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【翻訳記事】アジアプレスの「北朝鮮社会を蝕む覚醒剤」報道の嘘・捏造・歪曲を撃つ! その1

アジアプレスが大々的に売り出している例の「北朝鮮社会を蝕む覚醒剤」報道について、その大嘘を暴く韓国の記事を御紹介したいと思います。前回の記事で問題のアジアプレス記事が何と1年前の韓国語記事を翻訳しただけのセコイ使いまわしだった事を暴露しましたが、ではその記事内容の真偽はどうなのでしょうか。それに最も良く答えてくれる記事を2本翻訳して御紹介したいと思います。
これからお届けする記事は韓国在住の脱北者が2011年初にオーマイニュースに発表したものでした。この2011年初旬という日付を覚えておいて下さい。当時の韓国では今の日本と同じで、朝鮮日報などの右派メディアが「北では麻薬が大流行している」と大々的に報道した時期だったのです。この「北朝鮮で麻薬が蔓延」報道には多くの脱北者が(金目当てで)協力していたのですが、中にはそうした風潮を嘆いて反論する脱北者もいました。それが今回の記事を書いた崔スンチョルという人です。筆者はこの人の北朝鮮政権に対する考えや対北政策の意見には賛成出来ない部分も少なくない(脱北してきた人間なので向こうを多少なりとも悪く言うのはやむを得ないのでしょうが)のですが、それでも「北朝鮮で麻薬が蔓延」報道の嘘を暴き、またそうした嘘が朝鮮半島の統一に悪影響を及ぼすという事、脱北者はそうした韓国の極右勢力に利用されるべきでないという主張には賛同出来ます。その点に関しては、金目当てで朝鮮民主主義人民共和国に対するデマを韓国や日本の極右勢力に売って回っている悪質な脱北者とは一線を画していると言えるでしょう。脱北者にしては珍しく、朝鮮半島情勢をある程度客観視出来る貴重な人なのだと思います。
まずは記事を実際に御覧下さい。これを読めば石丸次郎やアジアプレスがどれだけ無茶苦茶で矛盾だらけのデマを言ってるかがお分かりになる事でしょう。
なお強調部分は訳者によるものです。


北朝鮮住民達が麻薬漬けだって? 呆れた
【脱北者が語る1】事実と異なる「北朝鮮ニュース」がなぜ出るのか
2011.01.21 15:25 最終アップデート 2011.01.26 14:36 崔スンチョル


▲2009年11月18日午後ソウル世宗路の米大使館前で開かれた北朝鮮人権団体連合主催「アメリカのオバマ大統領歓迎及び北朝鮮の人権に積極行動を求める記者会見」で北朝鮮軍服装と顔を隠した脱北者達が北朝鮮の人権状況に対するパフォーマンスをしている。

最近北朝鮮関連ニュースが度々マスコミに登場している。大体は北朝鮮政権が不安定だという内容で、北朝鮮の内部崩壊が迫っているという根拠を提示するもの達だ。北朝鮮関連ニュースは大部分が「朝鮮日報」など保守陣営媒体達が報道する。

これらが北朝鮮から持って来る情報(消息)達は大概が脱北者の手を経る。デイリーNK、NK知識人連帯などは北朝鮮に通信員(北朝鮮住民情報提供者)を置き、彼らが提供する情報を中国を通じて韓国に持って来るのだが、大概は電話で情報をもらったり、最近ではインターネットを利用したりもする。

中国と隣接している北朝鮮国境地域では中国の通信信号が捉えられる。これを利用して北朝鮮住民と脱北者多数が情報を交流する。中国で電話やインターネット(無線)に加入して携帯電話やインターネット受信機器を北朝鮮に持ち込んで使用させるのだ。

北朝鮮情報どこまで信じるべきか

北朝鮮情報達は最初、保守陣営のデイリーNKと進歩陣営の「良き友たち」がほぼ独占していたが、今は多くの言論媒体達が自前の「ライン」を持って北朝鮮情報を収集する。すなわち競争者が多くなったのだ。競争者が増えてみると、今や「特ダネ」が必要になった。北朝鮮関連「一般的な情報」は差別性がなく注目を受けない為に、特ダネを通じて対北媒体としての絶対的優位と存在感を認められねばならないからだ。

特に特ダネ記事に没頭する余り、今や北朝鮮から入って来る情報は北朝鮮通信員の取材中心ではなく、企画取材をする傾向まで表れている。だが北朝鮮で活動する通信員達は民主主義社会でのマスコミの価値と役割に対する理解が全くなく、経済的代価によって情報を提供する。

情報を提供する北朝鮮通信員には一種のインセンティブ(北朝鮮の所得の現実を考慮すれば、これは莫大な経済的報酬だ)が提供される。代わりに北朝鮮通信員達は、北朝鮮当局の統制下で自身の命を担保に活動せねばならない。

こうして企画取材に没頭する余り、対北関連ニュースの歪曲はよりひどくなる傾向がある。主に保守陣営の言論媒体達は自分の口に合うように北朝鮮ニュースを報道するのだが、北朝鮮情報を十分に把握する事の出来ない大多数の市民達はそれをストレートに信じるしかない。

しかしこうした歪曲された北朝鮮関連ニュースが統一を思う国民情緒に否定的な影響を及ぼし、正しい北朝鮮情報に基づいて対北政策と統一政策を樹立せねばならない政府に悪い影響を与えるとしたら、これは明らかに深刻な問題だ。

北朝鮮関連ニュースが歪曲される事実を実例で見てみよう。

昨年(訳者注:2010年)12月24日にNK知識人連帯という脱北者団体が北朝鮮住民の麻薬吸入動画を報道した。この動画は「聯合ニュース」に提供され、ほぼ全ての媒体が動画の内容を報道した。また1月5日には保守媒体である「ニューデイリー」が「清津では10代と20代達も麻薬をたくさんやっている」式の記事を報道した。


▲NK知識人連帯が提供して2010年12月24日に「聯合ニュース」が報道した、北朝鮮住民達のヒロポン吸入動画。

北朝鮮の現実を知らない南の人達が見れば「あんなに北の人々は麻薬を一般的にやるのか」となるが、北朝鮮で暮らして来た脱北者である私の目からすれば誇張された内容だ。

私もあの動画を見た。動画を撮影した場所は北朝鮮地域に見える。だが問題は麻薬の価格だ。動画では麻薬1グラムが北朝鮮の金で5万ウォンくらいすると出ている。だがこれは常識的に考えて、金のない北朝鮮の人々が買うのは困難な価格だ。

今北朝鮮で「ドル」のように通用するトウモロコシ(北朝鮮では市場でほぼ全ての物価がこのトウモロコシ価格によって決定される)価格は地域毎に若干の差異があるものの、1キロあたり大概500ウォン-700ウォン程度だ。結局、麻薬1グラム買おうとしたらトウモロコシ100キロ程度の金が必要だ。


北朝鮮住民多数が麻薬中毒者?

ほぼ大多数の北朝鮮住民達は一日一日を稼いで食うのにも忙しいのにトウモロコシ100キロに相当する麻薬を、それもまるで全国民が吸入するという風に語るが、これは北朝鮮の現実を知る人間にとってはいささか荒唐無稽な話に過ぎない。

もちろん北朝鮮でも麻薬をやる人間がいない訳ではない。私が北朝鮮を離れる時にも麻薬をやる人間がいたが、そうした者達は大部分が食っていく心配のない富裕層の一部ごく少数の人間達だった。一般人は麻薬を見る事も難しく、また麻薬が手に入ったとしても金に換えて米を買って食おうと考える。

韓国の焼酎のような酒一瓶すら買って飲むのも難しい北朝鮮住民が食料100キロに該当する価格の麻薬を、それも一般人の多くがやるだと? これは嘘だ。数日前、北朝鮮にいる兄弟達と通話をする同僚脱北者達にこの内容について確認してみたのだが、関連するような事実を全く知らないという。 「麻薬をやる? そんな人がいるの?」と反問する北朝鮮住民もいたという。

南の人は北の食糧事情に対する情報が不足して理解し難いだろうが、韓国式にくだいて表現すると、月20-30万ウォンの家賃も払えない人間が一回の利用に500-1000万ウォン出さねばならない飲み屋に通うと考えれば良い。

北朝鮮では食料1キロもなくて飢え死ぬ人間が大半だ。それなのに一般人達が食料100キロ買える金で麻薬を購入するというのは常識に合わないだけではなく、北朝鮮住民の所得水準を勘定してみても合わない悪意的な話に過ぎない。


▲北朝鮮最大の慶祝日である金日成主席の誕生日「太陽節」を迎えて、脱北者団体である自由北朝鮮運動連合会員達が2009年4月15日午前、京畿道坡州市臨津閣で対北ビラと北朝鮮貨幣を入れた大型風船を北に飛ばしている。

さらにもどかしいのは、こうした荒唐無稽で歪曲された北朝鮮関連報道達を、我々脱北者達が作り出したという事実だ。脱北者達の大部分は北に対する敵愾心の為に保守性向の思考をしており、保守陣営の団体や組織達と一緒に行動する。

私は進歩性向の思想や考え方をしているが、多数の脱北者達が参加する北朝鮮人権運動や民主化運動自体に反対しない。むしろ今よりもより広範囲で効率的にしてくれる事を望む。北朝鮮政権は明らかに反人倫的で腐敗している。これは事実だ。

だが事実と異なる話をしてまでも北朝鮮をこき下ろす必要はない。もちろん「北朝鮮にも麻薬をやる人間が少しでもいるのだから、嘘は言ってないじゃないか」と反駁する人間もいるだろう。だがこれは、南で別荘を持って暮らしている極少数の事例を録画してから北で放映し「南の住民はみんな別荘を持って暮らしている」と言うのに等しい。

マスコミの命は事実性と正確性だ。事実と異なる歪曲された報道を出すマスコミは、マスコミとしての価値がない。北朝鮮情報を提供する脱北者団体は覚醒せねばならない。我々の軽率な行動が民族の念願である統一を妨害し、統一後の北朝鮮住民をより辛くするのであれば、今のような「北朝鮮民主化運動」はすぐに引き払わねばならない。今回の記事のように、穏健な北朝鮮の人間全てを麻薬中毒者に仕立て上げてしまう行為は、我が故郷北朝鮮の兄弟達に対して罪を犯す事だ。


「保守」脱北者団体、北朝鮮住民を麻薬中毒者に仕立て上げてうれしいのか

天安艦事件、延坪島事態のせいで今や南の北に対する情緒と感情は良くない。こうした状況で統一に反対する者達が事実と異なる「麻薬動画」を見れば「北朝鮮住民は今や麻薬漬けで暮らしており、あんなのを我々が全部面倒みなきゃならないのに、どうして統一するんだ!」という反応まで見られるだろう。

我々脱北者達が統一運動や北朝鮮民主化運動、北朝鮮人権運動をなぜするのか。北朝鮮住民の為にするのではないのか。それなのに北朝鮮住民をにわかに全て麻薬中毒者に仕立て上げてしまったこのような行為が、果たして北朝鮮住民の為のものなのか?

我々脱北者団体もこれからは北朝鮮関連情報を外部に提供する時にもう少し細心にならねばならない。すなわち正確な事実に基づいて世論を作るのが重要だ。それが南の社会に正しい統一意識を持たせる事であり、北で命を懸けて情報を提供してくれる通信員に対する礼儀だ。

北朝鮮情報がこのように歪曲されたままマスコミに公開されるのは、情報の事実如何を南で検証する事が出来ないからだ。北が元より閉鎖された国家であるからと北朝鮮関連報道を確認する術がなく、歪曲された報道を垂れ流す報道機関も責任を取る所がない。これからはこうした歪曲された北朝鮮関連報道達が乱発されないように制御する仕組みも、今や必要だと思う。

李明博政権の対北・統一政策達が、「金正日死亡説」のようなハプニングを作り出す歪曲された対北情報に基づいた政策でない事を願う。

訳:ZED
韓国語原文記事はこちら。
http://www.ohmynews.com/NWS_Web/view/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0001508743

崔スンチョル氏の書いた北朝鮮の麻薬報道に関する記事はもう一つあります。そちらは同時に「北朝鮮では軍人が飢えている」という件(これもやはり石丸次郎が最近しきりに言いふらしている)の嘘についても暴かれていました。それは次回、訳者解説と併せてお送りします。

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