮・韓国人」を自称する者だからといってそれに必ず気付くとは限らない。頭に血が上って逆上の余りまともな思考力を失った(か、単にツイッターのやりすぎで頭がおかしくなった)と思しき者もいれば、どう見ても右翼日本人のなりすましとしか思えないのもいる。そうした者は相手にせず「切る」事も必要だ。野間一派や「李信恵と不愉快な仲間達」と喧嘩してるからといって、その者達がまともな人間とは必ずしも限らない。「在日がどうなろうがかまわやしない」というのは、もはや辛淑玉(私に民族とか同胞とかいう概念はない!)と同レベルの人格だろう。仮にも「のりこえネット」を批判するなら、そんな暴言を平然と吐く者の肩を持ったり好意的にリツイートなどすべきではない。
三菱マテリアル(旧三菱鉱業)が先日、強制労働させたアメリカ人戦争捕虜に謝罪し、そればかりか中国の強制労働被害者にも謝罪するという事で色々と話題になっている。で、これをあたかも世紀の快挙のごとく早とちりしているオッチョコチョイも散見された。典型例が以下だろう。
https://twitter.com/gaitifujiyama/status/624272816993607680
三菱マテリアルは社外取締役に岡本行夫が居る。前に噂話レベルで聞いた話であるが、今回の三菱マテリアルの強制労働謝罪は岡本行夫がサポートしているという。アメリカ、中国だけでなくイギリスやオーストラリア、オランダにも近く謝罪し和解交渉に応じる意向だそうだ。当然韓国もそこに入るんだろう
10:40 - 2015年7月23日
このフジヤマガイチとかいうツイッターユーザーがどんな人間かは知らないが、あまりにノーテンキというかノータリンに過ぎるのではないか。あの戦犯企業三菱が謝罪する? しかもそれを主導しているのが、あの岡本行夫(この男が日本のイラク戦争協力や、日本の国連安保理常任理事国狙いでどれだけ悪どい暗躍をした事か!)だって? ありえねー、というのは誰が見ても分かる話だろう。実際にフジヤマの上記ツイッター群を好意的にリツイートしたり引用している困った人達も少なくないようだ。そうした引用者には普段わりとまともな事を言っているユーザーも多いので、それを見ていると大変落胆させられる。こうした事件には裏があるのではないか疑い、もう少し慎重にアプローチして欲しいと思う。
結論から言うならば、今回の件は真の歴史清算とは程遠いものと言わざるを得ない。ある単語で言い表すならば「吐剛茹柔 토강여유」という一言に尽きる。吐剛茹柔という単語は日本ではあまり使われない言葉だが「硬いものは吐き、柔らかいものは食べる」つまり強者を畏れて弱者を蔑む、「強きを助け弱きを挫く」という意味だ。どういう事かと言うと、今回三菱マテリアルはアメリカと中国には賠償する方針ではあるものの、朝鮮半島出身者には謝罪も賠償もしないと明言しているからである。
http://hooc.heraldcorp.com/view.php?ud=20150724000065
「中国にはしても韓国には謝罪出来ない」日本三菱「強制労働」謝罪論争(韓国語記事)
日本の大企業三菱マテリアルが、第2次世界大戦期間に同社で強制労働をしたアメリカ人強制徴用者達を訪ねて公式謝罪したのに続き、中国とイギリス・オランダ・オーストラリアなどの戦争捕虜に対しても謝罪の意を伝えたいと明らかにした。
だが韓国に対しては日韓強制併合を挙げて、他の国家達とは状況が違うと言った事が知られて論議の種になっている。
当時朝鮮人が法的には日本国民であった為、日本人と同様に国家総動員法によって徴用されたという主張だ。
この記事に名前は出ていないが、「韓国に対しては法的状況が違う」「当時日本人だった朝鮮人を国家総動員法で徴用(したから合法)」と説明したのが岡本行夫なのは間違いないようだ。
今回の三菱による謝罪が行われた理由は、第1にまず三菱マテリアル自身の商売の為。三菱がアメリカで多大な収益を上げており、謝罪会見が行われたカリフォルニアでは鉄道事業の入札を近くに控えているという。それが「終戦70年」のこの年に、敗戦国の企業が戦勝国様の機嫌を損ねて商売出来る訳があるまい。中国に対してもこれは同様だろう。三菱も中国市場でのビジネス抜きにはやっていけないはずだ。第2の理由は今後出される戦後70年談話つまり「安倍談話」の下ならしの為だろう。今現在世界中で風当たりが強いのは日本政府も嫌というほど分かっており、その為に少しでも批難をかわして友好的なムードを作っておきたいという事だ。もちろん日米新ガイドライン体制の今、三菱が何よりも真っ先にアメリカの被害者にすっ飛んで行って謝罪したのは一番分かり易い。三菱の謝罪はこのようにどこまでも私企業と安倍政権の利益の為に行われたものであり、歴史の清算や被害者救済を第1に尊重して行われたものでは決してない。
それは韓国には謝罪も賠償もしないという三菱&岡本行夫の姿勢に全てが表れているではないか。日韓協定を理由に謝罪と補償を拒否しているのは、今でも「日韓併合」は合法であり、日韓協定で請求権は全て消滅したと考えているからである。国家総動員法を理由にするのは、この世紀の悪法・人権弾圧法が正しかったと認識しているばかりか、それによる朝鮮人への弾圧と収奪もまた正当であったと考えているからである。そして今の韓国政府はそれに本気で反対する考えも力もなく、その事を完全に日本側に見透かされてなめられている。だからこそ日本はアメリカや中国・ヨーロッパなどの大国には頭を下げられるが、韓国ごとき非力な小国にはしない。強者には卑屈なほど媚びへつらい、弱者には暴虐な振る舞いを平気でする。一見「戦後補償」のように見えて、これほど日本の吐剛茹柔ぶり、強きを助け弱きを挫くという卑劣さが滲み出た事件はないだろう。
三菱の行為は決して「アジアへの落とし前」でも「過去の罪と向き合うもの」でも「日本政府の方針に真っ向から反対するもの」でも「日本の他の企業にも政権にも大きなインパクトを与えるもの」でも断じてない。むしろ政府の方針そのものであり、官民一体となって行われた茶番劇である。
【追記】
その後三菱の「謝罪」はもちろん本気などではなく、むしろ「アジア女性基金」と同じで中国の被害者同士を分断・離間させる狙いの強いものである事が分かった。
토강여유
吐剛茹柔
強きを助け弱きを挫く
side with the strong and crush the weak
これもすなわち日米安保と並ぶ「日本の國體」そのものなり!
ちなみに今回の件のついでで、もう一つ指摘しておきたい事がある。イラク戦争大賛成な岡本行夫大先生曰く
「当時朝鮮人は日本国民だったから、国家総動員法で強制連行して奴隷労働させても何ら違法ではない。だから謝罪も賠償もしない」
嘆かわしい事だが、在日朝鮮人のごく一部には己を「自分は日本国民だ」と誇らしげに語る愚劣極まりない輩がいる。
https://twitter.com/rinda0818/status/621668412297613313
おいらは在日で選挙権もないけど。この国の「国民」だと思ってる。若い子たちが今やってるデモや街宣のコールの「国民」という言葉は気にならない。排外主義者が「国民」という言葉に自分たちを入れなくても、今の若い子たちの運動の「国民」と云う言葉には、自分たちも入ってる。
6:11 - 2015年7月16日
https://twitter.com/Bong_Lee/status/621681609595420674
日本人が政府に「国民舐めんな」って言って何が悪いのか全くわからん。ゴタゴタ言ってる在日、お前らの話やで?そこで拗ねるからダサいんですよ先輩方。だったら在日だけでなんかやってみようとしろよ。クソダサい。別に唱和しろと言わんけど他のコールで頑張れよ。お前らの客か?軟弱極まる。
7:03 - 2015年7月16日
「自分は日本国民」「国民舐めんなって大賛成」のこの者どもは、岡本の妄言を聞いてもなお同じセリフを言い続けられるのか。自ら進んで「日本国民(皇国臣民)」になりたがるこの現代の親日派どもは、安倍政権や三菱や岡本らにとっては涙が出るほどありがたい存在だろう。朝鮮人・韓国人が自らを「日本国民(皇国臣民)」と認める事は、すなわち日本国家の抑圧と弾圧と同化を自ら喜んで受け入れる行為に他ならない。上記二つのツイートはまさに「現代版・皇国臣民ノ誓詞」である。
・俺達グル! 二重の意味で!
屋良朝博という記者は今でも沖縄米軍基地問題では取材や発言を続け、この問題をそれなりに深く追及する者であれば一度は名前を聞いた事があるはずだ。実際に屋良は米政府や米軍の高官・関係者に幅広く取材して、中には貴重な証言もいくつか集めており、それらは重要な資料として運動や研究に活用出来ると思う。ただし、屋良自身の主張や見解に筆者は全く同意しない。屋良の立場とは飽くまでも「日米安保を容認した上で、沖縄の基地負担軽減」という典型的な「沖縄の保守」である。政治家で言えば翁長雄志や下地幹郎らのスタンスとほぼ同じと言って良い(もちろん佐藤優もこの「沖縄保守」の範疇に含まれる)。分かり易いのが以下の講演であろう。ここで屋良はこんな事を言っている。
http://www.peace-forum.com/mnforce/2009/03kaisetu/100402.htm
屋良朝博さん(沖縄タイムス論説兼編集委員)の講演
テーマ:沖縄海兵隊のグアム移転問題について
最後に、「こうすれば海兵隊は日本を離れられるのではないか」という私の提案です。1つ目は輸送支援です。2つ目は日米共同の民生支援です。3つ目は、先の2つをもって同盟の深化と位置付けるのです。これらを、沖縄問題を考える際の、知的作業の一助にしていただきたいと思います。
また先ほど見ていただいたように、海兵隊は6か月のローテーションで沖縄に来ます。本国から沖縄・グアム・各地の訓練センターを回って6か月を終えて本国に帰ります。ですから、最初に沖縄に来なければいいのではないでしょうか。沖縄を除いてローテーションすればいいのです。もし日米共同訓練を行うのであれば、沖縄よりも広い演習場のある本土の各地に行ってもいいでしょう。そうした回し方もありだと思うのです。そこで輸送コストがかかるのであれば、高速輸送船を日本がチャーターしてもいいでしょう。そうした「WIN WIN」を考えないで、「海兵隊は出ていけ」というだけでは、交渉が成り立ちません。そうした戦略的な対話をすすめていただきたい、沖縄の基地問題を考えていただきたいと思います。
海兵隊は米軍の中で一番小さい組織です。さらにその一部の普天間基地のために、一国の首相が首を賭けるかどうか、これは不思議なことです。
御覧の通り屋良は「輸送支援」「日米共同の民生支援」「これらによる同盟の深化」「日米共同訓練を行うのであれば、沖縄よりも広い演習場のある本土の各地に行ってもいいでしょう。そうした回し方もありだと思うのです。そこで輸送コストがかかるのであれば、高速輸送船を日本がチャーターしてもいい」「(日米)WIN WIN」「「海兵隊は出ていけ」というだけでは、交渉が成り立ちません」とまで言っており、飽くまでも日米安保そのものに何の疑問も抱かず全面的に肯定する立場なのである。
気がかりなのは、この講演が行われたのが2010年3月17日というまさに民社国連立政権の末期であるという事が一つ。二つ目は屋良が沖縄平和ネットワーク関西の会など、沖縄基地問題関連運動体にやたらと呼ばれて講演し続けてきたという点である。実際に屋良はこれよりも以前、民主党政権が成立する少し前からもこうした主張を活発に続けていた。そして沖縄平和ネットワークなど「フォーラム平和・人権・環境」と関わりのある団体が行う講演会の「常連弁士」だったという事。あの時期辺りからああした団体達がこういう人間を嬉々として呼ぶ…。まさに佐藤優現象が蔓延し始めた頃とぴったり符合しよう。「STOP!! 米軍・安保・自衛隊」を主張しているはずの人々が、「米軍の輸送支援」「同盟の深化」「日米WINWIN」「米軍の為に日本が高速輸送船をチャーター」「海兵隊は出て行けでは通じない」と主張する記者を安易に呼んで、批判的視点一切なしにその御高説を拝聴とは一体どういう事なのかと思う。屋良朝博を度々呼んで話をさせていたのはこうした市民運動体だけでなく、社民党もまた同様であった。「屋良朝博氏の講演内容は当団体の立場とは一部異なる部分があります」といった免責事項すらこれらには見当たらない。
また上記講演でもう一つ目を引く部分がある。
海兵隊は50年前にも大きな移転を経験しています。一般的には「沖縄には戦後ずっと海兵隊の基地がある」と、思われているかもしれません。しかし海兵隊の基地は、岐阜県と山梨県にあったのです。1950年に朝鮮戦争が勃発し、53年に岐阜県と山梨県に海兵隊が配備されました。日本に配備されていた米軍は、朝鮮戦争の勃発と同時に韓国に行きました。そのあとに海兵隊がやってきました。その役割は、韓国に配備された米軍のバック・アップ、戦略的後方支援です。それが56年には、朝鮮半島からは遠く、しかも船による輸送手段のないまま沖縄に移ってきたのです。
なぜそうなったのか。その理由は全くわかりません。米軍基地を担当して10数年間、資料を探していますが見つかりません。合理的な理由が見当たらないのです。ただ一つ、当時の政治状況から推測できることがあります。
(中略)
沖縄の米国総領事が、海兵隊の沖縄移転計画に反対してワシントンに中止を求める秘密公文を出していたことが判明しました。中身は、海兵隊を沖縄に持ってくるべきではない、陸軍と空軍の基地で沖縄本島の3割が基地になっている、海兵隊がくれば沖縄の半分が基地になってしまう、さらに1200世帯の家屋を強制退去させて土地を確保しなければならない、そうしたことは行うべきではないというものです。最初に総領事は、米軍基地は1か所に集中させたほうが有効であると考えていたようです。しかしそれは間違いであることに気付いたと書いています。総領事は、陸軍次官が米国から沖縄に視察に来た時に、陸軍次官が海兵隊の沖縄移転に反対していることを聞かされました。司令部が1か所に集まると、司令部機能が混乱するというのです。また海兵隊も沖縄に行きたがっていないことを、海兵隊の将校たちから聞かされます。沖縄に海兵隊が来れば、沖縄の問題は解決不可能になってしまうと、総領事は手紙に書いています。あるときの手紙には、「沖縄移転を説明できるのはウィルソン国防長官しかいない」とも書いてありました。ウィルソンの政治判断だったのです。ですから50年前も現在も、やはり政治が決めたのです。軍事的な合理性ではありませんでした。政治家が基地の配備を決めているのです。
当時は朝鮮戦争の勃発後で、日本国内では米軍基地を拡張するために土地の収用が行われ、それに反対する運動も大きく巻き起こりました。有名なところでは立川飛行場の拡張計画と砂川闘争です。当時の日本政府は、米国から求められる基地の拡張と、再軍備のサンドウィッチ状態だったのではないでしょうか。そこから出てきた答えが、「地上軍を沖縄に移転する」ということです。
1955年に日米安保条約を締結した後、岸信介総理とアイゼンハワー大統領は共同文書を発表しました。日米は対等な関係になったのです。それが地上軍の撤退につながりました。なぜなら地上軍の駐留は、占領軍の印象を持つからです。占領状態を一掃するために、地上兵力を引き上げることにしたのです。そこで当時は日本でなかった沖縄に、海兵隊が移ってきたのではないでしょうか。
「本土」の海兵隊基地が沖縄に移転する事になった経過と原因について考察した部分だが、支離滅裂な文章という感が否めない。だが屋良は、他の著書では海兵隊沖縄移転の理由をもっと明確に断言して述べている。例えば上記講演とほぼ同時期である2009年7月発行の「砂上の同盟」という本では
http://hyogo-hoshiokyuuen.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-9541.html
「砂上の同盟」 米軍再編が明かすウソ
「海兵隊の最初の駐留地が岐阜(各務原)と山梨(北富士演習場)だったのは、朝鮮戦争で韓国に配備された米軍部隊をバックアップするためだ」(同書 84ページ)のだが、1956年沖縄にその第3師団1万61千人が移駐しました。09124 その理由は、1950年代初めに各地で起こった内灘闘争、浅間山の演習場反対闘争、妙義山接収計画反対闘争、砂川基地闘争、そして何より北富士演習阻止の忍草農民の闘いなどがあって追い出されたというのが事実ではないかと屋良さんは指摘されています。
また、2012年12月発行の「誤解だらけの沖縄・米軍基地」という本も、アマゾンのさるレビューによればこうある。
http://www.amazon.co.jp/review/RIMNJME6IID02/ref=cm_cr_dp_title?ie=UTF8&ASIN=4845112884&channel=detail-glance&nodeID=465392&store=books
・「実はまだ詳細は不明」
としているのに、本土から沖縄に海兵隊が移動してきた理由を、
「朝鮮半島を警戒していた海兵隊は岐阜や山梨では住民の反対が強く、訓練もろくにできない状況だったため、当時は日本の外に置かれ、米軍統治下にあった沖縄に海兵隊を移してしまったということでしょう」
と書いてしまったり
昔「本土」にあった海兵隊基地は住民の反対運動に遭って沖縄に移ってきた(実はまだ詳細は不明なはずなのに)、つまり「沖縄に米軍基地を押し付けたのは本土の反戦平和運動説」を最も積極的に広めて来たのが屋良朝博という記者であった。少なくとも同説の代表的論者の一人である事は間違いない。
もうお分かりだろう。最近の高橋哲哉が言ってる事は屋良朝博の主張をさらに過激にしたものであるという事が。今や「基地本土受け入れ運動」の間で高橋哲哉は教祖とも言うべき尊師的存在、すなわち「グル高橋」という仇名がぴったりになっており、少しでも尊師の事が批判されると逆上して攻撃してくる狂信者すら見かける。彼らが他人の批判や意見に対して論理的に反論してくる姿など見た事がない。ひたすら「おまえは植民地主義が分かっていない」の一点張りである。だがそんなグル高橋の「教義」も蓋を開けてみれば何の事はない。他人の安っぽい引き写しに過ぎなかったのだ。グルにはさらにグルがいた。俺達(二重の意味で)グル! 日米両政府もグル! それで「植民地主義」とやらを語る事が根本的に間違っている。日米安保こそ沖縄とその民族を抹殺し、日米という二つの大国の「植民地」とし続けている最大の元凶ではないのか。「日米WIN WIN 日米同盟深化(by 屋良)」「安保廃棄は見通せない(by グル高橋)」という観点で、米軍基地を本土に移転さえすれば全て解決という飛躍した思考こそ考え直すべきだろう。自分達のグルが言っている事を要約すると以下のようなものでしかないのだから。
米軍基地を沖縄に押し付けたのは「本土」の反戦運動。それが定説です!
日米安保の支持率が今や8割。安保廃棄なんか出来っこありません。それが定説です!
「本土による基地引取り」こそが唯一の沖縄基地問題解決方策。それが定説です!
「日米安保を容認した上で、沖縄の基地負担軽減」こそ翁長・下地・屋良らに代表される典型的な「沖縄の保守」の立場であり、だからこそこの手の連中は「(飽くまでも希望的観測として)出来れば基地はない方が良いが、それなりの見返り(経済振興)さえもらえればヤマト政府やアメリカとも妥協出来る」という事でもある。この立場では基地の「完全廃止」など重要ではない。いや、日米安保体制に寄生する「沖縄の保守」からすれば、「負担」は減るのが望ましいが、基地が完全になくなるのはむしろ困るだろう。それこそこれは今まで何十年も繰り返されてきた事ではないか。それに回帰、いや今後とも継続させてどうするのか? 「お師匠様」である屋良の説をほぼそのまま取り入れた高橋のスタンスも今や完全な「沖縄の保守」の立場であり、その代弁者である。高橋が沖縄の有力土建屋の一つである照正組の照屋義実と最近密接な関係であるのもそうした脈絡で理解が出来よう。翁長や下地といった沖縄の有力保守政治家達のバックに地元の有力土建屋がついているように。グル高橋という男、哲学者という表のふれこみとは違って、腹の内は相当なやり手の俗物ではあるまいか。
前回でも取り上げた高橋の発言「「本土」の私たちは「県外移設」を受け入れるべきだ」でも述べられているが、
安倍政権のあまりに強硬なやり方に眉をひそめた「本土」のメディアも市民も、「辺野古断固反対」の翁長新知事の誕生を喜んだように見えたが、その翁長知事の近年の持論が県外移設であり、県政基本方針でも「辺野古反対」だけでなく「県外移設」が掲げられていることを報じるメディアはほとんどない。翁長氏は知事選挙では県外移設を前面に出さなかったが、これは革新政党との連携のための妥協であって、翁長氏の圧勝という選挙結果の背景には間違いなく、氏の県外移設要求に共鳴する広範な民意があったと私は考えている。
というのが確かに間違いなく翁長知事・県政の代弁である事だけは間違いない。「沖縄の保守」を最も代表する翁長県政下における「県外移設(イコール本土引取りという事にしたい)」の行き着く果てとは何なのだろう。これを筆者は「翁長ドクトリン」と密かに呼んでいる。沖縄を「ある時期のある国」のように持って行きたいという方針に他ならない。グル高橋に代表される「基地本土引取り運動」のような怪しげな動きはこの流れに沿ったものとしか思えないからだ…。
(続く)
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